Planet masaka played list
Naxos Music Libraryで聴いてPlanet masakaにメモした最近の曲と2008年からの月別リストです。
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ジュリオ・グアルティエーリ:
アローニ
(ロベルト・ファブリチアーニ)
これはFl独奏で、息音、孔音、半分口笛など特殊奏法ばかり重ねて音の変化を遊ぶというのか。「ソナタ」は声、「リップル」は増強Fg、「フロウ」はPf、「ロウ」はギター、「エブリエタス」は打+声、「アイテム」はAccrd、「それを打て」はプリペアドPfと、それぞれ独奏のための徹底的な音の戯れで多くはリズミック。これもある種の音楽。Stradivarius STR37306 () -
ミゲル・クロソーリ:
私は森
(ユーラ・エレナ・シェディテ+カラム・ビルダー+イーダ・ネアビュ+ヨハネス・ネーステシェー他)
ASax+TSax+Vc+Cb+電子音+女声で、ハーモニクスのような掠れた音から鋸音まで幅のある長音に自然音を擬した効果を重ねた上にしっとりした歌が乗る。「私は大洋」は海底から湧き上がるような深い低音がゆっくり上昇しながらきらきらと発散する。アンビエントぽい感じではあるが、それぞれ森林伐採、海洋汚染のデータを用いて音像化しているのだという。Kairos 0022047KAI () -
ゲプハルト・ウルマン:
即興曲とインターレーション
(ヴィタリー・キヤニッツァ)
ジャズSax奏者でもあるウルマンが12の即興の間にプリペアドPfで弾く4つのinteration(間奏=interludeと苛立ち=irritationの合成造語だそうだ)を置いた曲だが、順序を変えたり減らしても良いとされていて、この盤では派手目の即興曲8番から始めて同11番だけ割愛されている。インターレーションはまずまず面白いが、即興曲は玉石混交というかあまりとんがったところはない。Kairos 0022041KAI () -
ガブリエル・イラーニ:
弦楽四重奏曲第4番
(ソナー四重奏団)
微分音を交えながらグリッサンドでくねったり絡み合ったりする5楽章、副題は《…内側、織物…》。「同第5番」は副題《…段階、近似値…》でやはり不協和音が支配する5楽章だがより落差が大きい。「愛の詩」はツェランの詩を歌うSopを加えて深々と。「3つの音風景」は笙の音の広がりの中にSQが溶け込む。Kairos 0022025KAI () -
シュトックハウゼン:
マントラ
(グラウシューマッハー・ピアノ・デュオ)
1970年の大阪万博への来日時に作られた(本人弁)、13音の「式」を反復しながら12の拡張と13x12の変調を重ねる13のサイクルが構成されそれぞれで「式」の1音が中心となる。と言われても聴いて分かるわけでもないが、奏者はPfの上に置かれた打も奏しながら、音はリング変調されてプリペアドのようになる。音響として南西ドイツ放送実験スタジオもクレジット。 NEOS12320 () -
ヒナステラ:
プネーニャ第2番
(マティアス・バルザート)
“パウル・ザッハーへのオマージュ”と題されたVc独奏曲で、微分音も含めながら切々と歌う旋律と複雑な技法の融合。第2楽章はアルゼンチンの舞曲かな。パスカル・デュサパンの「アンシザ」は厳しい低音域から広がる。マーティン・ロッジ「オマヌ」はマオリの鳥の歌。シュー・タン「黄鶴楼」はしみじみとした伝統。さらにジョージ・クラム、ウジェーヌ・イザイ、ジェルジ・リゲティの「チェロ・ソナタ」はいずれも無伴奏の名曲。Atoll ACD242 () -
グレアム・フィトキン:
緩める
(サイモン・ハラーム+サッコーニ四重奏団)
SSax+SQでクネクネと軟体動物のような弦にゆっくりした旋律を被せる。「ゆっくり」は2Org+SQで一部リズミックだがちょっとアンビエント。「蒸溜」は打+SQでPizzにGlockが重なったり。「触れる」はPf+SQでポップなというかイージー系。「再帰」はHp+SQでPizzの始まりは面白いかと思わせるがやはりイージー系になっていく。ところどころ面白そうなのに、途中から手抜きかと思うようなのばかりなのはなぜ。Signum Classics SIGCD792 () -
ヘラルド・ディリエ:
ノクチュアリー・デュオ
(ディエゴ・モンテス+ジョアンナ・ローズ)
BCl+Gambという珍しい組み合わせで深々とした流れからジャズめいた動きまでゆったり聴かせる。「行きの遊歩道」はBCl、「帰りの遊歩道」はGambとそれぞれ電子楽器を組み合わせ通りのさまざまな情景音をバックにポツポツと語る。「青銅は水の中へ」はGamb独奏が広い音域と技巧を用いて、「手巻きのフェルミオン」はBCl独奏が微かにジャジーでこれも幅広い運動。Ravello Records RR8104 () -
リチャード・キャメロン=ウルフ:
異端者
(マルク・ウォルフ)
ギターを奏でながら語り時に打をも用いる“マイクロ・オペラ”だそうでスタイリッシュかつ儚いため息の音楽。「屈折した時間」はVc+Pfによるしなやかで厳しい瞑想。「精神の蜃気楼」はギター四重奏でオクターブの48等分という微分が駆使される。「息もできない」から第1曲「おお、吟遊詩人よ」はSop+Guit、「麻酔」は4Vc、「キリエ(マントラ)IV」はFl+Guit。「孤独な鳩(真実の話)」はTSax、「情熱の幾何学」はSop+Fl+Vc+Guitによる“マイクロ・オペラ”。どれもなかなかのもの。New Focus Recordings FCR406 () -
ジェラール・グリゼー:
2声のためのソロ
(オリヴィエ・ヴィヴァレ+ミカエル・ルドルフソン)
Cl+Trbがほとんど何の楽器か分からない咆哮で始まり静かな完全五度を作るかと思えば離れ離れに奇声を発したりする。以下Trb独奏で、ベリオの「セクエンツァV」は声やミュートも駆使。エロアイン・ロヴィス・ヒュープナー「4つの短い小品」は息音や苦しげなうめき、ベルンハルト・ガンダー「真鍮1」は高音と低音で二度の交替や教則本のような忙しい動き。コンスタンティア・グルズィ「邂逅」は低い音から徐々に上昇していくテープを伴いため息や深々とした朗唱。 NEOS12406 () -
久石譲:
ヴィオラ・サガ
(アントワン・タメスティ+ウィーン響)
Va独奏からしばらくは味わいがあるがリズムが前面に出るにつれて陳腐に。「交響曲第2番」はリズムの遊びを打ち出すも聴いていられなくなる。DG 00602465001785 () -
スコット・ウォルシュレーガー:
シークレット・マシン第7番
(ミランダ・クックソン)
スコラダトゥーラでG線をEにしてメタルミュートをつけるVn独奏で金属的で鋭ながら儚い重音やトレモロの最低音とA♭から徐々に広がっていく。「ヴィオラリン」はVn+Va(タイトルもこれ)で激しいトレモロやハーモニクスから特殊な揺らし弓などを用いて複雑な音を紡いでいく2部構成。「息の間」はTrb+プリペアドPfでバブルミュートのペダル音とか。「ともあれ、スレッドの行くところ、すべてうまくいく」はSop+Pfだけれどハーモニカを吹いたりしつつ揺らめく。New Focus Recordings FCR408 () -
桑原ゆう:
唄と陀羅尼
(マルコ・フージ)
独奏Vnが重音グリッサンドでくねりながら声明を語るような唄(Baiと読むらしい)と手裏剣のような陀羅尼。「水の声」は“きりきり”といったオノマトペの表現だという。「やがて、逢魔が時になろうとする」は三味線が三下りから調弦を変えながら立ち上がってくる。「逢魔時の浪打際へ」はVaダ・モーレがやはり重音グリッサンド。「三つの聲」はVn+Va+Vcが加速度的グリッサンド。「はすのうてな」は三味線+Vn+Vc、「影も溜らず」は木管やTrb、打も加え、「柄と地、絵と余白、あるいは表と裏」は三味線にPfを含むアンサンブルで、いずれもミクロに始まって複雑さを増していく。Kairos 0022202KAI () -
カミロ・メンデス:
メカニカル・レゾナンス I
(ロベルト・アロンソ・トリージョ+ウィリアム・レーン)
Vn+Vaでギシギシのトレモロの応酬にPizzの打撃が加わる。Va独奏、Vn独奏のバージョンも収録。「5つのフラグメント」はCl独奏版とCl+ASax版で、ハーモニクスなどの特殊な発音による静寂と喧騒の交錯。「カンシオン・デ・ラ・ディスタンシア」はFl独奏版のIとSSaxを加えたIIの2バージョンで、息音、孔音などいろいろ駆使する。けっこう面白い。Kairos 0022038KAI () -
ストラヴィンスキー:
バレエ・カンタータ「結婚」
(ジェイムズ・ウッド+ニュー・ロンドン室内アンサンブル&合唱団+ヴォロネジ室内合唱団)
4Pfと多数の打にSMTB+混声合唱という編成でロシア農民の結婚民謡を元にした2部構成。演奏は悪くないが独唱(クレジットなし)がどうも。併録は「4つのロシア農民の歌」「鳩は空気を引き裂いて降りる」「入祭唱」などのほかカルロ・ジェズアルド「3つの聖歌」、さらにヴォロネジ州の5つの婚礼のための民謡。Hyperion 00602458157475 () -
池田悟:
弦楽四重奏曲
(ヤツィナ+カリノフスキー+イヴァノヴァ+ラドゥンスキ)
降りそそぐきらめきが蓄えた力を随時爆発させながら進んでいくコンパクトな4楽章。「アヴェ」は透徹なハーモニクス。パオロ・ジェミニアーニ「はかなさ」は深く静かなところから誕生する姿。マイケル・ボイド「魅惑」は時に軋むグリッサンドがゆったり上下に交錯する。スコット・ブリックマン「SQ第5番」、フレデリック・グレッサー「SQ第2番アロコス」はそれぞれいくらか尖った要素をみせながらも割と普通の4楽章。エリック・バートン・デイヴィス「水中運動」はなんか素朴で特に言うこともない3楽章。Phasma Music Phasma084 () -
ジャチント・シェルシ:
弦楽四重奏曲
(モリナーリ四重奏団)
第1番は1944年で不穏な密集和音が要所で用いられるが従来の形式も持つ4楽章。58年の弦楽三重奏曲は出発点の音(1楽章ならB♭)からグリサンドで半音ほど上下に滲んでいく4楽章。61年第2番は同じようにGから始まるがすぐに攻撃的に転じるも各楽章同じように仕切り直す5楽章。63年の第3番もやはりグリサンドで揺らぎつつより精緻で複雑に展開する5楽章。64年の第4番はスコラダトゥーラを用いる単一楽章。84年の第5番も単一楽章でF音を中心に鋸音も交えながら広がっていく世界。ATMA Classique 00722056481922 () -
ヤコブ・ファン・エイク:
笛の楽園
(シモン・ボルツキ)
第1,2巻の143曲に別バージョン(?)も合わせて5時間分の17世紀リコーダー独奏(No.81~85は2声)。26本の楽器を駆使しての録音だそうだ。たくさんあってお腹いっぱいという感じだが、BGMにはよい。Klanglogo KL1547 () -
ヤニス・クセナキス:
メデア
(ジェイムズ・ウッド+クリティカル・バンド+ニュー・ロンドン室内合唱団)
男声合唱+E♭sCl+CFg+Trb+Vc+打でセネカのテキストを用い原始的な色彩で音の催事が繰り広げられる。「コローネスにて」は女声合唱+Hr+Trb+Cbでソポクレスのテキストにやはり古代ギリシャという感じの音。「夜」は12声のア・カペラでシュメールや古代ペルシャのテキスト、「誓い(オルコス)」「暮色」はア・カペラ混声合唱で前者はヒポクラテスの誓い、後者は音素のみで意味のないテキストから不思議な響きを生む。Hyperion 00602458157796 () -
パウル・ピント:
弦楽四重奏曲第4番
(リズム・メソッド)
呼吸の音、それを模すような弦、“私は教会を通り過ぎた”という奇妙なテキストを途切れ途切れにくねくねと歌いグリッサンドの断片が軟体動物のごとく交錯する(ネット上にはビデオインスタレーションもある)。マリーナ・キファーシュタイン「弦楽四重奏曲第2番」は微分音的に重なる音がゆっくり離散してゆきノイズのような音や叫び声が重なってくる頃には鋸音も。ルイス・ニールソン「パストラーレ…地の貧しい人々のために」はFl+SQで奏者が歌いながら擦れるような音とともに時々鋭い分節音そしてFlはSopとなって朗唱も(スコアでは全パートに声と楽器の2段)。何とも不思議な雰囲気。New Focus Recordings FCR400 () -
ガブリエル・ビセンス:
ムラル
(ライッサ・ファールマン+ヨエンネ・デュミトラスク+コリン・ペナー)
Cl+Vn+Pfのトリオが断片的なフレーズをポツポツと紡いでいく。「リンクする夢」はVn+Vc+Pfで単調な反復Pfの中間部を挟んであちこち飛び交う。「茂み」はFl+Cl+Vn+Vc+Vib+Pfで森に駆け込んで消える人をイメージするという。「顔のない表面」はフェルドマン的ゆっくりしたPf独奏。「肉欲」はVn+Pfが忍び足で進みながら次第に大胆に。「フィクション」は木5でやはりあたりを伺いながら。「球体」はVc+Pfでそれぞれが独白ののち間を置きながら叩きつけるような断片を。Stradivarius STR37292 () -
原田敬子:
ブック I
(マルゲリータ・ベルランダ)
Accord独奏で、細かな襞が忙しく揺れたり声が出たり精妙な和音だったりと多彩な4曲。朴泳姫(パクパーン・ヨンギー)「わたしの心」は深いところからゆっくりにじみ出てぐっと持ち上がる。ニコラウス・A・フーバー「竪琴の歌」は最高音の響きから下降しつつ引掻きのリズムも。サミール・オデー=タミミ「影」はキアロスクーロ木版画のように。ロベルト・ヴェトラーノ「アクスティカ III」は“ゴーストサウンド”と呼ぶ電子音と対話というか共鳴する。マニュエーラ・ケレール「奥深くに…」は声や息音さらに登山用ロープを持ち出しての劇場空間作品。Stradivarius STR37262 () -
ベリオ:
フォーク・ソング
(イグナツィ・ザレフスキ+アレクサンドラ・ワスカ+ショパン大学モダン・アンサンブル)
イタリアをはじめアルメニア、フランスなどの民謡(旋法が雅)に繊細な(時々微分音が混じるような)彩りを施した11曲。ジャネタ・リジェフスカの「吐き捨てろ」はFl+Cl+Vn+Va+Vcがグリッサンドでくねくね動きながら倍音奏法や特殊奏法で奇妙な織物を作る。クシシュトフ・キツィオル「崩壊」は打楽器協奏曲的に繰り出される音響でちょっと安っぽい。マルツィン・ヤヒム「マアトの羽根」も派手な打の隙間から祭儀的な音が覗く。パヴェウ・ウカシェフスキ「ディヴェルティメント」は大振りでホモフォニックな3章。U. Muz. F. Chopina 5906671058362 () -
ジェフ・マイヤーズ:
ドーパミン
(ジャック四重奏団)
スコラダトゥーラの自然倍音を用いた不思議な微分音和声をごしごしと刻みながら日が昇り陰って少し寂しい風が吹くような。「レクイエム・エテルナム」はMSのレイチェル・キャロウェイを加え、オスカー・ワイルドやフリーダ・シャンツのテキストも用いながら透徹した敬虔さの中にゆがんだ微分音を織り交ぜて嘆きと涙を表現する。強い。Innova INNOVA035 () -
バスティアン・ダヴィド:
階段の視点
(ヴァンサン・ガイイ)
Accord独奏で音のストップを精密にコントロールして陰画のように旋律を描く。「煙のトッカータ」はAccord四重奏で音が滲むようにして波打ち深く沈んでいく。Acrdに加えて「クロレ」は2打で下敷きで遊ぶような懐かしい音もあり寄せては返す、「楽観」はVa+コルネットでワウワウミュートと大げさなビブラート、「虫たち」はSop+Flでそれぞれユニゾンの遊び。「本能」はCl+Fg+Cb+Pf+打を加え苦しげに発される音を光の泡が包む。さらに「インクの雲」はFl+Cl+Fg+Sax+Va+Vc+Cb+Hp+Pf+打で電子音響かと思うような響きとプリミティブな素朴さ。Initiale INL21D () -
ピエール・ブーレーズ:
アンテーム
(河村絢音)
蝶が舞い蜂が刺すようなVn独奏、IIは電子楽器とのデュオで響きの広がりや句読点が加わりながらの丁々発止。マティアス・ピンチャー「ヴェールについての考察への習作第3番」は高音域の動きの合間に人の息などを模す多用な音の技巧。ブルーノ・マントヴァーニ「ハッピー・アワーズ」はトレモロにこだわりつつ半音階の駆け足から四分音を含む重音。電子楽器を伴ってルイス・ナオン「6つのカプリース」は動と静の1番、2番を、佐原洸「デュオ」は音の重なりが滲みながら広がってノイズや宇宙空間のように。演奏お見事。B→C行くべきだった。Initiale INL22D ()