MN128-SOHOで快適インターネット

SOHOでも複数のコンピュータを結んでLANを構築し、情報の共有を図ることは珍しくなくなってきました。しかし、このLANをインターネットにつないで、自分のデスクでメールを送受信したり取引先のネットワークとやり取りするためには、ルーターを設置するという難関が控えています。機能を追加するたびに機械が増えていくのも悩みの種。少数精鋭のSOHOでは面倒見切れません。こうした不便さを解消するため、必要な装置をひとまとめにし、ほとんど購入した状態のままで小規模LANをインターネット接続するルーターが登場してきました。

ルーターを使ってネットワーク

個人や小さなオフィス、あるいは部署単位でインターネットを利用するとき、普通は1本の電話線でプロバイダに接続します。そして多くの場合、メールのやり取りやWWWの閲覧のためには、電話線につながった1台のコンピュータを交代で使うようになっていることでしょう。あるいはモデムを共有して、各自のデスクからの利用を可能にしているかも知れません。けれども、このときでも同時にインターネット接続できるのは1台だけ。誰かがWWWを見ていると、他の人はメールを受け取ることができないわけです。

大きな組織でもやはりネットワークの出入口は1カ所ですが、この場合は特定のコンピュータではなく、LANがインターネットに接続されています。そしてLANのメンバーであるコンピュータは、必要に応じて同じLANの中の別のコンピュータとデータを交換したり、外部のインターネットにアクセスしたりすることが可能です。

このとき、LANとインターネットのつなぎ目にあって、宛先によってデータを振り分け、正しい目的地に送り届ける装置を「ルーター(router)」と呼びます。ルート、つまり道順を教えてあげる装置という意味ですね。このルーターがあれば、SOHOや個人でもLANを構築し、複数のコンピュータで同時にインターネット接続することができるのです(図1)。

MN128-SOHOの登場

ISDNやOCNの普及によってSOHOからもインターネットを本格的に利用できる環境が整いつつあります。しかし、これをLANにつないで複数のコンピュータで有効活用しようとすると、TA(ターミナルアダプタ)ではなくルーターを導入しなければなりません。従来ルーターは高価なうえに複雑な設定を必要とし、素人にはなかなか手が出せませんでした。これを一挙に身近なものにしてくれたのが、MN128-SOHOのような、簡単な操作でネットワークの設定を可能にした新しいタイプのルーターです(図2)。

MN128-SOHOは、ISDNルーターとして必要十分な機能を持つだけではありません。「ハブ」として働くEthernetポートや、電話機やFAX用のアナログポートを備え、さらに普通のTAとしてコンピュータをシリアル接続することもできます。DSU内蔵タイプも用意されており、これ一台でLANの構築とインターネットへの接続が可能なオール・イン・ワン型の装置なのです。

IPアドレスとAutoNAT

インターネットに接続する機器は、すべてIPアドレスという32ビットの固有番号を持ちます。32ビットは非常に大きな数字ですが、それでも世界中のコンピュータ全てにアドレスを付与するには数が足りません。そこで、もともと個々のコンピュータに与えていたアドレスを、LAN単位で共有する方法が導入されました。LANの内部ではプライベートアドレスという特別な範囲を使い、インターネット接続するときはLANに与えられたアドレス(グローバルアドレス)に変換するのです(図3)。

ちょっと乱暴な例えですが、これは電話機の内線番号と外線番号の使い分けのようなものと考えてもよいでしょう。電話では交換機が内線・外線の処理をしてくれます。ネットワークでこの2種類のアドレスを相互に変換するのは、NAT(Network Address Translator)という仕組みです。

ただしNATだけでは、1つのプライベートアドレスを1つのグローバルアドレスに変換するだけなので、インターネットには1台のコンピュータしか接続できません。これを解決するために、1つのグローバルアドレスを複数のプライベートアドレスに対応付ける機能が、IP Masquarade(NAT+、PATなどど呼ぶこともある)です(図4)。電話で例えれば、代表番号というわけです。

MN128-SOHOはNATとIP Masquaradeを合わせてAutoNATと呼んでいます。この機能を実装することによって、アドレスが1つしか与えられない端末型ダイヤルアップ接続でも、複数のコンピュータが同時にインターネットを利用できるのです。

アドレスの割り当てとDHCP

LANを構築する場合には、すべてのコンピュータにきちんとアドレスを割り当てなければなりません。コンピュータの数が増えるに従い、これは大変な仕事になってきます。さらにノート型PCをつないだり離したりするようなケースでは、アドレスの管理はいっそう複雑です。

DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)は、サーバーがアドレスを一括管理し、自動的にクライアントにアドレスを割り当てていく方法です(図5)。AppeTalkのネットワークでは、アドレスのことはサーバーがすべて面倒を見てくれましたね。これと同じように、DHCPを使うと面倒なIPアドレスの管理を手作業で行う必要がありません。MN128-SOHOはこのDHCPサーバーの機能も備えているので、簡単にLANを構築できるのです。

MN128-SOHOの多彩な機能

MN128-SOHOにはこのほかにもたくさんの機能が備わっています。例えば:

などです。従来なら別のサーバーを用意する必要があった機能が、最初から備わっているのですから、SOHOのLAN構築がずいぶん楽になります。

簡単なMN128-SOHOの設定

では、MN128-SOHOをネットワークに接続しましょう。まずISDN/OCNのモジュラージャックとISDN U点ポートをつなぎ、コンピュータはEthernetポートに接続します。電話やFAX用は2つ用意されているアナログポートを使います(図6)。

マッキントッシュ側は、TCP/IPコントロールパネルで「経由先」を「Ethernet」、「設定方法」を「DHCPサーバを参照」としてください(図7)。ダイヤル関係はルーターが面倒を見てくれるので、PPPを開く必要はありません。

準備が整ったらルーターの設定です。MN128-SOHOは、この作業を全てWebブラウザ経由で行うことができるので、従来のルーターに比べて非常に扱いやすくなっています。ブラウザを起動し、URL欄にhttp://192.168.0.1と入力すると、「クイック設定」のページが表示されますね(図8)。ここで、プロバイダの電話番号、アカウントのID、パスワードを入力して「設定」ボタンをクリックしてください。これだけで基本の設定はおしまいです。

あとは、ブラウザにURLを入力したり、メールソフトで私書箱をチェックするだけで、即座にインターネットに接続されます。一定時間やりとりがないとルーターが接続を切ってくれるので、利用者は何もする必要がありません。ダイヤルアップしていることをほとんど意識させない、快適インターネットの出来上がりです。

ルーターを使いこなす

標準設定で使えるのがMN128-SOHOの魅力ですが、能力を十分引き出すためには「クイック設定」の画面から「詳細設定」のボタンを選んでください。ここではLANの機能設定や(図9)、プロバイダの使い分け、手動の接続・切断(図10)、あるいは自動切断タイマーなどのオプション(図11)を設定したりすることができます。

ルーターを使うと、アドレスの指定だけで、プロバイダに接続したり別のLANにつないだりという使い分けも可能になります(図12)。設定はやや複雑になりますが、こうした機能を活用すれば、相手や状況によっていろいろな装置を切換える必要もなくなり、とても使いやすいネットワークを構築できるでしょう。

TA機能を兼ねたMN128-SOHOなら、最初にTAとして1台をネットワークにつなぎ、次に複数の同時接続、さらに別のLANとの使い分けと、状況に合わせた段階的な導入も可能です。TAとの価格差があまりなくなった今、こうしたルーターの採用は十分検討に値するのではないでしょうか。

(MacFan 1997-11-15号)

MN128-SOHOに関するオンライン情報は:

で入手できます(1997年11月現在)。