NHK FMで放送していた2001年9月12日の戸田弥生バイオリンリサイタルは、バッハと一柳慧、ジョン・ケージという組み合わせだったが、ケージの「トゥー・フォー」という曲が面白かった。本来は笙とバイオリンで演奏するところを、この日はシュテファン・フッソングのアコーディオンとのデュオで。これが、驚くほど効果的だったのだ。時間が止まってしまうような、夢幻とも荒涼としたともいえる音楽を、バイオリンとアコーディオンの掛け合いが、不思議な緊張感で奏でていた。でも、これを演奏会場で聴いたら、長く感じたろうな。
最初と最後に置かれた(たぶんメインの曲だった)バッハの無伴奏ソナタ1番と2番は、いろいろ考えて構成されているとは思うものの、微妙にしっくりこない。で、一柳慧の「展望」を聴いたら、バッハのときと同じ音が鳴っているのだ。この一柳のほうはよく弾き込まれた演奏だったが、バッハには、どうも似合わないぞという感じ。一柳とバッハを同じ次元で弾くというのなら、それも一つの見識ではあるけれど、音楽の組み立てからからすると、そういう狙いでもなさそう。放送の余り時間でかけられたCDのシャコンヌも、音に関しては同じ印象を受けた。