昨日(3/20)はアンサンブル花火の第7回演奏会。編成の面からも難易度の面からも、滅多に体験できない曲を揃えての演奏会は、いつもに増してスリリングで、充実したものだった。
最初がエルガーの「弦楽のためのセレナード」というのは、自分で推薦したから言うわけではないが、いい選曲だ。これは第4回演奏会で第2楽章だけをアンコールとしてとりあげており、ぜひ全曲を演奏したかったもの。優美で少しメランコリックで、エルガーの気品に満ちあふれている。弦楽アンサンブルの中で、曲のバスをしっかりと支えるのは気持ちの良いものだ。
2曲目はヒンデミット「弦楽と金管のための協奏音楽」。スコアの解説によると、ヒンデミットのKonzertmusikは、“弦楽群と金管群が協奏的にかけあっていく”という面と、“従来型の演奏会の終焉を予言して映画音楽やアマチュア用音楽などを書いていたヒンデミットがあえて「演奏会の音楽」という表題で新しいジャンルとしようと考えた”面などがあるという。確かに技巧的で「協奏」のテクニックと華麗さを求められていると同時に、不思議な機能的断片のパッチワークという印象もあって、ヒンデミットやはりシュールだなという感じだ。金管がばっちり決まると、とてつもなくカッコイイ曲でもある。
最後のバルトーク「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」は、まさかアマチュアの分際で演奏するとは思っていなかったとんでもない曲。2年前の花火の飲み会の席で、O氏が「弦チェレを来年やりたい」というので、「再来年(つまり今年)ならバルトーク没後60年だから、それまで待てば」と冗談で言っていたら、本当に実現してしまったのだった。それも打楽器をはじめとして一流のソリストを揃え、低予算をやりくりしての実現だから、関係各位の努力には本当に頭が下がる。
曲は、恐るべき緻密さでつくられた大傑作。せっかくなので、自筆譜を図書館で調べてみたり、内外の研究書を借り出して読んだりして、少しでも構造を理解しようとしてみたが、勉強すればするほどその徹底ぶりには驚くばかり。関連して弦楽四重奏のスコアなども読んでみると、いやものすごいことになっている。しばらくバルトーク漬けになりそうだ。
演奏する立場からすると、左右2群に分かれた弦楽器というのは非常にやっかいで、ホールで中央に打楽器やピアノ、ハープ、チェレスタが陣取ると反対側の音は微かにしか聞こえてこない。しかも、前日のリハーサルではいろいろ条件が悪く、同じサイドの他の楽器もほとんど聞こえずパニックに陥りそうになった。本番では、さいわい音はずっとよく聞こえて、なかなかいい演奏になったと思うのだが、それにしても最後までスリル満点ではあった。
アンコールには、これまた珍しいジェラルド・フィンジ(Gerald Finzi, 1901-56)の「ピアノと弦楽オーケストラのためのエクローグ」(Eclogue for Piano and String Orchestra, Op.10)という曲を演奏した。フィンジはRVWらの影響を受けた英国の作曲家で、ピアノ協奏曲を構想しながら緩徐楽章だけ作曲して残したというのがこのエクローグだそうだ。ロマンティックな、映画音楽みたいな曲で、お客様にもまずまず好評だった模様(こういうのをアンコールにすると、ピアノがメインの演奏会みたいになっちゃうんだけどね)。どうやら、日本初演ではないかということらしい。
何だかんだいって、これだけの曲をしっかりやり遂げたメンバーは立派で、やはり花火は楽しいんである。