ブラームス交響曲第4番の概要

曲の概要

曲名
交響曲第4番 ホ短調 op.98
作曲時期
1884/85
初演
1885-10-25(17?) @ マイニンゲン
楽章構成
  1. Allegro non troppo
    ホ短調 2/2拍子
  2. Andante moderato
    ホ長調 6/8拍子
  3. Allegro giocoso
    ハ長調 2/4拍子
  4. Allegro energico e passionato
    ホ短調 3/4拍子
楽器編成
Fl:2; Ob:2; Cl:2; Fg:2; Cfg:1; Hr:4; Tp:2; Tb:3; Timp; Str
ノート

愁いを含んだ主題が、弱拍からの下降音型でため息をつくように始まり、大きな跳躍で上昇してはまた下がっていく。第1楽章のこの主題の上昇した音をそれぞれオクターブ下げいくと、3度ずつの順次下降でホ短調の和声音階の全ての音が並ぶのは良く知られているとおり(譜例1)。主題の後半はこの逆で、オクターブ下がっては3度の進行で順番に上昇していく。この3度の連続は、ブラ4を構成する大きな柱の一つだ。続く副次主題も、そのリズムとド-シ-ドという半音の上下が、重要な要素として展開されることになる(譜例2)。

第1主題部の最後で付点音符が次第に力と厳しさを増し、リズム的にも音階的にも強い個性を持つ経過句(譜例3)を木管とホルンが奏でて第2主題部に入る。VcとHrによるロ短調の主題を伴奏するのは、この経過句後半のリズムによる3度の下降音程だ。第1主題部最後とよく似た付点のリズムが、今度は暖かく広々とした音に変化して、ロ長調の第2主題後半部に移行していく(フリッシュ教授はこちらを第2主題ととらえている)。長調のテーマはすぐに途切れて、減三和音の霧に包まれて弦がうねるようなアルペジオで上下する(譜例4)。このパターンも、和音を変えながら第1楽章では繰り返し登場し、音楽が一時宙づりになるとでもいうような、ブラ4独特の不思議な感覚を与える要素だ。

この第1楽章は、ブラームスの交響曲のなかでは唯一提示部の繰り返しがない。そのため、ホ短調の主題が戻ってくるところでは一瞬冒頭に戻ったような感じがするのだが、すぐにト短調に転調して、展開部が始まっていることが分かる。展開部では、最初に第1主題とその副次主題が変奏された後、譜例3の第2主題経過句を展開し、ふたたび穏やかに第1主題が変奏される。中間にアルペジオの上下が挟まれるが、これが第2主題経過句と関連していることも見えてきて興味深い。再現部は最初の主題が引き延ばされた形で始まり、すぐにはそれと気付かないように隠されているのは、展開部の入りの裏返しで手が込んでいる。コーダでもう一度、第1主題が変奏されて楽章を締め括る。

第2楽章は同主長調のホ長調に転じるが、冒頭は基音はホでもフリギア旋法(長音階としてみるとハ長調)。最後に伸ばされるミの音にソ#が重なってホ長調が姿を現すという、凝ったつくりだ。冒頭のミ-ミ-ファ-ソ、ミ-ミ-レ-ドという3度の音階の上昇と下降が全体で変奏されていく。楽章最後の6小節は、冒頭のテーマがハ調で戻ってくるものの、和声はホ短調が用いられ、六度、七度が入り交じったハ調からヘ調を経てホ長調に至る、複雑な和声進行で幻惑的な幕切れとなる。

第3楽章は、今度は本当のハ長調。二拍子ではあるものの、アクセントを伴う奔放なリズムや、弱拍と強迫が裏返しになったりするめまぐるしさは、ブラームス自身が呼んでいるとおりスケルツォそのものだ。最初の動機の5小節目に現れるsffの長い音符は、次に爆発するエネルギーをためこむ部分だが、展開部では高音の合いの手の長音符が組み入れられ、コーダに至るとこの掛け合いが第4楽章パッサカリア主題の先取りになっているのは注目に値する(譜例5)。

第4楽章は周知の通りバッハのカンタータ150番の第7曲(Meine age in dem Leide:譜例6)から取られた主題によるパッサカリア(シャコンヌ)の変奏曲だ。ブラームスはビューローに「これでは単純すぎるのでどこかで半音階的に変化させなければ」と語ったと言われるが、実際に4番目に挿入された半音高い音が、和声的に非常に豊かな可能性を導き、主題と30の変奏を精妙で陰影に富んだものにしている。

和声は最初、サブドミナント(イ調)を軸に動いていくが、第4変奏で主音のホ短調が打ち出され、ここではっきりした旋律がVnで歌われるとともに低音にパッサカリア主題が現れる(フリッシュ教授はこの楽章をソナタ形式と考えた場合の提示部がここから始まるという考えを示している)。ホ長調に転じてCl、Obに受け継がれ、TrbとHrによるコラール、そして管楽器のコラールと続く第13~15変奏は穏やかで非常に美しい部分だが、それぞれの終わりは不思議な偽終止となっていて、名残を惜しむかのようだ。

冒頭の主題が戻ってくる第16変奏からは展開部に相当する。再現部とされているのは第24変奏からで、厳しい変奏が息もつかせずに続いていく。ト長調になって木管が三度で重なったdolceの旋律を奏でる第27~28変奏は、心が洗われる思いがするところだ。第29変奏~30変奏で、第1楽章の主題に通じる3度下降が登場し、しかも各小節の頭の音を拾うとパッサカリア主題になっているという見事な融合が示されたのち(譜例7)、ハ調の増五度和音を経てコーダに至る。コーダでは、上昇する主題の断片がシ♭で断ち切られると、これをラ#に読み替えて主音シに導くというせめぎ合いが、ドイツ六と呼ばれるハ調増六度和音の上に繰り返し響いた後、最後にファ#上のドッペルドミナントによってホ短調に解決され、なだれ込むように曲を閉じる。

いくつかの演奏=録音情報

演奏者、録音情報と楽章別演奏時間
指揮者演奏CD番号録音年月1234備考
Bruno WalterBBC s.o.Opus Kura OPK-20231934-0511:4211:545:299:5839:03
Wilhelm FurtwänglerBPOEMI 5-65513-21948-10-2412:4312:196:259:4441:11
John BarbirolliVPODisky BX-7082521967-12-04/1814:0212:457:2611:2445:37
Adrian BoultLondon p.o.Disky BX-705442197212:299:566:2410:1339:02
Leonard BernsteinVPODG 410-084-21981-1013:1712:416:1211:3543:45
Günter WandNDR s.o.BMG 74321-89786-2198511:5210:486:259:2738:32
Roger NorringtonLondon Classical PlayersEMI 5-56118-21995-0512:0810:246:199:5038:41
Charles MackerrasScottish Chabmer O.Telarc CD-80450-C1997-0112:0210:386:0510:0638:51
Nikolaus HarnoncourtBPOTeldec 0630-13136-21997-0412:3011:185:5310:4340:24
Paavo BerglundChamber O. of EuropeOndine ODE630-22000-05-11/1411:3910:126:139:3737:41
Daniel HardingDeutsche Kammerphilharmonie BremenVirgin TOCE-553492000-1111:5210:226:079:4338:04
Roger NorringtonSWR StuttgartLive Supreme LSU1068-2200211:459:596:0010:0937:53
Roger NorringtonLeipzig Gewanthaus o.En Larmes ELS04-6562005-04-10/1111:3210:045:5610:1937:51
Roger NorringtonSWR StuttgartHänssler 93-9032005-07-04/0611:3710:236:2010:2838:48DVD:実測

※録音年月順 (14 records)

※個人的な関心で手元の資料を中心に調べたデータであり、網羅的な情報ではありません。入力ミスなどによる誤りが含まれる可能性があります。年月(日)はISO-8601スタイルで、1806-10は1806年10月を、1806/10は1806~1810年を示します。演奏時間は、の解釈ほか詳しくは内容に関する説明を参照してください(特に古い録音ではリピートが省略されていること多々がありますが、今のところ区別していません)。