予約していた新シューベルト全集によるベーレンライター版の交響曲スコアが届いた。今年の4月頃には演奏用の楽譜が揃って、いくつかのオーケストラが「ベーレンライター版グレート」を取り上げていたが、ようやくスタディスコアも入手できるようになったもの。校訂者は、1~3番がアーノルド・フェイル(Arnold Feil)とクリスタ・ランドン(Christa Landon)、4~6番がフェイルとダグラス・ウッドフル=ハリス(Douglas Woodfull-Harris)、7番(未完成)8番(グレート)がウェルナー・アーデルホルト(Werner Adelhold:発音不詳)。
旧版とのはっきりした違いは、金子さんの本をはじめ各地で指摘されているとおり、スタカートの点と楔の使い分けや、デクレシェンド/アクセントの解釈。やはり「グレート」の冒頭は4/4ではなく2/2になっており、最後はデクレッシェンドではなくアクセントになっていた。インマゼールが1996/97に録音した全集はこの版によるものと宣伝されていたが、彼が「グレート」の第3楽章112小節目に挿入して我々を驚かせた4つの小節は、ベーレンライター版のスコアには見あたらない。スコアの序文によれば、自筆譜スコアの成立過程には(1)主要楽器のパートを書き込んだ段階(1、2楽章と3楽章の大部分、4楽章の1/3は識別できる);(2)残るパートを書き込み、かなりのセクションに修正を施した段階(一部では五線紙を差し替え);(3)鉛筆で変更や追加を書き加えていった段階;の少なくとも3つのステージがあるということで、インマゼールが新全集版の編集とは異なる独自の視点で再構成したものなのだろう。
ところで、この全集版の広告にはノリントンが推薦の言葉を寄せていて、I shall always use this edition when performing these famous symphonies.
と述べている。この日本語版広告が「これらの有名な交響曲を演奏する際には、常にこのエディションを使わなければならないだろう」と主語を略しているのは、誤解を与えるように思うが。