ARAで完璧なリモートオフィスを

マッキントッシュにはずっと以前からARAという優れたリモートアクセスのソフトウェアが提供されてきました。これを使えば自宅でも外出先でも、オフィスと同じようにサーバーを利用でき、ほとんどの作業をこなせたわけです。従来のARAは、マックの環境を遠隔利用者に提供してくれるだけでしたが、最新版のARA 3.0はPPP接続やTCP/IPもサポートする強力なものに生まれ変わりました。これがあれば、マックの機能に加えてイントラネットも利用できる上に、Windowsからも接続が可能という、完璧なリモート環境が整います。

AppleTalkとPPPを統合するARA

97年12/15号では、オフィスにRAS (Remote Access Server)を用意して、外部からPPP (Point to Point Protocol) を使ったダイヤルアップ接続を行う方法を取り上げました。これは、インターネットのサービスプロバイダを利用するのと同じような感覚で、社内のWWWサーバーやFTPサーバーから情報を取り出すというものです。

この方法は、マッキントッシュばかりでなくWindowsマシンでも同じようにサーバーを利用できるという利点があります。少し使い方を工夫すれば、双方向のやりとりも可能な、応用範囲の広い仕組みです。

しかしRASだけでは、マックのファインダのような使い易い環境は望めないという難点があります。オフィスのプリンタに結果を出力したり、スケジュール管理プログラムに予定の変更を記入するなどの、マッキントッシュのネットワーク機能も活用できません。

ARAパーソナルサーバー

オフィスとまったく同じ環境を外出先でも実現するには、マッキントッシュのネットワークをつかさどるAppleTalkを電話経由で利用できるようにする必要があります。このために用意されているソフトウェアが、ARA (Apple Remote Access)です。ARAのパーソナルサーバーを用いれば、ファイルやプリンタの共有はもちろん、直接グループウェアに情報を書き込むなど、マックのAppleTalkネットワークの能力をフルに発揮させることができます。

最新のARAはAppleTalk環境を提供するだけではありません。ARAパーソナルサーバー3.0は、インターネットやイントラネットでお馴染みのPPPによる接続も受け付けますし、必要に応じてクライアントにIPアドレスを付与することもできます。この機能によって、ARAはマッキントッシュ専用ではなく、Windowsからでも利用できるマルチプラットフォームのサーバーとなりました。ARAパーソナルサーバーがあれば、マックユーザーにはオフィスと同等の快適な環境を、それ以外のユーザーにもイントラネットレベルの機能を提供できるわけです(図1)。

ARAクライアント

ARA 3.0は、サーバーだけでなくクライアントソフトも、状況に応じてARAP (Apple Remote Access Protocol)とPPPという異なる接続方法を使い分けられる芸達者です。ARAクライアントは、マック本来の環境のみを利用する場合はARAPを用いてサーバーに接続し、インターネットにつなぐならPPP接続によってTCP/IPを使えるようにします。さらに、PPPでLANに接続し、AppleTalkのファイルサーバーやプリンタを利用しながらWWWサーバーなどのTCPアプリケーションも同時に使うというマルチプロトコル接続も可能です(図2)。

しかもこれはOpen Transportと統合されているため、通常のネットワークと同様に、設定を保存し切り替えて利用することができます。そのため、プロバイダへのダイヤルアップも、AppleTalkネットワークやイントラネットへの接続も、統一された方法でスムーズに行うことができるのです。

サーバーのインストールと設定

ARAパーソナルサーバーをインストールしたら、まずモデムとプロトコルの設定を行います。モデムは通常のダイヤルアップ接続の準備と同じように「モデム」コントロールパネルから適切なものを選んで設定しましょう(図3)。

接続を受け付けるためのプロトコル設定には「リモートアクセス」コントロールパネルを使います。メニューバーの「リモートアクセス」の中から「電話対応の設定...」を選んでください。図4のダイアログで「かかってきた電話に対応」をチェックすると、利用者からのダイヤルアップを受け付けるようになります。「接続時間の制限」は回線を一人が長時間占有しないよう、必要に応じて設定します。利用範囲で「ネットワーク全体」を選んでおくと、ダイヤルアップ利用者はこのサーバーを経由して、ファイル共有やプリンタ共有などのすべてのネットワークサービスを受けられるようになります。

さらに、WWWやFTPを使えるようにするためには、「PPPサーバー設定」欄の「PPP接続することをTCP/IPクライアントに許可」をチェック。このとき、図5のように利用者のIPアドレスをサーバーから与えるように設定することも可能です。

利用者を登録する

ARAによる接続を許可するためには、「利用者&グループ」コントロールパネルで、適切な権利を与えておく必要があります。対象となる利用者を選び、「リモート」パネルを開いてください(図6)。「電話をかけて接続することを許可」をチェックすることで、このユーザーはARAでダイヤルアップ接続できるようになります。

「折り返し電話先」を設定しておくと、ARAパーソナルサーバーはかかってきた電話をいったん切り、設定された番号に電話をかけ直して接続してくれます。これは、利用者の電話料金負担という問題だけでなく、特定の番号からのアクセスしか許さないという点で、セキュリティ上も重要な機能です。公衆電話からのアクセスには使えませんが、自宅からオフィスのコンピュータを使用するなど、番号が決まっている場合はできるだけ設定しておくほうがよいでしょう。

ARAパーソナルサーバーはバックグラウンドで働くので、特別なアプリケーションを起動しておく必要はありません。以上の設定が完了し、モデムとコンピュータの電源が入っていれば、いつでもかかってきた電話に対応してくれます。

クライアントからの接続の準備

次はクライアント側の準備です。モデムの設定はサーバーのときと同じ(図3)。リモート環境からマックのファイル共有やプリンタだけを利用するなら、セレクタでAppleTalkが「使用」になっていることを確認して、すぐに次のセクションに進んでください。

ARAでインターネットやイントラネットも利用するときは、「TCP/IP」コントロールパネルも設定しなければなりません。インターネット接続の場合は、プロバイダ利用時の設定と全く同じで、経由先を「PPP」に、設定方法を「PPPサーバを参照」にします。ネームサーバーアドレスなども、プロバイダの指定に従います(図7)。

オフィスにPPPで接続して、普通のマックの機能を使いながら、イントラネットのサーバーも利用したいというときは、経由先を「AppleTalk(MacIP)」、設定方法を「MacIPサーバを参照」としてください(図8)。

ARAクライアントから遠隔サーバーに接続

ここまでの準備ができれば、あとはとても簡単。「リモートアクセス」コントロールパネルを開いて、接続するサーバーの電話番号、ユーザー名、パスワードを入力してください(図9)。「接続」ボタンをクリックすれば、モデムが電話をかけ、遠隔サーバーに接続されます。相手との接続にARAPを使うかPPPを使うかは、自動的に判断してくれるので意識する必要はありません。プロトコルを指定したい場合は「オプション」ボタンをクリックしてどちらかを選択します(図10)。

これらのコントロールパネルの設定はそれぞれ保存しておくことができますが、接続先を変えるたびにいちいちコントロールパネルから設定書類を呼び出しているのでは煩雑ですね。こういうときは、MacOS 8の作業環境マネジャー(図11)で設定全体を管理すると便利です。これなら、オフィスでLANにつなぐときやモバイルでARAを使うときなど、すべてワンタッチで適切な環境に切り替えることが可能になります。

ARAによるリモートオフィス

ARAでマッキントッシュのサーバーに接続すると、見慣れたサーバーやプリンタがセレクタに現れます。使い方はオフィスでの利用方法と全く同じ。コピーも編集も印刷も自由自在です。TCP/IPでイントラネットも利用できますから、ほぼ完璧なリモートオフィスと言えますね。ARAをうまく使えば、これまで「制限付き」の環境だった在宅勤務も、かなり快適なものとなりそうです。

(MacFan 1998-02-15号)