人間・コンピュータ双方にわかりやすい表現
- 本日のテーマ
 - WWWの情報を考える出発点
 - HTMLの要素とタグ
 - HTMLの役割とブラウザ
 - 人間が理解しやすい文書
 - 文章の論理構造と見出し
 - パラグラフとトピック
 - ポイントとなる語句をハイライト
 - 文書のタイトルの役割
 - 文責と更新情報
 - 意味構造の視覚的な表現
 - スタイルシート
 - 重要な要素のハイライト
 - 関連する要素のグループ化
 - HTMLで表現できないグループ
 - 繰り返しによる意味の明確化
 - 代表的なスタイルプロパティ
 - ウェブの特質と分かりやすさ
 - ウェブというメディアの特質
 - 利用者が持っていない予備知識
 - 利用者の持っている予備知識
 - 現在位置と移動手段
 - 陥りやすい表現の失敗例
 - コンピュータを使った情報共有
 - 情報をコンピュータに処理させる
 - 文書のメタ情報を提供する
 - Dublin Coreの15要素
 - ウェブの将来:Semantic Webへ
 - 参考文献
 
本日のテーマ
- はじめに:WWW - HTML - ブラウザ
 - 人間が理解しやすい文書とHTML
 - 意味構造を視覚的に表現する
 - ウェブの特質と分かりやすいドキュメント
 - コンピュータを活用した情報共有を目指す
 
WWWの情報を考える出発点
- さまざまな環境の利用者がいること
  
- 環境、機種の違いを超えた情報共有を目指しスタート
 - 文字ブラウザ、音声ブラウザ、携帯端末なども存在
 
 - ユーザー主導型システムであること
  
- 作者が利用者の行動をコントロールすることはできない
 - 同じソフト(ブラウザ)でも、基本文字サイズ、ウィンドウサイズなどは利用者が任意に設定
 
 - HTMLを“処理”するのはコンピュータ
  
- 人間はコンピュータの“処理結果”を読む
 - コンピュータは人間ほど融通が利かない
 - コンピュータは大量の情報を処理できる
 
 
HTMLの要素とタグ
- HTMLの要素
  
- 要素(Element):HTML文書を構成するパーツ
 - 要素タイプ:h1、pなど、HTMLで示す要素の種類
 
 - タグとマーク付け
  
- タグ:文書中のどこがどの要素タイプであるかを示す記号
 - マーク付け:文書の構成要素をタグによって示していくこと
 

 
HTMLの役割とブラウザ
- HTMLは文書の構成要素の“役割”を記述
  
- 見出し、引用などの意味上の役割をマーク付けして示す
    
- 要素をどのように「視覚表現」するかは定義していない
 
 
 - 見出し、引用などの意味上の役割をマーク付けして示す
    
 - ブラウザがHTML文書を解釈して表示
  
- 見出しや引用を、読者が区別できるように画面表示
    
- ブラウザの種類や機種によって表現は異なる
 
 
 
 - 見出しや引用を、読者が区別できるように画面表示
    
 
人間が理解しやすい文書
- 文章の流れ(論理構造)が把握できること
 - ポイントが適切にハイライトされていること
 - 文書の主題がわかるタイトルを持つこと
 - 文責や更新情報が明確になっていること
  

 - HTMLでこれらの「役割」をマークアップ
 
文章の論理構造と見出し
- アウトラインによる構想と見出し
  
- 論理的な文章を書く場合は、アウトラインを使って骨格を構成することが多い
 - アウトラインの項目が文書の見出しになる
 
 - HTMLの見出し要素タイプを使う
  
- 見出しのレベルに応じてh1〜h6を使い分ける
    
- 文字サイズの指定ではなく、文章の骨格を示す要素
 
 
 
 - 見出しのレベルに応じてh1〜h6を使い分ける
    
 
パラグラフとトピック
- 文章の基本単位であるパラグラフ
  
- ひとつのパラグラフではひとつのトピックを扱う
 - パラグラフの要旨を示すトピックセンテンスを意識する
 
 - HTMLではp要素としてマーク付けする
  
- p要素はパラグラフであって、改行や1行空けではない
 

 
ポイントとなる語句をハイライト
- 強調表現
  
- 重要な要素はem要素(emphasis)としてマーク付け。さらに重要度が高いときはstrong要素タイプを使う
 
 - 定義
  
- 重要語句の初出個所などは、dfn要素(definition)としてマーク付け。自動索引生成などにも威力を発揮
 
 - 省略語の説明
  
- HTMLなどの略語は、abbr要素(abbreviation)でマーク付けし、title属性でフルスペルを添えると初心者にも親切
 
 
文書のタイトルの役割
- 読者“候補” に内容を簡明に伝えるもの
  
- 読者は、文書を“開く前”に、タイトルで読む価値があるかどうかを判断する
 - タイトルは内容を凝縮した「マイクロ・コンテンツ」
 
 - title要素は文脈に依存しない内容で
  
- 「授業のページ」というタイトルは、文脈の外では理解不能
 - 「○○大学△△研究室2000年度授業概要」とすれば、検索エンジンのリストやブックマークでも意味が通じる
 

 
文責と更新情報
- どんな文書でも作者と日付は必須
  
- レポートなら表紙に作者、日付を明記。書物なら奥付に
 - 文責のない文書は怪文書、日付のない文書は役立たず
 
 - HTMLではaddress要素でマークアップ
  
- 一連の文書でも最初から順番に読まれるとは限らないので、全てのHTML文書にaddress要素を加える
 - オンライン文書は常に変化する可能性があるので、必ず更新情報を加える。月日だけでなく、年も必ず記載する
 

 
意味構造の視覚的な表現
- スタイルシートで意味と表現を結びつける
 - 重要な要素をハイライトする
 - 関連する要素をグループ化する
 - 繰り返しによる意味の明確化
 
スタイルシート
- HTMLで示した意味構造に視覚表現を付与
  

- スタイル規則で、要素に対応付けて表現方法を指定
   

 
 - スタイル規則で、要素に対応付けて表現方法を指定
   
 - 一般にはCascading Style Sheet (CSS)
  
- 作者だけでなく、ユーザー(読者)やブラウザも指定できる
 - メディアに応じて異なるスタイルシートを設定できる
 
 
重要な要素のハイライト
- 見出しや強調語句をハイライトし、意味を視覚的にはっきりさせる
  
- フォントや色に関するプロパティでコントラストを明確に
 - ブラウザ標準スタイルより効果的なハイライトを設定できる
 - h1 {font-size: 300%; color: navy}
em, strong {color: red} 

 
関連する要素のグループ化
- 意味が関連する項目をグループ化する
  
- 例:グループの間にマージンを設定する
 - h2 {margin-top: 3em}
 

 
HTMLで表現できないグループ
- 章、節、注釈などHTMLにない要素のグループ化にはdiv要素とclass属性を使う
  
- 
    
<p class="note">【注】ただし、...</p>
+
p.note {border: gray thin solid;
padding: 1em; background: #ffc}

 
 - 
    
 
繰り返しによる意味の明確化
- 規則的なデザインで意味が明確になる
  
- スタイルシートで同じ要素に常に同じデザインを適用することで、一貫した規則的な表現が可能
 
 - 共通スタイルシートの利用
  
- サイト全体のスタイルを一貫したものにできる
 - スタイルシートの修正だけで、全体デザインを一挙に変更
 - <link rel="stylesheet" href="common.css" type="text/css">
 
 
代表的なスタイルプロパティ
- テキストのスタイル
  
- 文字色を示すcolor
 - フォントに関するfont-size, font-weight, font-style
 - 行揃えのtext-align, 字下げのtext-indent
 
 - ボックスのスタイル
  
- border, margin, padding
 - 背景色background-color
 
 - サイズの単位
  
- 親要素のサイズの%で指定
 - 1文字の大きさを1emとして、その比率で表現
 
 
ウェブの特質と分かりやすさ
- ウェブというメディアの特質
 - 利用者の予備知識とサイトの全体構造
 - 現在位置と移動手段
 - 陥りやすい失敗例
 
ウェブというメディアの特質
- モニタ画面という2次元の世界で読む
  
- 全体の中での位置付けを把握しにくく、迷子になりやすい
 - フォント、解像度、姿勢などから読むときの負荷が大きい
 - 飛ばし読みをして概要をつかもうとする傾向が強い
 
 - どんな順序で読まれるか分からない
  
- 検索サイトなどから、一連の文書の途中に突然入り込んでくるケースが多い
 - 「前のページ」を前提にすると理解できないことがある
 
 
利用者が持っていない予備知識
- 利用者はサイトについて予備知識がない
  
- 作者はサイト構造を知っているが、利用者は知らない
 - 構造が分からないと欲しい情報を見つけ出せない
    
- 「次のページへ」ばかりでは、読者はいつまでたっても全体像が分からず、フラストレーションがたまる
 
 

 - 常に利用者に全体像を示す
  
- 全体を把握しやすい構造モデルを用いる
 - 最初のページに目次を置く
 - どこからでも目次に戻れるようにする
 
 
利用者の持っている予備知識
- 利用者は“常識”を予備知識として用いる
  
- 商品情報なら、「エリア」ではなく「商品」カテゴリーを探す
    
- 組織の論理でコンテンツを分類すると、利用者は迷子になりやすい
 
 - 常識と異なる使い方を強要すると、混乱する
    
- ボタン型のアイコン、下線付きのテキストは常識ではリンク
 
 

 - 商品情報なら、「エリア」ではなく「商品」カテゴリーを探す
    
 
現在位置と移動手段
- 地図には現在位置が不可欠
  
- 各ページでそのサイト内での現在位置情報を提供する
 - 途中から入ってきても、位置付けを把握しやすい配慮を
 

 - 一貫したナビゲーション手段を提供する
  
- 必ず目次(トップページ)に戻る手段を用意する
 - 一貫したナビゲーション=使いやすさ+統一感
 
 
陥りやすい表現の失敗例
- リンクのラベルが理解しにくい
  
- 「次へ」「前へ」では、そのページを開かないと内容が不明
 - 「第2章:視覚的な意味表現へ」と具体的なラベルを
 
 - 一貫性がない
  
- 目次へのリンクは「トップへ」? 「メインページへ」?
 - 「トップへ」のリンク先は論文の目次? サイトの表紙?
 - 目次に戻るリンクの場所はページの先頭? 最後?
 
 - 特定の環境でしか意味がない表現
  
- 「ここをクリック」「赤い文字に注意」
 - 画面サイズや文字サイズを固定してしまう
 
 
コンピュータを使った情報共有
- 意味を明確にマーク付けしてコンピュータに処理させる
 - 文書のメタ情報を提供する
 - 意味のネットワークを目指すSemantic Web
 
情報をコンピュータに処理させる
- 大量の文書から情報を自動抽出する
  
- 見出しを適切にマーク付けすると、目次が自動生成できる
 - dfn要素をうまく使うと、索引が自動生成できる
 - class="abstract"などのルールで抄録を生成する
 
 - HTMLが不正確だと自動処理は破綻
  
- 文字サイズのためにh1要素を使うと目次として機能しない
    
- 標準に従えば、ルールを新たに作らずに世界規模で自動処理が実現
 
 - 組織内でルールを守って活用することからスタート
 
 - 文字サイズのためにh1要素を使うと目次として機能しない
    
 
文書のメタ情報を提供する
- メタ情報=情報に関する情報
  
- HTMLのhead要素は、画面表示されない代わりに文書に関する情報をコンピュータに示す
 - address要素もメタ情報の一種
 
 - 文書の書誌情報などを効率的に示す
  
- 作者などの情報を機械的に処理できるよう、Dublin Coreが15種類の書誌情報要素を定義
 - <link rel="schema.DC" href="http://purl.org/DC/elements/1.1/">
<meta name="DC.Title" content="ユニバーサルHTML/XHTML">
<meta name="DC.Creator" content="神崎正英"> 
 
Dublin Coreの15要素
| DC要素タイプ | 要素タイプの役割 | 
|---|---|
| Title | 文書のタイトルで、HTMLのtitle要素タイプと同等 | 
| Creator | 文書の作者 | 
| Subject | 文書の内容を示すキーワードやキーになるフレーズ | 
| Description | 文書の概要説明。要約、目次など、記述の方法は自由 | 
| Publisher | このリソースを提供している母体。作者や出版社 | 
| Contributor | 文書の内容に協力、貢献している人や団体 | 
| Date | 一般には文書の作成日。 | 
| Type | 文書のタイプ。text, imageなどがある | 
| Format | 文書のフォーマット。MIMEタイプや文書のサイズを記述 | 
| Identifier | 文書を識別する手段。URIやISBN | 
| Source | 文書が別のソースから取られた場合、そのソースへの参照 | 
| Language | 文書の記述されている言語 | 
| Relation | 関連する文書への参照 | 
| Coverage | 文書の対象範囲。地域、時代などの分類 | 
| Rights | 文書の著作権表示 | 
ウェブの将来:Semantic Webへ
- HTMLの可能性と限界
  
- 誰でも簡単に情報発信ができるよう、シンプルな構成で省略などの自由度が高い → 驚異的な普及
 - 精密な情報の記述が難しく、使い方も不統一
 
 - Semantic Web:将来の自動処理
  
- 厳密で拡張性のあるXMLを使って意味を記述
 - 異なるシステム間で、事前の取り決めがなくても自動的に要素の意味を推論していく
 - RDFというリソース記述の方法と、電子署名の組み合わせを基盤とする
 
 
参考文献
- 誰のためのデザイン?
  
- Norman, Donald A. (1988):野島久雄訳,新曜社(1990)
 
 - ノンデザイナーズ・デザインブック
  
- Williams,Robin (1994):吉川典秀訳,毎日コミュニケーションズ (1998)
 
 - ユニバーサルHTML/XHTML
  
- 神崎正英(2000),毎日コミュニケーションズ
 
 


