オリジナル=ピリオド楽器楽器によるチャイコフスキーは、ノリントンが1998年に「チャイコフスキー体験」で悲愴やピアノ協奏曲、弦楽セレナーデなどを取り上げて素晴らしい演奏を聴かせてくれたが、残念ながらCDにはなっていない。ここに、インマゼールとアニマ・エテルナによる2000年の録音で交響曲第4番と《くるみ割り人形》組曲のCDが登場した。
アニマ・エテルナは、弦が8-8-6-5-5、木管が2.1-2.1-2.1-2(.1はPicc, EHr, BCl)、金管が4-2-3-1、それに打楽器が1+3とHarpという編成(合計58名)。ビブラートなしのガット弦、木のフルート、オリジナルのチェレスタといった楽器を用いた小編成オーケストラの生み出すチャイコフスキーは、リリカルで繊細だ。いわゆる「ロシアもの」の大音響バリバリの演奏の対極で、交響曲4番が実に精緻に響く。第2楽章の弦楽器の和音や、第3楽章のピチカートがどれほど異なった印象になることか。
くるみ割りは、これまた楽しい。木のフルートが奏でる葦笛の踊りとか、ビブラートなしの花のワルツは、想像以上に新鮮だ。チェレスタの音色も一聴に値する。しかし、これを聴くとますますノリントン+OAEの「チャイコフスキー体験」をCD化して欲しいと思ってしまうのだ。
昨年出たアニマ・エテルナによるJ.シュトラウスのCDは、まあまあ面白いという程度だったが(もちろん、どこぞの“ニュー・イヤー・コンサート”よりは遙かに良い)、今回のチャイコフスキーを聴くと今後にも期待が持てそうな気がする。昨年9月にはR.コルサコフの《シェヘラザード》を演奏したようなので、これもそのうちCDとして発売されるのだろうか。