ビジネスツールとしての電子メール
電子メールがオフィスでも急速に普及し、日常の連絡はすべてメールで行うという会社も増えてきました。そこでよく言われるのが、「メールが多すぎて、処理だけで何時間もかかる」とか「未読の山に埋もれて、重要なメッセージを見落とした」という問題です。確かに、1日百通を越えるメールを、届いたものから順番に処理していては、時間がいくらあっても足りません。しかし、メールソフトの「フィルタ」機能を活用したり、送信側が読みやすいメッセージを心掛けることで、電子メールはその威力を存分に発揮できるのです。
- 電子メールの洪水の中で
- フィルタでメールをさばく
- メールの自動振り分け機能は電子秘書
- 分類から自動処理へ
- 複数アカウントの使い分け
- 受信者の立場に立ったメッセージ作法
- Subjectや本文をどう書くか
- 添付書類やHTMLメール
- メールと何とかは使いよう
電子メールの洪水の中で
電子メールを活用するようになると、毎日届くメールの数もどんどん増加します。個人宛のメッセージの他に、Ccの参考情報、社内の共通連絡、外部からのダイレクトメールなどなど。そのうえ、情報収集の手段としてニュース配信サービスなどに加入すると、1日の受信件数が百件を越えても不思議ではありません。
このレベルになると、メールを読むのが苦痛になってきます。未読の山に埋もれて、すぐに返信の必要なメッセージを見落とす危険もあります。コミュニケーションを円滑にするはずの電子メールが、情報洪水の中で機能不全に陥っていくのです。
フィルタでメールをさばく
大量の情報をさばくには、その緊急性や重要度に応じて分類整理するのが第一歩。ほとんどのメールソフトは、受信したメッセージを「フォルダ」に分類して保存する機能を持っています(図1)。メールをこまめにチェックして、届いたものからどんどんフォルダに投げ込んでいけば、ひとまず整理はつくでしょう。Subject(件名)を見て、急ぎの用件だけ本文を開き、そうでないものはとりあえず適当な分類のフォルダに移動しておくわけです。
しかし、これもあるレベルを超えると、手作業で行うのは煩雑過ぎますね。こういうとき頼りになるのが、仕訳を自動的に行ってくれる「フィルタ」機能です。これを秘書のように活用して、溢れる情報をうまくさばくのが、電子メールを使ってビジネスを行う上での基本といえるでしょう。
メールの自動振り分け機能は電子秘書
「フィルタ」の設定方法はソフトによって様々ですが、機能的にはメールを区別するための「条件設定」と、それをどう扱うかの「処理設定」から構成されます。
「条件」は、メールのSubject(件名)やFrom(差出人)、To(宛先)といったヘッダに含まれる文字列によって指定するのが一般的です(図2)。例えば、メーリングリストの多くは[MLname:...]というようなラベルをSubjectの先頭にもっていますから、この文字列を目印に該当するメールを選別できます。あるいは、自分のアドレスがCc欄にしかなければ、参考情報とみなして処理を後回しにできるわけです。From欄を調べて、部長からのメールを要注意扱いにすることだってわけありません。ソフトによっては、条件を複数組み合わせてきめ細かい振り分けができるものもあります。
「処理」でもっとも一般的なのは、条件に従ってメールを特定のフォルダに保存していくものです(図3)。すぐに処理するべきフォルダと、時間のあるときに読むフォルダを分けておくだけでも、ずいぶん効率が上がります。
普通は、メッセージの着信時にこの振り分け処理を行い、未読の文書があるフォルダにはマークがつくような仕組みになっています。しばらく席を外して戻ってみると、必要な分類が全部終わっているという具合で、まさに秘書が書類を整理しておいてくれるような、便利な世界ですね。
分類から自動処理へ
高機能なメールソフトは、単純な振り分けの他に、転送や返信を自動的に行う機能も備えています。
転送機能を使うと、社内メールをブロバイダのメールボックスに転送して、外出中にアクセスするという芸当が可能になります(図4)。外から社内のメールを読むためには、ゲートウェイを設定するなどそれなりの準備が必要ですが、この方法ならすぐにでもモバイルに応用できますね。条件を適切に設定すれば、急ぎのメールだけを選んで転送することができるので、ダイヤルアップ中に余計なメールばかり読まされてイライラすることもありません。
自動返信機能は、出張や休暇中に「不在のためすぐに返信できない」というメッセージを送るというような使い方をします(図5)。電子メールは、送った方はすぐに返事が来ることを期待していますから、こういう配慮は大切です。もっとも、全てのメールに自動返信すると、メーリングリストなどでは自分の返信が全員に配信され、またそれに返信を送るという極めて危険な「循環メール」が発生してしまいますから、条件設定は注意深く行って下さい。
複数アカウントの使い分け
電子メールを使う範囲が広がり、仕事用とプライベート用とで別のアドレスを持つ人も増えてきました。アカウントを分けておけば、フォルダに分類するよりもっと明確にメールをさばくことができ、無用なトラブルの可能性も小さくなります。
この場合、ひとつのメールソフトで両方のアドレスを管理できると便利です。会社にいても、やはり急いで個人的な連絡をとりたいことはありますよね。こんなときに、いちいち設定パネルを開いて一時的にアドレスを書き替えているのでは不便で仕方がありません。ワンタッチで両方のアドレスを切り替えて送受信のできるメールソフトで、スマートな使い分けを実現しましょう(図6)。
受信者の立場に立ったメッセージ作法
電子メールは普及し始めたばかりのコミニュケーション手段ですから、手紙や電話と比べると、まだまだ標準的なルールが確立しているとは言えません。むしろ、そういう堅苦しさがないのが電子メールの長所の一つとされてきた面もあります。
しかし、大量のメールを受信する人にとっては、ルール無視のメールは迷惑このうえないものです。うっかりそんなメールを送ってしまうと、ビジネス上の信用にも影響しかねません。効果的なはずの電子メールが、逆にマイナスになっている恐れはないでしょうか。
Subjectや本文をどう書くか
メールの受信者はまずSubject(件名)でそのメッセージをすぐ読むべきかどうか判断します。Subjectは内容をきちんと反映したものにするべきです。「お願い」とか「教えて」というあいまいなものではなく、「4/10営業会議開催連絡」など、具体的なものを心がけましょう(図7)。
同様な理由から、本文もできるだけ最初にポイントを書くべきです。図8のように各メッセージの最初の部分を順次表示するスタイルを取っているメールソフトなら、この範囲に必要事項がきちんと書かれていると、スクロールなしで次々にメールをチェックし、素早く処理ができます。
添付書類やHTMLメール
様々なファイルをやり取りするために、ビジネスメールには添付書類の機能が不可欠です(図9)。しかし、添付書類の形式は複数あり、メールソフトが全てに対応しているわけではないことに注意。相手がマックならBinHex、Windows系ならばBase64を使うのが確実です。でも、はじめての相手にメールを送るときは、添付書類は使わないのが無難ですね。
また、簡単な連絡をワープロで作成して添付書類にするのは、処理効率を悪くするだけです。メール本文で、用件を簡潔に伝えるようにしましょう。
最近、いわゆるHTMLメールやリッチテキストメールを巡るトラブルをよく耳にするようになりました。これらを使うとフォントの大きさや色を変えることもでき、確かに表現力は増します(図10)。しかし、このような特殊なメールは、未対応ソフトを使う人にとっては、記号だらけの読みにくいものに過ぎません(図11)。文字を修飾するつもりはなくても、初期設定が「HTMLメール」になっていて、気付かないうちに迷惑メールを送ってしまうケースが増えているので、注意してください(図12)。
メールと何とかは使いよう
「下らないことまでメールするな」という意見と「下らないことはメールで済ませろ」という意見があるそうです。どちらも一理ある説ですが、送り手、受け手それぞれが頭を使うことで、これが両立できるように思います。未読メールが山ほど溜まったり、送ったメールを読んでもらえないのでは、せっかくのコミュニケーション手段が生かせません。電子メールを強力なビジネスツールにするのは、送受信時のちょっとした工夫なのです。
(MacFan 1998-03-01号)
補足
参考:電子メールのマナーとしては以下を参照:
- Netiquette Guidelines (RFC 1855)
- さらに高橋邦夫氏による日本語訳
- 同じく高橋氏のネチケットのページには、様々なネットワーク上のエチケットが紹介されている
返信メールにおける引用
メールソフトの「返信」機能を使って返事を書くとき、相手のメールを全文引用して、最後に少しだけコメントを付けるというようなメッセージはやめておきましょう。「最初にポイントを書く」という原則に反して読みにくいだけでなく、全文引用される方は、送ったメールを茶化されているような印象を受けてしまいます。
返信文の後に元のメッセージを全文くっつけて送るのも、感じが悪いという点は同様です。「返信」機能で引用するのは、必要最小限の部分にとどめて下さい。不要部分を削除する手間を惜しんで(あるいは何も考えないで)、不快感を与えないよう注意するべきです。