ローカルトークでネットワークを作る

マッキントッシュには最初からアップルトークというネットワーク用のソフトが組み込まれているため、複数のマシンをつないでネットワークを構築するのはとても簡単です。今回は、標準で備わる仕組みだけを使って、小規模なネットワークに挑戦しましょう。用意しなければならないのはちょっとした接続キットだけ。実際の作業は、マッキントッシュの数が少なければ十数分で終わってしまうと思います。簡単だけれども、情報共有はもちろんのこと、ファイルの安全性も考慮された立派なネットワークが、今日から実現できます。

マッキントッシュをケーブルでつなぐ

マッキントッシュにプリンタをつないだことがある人なら誰でもよくご存知のように、マック本体の裏側にはプリンタ・ポートという接続口が用意されています。アップルトークはもともと複数のマシンでプリンタを共有することを目的に開発されたネットワークなので、ファイル共有などを行なうための接続も、同じプリンタポートを使って行ないます。

機械をつなぐためには、ローカルトーク・コネクタキットを用意しましょう。ここには、ネットワークのためのケーブルと、それぞれのプリンタポートに接続するためのコネクタボックスが含まれています。一つのポートに複数の機械を接続するのですから、二股のような装置を使って、自分の両側に線が届くようにしなければなりません。そのため図3のようにコネクタボックスをプリンタポートに接続して、ローカルトークケーブルでコネクタボックス同士をつなぐのです。

ローカルトークではこのように、隣同士のマッキントッシュを数珠つなぎに一列に結んでいきます。オフィスであちこちに配置したコンピュータをネットワークするときは、最初によく考えないと、非常に無駄な配線をするはめになる危険があるので注意してください。ローカルトークケーブルはかなり長いものも販売されていますから、離れた機械でも大丈夫。ただし、ひとまとまりのネットワークでは、ケーブルの長さの合計は約300メートルという制限があります。また、普通に接続できる機器の数は32台までです。ブリッジやルータという装置を間に入れて制限を越えることもできますが、そのような大きなネットワークの場合はイーサネットなどのより高度な仕組みの方がよいかもしれません。

ネットワークソフトの設定

配線ができたら次はソフトの設定です。まず、コントロールパネルから「共有設定」を開いてください。上段のネットワークIDはコンピュータ自身についての情報を設定するところで、入力フィールドが3つあります。最初はそのコンピュータを管理するユーザーの名前、次がその人のパスワードです。3番目のMacintoshの名前は、他のコンピュータから見た場合の「ファイルサーバー」の名前となるので、どのマシンを指すのか分かりやすく設定しましょう。

必要事項を入力したら、その下にある「ファイル共有」のセクションで「開始」ボタンをクリックします。コンピュータが準備をしている間はこのボタンは「キャンセル」と表示され、準備が完了したら「中止」と名前が変わるはずです。

これでこのマシンをファイルサーバーとして働かせる用意ができました。次は「利用者&グループ」、つまりこのサーバーをネットワーク経由で使える人の設定です。

コントロールパネルを開くと図5のようなウインドウが表示されます。最初の状態では、所有者自身のアイコンとゲストのアイコンが用意されています。ここに、サーバーを使うユーザーを登録していきましょう。

「ファイル」メニューの「新規利用者」を選ぶと、新しいアイコンがウインドウに現れます。普通のファイルと同じようにして登録するユーザーの名前を付けてください。これをダブルクリックすると、図6のようなダイアログが表示され、そのユーザーがアクセスするためのパスワードを設定できます。パスワードは8文字までの半角英数字で、大文字小文字は区別されるので気をつけてください。これを保存すると一人のユーザーの登録完了です。すこし面倒ですが、全ての利用者を登録しましょう。

登録ユーザーの数が増えると、一人ひとり細かい設定をするのが大変になってくるので、複数のユーザーをまとめて「グループ」を作ることができます。「ファイル」メニューで「新規グループ」を実行すると、新規グループのアイコンが現れます。グループの名前は、実際の仕事上のグループに対応させておくと分かりやすいでしょう。このグループアイコンに、登録するユーザーのアイコンをドラッグしていきます。一つのグループに何人でも登録できますし、また一人のユーザーは複数のグループに所属することも可能です。

フォルダの公開とアクセス権

コントロールパネルの設定ができたら、公開する情報を決めましょう。サーバーのディスクの全内容を公開することも可能ですが、通常は共有するためのフォルダをつくり、その中身だけを公開します。システムなどの重要なファイルを不用意に変更されないようにするためにも、ディスク全体の公開は避けた方がよいでしょう。複数のフォルダを共有し、目的に応じて使い分けることもできます。フォルダの名前が、ユーザーから見るとボリューム(デスクトップ上に現れるディスクアイコン)の名前になるので、これも理解しやすいものにしておいてください。

共有フォルダを決めたら、そのフォルダを選択しておいて、メニューバーから「ファイル」→「共有...」を開きます(図8)。ここでまず左の「この項目と内容を共有する」をチェックします。これでこのフォルダに含まれる内容を公開する準備ができました。

さて、データ共有にはもちろん大きなメリットがありますが、一方で大切なファイルを誤って変更される危険があります。

消去されたり書き換えられては困るけれども、ファイルの内容を見ることだけは可能にしておきたい。あるいは、コピーして使うなら自由にして構わない。

このようなケースに対応できるように、いくつかのレベルの「アクセス権」をフォルダごとに設定し、ファイルの安全を確保しながら、多くのユーザーが利用できるようにする手段が用意されています。これが、図8の中段に並んでいるチェックボックスの役割です。例えばこの「名簿フォルダ」を所有して管理するのは「太田」さんで、「広報部」のグループに所属するほかの人は、その情報を閲覧可能だけれども書き換えは不可にしたいという場合。このときは所有者を太田さんに設定して全ての権利をチェックし、利用者/グループに広報部を選んで内容変更のチェックを外しておきます。これによって、グループ全員が書類の参照はできるけれども、変更は太田さんだけという管理が可能になるわけです。

ファイルを共有してみる

必要なフォルダに共有のための設定をしたら、他のコンピュータからこれらを利用できるようになります。まず「セレクタ」を開いて、AppleTalkが使用になっていることを確認し、左の欄からAppleShareのアイコンを選びましょう。

AppleShareをクリックすると、右上の「ファイルサーバーの選択:」というリストボックスに、ファイル共有をONにしているコンピュータ(サーバー)が一覧表示されるはずです。目的のサーバーを選んで、OKボタンをクリック。すると、接続のためのダイアログが表示されます。「登録利用者」ボタンをクリックして、「利用者&グループ」で設定したとおりの名前とパスワードを正しく入力すれば、そのサーバーで公開しているフォルダがリストアップされます。このなかから、目的のフォルダを選んでOKすると、これがディスクと同じようにデスクトップに現れます。あとは、ハードディスクやフロッピーディスクのファイルを扱うのと同じく、ダブルクリックで開いたり、コピーしたりすることができるようになります。

毎回同じ共有フォルダを利用するなら、図11のダイアログでフォルダを選択するときに右側のチェックボックスをクリックして、下の「名前とパスワードを保存する」を選択しておきましょう。こうしておけば、次回からは電源を入れたときに自動的に共有フォルダがデスクトップに現れ、すぐに作業を始めることが可能になります。

ここまでの手順で、コンピュータのアドレスとか、オプションボードの設定などといった複雑な話は全く出てきませんでした。追加で用意したのはローカルトーク・コネクタキットのみ。あとは全て最初からマッキントッシュに含まれています。たったこれだけの設定で、ファイルサーバーが立ち上がり、フォルダがオフィス全体の共有資源となりました。これなら専門家を呼んでくる必要もありません。どこでも誰でも、今日からオフィスの情報共有を始めることができるのです。マッキントッシュならではのこのネットワーク、試してみない手はありませんよね?

(MacFan 1996-12-01号)