Windowsとの共存共栄

ちかごろ右を向いても左を向いてもWindowsばっかり。理由はいろいろ挙げられますが、ともかく現実の問題として、マッキントッシュを使っているオフィスにWindowsが突然進出してきたというケースは非常に多いに違いありません。好むと好まざるとに関わらず、(少なくとも今は)Windowsとの共存を意識しなければならないようになっているのです。心を広くして、両者がきちんと交流できる方法を考えましょう。国と国を結ぶのが国際ネットワークなら、Windowsと結ぶのは窓際ネットだ、なんてね。

Windowsという環境

マッキントッシュとWindowsは設計が基本的に異なりますから、マック用のExcelをWindowsパソコンにコピーしても、もちろん動いてはくれません。しかし、アプリケーションの扱うデータ自身は、想像以上に互換性があります。この点を利用して情報を共有するために、まずファイル交換に必要な基本知識だけ振り返っておきましょう。

両者のファイルについてユーザーが知っておくべきポイントは、

  1. ファイル名、拡張子、タイプについて
  2. テキストファイルの形式の違い
  3. リソースフォークの存在

の3点です。これらは既にいろいろな記事で紹介されていますから、ここではごく簡単に整理だけしておきます。

ファイル名、拡張子、タイプ

マッキントッシュでもWindowsでも、ダブルクリックするだけでファイルを開くことができますね。マックの場合は作成アプリケーションを示す「クリエータ」や、形式を示す「タイプ」という情報を保存しておき、これを使ってファイルとアプリケーションを連動させています。Windowsにはこのような情報がないので、ファイル名の最後に.TXTのようにして加えられる「拡張子」を頼りにアプリケーションの関連付けを行います。このため、Windowsと共有するファイルは拡張子付きの名前にしておく必要があるわけです。また、Windowsは95では長いファイル名が可能になりましたが、3.1やMS-DOSとも共存するなら、本体8文字+拡張子3文字という制約があるという点も注意しなければなりません。

テキストファイルの形式

テキストファイルの問題は、改行コードの違いです。マッキントッシュではいわゆるCR(キャリジリターン=ASCIIコード13)だけで改行を示しますが、Windows側はこれにLF(ラインフィード=ASCIIコード10)を組み合わせて改行としています。ですから、マックのテキストファイルをそのまま持っていくと、Windows上では改行のない、全文1段落というとてつもない情報が出現します。逆に、Windowsのテキストをマックで開くと、LFの部分が□(俗に言うトーフ)のように表示されてしまいます。

リソースフォーク

リソースフォークとは馴染みのない言葉かも知れませんね。マッキントッシュのファイルは内部的に2つの部分(フォーク)から成っており、例えばワープロなら、データフォークという部分にテキストそのものを、そしてリソースフォークにはフォント情報やPICTを保存するというように使い分けています。Windowsにはこのような仕組みはありませんから、ファイルをコピーするときにリソース部分が失われてしまうのです。

両者を共存させるには、ただネットワークをつなぐだけでなく、こうした点も頭に入れて、名前付けのルールを決めたり、どちらのマシンでも使える純粋なテキストや、Windows版も存在するアプリケーションを採用する必要があるわけです。

Windowsを仲間に入れる

さて、Windowsとマッキントッシュが共存するネットワークと言っても、どちらを中心にするかで考え方は大きく異なります。どのアプローチがよいかは状況によって異なりますが、マッキントッシュを中心に使っている読者の方が多いことを想定して(当然ですね)、ここではマッキントッシュのネットワークに、Windowsコンピュータも混ぜてあげる方法を紹介しましょう。

今回検討するのは、COPSTalkというWindows95向けのソフトです。これを使うと、同じネットワークにつながったWindowsからは、マッキントッシュのディスクも他のWindowsマシンのディスクと同様に見えるようになります。

ここから少し、COPSTalk導入のために、Windowsの話をしなければなりません。ちょっと馴染みのない画面や言葉が出てきますが、マッキントッシュが操作できる人なら誰でも難なくこなせる作業だと思います。まあ異国観光でもするような気分で読んでください。

COPSTalkのインストールは、普通のWindowsソフトと同じく、setup.exeというプログラムを起動して行います(マックのインストーラと同じです)。これ自身は特に難しいことはありません。

インストールが終了したら、「スタート」メニューの「設定」から「コントロールパネル」を開き、「ネットワーク」をダブルクリックします(この辺りは本当にマッキントッシュとそっくり)。この中の「ネットワークの設定」パネルで、「追加...」ボタンをクリックし、図1のリストから「クライアント」を選ぶと図2のような選択肢が表示されます。ここでCOPS.Inc.のAppleTalkネットワーククライアントを選択してOKすると、ネットワークコントロールパネルには図3のようにクライアントとともに、接続するアダプタ(この例ではPCカード)とAppleTalkプロトコルも追加されるはずです。

細かい部分はWindowsネットワークの環境によって違いますが、基本は同じ。クライアント/アダプタ/プロトコルの3点セットを正しく設定してください。これさえできれば、もうあとは、マッキントッシュからサーバーに接続するのとなんら違いなく情報を共有できるのです。

AppleShareサーバーに接続する

Windowsからのネットワーク接続は、デスクトップ上にある「ネットワークコンピュータ」を使って行います。このアイコンをダブルクリックすると、「ネットワーク全体」というアイコンが示されます。ここが他のネットワークへの接続口になります。

「ネットワーク全体」を開くと、WindowsはAppleShareネットワークのリストを用意します。マックのセレクタの「AppleTalkゾーン」の部分に表示されるのと同じものが並びますから(ゾーンを設定していない場合はIsolated AppleTalk Networkとなる)、目的のゾーンを選びましょう。次に現れるのはセレクタのサーバー一覧に相当する部分です。サーバーをクリックするとお馴染みのユーザー名/パスワードのダイアログが表示され(図4)、サーバーのファイルがWindowsに現れました(図5)。同じ共有フォルダを両者で開いてみると、拡張子が適切に設定されているものは、アイコンまで含めてそっくり表示されています(図6)。

ネットワークを使う

もちろんファイルアイコンが同じように見えるだけではありません。アイコンをドラッグしてファイルをコピーしたり、ダブルクリックで開いて編集することも可能になります。両方のプラットフォームに用意されているExcelやFileMakerPro 3.0のようなアプリケーションを使えば、全く同じファイルを共有して作業することもできるわけです(図7)。

コピーに関しては、ちょうどPC Exchangeと同じように、拡張子とファイルタイプ/クリエータを関連づけてくれるユーティリティ(図8)が付属しているので、手間がかかりません(残念ながら改行コードの自動変換はしてくれないようです)。さらに、セレクタと同じような感覚でマッキントッシュのプリンタを選び、Windowsから文書を印刷することも可能になっています(図9)。

注意しておきたいのは、Windowsアプリケーションによってはファイルをネットワーク上の名前(サーバー名とファイルパスの組み合わせ)によって認識できない場合がある点です(図10)。こういうときは、図11のようにして、共有ディスクをWindowsのF:ドライブなどに割り当てておきましょう。ネットワーク上のファイルもF:ドライブのファイルとして扱うとうまく開くことができます。

Windowsに譲るなら

世の中のWindowsがみんなCOPSTalkを搭載してくれればよいのですが、やはりマッキントッシュが譲歩しなければならないこともあります。こういうときは、高機能なサーバーにWindowsの言葉とAppleTalkの両方を話してもらう方法があります。例えば、企業でよく導入しているWinsowsNTサーバーなら、標準でAppleShareの機能も備えており、簡単にマッキントッシュのファイルを扱えますから(図12)、1台のNTをWindowsとマッキントッシュ両方のサーバーとして働かせることで、容易に情報交換ができるのです。こういうレベルになるとマックユーザーが自分で設定するという域を越えてしまいますが、システム管理者と相談して、平和共存を図ってみてはどうでしょう。

(MacFan 1997-01-01/15号)