ファイルメーカーによる本当に役立つWebサイトの構築
インターネットには豪華なWebサイトが溢れていますが、利用者が求めているのはそんなものより企業の製品やサービスの情報のはず。パソコンのデータベースを公開すれば、無駄なコストをかけずに本当に役立つ情報提供ができるのです。
- インターネット常時接続環境を生かす
- スモールオフィスが有利な情報提供
- ファイルメーカーProによる情報公開
- データベース公開の準備
- ホームページProのアシスタント機能
- HTMLのセット「サイト」が作成される
- ブラウザで検索を実行してみる
- セキュリティに注意しよう
インターネット常時接続環境を生かす
OCNエコノミーのような常時接続でオフィスがインターネットにつながると、メールをリアルタイムで受け取ったり、時間を気にせずゆっくりと連想を働かせながらネットサーフをして情報を集めたりできるだけでなく、自らの情報をWWWによって発信することができるようになります。
WWWで情報発信するのは、企業にとってもう珍しいことではありません。ちょっと名の知れた会社なら、ほとんどが何らかの形でウェッブサイトを運営していると考えてもよいでしょう。名刺にURLを刷り込んでおくのも、お馴染みのスタイルになりました。
しかし、こうした企業サイトの多くは、今、転換期にさしかかっているようです。ブームにのってページを開設してはみたものの、なかなかアクセスが伸びない、会社案内以外に提供する情報が思いつかないという問題を抱えているのです。
利用者サイドから見ても、企業ページには「欲しい情報がない」という不満が高くなっています。企業はいろんな技術を使ってにぎやかなページを演出してアクセス増を目指しますが、ユーザーはむしろ企業の製品やサービスに関する情報を求めています。このギャップが、インターネットには役に立つ情報が無いという評判になったり、企業ページに利用者がアクセスしないという状況に結びついているわけです。
スモールオフィスが有利な情報提供
利用者が望んでいる商品情報を確実にWWWで提供するためには、商品データベースがWebサーバーと連動するような仕組みが必要になります。これを規模の大きな企業において実現するのは、じつは容易なことではありません。会社の最も重要な情報資産であるマスターデータベースをインターネットと連動できるように改良するのには、大きなエネルギーと予算が必要になるのです。
この点に注目すれば、インターネットでの情報提供は、むしろ小さなオフィスが有利と言えるかも知れません。多くのスモールオフィスでは、データベースはパーソナルコンピュータ上でメンテナンスされ、扱いも手軽です。そして、最近のパソコン用データベースを使うと、特別なプログラムを用意することなく、簡単に情報をインターネットに公開できるようになってきているのです。大企業が社内手続きに手間取っている間に、フットワークよく商品データベースをWWWで提供すれば、大きなアドバンテージを得ることも可能でしょう。これこそ、インターネットの醍醐味と言えるのではないでしょうか。
ファイルメーカーProによる情報公開
マッキントッシュ用のデータベースの定番ソフト、ファイルメーカーProは、バージョン4.0から「Webコンパニオン」という機能(プラグイン)が加わり、WWWサーバーや特別なCGI用のツールを用意することなく、情報をインターネットやイントラネットに公開できるようになりました。ここで提供されている「インスタントWeb」を使うと、1行もHTMLを書くことなく、ブラウザからデータベースが操作できるようになります。
この「インスタントWeb」は手軽に情報提供ができるという点では画期的ですが、作成されるページはビジネス用途として使うには少々力不足。ファイルメーカーにはもっと強力な「カスタムWeb」機能も用意されており、これを使うと自由なカスタマイズが可能ですが、そのためにはCDMLという複雑な言語を操ってデータベースを操作する必要があります。
この両者の間をうめる形で登場したのが、「クラリスホームページ」が進化した新しいWebページ作成管理ソフト「ホームページPro 3.0」です。ここに用意された「ファイルメーカーProアシスタント」機能を使うと、質問に順番に答えていくだけで、誰にでも簡単に、高度なデータベース操作用のWebページが作成できます。
データベース公開の準備
ファイルメーカーのデータベースをWWWで利用するためには、まず「Webコンパニオン」機能を有効にする必要があります。TCP/IPで接続できる環境で対象のデータベースファイルを開き、「編集」メニューの「プレファレンス」から「アプリケーション」を選んでください。環境設定ダイアログでポップアップメニューを「プラグイン」に切り替え、リストの「Webコンパニオン」をチェックして「OK」ボタンをクリックします(図1)。
次に、「ファイル」メニューの「共有設定...」を選んで、コンパニオン共有設定で「Webコンパニオン」をチェック(図2)。以上でこのデータベースファイルをブラウザから利用する準備が整いました。
ホームページProのアシスタント機能
データベース側の準備ができたら、今度はホームページProのアシスタント機能を使って、データベースを操作するWebページを作成していきます。「ファイル」メニューの「新規...」を開き、ラジオボタン「アシスタントを選択」をチェックしてリストの中から「ファイルメーカーProアシスタント」を選んで下さい(図3)。
いくつかの説明画面に続いて、公開しようとするデータベースを選択する画面が表示されます。ここでファイルメーカーを開いているコンピュータのIPアドレスを入力して「サーバーに接続」ボタンをクリックすると、右側に公開できるデータベースがリストアップされるので、対象となるファイルを選択します(図4)。
次はレイアウトの選択画面です。ここでは、Webで公開するフィールドが使われているレイアウトを選択します(実際のレイアウトそのものはページ作成には影響しません)。必要最小限のフィールドを持つレイアウトを選んでおくと、アシスタントの負担が軽くなり、作業がスムーズに進みます(図5)。
機能選択画面では、このデータベースをどのような形で公開するかを選択します。検索して一覧表示するだけのものから、レコードの編集を許す、新規レコードを追加できるようにするなどのオプションがあります。データベース公開の目的に合わせて、適切な項目をチェックします(図6)。
このあとは、一気に進めましょう。例えば、検索と詳細表示の機能を選んだなら、検索に使うフィールドを指定し(図7)、結果の一覧表示で示すフィールドを指定し(図8)、必要なら表示のソート順を設定した上で詳細結果で表示するフィールドを指定します(図9)。
HTMLのセット「サイト」が作成される
こうして基本的な情報を設定したら、ホームページProが用意している20種類以上のサンプルから、ページでザインのスタイルを選択します(図10)。この一連の作業でホームページProは複数のファイルを作成しますが、これら全てにここで選んだスタイルが適用され、統一感のあるサイトが簡単に構築できるのです。
最後にアシスタントは、作成したHTMLファイルを保存するフォルダを尋ねます。実際にインターネットやイントラネットでアクセスするためには、これらのファイルはファイルメーカーProのあるフォルダ内の「Web」フォルダ以下の階層に置かなければなりません。ただし、この「Web」フォルダ内のHTMLは、作成と同時に自動的に公開されてしまいますから、いったん別の場所に保存して修正やチェックを行ってから、最終的にここにコピーしても良いでしょう。
出来上がったファイル群は、「サイトエディタ」ウインドウに一覧表示されます(図11)。ホームページProは、関連のあるHTMLファイルを「サイト」というグループとしてまとめて管理するようになりました。このサイトエディタは、個別のページの編集に移行できるのはもちろん、リンクのチェックや、内容の一括修正、ファイルのアップロードなど、WWWサイトを運営する上で便利な機能が豊富に盛り込まれている、強力なツールです。
ブラウザで検索を実行してみる
では、ブラウザを使って、ここで制作したページからデータベースを検索してみましょう。URLにはファイルメーカーProのあるIPアドレスと、HTMLページを保存したフォルダ名を組み合わせたもの(http://192.168.0.2/products/など)を入力します。
イントロダクションのページを経て、設定したとおりの検索ページが現れました。商品を検索してみると、結果が一覧表示され、商品番号が詳細ページへのリンクになっています。詳細を開くと、データベース中の画像も含めてきちんと表示されることが確認できました。ホームページProが提供するスタイルのテンプレートを使っているので、画面のデザインもそこそこスマートに仕上がっています(図12)。もちろん、ホームページProの編集機能を使って、さらに細かい調節も可能です。
セキュリティに注意しよう
商品データベースをインターネットで公開する前に、セキュリティのことを考えておく必要があります。ファイルメーカーProの場合、データベースにアクセス権を設定しておけば、ブラウザからファイルを開くときに認証ダイアログが表示され、危険な利用を防ぐことができます。また「Webセキュリティ」データベースを使って、利用者ごとに細かくフィールドの閲覧や編集の権利を制限することも可能です。ただ、安全性は配慮されているとはいえ、やはりマスターデータベースを直接公開するのは、不安が残ります。そういうときは、AppleScriptなどで毎日自動的にマスターのコピーを作り、そちらを公開専用にするといった工夫も必要でしょう。
セキュリティ以外に回線容量のことも考え、WWWサイトの運営には社外のレンタルサーバーを利用することが多いのですが、一般のサーバーでは、ファイルメーカーを動かすことは不可能です。そんなときは、(株)エミックの「ファイルメーカー ウェブ ホスティング サービス」(http://www.filemaker.ne.jp/)の利用を検討してみても良いかも知れません。月額2万9800円で、ファイルメーカーProが稼働する専用サーバーを提供してもらえます。外部のサーバーを使いながら、使い馴れた社内ようデータベースでそのまま情報公開できる仕組みは魅力的です。
インターネットはビジネスにならないと言われますが、それはむやみにお金をかけて豪華なページを作ってみたりしている場合のこと。利用者にとって本当に役に立つ情報を、日常業務の延長として無理なく提供できれば、インターネットは強力なツールになるに違いありません。
(MacFan 1998-07-15号)