部内ホームページを立ちあげる

イントラネットやインターネットの花形は何といってもWWW。その機能を最大に引き出すためには、やはりサーバーを用意して、様々な応用ができるようにしたいものです。WWWサーバーを立ちあげるとは大変なことのように思われるかも知れませんが、これも前回同様、マッキントッシュならインターネットから入手できるソフトを使って簡単に実現できてしまいます。サーバーがあればインタラクティブな仕掛けも可能になりますが、まずは情報共有の手段としてWWWサーバーを導入し、イントラ運用の勘所をつかみましょう。

WWWサーバーを用意する

WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)はすっかりお馴染みの言葉になりました。この仕組みはTCP/IPのネットワーク上でHTTP(ハイパー・テキスト・トランスファ・プロトコル)という規約に従ったデータをやりとりすることで成り立っています。利用者からのリクエストに応えてこのデータを送り出すのがWWWサーバー、リクエストを出したり届いたデータを画面に表示するのがNetscape NavigatorなどのWebブラウザです。WWWサーバーは、リクエストに応じて、HTMLファイルをそのまま送り出すこともあれば、CGIという仲介プログラムを呼び出し、その結果をユーザーに伝えることもあります。このサーバーとクライアント(ブラウザ)によるやりとりの仕組みはインターネットでもイントラネットでも違いはありません。

マッキントッシュ上で働くWWWサーバーとしては、MacHTTPというシェアウェアが広く知られています(最新版は2.2.2)。更にこれを強化したWebSTARという製品も発売されていますが、基本的な使い方は同じなので、MacHTTPでテストランをしてみて、納得がいったらWebSTARにアップグレードしても良いでしょう[1]

MacHTTPのインストール

MacHTTPのパッケージは、図1のような構成のフォルダから成っています。サーバーソフト本体をはじめとする必要なパーツは、この中のMacHTTP Software & Docsというフォルダに含まれています。まずこのフォルダを開いて、MacHTTPを起動してください。図2のような画面が現れたでしょうか。実は、これだけでもうWWWサーバーが働き始めているのです。もし既にブラウザがインストールされていたら、試しにサーバーにアクセスしてみましょう。前々回説明したHostsファイルでサーバーのホスト名をwww.prdeptと定義したとすると、URLをhttp://www.prdept/と入力するだけ。図3のようなホームページが表示されましたね。これはMacHTTPの説明ドキュメントで、初期設定ではサーバーのデフォルト文書としてこのファイルが表示されるようになっているのです。リンクをたどっていくと詳細なチュートリアルも用意されていて、概要がつかめるようになっています。

MacHTTP.configの設定

ちょっと先を急ぎすぎました。今のテストで動作確認ができたので、これを自分たちのホームページとして働かせるために、若干の設定を行いましょう。

まず重要なのが、MacHTTP.configというファイルです。これはMacHTTPと同じフォルダにあらかじめ含まれています。このファイルを編集することで、サーバーの様々な設定を変更することができるのです。ファイルは純粋なテキストファイルなので、SimpleTextなどのエディタで開いてみてください(図4)。英語がぎっしりと詰まっていますが、#で始まる行はコメントで、設定内容の説明になっています。実際の設定に関係するのは、ところどころに出現する、キーワードと値がペアになっている(キーワードだけの場合もある)部分です。

例によってほとんどの設定は初期値のままで構いませんが、変更した方が良いものだけ確認しておきましょう。

まず、INDEX。これは、ファイルを直接指定せずhttp://www.prdept/のようなホスト名のみのリクエストを出したときに、サーバーが自動的に送り返すファイルの設定です。初期値はDefault.htmlとなっています。このままでも差し支えないのですが、世間ではindex.htmlというファイルがこの目的に使われることが多いので、将来の互換性を考えると、ここをindex.htmlとしておいた方が良さそうです。

もうひとつ、NO_DNSというキーワードをさがしてください。これはアクセス記録を取るときにドメイン名をDNS(ドメイン・ネーム・システム)に問い合わせるかどうかという設定で、初期値では#NO_DNSとコメントの形になっています(つまりDNSに問い合わせる)。ここで検討しているイントラネットではDNSは使わずHostsファイルによる名前付けを行っていますから、DNSへの問い合わせはできません。従って、このコメントを外し、NO_DNSを有効にする必要があります(図5)。

WWWサーバーの運用開始

MacHTTPが正しく働くためには、あといくつかのファイルが必要です(図6)。これらのファイルはすべて最初からMacHTTPと同じフォルダに用意されています。

図6:MacHTTPに必要なファイル
MacHTTP.config MacHTTPの環境設定ファイル
MacHTTP.Settings MacHTTPプログラムのメニューで行った設定を記録する
MacHTTP.log 利用者のアクセス記録が残る
Error.html 存在しないページなどをアクセスしようとしたときに表示されるファイル
NoAccess.html アクセスが許されないファイルを開こうとしたときに表示されるファイル

このうちError.html、NoAccess.htmlは、ファイルが存在しなかったときやアクセス権が不十分だったときに表示されるページです。オリジナルは愛想のない英語のメッセージになっていますが(図7)、日本語でもう少し親切な説明に置き換えてあげると良いでしょう。操作を誤った人に対しては、これが一種のヘルプファイルの役割も果たしてくれるからです(図8)。

このほか、ファイルアクセスを制限するセキュリティ管理や、パフォーマンスの調整などが可能ですが、これらの設定はしばらく使って様子が分かってからで十分。機会を見てドキュメントとチュートリアルを、じっくり読んでみてください。

ブラウザの設定

利用者のコンピュータにはWWWブラウザを用意します。ここではNetscape Navigatorの画面を例としてあげていますが、どんなブラウザを利用しても構いません。もっともメンテナンスを考えると、一人一人が違うブラウザを使うよりは、統一しておく方が無難でしょう。

利用者側で必要なのは、起動時に最初に表示するページの設定です(図9)。ここに先ほどのインデックスページを指定し、そこから各種の情報へ枝分かれするようにサーバーを設計すれば、情報が体系的に整理されて分かりやすくなります。また、重要なお知らせをこのページに書き込み、掲示板の役割を持たせることも可能です(図10)。

このほかブラウザによってフォント、文字のエンコードなどを設定しますが、あちこちで紹介されているインターネット利用の場合と同じですから、繰り返しません。これらの設定はメニューから明示的に保存しないとブラウザ終了後に元に戻ってしまうものもあるので注意してください。

イントラWWWを運用する

さあ、これからHTMLという形で情報を準備して、WWWを充実させて行くわけですが、いくつか注意すべき点があります。

まず第1に、MacHTTPからWWWのサービスとして提供できるファイルは、MacHTTPと同じかその中にあるフォルダに置かなければならないという点。

WWWサーバーを既存の情報に関係なく一から構築するなら問題ないのですが、すでにファイルサーバーでテキストデータを共有している場合はどうでしょうか。これらをいちいちHTMLに変換してコピーするのでは、手間がかかる上にデータの一元性も保てません。このようなデータの中には、同じファイルを直接ブラウザからも利用したいものもあるはずです(図11)。こういうときは、共有ボリュームとして公開しているフォルダの1段階上位にMacHTTPをインストールして、共有ボリューム全体をWWWに取り込んでしまうというような工夫が必要になります(図12)。逆に、ファイルサーバーに蓄積する情報も、ブラウザで参照することを意識して作成しなければなりません。こうした既存の情報とWWWとのコンビネーションをどうするかは、イントラ設計の大切なポイントです。

もうひとつ、一般にブラウザはファイルの拡張子(.htmlなどのファイル名の最後に加える文字)によってデータの種類を判別します。たとえば.txtとなっていればテキストファイルとして扱うという具合です。これはWindowsなども含んだネットワークを構築するときは特に重要になってきます。また、機種によってはファイル名の大文字小文字も区別することがあります。将来の他部署との接続もにらんで、今からこういうことを考慮に入れて名前付けのルールを決めておくべきです。

WWWサーバーを設置したからといって、最初からCGIプログラムが必須というわけではありません。むしろこのような、イントラネットを運用する上でのノウハウのほうが遥かに重要です。こうした経験を積み重ねながら、徐々にプログラミングにも挑戦するというスタンスで臨むのが良いと思います。

(MacFan 1997-03-15号)

*WWWサーバーの入手先