イントラネット・メールの実践

イントラネットの重要な機能の一つはメッセージの交換、つまり電子メールの活用です。電子メール用には本格的なソフトがいろいろ発売されていますが、フリーのソフトだけを使っても一通りの電子メール環境を構築することができます。しかもごく簡単に。全社を一斉に管理するというような大がかりな仕組みは難しいとしても、小さな規模から始めてステップアップするというイントラネットの特徴を生かすには、こちらの方が適切かも知れません。もちろん、こんなに手軽なのはマッキントッシュだからこそなのですが。

フリーソフトによるメール機能の構築

前回イントラネットの長所の一つとして、「フリーソフトが多いのでコストが圧倒的に安い」ことをあげておきました。まさにその実践として、今回はアップル社が提供するメールサーバーソフトApple Internet Mail Sever(AIMS)と、定番のメールクライアントソフトであるEudoraを使って、簡単な部内メール環境を作ってみたいと思います(図1)。

いずれもフリーソフトとして雑誌や書籍の付録CD-ROMなどで広く配布されていますが、インターネットから最新版をダウンロードすることも可能です。AIMSは以前MailShareと呼ばれていたもので、CD-ROMの形で提供されるのはまだこのバージョンが多いかも知れません。最新版はアップル社のFTPサイトから入手できます[1]。EudoraはEudora Proという商用版も登場してより高機能になっていますが、部内メールならフリーウェアのEudora-J 1.3.8.5でも十分でしょう。

サーバーのインストール

まずサーバーのインストールです。といっても、AIMS本体のファイルをサーバー用コンピュータのハードディスクにコピーするだけ。前回説明したTCP/IP環境さえきちんと用意されていれば、これ以外には特別なシステムは必要ありません。

もしファイルサーバーになっているマシンをメールサーバーとしても働かせる場合は、前回のようなニックネームではなくpo(ポストオフィス)とかmailという名前でも利用できるようにしたいものです。このような別名を付けるためには、Hostsファイルに次の1行を追加してください:

po.prdept CNAME gatsu.prdept

これでgatsu.prdeptと呼ばれていたマッキントッシュには、po.prdeptという名前でもアクセスできるようになります。

ではAIMSを起動し、メールサーバーを設定しましょう。最低限必要なのは、利用者の登録です。まず「Server」メニューから「Account Information」を開いてください(図2)。ここで、このメールサーバーを利用するユーザーを登録します。画面左下の「Add」ボタンをクリックすると<unnamed>というユーザーが作成されるので、画面右のボックスでUser name、Password、Full nameの3項目を記入します。User nameが次のクライアントの設定でも必要になる名前(アカウント)で、これは漢字や特殊な文字は使えません。他の項目はそのままにして「Save」をクリック。これで一人のユーザーが登録できました。あとは同じことを利用者の数だけ繰り返し、ウインドウを閉じます。

これだけでメールサーバーは働いてくれるのですが、使いやすくするためにもう1カ所だけ設定を変更しましょう。同じく「Server」メニューから「Preferences」を開くと(図3)右下にServer namesという欄があります。Hostsファイルを使っている場合、ここにはサーバーを起動したマッキントッシュのIPアドレスが表示されていはずです。ここに、さきほどHostsファイルで設定したホスト名を登録しておきましょう。さらに、このホスト名を選んで「Default」ボタンをクリックすると、サーバーはこれを自分の標準名としてくれるようになります。設定を終えたらAIMSをいったん終了させ、改めて起動してください。

Eudoraの設定

次に、Eudoraをそれぞれの利用者のマッキントッシュに用意しましょう。Eudoraは通常いくつかのプラグ・イン・ファイルなどとともに提供されますが、さしあたって必要なのはプログラム本体だけです。これをハードディスクの好みの位置にコピーしてください。用意ができたらEudoraをダブルクリックして起動します。

Eudoraの基本設定は非常に簡単です。「操作」メニューの「設定変更...」から図4の画面を開いてください。まず最初のPOPアカウントを記入します。これはサーバーで登録した利用者のUser Nameとサーバーのホスト名を@マークで結んだもの。アカウントがkanならkan@po.prdeptのようになります。本当の氏名は、メールアドレスに付加情報として氏名を表示させるもので、漢字も使えます。その下のラジオボタンはMacTCPにしておいてください。

これでおしまいです。残りの部分はそのままで構いません。驚くほど簡単ですね。これだけで、もうメールの送受信はできるようになっているのです。

まだ一人分しか設定を終えていませんが、ここでテストのために、自分宛のメールを出してみることにしましょう。これによって、EudoraやAIMSの設定が正しいかを確認することができるからです。

メッセージの作成と送信

それでは、実際にメールを送ってみます(AIMSサーバーは起動していますか?)。まず「メッセージ」メニューから「新規メッセージ」を選んでください。新しいメッセージウインドウが開いたら(図5)、「To:」欄に宛名を入力します。この場合は自分宛ですから、記入するのは自分のアカウントです。インターネットなどを使って他のサーバー上の相手にメールを送るときは、サーバーのホスト名もあわせて

kan@po.prdept

のように記述しますが(インターネットメールで良く見かけるアドレス形式です)、部内システムの場合はみんな同じサーバーを使っているので、アカウント名を書くだけでよいのです。

「From:」欄には自動的に自分のアドレスが入力されます(「本当の氏名」も付加されていますね)。「Subject:」欄にはメールの題名を書いてください。とりあえず残りの欄はとばして、点線の下にメッセージを記入し、「送信」ボタンをクリックしましょう。メッセージウインドウが閉じて、送信状況を示すダイアログが表示されたら完了です。

メッセージを受信する

メールを受け取るには、「ファイル」メニューの「私書箱をチェック」を選びます。サーバーが応答し、パスワードを求めてきますね(図6)。これはサーバーの「Account Information」で登録した利用者毎のパスワードです。Eudoraなどのインターネット用のメールソフトでは、先ほどみたように送信は直接できますが、受信にはパスワードが必要なのです。

サーバーにメールが届いていると、Eudoraはそれをダウンロードし、図7のようなメッセージを表示して「受信簿」ウインドウ(図8)を開きます。ここに先ほど送ったメッセージがリストされれば、送受信成功というわけです。これをダブルクリックすると、メールの内容を読むことができます(図9)。送信日時や差出人などの情報が数行並んだあとに、メッセージ本文がきちんと表示されていますか?

サーバーのウインドウを見てみると、図10のような交信記録が確認できるはず。実際、サーバーとクライアントはこのようなやりとりを行ってメッセージを送受信しているのです。さあ、これでサーバーの動作も確かめることができました。あとはメンバーのマッキントッシュにEudoraをインストールするだけです。

部内メールを活用しよう

Eudoraにはもちろんもっと多彩な機能が用意されています。部内でメッセージを迅速・確実に届けるには、「設定変更...」ウインドウの新着チェック頻度欄が便利です。ここを例えば10分毎としておくと、利用者に代わってEudoraが定期的にサーバーを確認し、到着を知らせてくれるというわけです(図11:もちろん、Eudoraを常に起動してることが前提ですが)。

また「スイッチ...」を開くと(図12)、インライン変換などのさらにきめ細かい設定が可能です(詳細はEudora付属のドキュメントを参照)。これらの設定は、システムフォルダ内に自動的に作られる「電子メールフォルダ」に、「電子メール設定」というファイルとして保存されますから、この設定ファイルを全マッキントッシュの同じフォルダにコピーすれば、インストールが少し楽になるかも知れません。

お互いの顔の見える部内であっても、メールによる連絡は意外に効果を発揮するものです。気軽に取り組めるこのシステムを叩き台にして、有効な活用方法を研究してみてください。

(MacFan 1997-03-01号)

*AIMSの入手先はhttp://www.cybertech.apple.com/AIMS.htmlを参照