クイケンとマッケラスによるオペラの第18集と、舞曲を集めた第19集。

第18集:ドン・ジョヴァンニ+後宮からの誘拐
「ドン・ジョヴァンニ」はコシに続きシギスヴァルト・クイケン指揮ラ・プティット・バンドで、1995-10-20にスペインのサンチャゴ・デ・コンポステラにおけるライブ録音。ノリントン盤ほどのインパクトはないが、期待に違わぬきびきびとした演奏だ。地獄落ちの場面の迫力もまずまず。「後宮」は魔笛と同じくマッケラス指揮スコットランド室内o.で1999-03-15/05-26の録音。トルコ風要素を強調して、打楽器がかなり派手に鳴る。録音はホールトーンが程良く、オーケストラもなかなかバランスがよい。これは「トルコのモーツァルト」という映画のサウンドトラックにも使われたのだとか。ブロンデ役のランカトールがビブラートかけ過ぎなのがいまいち(もっとも、これはたいていのソプラノでよくあること)。
第19集:舞曲集
メヌエット、コントルダンス、ドイツ舞曲といった200曲近くの小品を6枚のCDにまとめたもので、タラス・クリサ(Taras Krysa)指揮スロヴァキア・シンフォニエッタによる2002-05の録音。このシリーズの新録音にしては、現代楽器を用いたビブラート多用型の、明るく元気ではあるがちょっと安直な演奏だ(特にメヌエット)。ブックレットによれば35人編成の「モーツァルト・スタイル」オーケストラだというのだが…。モーツァルトの舞曲を網羅した録音は、これまでのところ1960年代のボスコフスキーによるものぐらいしか存在しないはず。その後、新全集が刊行され、楽器編成などの研究も進んでいるのだから、そういった成果を反映した新しい全集をつくるチャンスだったのに、残念。興味深い曲がたくさんあるので、この価格なら持っていて損はないと思うけれど。

〔追記〕「トルコのモーツァルト」(Mozart in Turkey, Director: Mick Csáky, Elijah Moshinsky; UK; 90 min)は1999制作のドキュメンタリー映画で、各地の音楽祭などで結構評価されたらしい。2000年のIBC Golden Rembrandt賞の紹介から:

Produced by the leading British independent, Antelope, for the BBC, it presents a highly dramatic performance of Mozart's opera The Abduction from the Harem within the spectacular setting of the Topkapi Palace in Istanbul at the same time as documenting the entire creative process.

()