猛烈なテンポの第九だった。練習よりも更に速い。最後のプレストはテンポに追いつけずに消化不良になってしまったが、それはともかく、今までになく充実した第九になった。直前学習で、歌詞の内容や強調されている語句を掘り下げてみて、自分なりにベートーベンのプログラムを構築して弾いたことで、少し表現するべきことも分かったような気がする(研究ノート:第九の歌詞と音楽)。
ボッセさんは、練習のたびに弦楽器に基本的なボウイングのトレーニングをやらせたり、ゲネプロでバリトンソロに何度も何度も歌いなおしさせたり、今までに見たことのない練習で得るところが大きかった。レセプションで「惰性で演奏してはいけない」という意味のことを言っていたのは、よく分かる。
4楽章のベースのレチタティーヴォは、マルケヴィッチ風に61小節目の3,4番目の音(C-C)を削って演奏。金子さんの本でも指摘されているように、自筆譜に削除したような痕跡があるというやつだが、これはどうも、音楽的にしっくり来なかった。しかし、インテンポで弾くのは非常に清々しい。