music & knowledge sharing
Planet masaka played list 2018-06
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アレクサンドル・クナイフェル:
ルコモリエ
(オレグ・マーロフ)
プーシキンの「ルスランとリュドミラ」に出てくる架空の地を題材に、ささやくような朗読と最小限のピアノの音で構成される物語。併録のピアノ独奏、Sop独唱、合唱曲、いずれも禁欲的に節約された音で、静かな神秘の世界が描かれる。ECM Records
00028948112609
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アラン・ロースソーン:
室内カンタータ
(ウィルキンソン+デイビス+ソレム四重奏団)
Sop+Cemb+SQという編成で、懐かしい感じの無調ながらリリカルな1939年の作品。紛失したと思われていたものが2016年に発見されたという。併録「猫とつき合う法」はT.S.エリオットの詩から6つを選んで子供向け演奏会用に作られた語り付き作品のPf編曲。ロマン派的な様式が入り混じる弦楽四重奏やホールジー・スティーブンスなど(この曲の発見に)関係する人々の作品も含めた記念アルバム。Divine Art
DDA25169
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ジョージ・クラム:
変容第1巻
(マーガレット・レン・タン)
昨年のドナウエッシンゲンで発表されたばかりの新作は、それぞれ絵画に触発された10の性格小曲から成り、「金魚」とかたしかにそんな感じの描写。内部奏法をはじめ叩いたり声を出したり多様な技術が各曲の個性を引き立てているが、大げさな身振りはなく凝縮されている。併録「ピアノのための5つの小品」は1962年だから比較的初期の作品。こちらは特殊奏法はやや少なめ、不協和な音が跳躍しては休み、余白が多い。Mode Records
MOD-CD-303
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パラスケヴァイディス:
…遠くの沈黙
(ビバリー・エリス)
叫び声から始まって、胴を叩いたり超高音を弄ったりと妙な奏法をぼそぼそと続けるVc独奏曲。チェーザレ・パヴェーゼの詩に触発されたという。併録はPf独奏の「一方、他方」、Pf+AFl+Percの「それより先に進むことなく」、アンサンブルによる「道」など、不条理な身体感覚とでもいうようなずれの詰まった作品集。Wergo
WER7362-2
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クセナキス:
プサッファ
(インネルヴィーク)
6つの打楽器群の音の高低だけが格子に点で示されているという楽譜、さまざまな表現が可能なこの曲を2人称の視点と1人称の視点で2回演奏している。併録はフェルドマンの「デンマーク王」で、こちらは格子の間に記号や数字が示される楽譜で、音が少なく音量も非常に弱くとされている。繊細な囁き。
2L141SABD
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ジョン・ケージ:
ソング・ブックス
(リクセンベルク+ローズ+ウォービー)
90の「独唱曲」は、サティ/ソローのテーマに関係する/しない;電気音響を使う/使わない×歌唱/劇場;自身の手法/既存手法の変形/新規手法;をコイン投げと易経で決めて90日で作曲されたという。順序も組み合わせ(同時演奏)も自由なので、ここでは単独は14曲のみ、ほかは7つの「混合」として演奏されている。呟きから叫び、物音からモーツァルトのパロディまで、千変万化。Sub Rosa
3610151997745
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サイモン・アンドリュース:
なぜなら世界は中空で私は空に触れたから
(ニューステッド・トリオ)
Pfのくねくねした動機(フランク・ザッパのG-Spot Tornadoによると思われ)がVnとVcに受け継がれていく陰気な楽章に始まり、不協和音の隙間に静かな囁きが広がる第2楽章、鞭のようなピチカートの第3楽章、冒頭のモチーフが戻って「空に触れ」て短く終わる終楽章。タイトルはスター・トレックのシーズン3エピソードから。併録「アビキュー・トリオ」にもくねる動機。「私の鳩、私の兎」はVc独奏で始まりPf、ObにSopの歌。Navona
NV6163
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フィリップ・エルサン:
弦楽四重奏曲第4番「星空」
(ジラール四重奏団)
ラズモフスキー第2番を引用しながら、「星空を思い浮かべ、宇宙の音楽を考えているとにき着想を得た」と言われるそのアダージオの延長のようにして、自身の星空への眼差しを描く。比較的引用要素の多い両端部で、ときどき宙に浮いたり歪んでみたりする中間部を挟む単一楽章。併録はラズモフスキー第2番。Paraty
PTY318167D
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アンドレ・ブクレシュリエフ:
群島II
(イザイ弦楽四重奏団)
中心音、幅、時間、などが示された音楽の島々を図形楽譜にして奏する連作で、Iが2pf+2pec、IIIがpf+6perc、IVが独奏pfのために書かれている。SQのIIはもやもやした暗がりから小さな生き物が忙しく動き回るような交錯が生じたり、激しく濃い姿になったかと思うと疎らに散っていったり、島ごとにいろいろ。併録は単一楽章の「四重奏III」、5楽章構成の「鏡II」、疎な地に捻れた図が描かれる弦楽四重奏集。aeon
AECD0102
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クセナキス:
ペルセポリス
(クセナキス)
巨大な物体がぎしぎしと音をたててそこら中のものを踏み潰していくような破壊力を50分近く。真中付近で突然様相が変わり曖昧模糊とした中からまた別の怪物がゆっくり姿を現し、宇宙に吸い込まれていく。初演は砂まじりの風が吹きすさびサーチライトやレーザー光線が飛ぶ宮殿の廃墟に8チャンネルの大スピーカを並べて大音響で鳴り響かせたという。他ノモス・アルファからペルセファサ、ケクロプスまで、CD4枚分の作品集。Decca
00600753339701
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エリアーヌ・ラディーグ:
オッカムI
(ロドリ・デイビス)
延々と同じ持続音(ここではE♭)が30分続く中で、瞑想的な空間が生まれる。ハープと書いてあるのはシンセサイザーARP-2500の間違い?いや、映像を見るとハープの弦を2本の弓で「弾いて」おり、最後に爪弾くのであった。併録のOccamシリーズはみな同様のドローンをbirbyné(リード)、Va、BClの独奏や合奏で奏する。微分音的にゆっくり変化したり別の音が重なったりするものもある。
Shiiineer1
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オステ・ダ・レッジョ:
婦人、騎士、武器、愛
(ラ・コンパーニャ・デル・マドリガーレ)
アリオストの長編詩『狂えるオルランド』に作曲した16世紀のア・カペラ曲を集めたCDで、ダ・レッジョは長い物語のテーマを語りあげる冒頭を、端正に力強く歌う。8人の声楽アンサンブルがみごとな響きを聴かせてくれて、新鮮。Arcana
A363
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ハーシェル・ガーファイン:
死すべき棲家
(スラッテリー+ドーヴァー)
ドナルド・ホールの詩11篇を選んで作曲した、衒いのないミュージカル風の歌曲。タイトルは第2曲「私が若かった頃」の最後にあるMortality Mansionsという言葉で、人生のさまざまな段階での希望や欲望、そして寂しさなどを込める。後半に同じ詩をホールが同じピアノを伴って朗読、最後にホールの妻ジェーン・ケニオンの「そうじゃなくて」曲をつけたが歌われる。今日はこういう感じが染み入る。Delos
DE3548
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小杉紗代:
ライラック・ノバ
(五嶋龍+コーラー+AANMIロサンゼルス・アンサンブル)
自身の中に現れるライラックあるいはその色から生まれるものを音に移し替えたという。面白い部分もあり独奏Vnはなかなかスリリングなのだけども何か大甘の夾雑物が邪魔しているような感じも。併録の葉小鋼(イェ・シャオガン)「ラムラ・クオ」はチベットの聖なる湖を描いたそうで、よりゆったりと色彩も豊か。ほかアジア系の若手の作品集で、どれもどこかに甘さが残ってしまう印象なのは、今日の雨のせいなのか。Delos
DE3555
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ヘンツェ:
声々
(ウォーカー+スペリー+ロンドン・シンフォニエッタ)
ホー・チ・ミン、ブレヒト、エンツェンスベルガー、ウンガレッティなどの抑圧と抵抗のテキストによる22曲をMSとTenが歌うVoices。15人で70種類の楽器、さらにテープまで用いる。音楽は繊細なものから叫ぶもの、くだけたものまで多様で、多国語のテキストが理解できなくてもメッセージ性は強い。Decca
00028948339662
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ルトスワフスキ:
6つの子供の歌
(コセンジャク+ルトスエアー五重奏団ほか)
民謡素材を用いながら機能音楽を書いていた頃の作。椅子とバケツがダンスをしたり、猫が動き回ったり、花が小川のように流れたり。少年合唱と室内オケが軽快で楽しい響きを奏でてくれて嬉しくなる。併録もみな子供のための曲で1954年までに書かれたもの。
CDAccordACD242
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ジェイムズ・マクミラン :
めでたし、海の星よ
(マクリーシュ+ガブリエリ・コンソート)
柔らかく推移していく響きが染み入る。同じテクストにオワイン・パークがつけた曲はユニゾンを軸にしながらも和声が美しく切なく変化する。さらにルネサンス期のシェパードの対比。併録にウォーロックからレイトン、ハウエルズ、ジョナサン・レーン、マシュー・マーティン、そして遡ってホワイト、ウィルキンソン。絶妙のア・カペラ。Signum Classics
SIGCD536
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アンドレ・ジョリヴェ:
祝婚歌
(シモンピエトリ+セクエンツァ9.3)
12声の「声楽オーケストラ」曲で、ジョリヴェ自身がエジプト、ヒンズー、ヘブライ、ギリシャ、中国語の聖句を組み合わせたテキストを用意して書いたという。音楽もさまざまなスタイルが取り入れられ、生き生きとして表現力豊か。結婚20年に妻に献呈されている。併録はダニエル=ルシュールの「雅歌」とメシアンの「5つのルシャン」、合唱との日々を思い出すア・カペラ曲。
ALPHA112
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アンドレアス・プリューガー:
5つの小品
(シャムベック+ルケリーニ+ユン・ナヨン)
2本のVnとPfが無理なく自由に戯れて音を紡いでいく。第5曲はフーリエ級数によって構成されているというけれど、特に作為的な感じもない。併録各曲はVn1本でより凝縮され、最後の「石」は無伴奏。これはちょっと演奏が気負った、というかやや未消化かも知れない。
NEOS11707
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タヴナー:
3つのシュルレアリスムの歌
(ドロシー・ドロウ+ルドルフ・ヤンセン)
MS+Pfにテープ録音の声も加えて、エドワード・ルシー=スミスの歌詞を、いたずら書きの断片のようにして歌う。併録はダラピッコラの「アントニオ・マチャードの4つの詩」、ベッドフォード の「マグニチュード2.9の上の星」、マロシュの「デスコルト」など、どれもちょっとシュールな世界を描いて興味深い歌曲集。Caprice
CAP21906
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ポーラ・マシューセン:
古い火が古い建物をとらえる
(ロードバング)
Tp、Trb、BClそれにBar、そしてそれらを録音して変調したような音がA音を中心に微妙に絡みながら、何かを思い出すような民謡風の旋律が現れ、歪んでいく。タイトルはバロウズのエッセイの一文から。併録テイラー・ブルックの「ウァリコンの歌2」はアメリカの古民謡らしい旋律に管楽器が反応してなぞる。ウォルシュレーガーの「世界とは何か」はベケットのテキストを、半音ずつ上昇する音の断片で構成してみたり。いろいろへんてこな音のお遊戯。New Focus Recordings
FCR201
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マイケル・ブレイク:
チェロ・ソナタ
(ガウヴェルキ+ヴァンデワレ)
明るい響きとフォークソング的な旋律要素を組み合わせながら、さり気なく違う方向にずれていくような、遊び心に満ちつつ最後は無垢な透明さに。併録の「無言歌」「構成の原理」など、シンプルで心地よさ気な流れの中にそうではない何かを引き込んで立ち止まったり、「砕かれた景色」のようにアフリカ的強靭さと脱力したパターンの組み合わせとか、そんな感じ。Wergo
WER7361-2
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サラ・ネムツォフ:
部屋I-III
(アンサンブル・アダプター+ソナー四重奏団 )
SQ+BFl+BCl+Hrp+カオスパッドという編成。ほとんど1音毎に調律を変えていくHpの実音とそれを変調した奇妙な音が鳴り響く。Iの間はVn、Vaは楽器をテーブルに置いたまま叩いたりこすったり。IIで少し木管が動きを見せ、IIIでは弦が狂ったような闖入。動画を見ると一層インパクトがある www.youtube.com/watch?v=c9Z9N1GmfR4 併録も各々これでもかという実験音響。Wergo
WER7366-2
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ポーリン・オリヴェロス:
聖ジョージと龍
(オリヴェロス)
チャペルの石壁に反響する自らの純正律アコーディオンの音に反応しながら瞑想的不協和音(と時折加わるイベント的な音)を徐々に変化させていく、47分に及ぶ「ディープ・リスニング」の即興。併録「ホイットニー氏追悼」は亡くなった人の名前をそれぞれに唱える合唱との共演。G音を中心として衝突音や和音が広がっていくが基本音はずっとどこかで響き続ける。Mode Records
MOD-CD-40
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イワン・ヴィシネグラツキー:
ツァラトゥストラはこう語った
(マルティーヌ・ジョストほか)
4台の四分音ピアノのための交響曲ということで、調律が狂ったどころではないその破壊力は凄まじい、というか脱力する。その分、音楽の構造などは保守的で、それによって音の奇妙さが際立つ(そうでないとただの滅茶苦茶か)。併録「交響的断章第4番」ではPfに加えてオンド・マルトノが、自作カンタータを引用した《「存在の日」の2つの主題による瞑想曲》ではVcがロマン派っぽい主題に微分音を交える。他にバンキャール、モエーヌの微分音作品も。
Shiiin10
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ノーノ:
さまよえる響き
(アンジウス+アンサンブル・プロメテオ)
MS+Fl+Tuba+Perc+電子音という編成で、メルヴィルの『戦闘詩篇と戦争の相貌』の一部とルネサンス歌曲の断片を組み合わせている。大半が静寂の中に途切れ途切れの冷たい音が連なり、歌も絶叫だったりつぶやきだったり。これはものすごく厳しい音楽。併録は同じ曲の初演時録音。Risonanze errantiをとりあえず訳したがこれでいいかどうか。
Shiiineln1
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ヴィルフリート・ヒラー:
はだかのサイのバラード
(ハインリヒ・ウェーバーほか)
17年にわたって共作を続けたミヒャエル・エンデとのコンビによる音楽物語。手回しオルガンにのった物悲しい主題歌を中心に、さまざまな楽器が動物たちを表現する。絵本も読んでみた。自分以外誰も信じない攻撃的なドラサイから皆が逃げ出し、自分で銅像になって身動きできなくなる…独裁者の哀れななれの果て。併録「がんばりやのかめトランキラ」も楽しい音楽。DG
00028947641421
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アモス・エルカナ:
リフレクションズ
(ヤエル・バロルスキー)
Vnの実演を録音しながらコンピュータの制御で多重に再生し、カノンだったり協奏だったりする反響が生まれていく。「トリップ」(pが1個多い)はFl+Cl+Vn+Vc+Pfでフラクタル構造を持つのだという。「8つの花」はクルターグに贈るピアノ曲、「4つの敵」はカスタネダの『ドン・ファンの教え』にある知者の敵をClで、「震え」はチェレスタ。Albany
TROY1718
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アンソニー・ポール・デ・リティス:
三叉曲線の前奏曲
(ジェニファー・ハイマー)
カリンバというアフリカのトイピアノみたいな楽器に電子加工した音を交えて、軽く漂うような反復。併録「ピリのための5つの楽章」は、朝鮮民族楽器のチャルメラというかバグパイプのようなピリ、「梅花」は琵琶、「水.生.」は二胡、「エルフ・フルート」はFl、「エレグア 1」はTrb、「シェン」はVc+笙など、さまざまな楽器と電子音で遊び心のある(解説にもあるようにある種アジア風の)音響を作っている。Albany
TROY1710
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ノルドグレン:
弦楽四重奏曲第3番
(コッコラ四重奏団)
二度の上下で揺れ動くモチーフに民謡的にも思える無調のモチーフが重なり、バルトーク・ピチカートを多用した激しい部分から濃密な絡み合いまで、言いたいことが溢れてくる単一楽章。併録「曖昧な表現」はカンテレ+SQという異質な組み合わせだがあまり消化されていない感じ。チェロ・ソナタは野心的な3つの楽章の後に穏やかでアルカイックな終楽章が置かれる。弦楽五重奏はもやもやとした霧の中から湧き上がるような第1楽章の後、なぜか全く無音の第2楽章(NMLやらかしたな)。Alba
ABCD421
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ヘンツェ:
無伴奏バイオリン・ソナタ
(スケアヴェズ)
3つの楽章はポリツィアーノの「オルフェオ物語」に出てくる3人の脇役だという。道化めいた仕草の表現というのか、よたったり飛び跳ねたり目まぐるしく表情が変化する。併録は単一楽章のVaソナタ、同名のオペラから取ったポリチーノ・バイオリン・ソナチネ、初期Vnソナタなど。Naxos
8.573886
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