ブラウザを使いこなそう
これだけインターネットが盛んに利用されるようになってきたので、誰でもブラウザの使い方がよく分かっているかというと、実はそうでもなさそうです。メーカーの競争によってどんどん複雑で巨大になっていくソフトをきちんと使いこなすのは、ブラウザに限らず大変なこと。基本に戻ってその役割を整理し、自分にとって必要な設定をおさらいしましょう。正しい設定ができたら、WWWの検索です。ここでも、ちょっとした使い方のテクニックが、有益な情報を得られるかどうかを大きく左右しています。
ブラウザという仕事
インターネットやイントラネットでWWWの情報を見るためには、ブラウザというソフトを利用しますね。WWWの中心となる情報は、いろいろな場所のサーバーに分散して置かれている、HTMLファイルです。ブラウザは、URLにしたがって適切なサーバーからこの情報を取り寄せ、読みやすく整形して表示するという役割を担っています。
また、ブラウザはデータの受信だけでなく、ユーザーの入力した情報をサーバーに送り出す機能も備えているので、WWWでは検索や登録といった双方向の操作が可能です。さらに自力で扱えないデータでも、プラグインや補助アプリケーション(ヘルパー)を起動して処理するという点も最近のブラウザの特徴です。特にプラグインという仕掛けは、さまざまなソフト開発者の意欲を刺激し、WWWの発展に大きく寄与しました。その結果、今では3次元グラフィックスや動画までもがWebのコンテンツに加わってきています。
現在主流となっているNetscapeやInternet Explorer(IE)などは、こうしたWWWの機能に加えて、電子メール、ネットニュース、ファイルをダウンロードするFTPなど、インターネットの基本アプリケーションをすべて組み込んでしまっています。ブラウザはホームページを閲覧するソフトという枠を大きく越えて、これだけでインターネットのほとんどが活用できる万能選手になってきているのです。
ブラウザの基本設定
ブラウザはこのようにさまざまな仕事をこなす働き者。それだけにオプションもどんどん多様になり、またNetscapeとIEとでは設定項目が異なるなど事態は複雑になる一方です(図1)。これらの多くは標準のままでOKなのですが、いざというときに迷わないよう、基本事項をいくつか振り返っておきましょう。
ブラウザの第1の役割は何といってもHTMLを解釈して表示すること。本来HTMLは文書の「構造」を記述するだけで、その表現はクライアントに委ねられています。ですから、図2のようにブラウザのフォントや表示色などは好みに応じて変更可能になっているのです(すなわち、完璧な見栄えのページを作ったつもりでも、他の人には全然違って見えたりするということ)。同様に、画像の表示・非表示も切り替えられます(図3)。低速回線で画像データの重さに辟易しているときは、このオプションを利用するとよいでしょう。
忘れずに設定しておきたいのが、ブラウザを起動して最初に表示されるページです。インストール直後はブラウザを作っている会社のホームページなどに接続するようになっていますから、ここに自分専用のホームページを登録しておきましょう。イントラネットで使う場合は、お知らせや独自メニューのページを登録しておくと、情報共有のスタートポイントとして利用することができます。
接続やネットワークに関する設定
ネットワークの設定にプロクシ(proxy)という項目があります(図4)。ダイヤルアップ接続では基本的に関係ありませんが、会社などでLANを経由してインターネットを利用するときは必須の設定です。
普通、組織のネットワークをインターネットに接続する場合は、ファイアウォールというシステム上の壁を設けて外部からの侵入を遮断し、安全を確保します。プロクシとはこのファイアウォールの内と外を中継するサーバーなのです。会社のブラウザをいじったあとで「ホストが見つかりません」というエラーがでる場合は、プロクシの設定が消えてしまっている可能性があります。ネットワーク管理者にプロクシサーバーのアドレスを確認し、正しく入力してください。
メール関係の項目も、きちんと設定しておきましょう(図5)。ブラウザをメールソフトとして使うときはもちろんですが、ホームページに記された「メッセージはwebmaster@kanzaki.comまで」というアンカーをクリックして作者に感想を送ろうとしても、アドレスが設定されていないと図6のようなエラーになってしまいます。また、FTPサイトはファイルをダウンロードするためのパスワードにメールアドレスを要求することがあるので、その場合もこの情報が必要です。
WWWを検索する
ブラウザを使う醍醐味は、世界に広がる情報の海を探索して、従来のメディアでは得られないリソースに出合うことです。しかし、少しWWWを使ってみればわかるとおり、インターネットではそもそもどこに情報があるのかを見つけるのが大問題。
テーマがはっきりしているのなら、やはり検索サイトにお世話になるのが最もオーソドックスな方法でしょう。WWW上で検索サービスを提供するサイトは数多く存在し、それぞれが独自の方法で世界の情報を集めてその量と質を競っています。
WWWの検索サイト
検索サイトは大きく分けてディレクトリサービスと呼ばれるものと、ロボット系サーチエンジンと称されるものがあります。前者は利用者からの登録や編集者の調査に基づき、実際のページを確認してコメントともに分類整理したものです(図7)。情報の質はある程度の水準が保たれていますが、人間の手で調べる量には限界がありますから、とても世界中の情報を網羅するというわけにはいきません。
もう一方のサーチエンジンは、“ロボット”というエージェントプログラムを定期的に動かして、それこそ世界中のWWWを片っ端から調べあげてデータベース化するものです(図8)。ロボットは内容を吟味することはできませんから、ジャンクも混じっていますが、カバーしている情報は何百万URLという莫大な規模になっているので、思わぬ拾い物に出合う可能性があります。
検索サイトの使い分け
WWWでの情報探索は、これらをうまく使い分けることが重要なポイント。「電子メール」「野球」などの一般的なテーマについて手がかりが欲しいときは、まずディレクトリサービスをあたってみることです。該当するカテゴリが用意されていて、そこに多くのサイトが並んでいるのが見つかるでしょう(図9)。
ディレクトリサービスの分類ではカバーし切れないような細かいテーマや特殊なものを調べるなら、サーチエンジンの出番です。こちらは収集したページの全文を対象にデータベースを作成しているので、たいていのキーワードで何らかのヒットが得られるはず。ただ、先ほども述べたように、ロボットの集める情報は玉石混淆なので、本当に欲しいものを見つけるにはちょっとしたこつが必要になります。
ANDとORとフレーズによる検索
例えばAltaVistaで「Roger Norrington」という(それほど有名ではない)指揮者について調べる場合、単純にこの単語を入力して検索すると、何千ものファイルがマッチしたという結果が返ってきて驚くことになります。これはドキュメントに「Roger」もしくは「Norrington」のいずれかを含むものという「OR」検索が行われたため、不要なものまで拾われてしまったのです。これを +Roger +Norrington とすれば、両方の単語を含むファイルのみを探す「AND」検索となり、結果は200件程度になります。 また、"Roger Norrington" と引用符でくくっておくと、2つの単語がフレーズ(ひと続きの語句)として扱われ、100件程度まで絞り込まれました(図10)。
検索条件の入力方式はサービスによって異なる場合もあるので(図11)、説明ページに目を通し、そのサイトの特徴をつかむことが大切です。「インターネットにはろくな情報がない」などとうそぶく人もいますが、それは調べ方次第。適切な検索方法をマスターすれば、WWWに眠っている情報の豊かな鉱脈を掘り当てられるに違いありません。
(MacFan 1997-06-15号)
*ディレクトリサービスや検索エンジンにはどんなものがあるかを知るには 日本の Search Engineのリスト が参考になります。