ふとCDのジャケットに目を落としてみると、"Piano Pleyel 1836"の文字。「プレイエル? どこかで聞いた名前…あ、エラールよりショパンが気に入っていたというあのピアノか」。というわけで、ミシェル・ベグネル (Michèle Boegner) のショパン・ノクターン集を買ってきた。ノクターンのCDをかけるなんて、何年ぶりだろう。
プレイエルの音色は、可憐というか、粒がはっきりして軽やか。ベグネルの演奏とあいまって清々しい感じのノクターンになっている。ライナーノートによれば、これはショパン本人が弾いた可能性のある楽器らしい。160年前のフェルト、弦、アクション、ハンマーがそのまま使われているそうだから、まさに当時の音というわけだ。
プレイエルのピアノは、ショパンの好むクリアな音を生み出すが、シングルアクションで鍵盤をいったん完全に元に戻さないと音を続けて弾くことができず、扱いが難しいのだそうだ。ショパンは、疲れているときはエラールを弾き、体調がいいときはプレイエルを好んで弾くと言っていたという。この聴き比べは、とてもリッチな気分で楽しい。