OCNでインターネットをフルに活用する

インターネットの本来の姿は常時接続。24時間どとでも自由に情報のやりとりができてこそ、その力が十分に発揮されるのです。ということはわかっていても、これまではコストが高すぎて、なかなかこの環境を実現することができませんでした。しかし、いよいよOCNが全国展開に向けて本格的に動きはじめ、長距離電話各社の低価格のサービスも登場。個人・SOHOがインターネット常時接続する時代も目前です。これらのサービスの特徴と導入方法について概要を把握し、本格的な環境構築に備えましょう。

インターネットと専用線

インターネットを本格的に利用しようとすれば、ネットワークに24時間つながった専用線接続が欲しくなります。接続時間を気にしながらでは落ち着いてWWWで情報を収集できませんし、話題のプッシュ型情報配信も受けられません。電子メールを考えても、各メンバーが毎回ダイヤルアップしていては非効率である上に、メッセージを受け取るタイミングが遅くなります。これは趣味のレベルなら別に構わないのですが、ビジネスでは重要な問題です。今の世の中、情報が1時間遅れたために商機を逃すということもあり得るのですから。

しかし、専用線接続は非常にコストがかかります。プロバイダのサービス費用も含めると、月額数十万から数百万円にもなりますから、小さな組織で簡単に導入するというわけにはいきません。

こうした中で96年12月に登場したのが、NTTによるOCN (Open Computer Network) です。専用線とインターネット接続サービス両方を提供しながら、大手プロバイダと一桁違う低価格は、大きなインパクトを与えました(表1)。

表1:専用線による常時接続の月額費用
128Kbps 1.5Mbps 6Mbps
OCN 38,000 350,000 985,000
東京インターネット 270,000 1,297,000 3,232,000
IIJ 352,000 1,887,000 4,732,000

*1997年8月現在。いずれも15KmまでのNTT専用線使用料を含む金額。サービスによってはこれ以外にルータなどの費用が別途必要となる。価格面ではOCNは従来のプロバイダより一桁安い。

OCNのサービス

OCNには、ダイヤルアップによる接続を行うダイヤルアクセスサービスと、24時間の接続が可能な常時接続サービスがあります。常時接続はキャパシティによってエコノミー(128Kbps)、スタンダード(1.5Mbps)、エンタープライズ(6Mbps)の3種類が用意されており、それぞれの料金は表2のようになっています。

表2:OCNのサービス
通信速度 月額料金 初期費用 工事期間
ダイヤルアクセス 28.8Kbps / 64Kbps 15Hまで2,300、
以降9円/分
3,800 7営業日
エコノミー 128Kbps 38,000 約21000円 約1ヶ月
スタンダード 1.5Mbps 350,000 約3万円 約6ヶ月
エンタープライズ 6Mbps 985,000 約3万円 約6ヶ月

*1997年8月現在。

OCNエコノミーの場合、まず加入者は最寄りのNTT局内のIPルータ(加入者ルータ)との間に専用線を用意します。このルータは128Kbpsでフレームリレー網の中継ネットワークにつながり、さらに東京あるいは大阪の基幹中継網に接続されています。東西の間は45Mbpsで接続され、インターネットには東基幹中継網のゲートウェイからつながるという構成です(図1)。

「ベスト・エフォート型」のOCN

OCNの特徴は、1台の加入者ルータに最大24ユーザーが接続されるというところです。図1からわかるように、OCNエコノミーの128Kbpsというのは加入者ルータと中継網を結ぶ部分も含めてのことですから、必ずしもこの容量を一人で目一杯使えるというわけではありません。仮に24ユーザーすべてが同時に接続したとすると、1ユーザーあたりの伝送能力はわずか5.3Kbpsになってしまう計算です。もちろん、常に全ユーザーが同時にデータ転送を行うわけではありませんから、こんな極端な状況はそれほど生じないでしょう。しかし、128Kbpsという数字は、1ユーザに対して保証されているものではないということはきちんと理解しておく必要があります。

NTTではOCNを「ベスト・エフォート型」のサービスであると説明しています。専用線のように常に一定の品質を保証するものではなく、状況の許す範囲で最善の努力をしてデータを運ぶという考え方です。こうしたことで、OCNは従来の専用線接続に比べて大幅な低料金でサービスを提供できるようになったというわけです。

OCNを使うメリット

では、このようにパフォーマンスが保証されないOCNをビジネスに使う意味はあるのでしょうか。OCNエコノミーの場合は、大量のデータを扱うものやリアルタイムの応答が求められる動画・音声サーバー用には無理があります。しかし、メールの送受信をはじめ、情報を受け取る側としてならこれで十分な力を発揮するはずです。

WWWサーバーを立てて情報提供や通信販売を行うためには、スタンダード以上のサービスが必要です。エコノミーならば、ホームページは安いレンタルサーバーを利用するほうが確実でしょう。その上で、Webのフォームから発信された情報がOCN経由で即時にオフィスに届くといったような、常時接続を生かした組み合わせを工夫をすれば、効果的なサイト運用が可能になると思います。

何よりも、最初にも述べたように、24時間ずっと情報回路が確保されているということは、ビジネスにおいては非常に大きな意味を持っています。低コストで常時接続が実現できるOCNのサービスは、検討の価値があるのではないでしょうか。

OCNを申し込む

NTTは97年12月までに全国の半分強の地域でOCNエコノミーのサービスを開始する計画としています。自分の地域(局番)が対象になっているかどうかは、最寄りのNTTもしくはOCNインフォメーションデスク(0120-047816)に問い合わせるか、OCNのWEBサイト(http://www.ocn.ne.jp/)で確認してください。

申し込みはNTT窓口かOCN販売代理店で受け付けています。また、WEB上でコンサルティングを申し込むことも可能です。OCNエコノミーの場合は、申し込んでから約1カ月でサービスを受けられるとなっています。

サービス利用の形態

OCNの常時接続サービスを受ける場合、DNSサーバーやメールサーバーを自分で設置するか、OCNの用意しているものを利用するかを選択できます。

DNSとはmycom.co.jpのような文字によるアドレス(ドメイン名)を32ビットの数値によるアドレス(IPアドレス)に変換するしくみです。これを自前で用意すると、kanzaki.co.jpのような独自ドメインを使えるなど、いろいろな面で自由度が高くなります。ただし、この場合はJPNICに申請してドメイン名を取得しなければなりません(OCNに代行を依頼することもできます)。またメールサーバーを持てば、アカウント(個人のアドレス)を自由に設定できて便利です。いずれの場合もサーバー管理は自分たちで行うことになります。

DNSやメールサーバーをOCNに任せるのは手間のかからない方法ですが、ドメインはxxx.ocn.ne.jpのようなものになり、アカウントもいちいちOCNに申請しなければなりません。表3のように初期費用や月額費用も若干変わってきますが、ここはコストよりむしろ設定や管理の手間と自由度を比較して、自分に適したものを選ぶべきでしょう。

表3:DNS、メールサーバーの設置による違い
両方ユーザー DNSのみNTT 両方NTT
サブドメイン登録料 - 1,000 1,000
局側DNS工事 1,000 - -
メールアドレス登録 - - 1,000×n
アカウント維持費(月額) - - 250×n
メールアドレスの形式 (F)@<domain>.co.jp (A)@(A)-unet.
ocn.ne.jp
(A)@(S).ocn.ne.jp
JPNIC申請代行 6,000 - -
割当てIPアドレス数 16 8 8

*1997年8月現在。メールアドレスの(F)は、ユーザーが好きなように設定できる部分、(A)はNTTに希望する名前を申し込んで設定してもらう、(S)はNTTから割当てられるものを使うことになる。<domain>は別途JPNICに申請して取得する独自ドメイン。NTTのメールサーバーに登録できるアカウントは最大30。

ユーザー側の準備

OCNエコノミーを利用するには、ユーザー側ではDSUとルータを用意する必要があります。DSUはNTTからのディジタル加入者線を接続する機器で、ISDNでも使うのでご存じかも知れませんね。ルータはネットワーク上でデータを正しい宛先に送り届けるための中継装置で、DSUを内蔵するモデルもあります。今のところこれらの装置と工事費を合わせ、初期費用として10万円程度を見ておけば良いでしょう(表4)。

表4:OCNエコノミー導入に必要な共通費用
契約料 800
基本工事費 4,500
屋内配線工事費 3,800
機器工事費(ユーザー宅DSU)* 3,500
IPアドレス設定(局側) 1,000
IPアドレス割当手数料 6,000

機器のケーブル接続をNTTに任せず自分で行うと、機器工事費3500円が不要になります。ルータの設定は基本的に自分で行わなければなりません。

他の長距離電話会社のサービス

NTTに対抗して他の長距離電話会社も同様なサービスを投入してきました。97年4月に日本テレコムがODN(Open Data Network)を、同年7月には日本高速通信のTeleway Sirus、第二電電のDION(DDI Integrated Open Network)がサービスを開始しています(図2〜4)。

これらのサービスのうちOCNエコノミーに相当するものは、NTTの局内に自社用のルータを設置し、そのルータとユーザーの間はOCNの回線を利用する方式です(図5)。サービスの内容はOCNとほぼ同じと考えて差し支えありません。いずれもOCNよりやや安い価格を打ち出していますが(表5)、ルーターが設置されている局の数が少ないので、利用できる地域は限られています。またTeleway SirusとDIONの場合はインターネットとの接続が現時点でかなり貧弱であることなどを考えると、しばらく様子見というところでしょうか。

今後は海外の電話会社によるサービスもどんどん日本に導入されると予想されます。これらが出揃うと、価格やサービスの競争もいっそう激しくなることでしょう。いよいよSOHOでも高速な回線に常時接続し、インターネットを自在に活用できる時代の到来です。

(MacFan 1997-09-15号)