ハードウェアを選ぶ

全体設計が固まったら、必要なハードウェアを選んでいくことになります。特に周辺機器は選択肢が広いので、目的と要件を確認しながら、自分のオフィスにふさわしいものを見つけていきましょう。

設計から機種の選択へ

前号では、新しいスモールオフィスにネットワーク・システムを導入するために、その目的を定義するところからはじめて、目的に沿った要件の洗い出し、システムの全体設計というところまで進めました。その結果、コミュニケーション、情報の収集や共有、そして営業活動を支援するツールの導入を主たる目的として掲げ、無理に最初から一人一台を目指すことはせず、メンテナンスのしやすいシステムを構築するという方針を定めたのでした。

この指針に従って、サーバーのOSはUNIXを使い(クライアントはもちろんMac)、社内は10Base-TのEthernetで結び、インターネットにはOCNエコノミーを利用するという骨格を組み立てました。今号では、具体的なハードウェアを選定しながら、これに肉付けをしていきます。

UNIXサーバー

UNIXのサーバーというと、人気のWebサイトを支えるような高性能なものが頭に浮かぶかもしれません。確かにUNIXは大規模なネットワークを運営するOSとして信頼度が高く、高性能なワークステーション上で広く利用されています。しかし一方で、UNIXは様々なプラットフォームに移植されており、その気になればマッキントッシュ上で動かすことも可能です。それこそMobileGearのようなPDAでも動作してしまうUNIXは、大から小まで、幅広い用途に対応できる万能のOSと言えます。

今回のオフィスは小規模なものですから、高価なワークステーションを用意するほどではありません。マッキントッシュ上で動くUNIXはMachTen、MacBSD、MkLinuxなどがあります(図1)。これらを使うのも面白いのですが、外部にサポートを依頼することを考えると、やはり利用者が多く情報も豊富なPC UNIXの方が安心でしょう。

フリーのPC用UNIXとしては、LinuxとFreeBSDが有名です。両者ともインターネット上で様々な情報が提供されており、最近では解説書も増えてきたので、どちらを選んでもまず間違いはありません。今回は、サーバーのインストールの依頼先と相談した結果、Linuxを採用することにしました。

サーバーマシンの選択

意外なことにUNIXはあまりマシンのパワーを必要としません。かなり古いDOS/V機でも十分に働いてくれます(MacBSDも68Kマシンで動きます)。その意味では中古だって構わない位なのですが、保証やサポートを考慮し、最もベーシックなクラスのDOS/V機を新規購入することにします。最初に無理してコストを削っても、結局あとでトラブルになったら余計に費用がかかることになるかも知れないのは、前号でも述べたとおりです。

DOS/V機の選択肢は山ほどありますから、いろいろWeb上などで情報を調べ、比較してみると良いでしょう(図2)。今回はかなり余裕を見て、Pentium 200MHz、ハードディスク10.6GBにRAMを64MB積んだ機種を選びました。このクラスでも、定価ベースで20万円台前半で無理なく入手できます。

クライアントのマッキントッシュ

さて、それではメンバー用のマッキントッシュ選びです。前号でも書いたとおり、今回の企画では、年配の社長には無理してコンピュータを用意しません。導入するマシンは、常勤スタッフと事務担当用にそれぞれ1台、それに非常勤のスタッフ用を合わせて合計3台です。

毎日向かい合って使うマシンの選択は、単に性能や価格だけでは決められません。これらが占めるスペースや操作性は、日々の仕事にいろいろ影響を与えます。17インチモニタが手ごろな価格になったからと喜んで購入しても、机が小さければかえって作業がしにくくなってしまうでしょう。無理な置き方をすると、目が疲れたり姿勢が悪くなったりして、不健康な環境を作ってしまいます。予算が許せば、スペースを圧迫せず、普通の机でも正面におくことができる液晶モニタも検討したいところです。

2タイプのMacintoshを選ぶ

新会社の仕事は映像に関係したものが多いため、1台は簡単な動画編集を楽にこなせるものにしたいというリクエストがありました。そこで、PowerMac G3 DT 266を導入し、これを非常勤スタッフ用兼グラフィックマシンとします(図3)。モニタも17インチにして、ガンガン使う構えです。

残りの2台は企画書を作成したり、ワープロやメールといったごく普通の事務作業が中心ですから、できるだけコストパフォーマンスの良いものを選びたいところ。PowerMac 7300を候補にしていたのですが、すでにメーカー在庫なしとのことで、結局モニタ一体型のPowerMac 5500を採用することにしました(図4)。

環境面を考えると、液晶モニタを使いたかったというのが本音です。しかし、セパレート型の本体に手ごろな機種がなくなってしまったため、これは断念せざるを得ませんでした。G3機と液晶モニタを組み合わせると、市場価格でも一セット50万円近くかかることになり、予算をオーバーしてしまうのです。

このところマッキントッシュのラインナップから、オフィス向けのエントリマシンがすぐに姿を消してしまうのは気になるところです。結局メンバー用マシンは、3台合わせて約90万円になりました。

LAN用の機器

ネットワークを構築するには、社内LANのための機器と、インターネットに接続するための機器を揃えなければなりません。

LANに必要なのは、マッキントッシュ本体をネットワークに接続するためのEthernetアダプタ、それぞれをつなぐケーブル、そしてケーブルを集約して相互にデータが行き来できるようにするハブ(HUB、集線装置)の3つです。

Ethernetアダプタは、G3には内蔵されているので、5500用に拡張カードを2枚用意します(各1万円強)。接続には、10Base-T用の電話線に似たケーブルを使います(図5)。マシンが近くに並んでいれば、最初から両端にコネクタがついたものを買ってきてつなげば簡単です。ある程度の広さがあるオフィスの場合は、床の配線を隠す処理が必要ですから、レイアウト業者さんに一緒に設置してもらうとよいでしょう。

ハブは、接続口(ポート)の数や機能によってさまざまな種類があります。小さなオフィスにそれほど高性能なものは必要ありませんが、拡張性を考えて、ポートは余裕をみておきたいものです。今回は12ポートのハブを使うことにしました(図6)。このクラスなら1〜2万円で入手できます。

インターネットに繋ぐ装置

OCNエコノミーでインターネットに接続するには、DSUとルーターが必要になります。DSUはデジタル回線を利用する装置で、ISDNの接続でもお馴染みです。ルーターはインターネットという広大な世界の中で、データが適切な道順(ルート)で正しく目的地にたどりつけるようにする役割を果たします。

ルーターは、以前は値段も高く設定も複雑な機器でしたが、最近ではMN128-SOHOのような機種が登場して、価格も扱いもぐっと身近になりました。DSU内蔵タイプなら、装置をいくつも並べて接続する必要もありません。今回はYAMAHAのRT-80iを使うことにします(図7)。MN128-SOHO同様、実売5万円台で、ほとんどの設定がブラウザ経由で可能です。

プリンタを考える

オフィス用プリンタの選択は、どのような文書をどれくらい印刷するかで違ってきます。印刷量が多いときは、プリンタのスピードが仕事の能率に直結します。また、作成する書類に応じて、A4サイズのみでよいのか、もっと大きな用紙に対応する必要があるのかも考えておかなければなりません。

プレゼンテーションが多いとなると、カラー印刷をどうするかも考えどころでしょう。カラーレーザープリンタも40万円を切る製品が登場してきましたが、まだ小規模オフィスには高級品です。インクジェットのカラープリンタと普及型のレーザープリンタを組み合わせる方が、むしろコストは安く済みます。

もうひとつ、プリンタがネットワークに対応しているかどうかも確認しておきましょう。LocalTalkのみ対応のプリンタだと、EthernetのLANで利用するためには拡張ボードを追加したり、EtherPrintなどの装置を用意しなければなりません。

検討の結果、ここではネットワーク対応の小型レーザプリンタと、インクジェットのカラープリンタを導入することにしました(図8、9)。プレゼンテーションの時期には一度にいろいろな資料を作成して印刷することが予想されるため、2台を使い分ければ効率がよいということも理由の一つです。両方合わせて20万円強ですから、頻繁に印刷するオフィスなら妥当な線でしょう。

スキャナやMOドライブなど

これ以外に購入することにしたのは、スキャナとMOドライブ(図10、11)。企画書に説得力を持たせるため、画像を取り込んだり、グラフィックを外注してMOで受け渡したりすることが考えられるからです。

こうして周辺機器が増えていくと、スペースの確保も大変になってきます。コンピュータ関連だけでなく、コピーやFAXも設置するのですから、狭いところに機械が密集することになりますね。こういうときは、1台でコピー、FAX、スキャナを兼ねるプリンタも検討の価値があります。20万円程度で入手できる製品もあり、魅力的な選択肢ですが、利用が集中して必要なときに必要な機能が使えないのでは困ってしまいますから、オフィスの規模に合わせて考えましょう。

ほかにも周辺機器としてはデジタルカメラなどが候補になりそうですが、スタート時点では見送りとしました。以上サーバーからスキャナまで、全部合わせて約160万円。5年間のリースにして、月額3〜4万円の経費ということになります(図12)。

OCNをどうする?

前号で、OCNエコノミーが会社の登記前には申し込めないことが判明してその対応が宿題となっていました。全くインターネットが使えないのでは困るので、つなぎとしてOCNのダイヤルアップを申し込むことにします。OCNエコノミーの手続きが完了したらすぐにそちらに切り替えるわけです。今回購入するYAMAHA RT80iはダイヤルアップ・ルーターとしても使えるので、この間もモデムは必要なく、全てのマッキントッシュからインターネットに簡単に接続できます。

これでハードウェアの準備が整いました。発注して納品されたら、ネットワークの設定に入ります。おっと、その前に、必要なソフトを調達しなければいけませんね。次号はオフィス用ソフトの選定です。

(MacFan 1998-05-01号)