ブルックナーの交響曲3番
96年8月中旬にブルックナーの交響曲3番が発売されました(当然のように、国内盤の発売はありません)。
これは昨年のリンツ・ブルックナー・フェスティバルでも取り上げて話題になった曲目です。ブルックナーの3番はワーグナーの引用なども大幅にカットした第3稿で演奏されることが多いわけですが、ノリントンは第1稿 * を、当時の楽器・編成・奏法で演奏しています。
第1稿を選んだ理由は特に記されていませんが、曲の成立の過程を考えると、ノリントンがこの版で演奏するのはごく自然なことだと言えるでしょう。
同じ流れでは最近アーノンクールもブルックナーの3番を発表していますが、こちらは第2稿によるもので、しかもコンセルトヘボウ。オリジナル楽器によるブルックナーは、たぶん初めてです(ちなみに第1稿による演奏はインバルのものがあります)。
例によって斬新な解釈で、4楽章の快速ぶりなど、従来の演奏を聞き慣れた耳にはあっと驚くブルックナーになっています。何しろ、カットのない第1稿なのに、全曲で57分というのは、驚異的な速さと言えるのではないでしょうか。 演奏は制約の多い楽器とは思えないシャープなもので、ダイナミックスも十分。ブルックナーファンはもちろん、これまでブルックナーを敬遠していた人も、新しい目を(耳を)開かれるかもしれません。
*なお、第1稿が第2、3稿とどれほど違うかについては
- 金子健志『こだわり派のための名曲徹底分析 ブルックナーの交響曲』(音楽之友社)
- 高尾知良「手稿資料から見たブルックナーの第3交響曲−『バイロイト献呈譜』をめぐって」『ブルックナー/マーラー事典』(東京書籍)所収
などを参照。