だいたい編曲ものなんてろくな演奏でないと相場が決まっているので、ちっとも期待していなかったのだが、これはちょっと違った。9/4のNHK-FMベスト・オブ・クラシックで放送された「須川展也(Sax)リサイタル」(演奏会は2001年7月8日 東京・紀尾井ホール)の中で演奏されていた、フランクのソナタ。この曲を編曲した演奏はやまほどあるものの、(どれとは言わないが)ほとんが聴くに耐えない。ところが須川の演奏は、普段はながら聴きのこの番組を、思わずスピーカーの前にまじめに座って鑑賞させるだけの力があった。
演奏もさることながら、これはサキソフォンの音色が意外にこういったフランスの弦楽器の曲に適しているということなのかも知れない。サックスの音は「官能的」と皮肉混じりに表現され、あまりクラシック音楽には馴染まないと思われているわけだが、ppからffまでの幅の広さ、艶と張りのある響き、自在にコントロールできるニュアンスが、フランクの気怠いような恥じらいを含んだような旋律に実によくマッチしていた。第一楽章の冒頭なんて、しびれますよ。一歩間違えれば、下品になりかねない要素も大いに孕んでいるから、この成果は須川展也の技術によるところが大きいのは確かにしても、“編曲もの”も捨てたものではないと思わせた。
続く吉松隆「ファジーバード・ソナタ」などのオリジナル曲の演奏が素晴らしかったのは、言うまでもない。
〔追記〕その後、須川展也の別のリサイタルの放送や編曲集のCDを聴く機会があったが、面白い乗りで楽しめる曲もあるものの、全体としては今ひとつのものが多かった。フランクの場合は、不意打ちを食らって驚いたのか。