music & knowledge sharing
Planet masaka played list 2018-08
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フィリップ・ユレル:
ルイージのために
(ヴァラード+アンサンブル・クール=シルキュイ)
スペクトル楽派第二世代と呼ばれるきらりとした響きで、アフロ=アメリカン音楽に触発されたというリズミックなモチーフが繰り出され、水が滴るような中間部を挟んで姿を変えて行く。併録「墓、ジェラール・グリゼイの思い出に」はPf+Perc(特にVib)の軽やかな曲。「フラッシュ・バック」は管弦楽、「…一緒に」はアンサンブルで、やや刺激音が多くて疲れる。aeon
AECD0105
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伊福部昭:
ギリヤーク族の古き吟誦歌
(山田千代美+山田令子)
サハリン方面のニブフ族のロシア名だそうだ。嫁探しとか、苔桃の果拾いとか、熊祭といったテーマの伝承歌をピアノ伴奏歌曲にした。古楽歌手がモード(旋法)の原理に基づくモーダルマナーで歌う。併録は「サハリン島土蛮の三つの揺籃歌」つまり子守唄。さらに「踏歌」は古代日本旋法によるGt独奏曲。しっとりと響いてくる。Carpe Diem
CD-16316
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シェーンベルク:
モーゼとアロン
(カンブルラン+SWRバーデン・バーデン&フライブルク)
十二音技法の1つの音列で全曲が書かれる大規模オペラで、未完の第3幕は含めない2幕の演奏会形式ライブ。「黄金の仔牛の踊り」は第2幕第3場全体を指したり、その中の「屠殺人たちの踊り」(トラック9)を指したりと違いがあるようだが、どちらにしても聴き応え充分。haenssler
CD93.314
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シェーンベルク:
バイオリン協奏曲
(ミヒャエル・バレンボイム+ダニエル・バレンボイム+VPO)
12音列を用いて調性はないのだけれど、響きは豊かでほのかにロマンティックでもある。ちょうど同時にNMLに登録されたハーンの演奏に比べると、ゆったり目のテンポで独奏も全体の響きに溶け込み、あまりオケと対峙はしない感じ(切れ味というか細かい部分の鳴りは一歩譲る)。併録のピアノ協奏曲はより明確な十二音技法のようだが、調性的な響きも多くオーケストレーションも厚い。父バレンボイムの独奏、ブーレーズ指揮。Universal
00028948116133
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シュトックハウゼン:
マントラ
(ミカショフ+ベヴァン)
冒頭に提示される13の“部品”から成るフォルメルを縦横に拡張(12の形式による拡大と13×12の移高)していく。2台のピアノの音がリング変調して重ねられ、音程によっていろいろな滲み方をする。鍵盤の脇においた小さな打楽器を、時に掛け声を唱和しなが、鳴らしたりする。この途方もなく多様な音空間がひとつの組織的構造で導かれているという、その可能性の広がりに圧倒される。New Albion
NA025CD
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マーリン・ボング:
溶融光の構造
(キュリアス・チェンバー・プレイヤーズ)
新宿やパリで録音した騒音、日常音を分析して、BFl+BCl+Pf+Gt+Vn+Vc+Perc(+ラジオ)に置き換えて表現したという、特殊奏法を駆使した徹底的ノイズ音楽。「ジャスモネイト」はさらにタイプライターなど小道具を加え、「パリノーデ」はBFl+BCl+Vcに花瓶など3つのオブジェクト、「アーチング」はVc+本当の鋸などいろんな道具、「パーフリング」はVnと、さまざまな編成かつ増幅したりしながら。演奏動画を見ると、こんなことやってるのかといろいろ驚く。
NEOS11817
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ペーター・ルジツカ:
弦楽四重奏曲第7番
(ミンゲ四重奏団)
ヴァレリーの「あらゆる瞬間の可能性」possible-à-chaque-instant(発話前の不確定性)を表題とし、自身のSQ第5番のモチーフを利用した断片的な運動体の可能な姿をさまざまなトーンのlontanoな空間に配置する。空間は神秘的だったり激しくなったり。ベートーベンの作品131へのオマージュもあるのか。最後のセクションではハーモニクスの隙間にツリーチャイムらしき音も。併録「クラウド2」はSQのささやきが管弦楽に広がっていく。途中ちょっと煩いが最後はSQ7番と通じる。
NEOS11808
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フィリップ・マインツ:
空中庭園
(エッシェンバッハ+ベルリン・ドイツ響)
古代ギリシア世界の七不思議の一つである庭園で架空の蔓植物がぬぅっと伸びてくるというような、半音階やグリッサンドやちょっと妖怪じみた不協和音を散りばめた音楽。併録「垂直の三部作」はロベルト・フアロスの詩によるSop独唱のオケ曲。「手には何も持たず、それ以上の目的を求めるな」というテキストの通り、固定されない自由な歌を繊細な伴奏が支える。管弦楽だけになって急に燃え上がった後、また静まって暗い谷を歩むような第2部、そして静寂の後に「不在から逃れでた糸、無のかすかな変動」という第3部。変動が蓄積されると大きな音になるのか。
NEOS11712
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トリスタン・ミュライユ:
分水界
(ヴァラード+BBC響)
波が砕ける音と引き波をスペクトル分析した表現を3回反復する冒頭はきらきら輝いている。そこから4管編成のオケで水のいろいろな動きを色彩たっぷりに描く。ちょっと煩いところもある。「残酷物語」は2管編成オケと四分音ずらして調弦した2本のエレキギターで、珍しい響きではある。「シヤージュ」は京都信用金庫創立60周年委嘱で龍安寺石庭をイメージしたというから航跡というよりは砂紋か。繊細な音の組み合わせで始まり、クライマックスでは風鈴から京都市電の警笛までの「スペクトル」を組み込んだというが、途中からやや才走って作りすぎたような感じも。aeon
AECD1222
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トリスタン・ミュライユ:
冬の断章
(ガラント+アルジェント室内アンサンブル)
微分音で滲んだ冷たい音の呼びかけが波紋のように広がり、ゆったりしたこだまや、きらめく光のようにくるくる舞い上がる音や、ポツポツとしたピチカートなどが応える。併録「みずうみ」はより冷たい滴が倍音を含んだクラスターのような響きに溶けていく。時々大きな音もする。「エーテル」の特にFlのハーモニクスをかぶせる響きはこれがスペクトル楽派たるところか。「答えのない質問」はFl独奏、「鐘の音をわたる葉ずえ」は鍵盤やスルポンの冷たい響きの上をFlのフラッターなどが流れる。aeon
AECD0746
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フィリップ・マヌリ:
パルティータ I
(デジャルダン)
Vaのさまざまな技巧によるパッセージをライブ・エレクトロニクス(ブックレットではシュワルツ、ジャケット裏ではル・ソー)でリアルタイムに加工、多重化して包み込むようにポリフォニーを響かせていく。昨日の「時間、使用法」と同じことなのだが(ル・ソーなら電子音響も同じ)、ずっと多様で魅力的に感じるのは飽和するうるさいffが無いからか、9つのセクションがそれぞれ個性的だからか。併録「自画像のための断章」は3群に分かれた30人が演奏する7つの楽章。多彩な楽器が色彩豊かにきらめく。Kairos
0012922KAI
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フィリップ・マヌリ:
鍵盤の本
(サード・コースト・パーカッションほか)
ここでのclavierは鍵盤打楽器で、マリンバ+タイ・ゴング、Mrbデュオ、クセナキスが考案したシクセン(Sixxen)6人、Vib独奏といった編成の6楽章。電子音は用いていない。第1楽章の途中で姿を見せる16分音符のモチーフが中心となって音色を変えながら即興的に並べられる。併録「メタル」は全編シクセンで、微分音的な呼応と細かな動きが遠近感を持って入れ替わりながら、そのやや滲んだ音色で幻燈のように流れていく。New Focus Recordings
FCR187
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エサ=ペッカ・サロネン:
インソムニア
(サロネン+フィンランド放送響)
2002年サントリーホール国際作曲委嘱作品。暗い霧のような響きが突然機械的移動体のように動き始め、空を飛翔したり、打楽器を伴って地を疾走したり、湖のほとりで夕陽を見たりとドラマが展開する。夜の暗い面についてということで「眠れない夜」とでも訳すか。併録「観音開き」(Wing on Wing)は追い風時にヨットの2つの帆が反対に開く状態だそうで、そこに二人のSopが神話的に降臨する。「異物」(Foeign Bodies)は身体言語、言語、踊りの3章からなる。どの曲も雄弁で音が溢れている。DG
00028947753759
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バーンスタイン:
交響曲第2番「不安の時代」
(フォス+バーンスタイン+イスラエル・フィル)
今日が生誕100周年なので、ここから始めて巨大な「バーンスタイン・コレクション」を聴く。NMLではPart.1~4に分割収録されているが、このPart.2が自作曲でCD16枚分。DG
00028947927662
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ステファン・イップ:
ささやく香気
(陳玉芳)
漢字タイトルは花飛鳥語となっている。ハーモニクスや開放弦にスルポン、グリッサンドなどを駆使して胡弓のような趣をかもす、なかなかおもしろいVn独奏曲。併録のラン(弦)は古筝を爪弾くだけでなく弓でもごりごり鳴らす。ディング(鼎)は古筝+Cbでちょっとフリージャズっぽい感じ(違う?)も。Navona
NV6175
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ヴィンセント・パーシケッティ:
セレナード第7番
(マイロン・シルバースタイン)
調性はいちおうないのだけれど各部分は聞きやすい調和音で構成され、何というか不安を抱えながら笑っている感じ。同第2番はもう少し無調っぽいか。併録ソナチネ第1~6番、詩集第1~3巻、小さなピアノの本などみな50年代以前のピアノ曲でよく似たイメージ。もう少し先のピアノ・ソナタ第10番以降とかすいぶん違うのだけれど。Centaur
CRC3632
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ドナルド・マーティノ:
バイオリン・ソナタ
(ミランダ・クックソン)
ロマンティックなラプソディの趣もある12音技法の技巧的独奏曲。第3楽章はピチカートだけで弾く4声の短いフーガ。弓奏とピチカートとバルトークPizzが交錯し複雑な急速音型の間に詠嘆が組み込まれる終楽章。ソナタ第2番はPfが挑発したり協調したり傍観したり。複雑なリズムで行き交う。ロマンツェは表情豊かなカプリチオーソ。唯一1960年代の幻想曲変奏曲は多彩な技巧を詰め込んだ意欲作。Centaur
CRC2955
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マイケル・ハーシュ:
花の残骸
(ミランダ・クックソン+ブレア・マクミラン)
チェスワフ・ミウォシュの詩の断片に基づく21の短い楽章。儚く消えていくものをじっと見つめて、Pfが比較的雄弁に、Vnは言葉少なく凝縮して表現している。HEDCHというマタイを思わせる音型は何を表すのか。「5つの断章」「14の小品」はいずれもVn独奏で、前者はやはり寡黙で切り詰めた表現。後者はプリーモ・レーヴィのテキストにより、ダイナミックな運動と静かなエネルギーが行き来する。激しい第12曲からきわめて疎な夜想曲を経て雪解けの瞑想の終曲。Vanguard Classics
MC105
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ファーニホウ:
見えない色彩
(ミランダ・クックソン)
アクロバットのような音型に微分音も用いられて、正しのか狂っているのかも分からない。アルディッティはかなりコンパクトに音を詰めることで破綻なくまとめているが、クックソンは間をたっぷり取りながらすべての音を味わうかのよう。3回聴き直してようやく把握できてきた。シャコンヌ風間奏曲は強烈な微分不協和ダブルストップの定旋律が提示されて難技巧オンパレードだがよほど分かりやすい。エリオット・カーターの「4つの賛美」、ヴォルペの「小品第2番」もそれぞれ挑戦的な難曲のはずなのに、ここでは心安らかに音色を味わえる場面。Urlicht AudioVisual
UAV-ED-5979
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ルトスワフスキ:
パルティータ
(ミランダ・クックソン+ブレア・マクミラン)
推進力のある両端楽章と詠嘆的なラルゴの間に偶然性(不確定性)を取り入れた短いアド・リブ楽章が挟まれる、機能性の中に土の香りが色濃い。シュニトケのソナタ第2番はアバンギャルドな技巧から陽気でふざけた(ようにみえる)気分、また神妙な(に見せかけて横滑りする)フレーズなどのコラージュ。バルトークのソナタ第2番は民族風の歌が構築的に変容していく楽章から舞踊のメドレー楽章へ。ECM Records
00028948117895
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エリオット・カーター:
二重奏曲
(ミランダ・クックソン+ブレア・マクミレン)
雄弁なVnに対して極端に寡黙だったPfが突如目覚めるように忙しく動き始め、拍節変調(メトリック・モジュレーション)を繰り返しながら緩急自在に、それぞれが独自に進んでいく。併録セッションズの無伴奏ソナタは十二音技法による透徹した4楽章の大作。ジェイソン・エカートの「ストレムカール」は頻繁にピチカートを挟む忙しいVn独奏曲、と思いきや開始後2分近く経てPfが加わり、隙きを見て飛びかかろうと間合いを伺いながらいつしか取っ組み合いに。そこでいったん音楽は途絶え、今度は短く交互に音を投げかけ合う。Urlicht AudioVisual
UAV-ED-55989
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クセナキス:
ミッカ“S”
(ミランダ・クックソン)
重奏のグリッサンドで2本の対立線がくねくねと動き、最後に抑揚たっぷりに人が話すような分節された単線に。ゲオルク・ハース「地球の終わりに」は、静かな微分音の囁きが、これまた話すようなしかし柔らかな動きになり、畳み掛けるような重音グリッサンドが連続する。ビアンキ「センプリーチェ」は古き良き名人芸風の断片がより糸のような波打つ素材で繋がれるというか。バーンズ「如何に思い如何に夢み如何に響くか」はノーノへのオマージュ、ジグマン、ベラスケス、ロウはVn+電子音。多彩かつ見事。Urlicht AudioVisual
UAV-ED-55988
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ヴィトマン:
第三の迷宮
(ポマリコ+ヴェゲナー+ケルンWDR響)
ニーチェのディオニュソス讃歌第七歌「アリアドネの歎き」からのテキストとかボルヘスの小説である「アステリオン」とかをSopが歌ったり、ツインバロンやツィターを含む弦楽器群を用いたりとか。最後に打楽器が乱打されたりするものの、全体は無駄なく研ぎ澄まされたミニマルな音づくり。併録「対位法的陰影」は「光の習作」シリーズの第2作。静かすぎてほとんど聞こえないClの呟きにいろんな楽器の断片が少しずつ加わりVa独奏が参加して仕事を始めるとClも活発に。最後の賑やかしはどうかなとも思うが(最後の重低音は卓上JBLでは無理)、凝縮された佳曲。Wergo
WER7369-2
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R.シュトラウス:
ドン・キホーテ
(ヴァイグレ+エンダース+フランクフルト歌劇場管)
独奏、オケともにしなやかかつ精緻で音色のニュアンスも豊か。いまの気分にもよく合う。併録のツァラトゥストラも端正で細部まで丁寧なよい演奏だが、あちらはいろいろ欲が出てくるので。Oehms Classics
OC893
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ベルク:
ヴォツェック
(ヴァイグレ+フランクフルト歌劇場管+イヴェルセン+マーンケ+ブロンダーほか)
管弦楽は緻密で歌も上出来。ロイの演出もかなり評判になったらしい2016年のライブ。繰り返して聴いて味わい中。Oehms Classics
OC974
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オルフ:
シュールヴェルク
(カール・パインコファー打楽器アンサンブルほか)
オルフ生誕100年の機会にこの音楽教育に関する作品を5巻のCDにまとめようと録音された企画の第1弾で、ムジカ・ポエティカと題されている。出版された「子供のための音楽」などとは異なる区切りで、曲のタイプごとにまとめている模様。気分転換に手当たり次第に検索している中で、ボルドゥンとシュトゥーフェンがカルミナ・ブラーナにも関係ありそうと思いついて、改めてNMLで探してみた次第。Celestial Harmonies
13104-2
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オレリアン・デュモン:
7つの谷
(ヴュルツ+アンサンブル・リネア)
FL+Cl+Hp+Perc+電子音という編成で、無から湧いてくるような幽玄な響きの中、ときおり打に導かれるようにして動きを見せる。メッセージと言うよりもただ流れていく音画。「子守歌とほこり」はVn+Va+Vc+Cl+Pfで、一部加工されるものの基本的には楽音で、時々引っ掻くような狂騒が紛れ込む。「踊りを始めよう」は風奏と軽い打楽器によるジャブみたいなもの。Odradek Records
855317003240
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細川俊夫:
弦楽四重奏曲第2番「原像」
(アルディッティ弦楽四重奏団)
ぽつんと打たれたピチカートの点から繊細な線が引き出されて、グリッサンドしたり飛び散るようにクレッシェンドしたり。バルトークピチカートが撥のよう。併録「ランドスケープ I」「沈黙の花」「書(カリグラフィー)」「開花」など、緻密で吸い込まれそうな弦楽四重奏曲集。Wergo
WER6761-2
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マリオ・ラビスタ:
旅行記
(エドガルド・エスピノーザ)
ハーモニクスの分散和音で構成される透き通った儚い音空間。CDはメキシコ現代チェロ曲集で、マルセラ・ロドリゲス「ルンブレ I」、ゴンサロ・マシアス「出発」、アナ・ララ「コアイア」、マリア・グラニージョ「モノローゴ」ほか。基底音をトレモロで刻みつつ別の弦に跳躍するとか、ハーモニクスとスルポンを混ぜたりとか、一部サンプリング音を加えたりとか、開放弦相当とそのハーモニクスの単純な長音をゆらしたり分解したりとか、構造的で比較的単純な音型に多彩な響きを与える。Urtext
JBCC277
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ヘンツェ:
エル・シマロン
(ピアソン+ツェラー+ブローウェル+ツトム・ヤマシタ)
キューバの逃亡奴隷への自伝インタビューに基づくエンツェンベルガーのテキストをBrが語り歌い、Fl+Gt+打が彩る。打奏者だけでなく他3人も何らかの打楽器を操りながら。表題を持つ15の章というか場面で構成されて、それぞれが音楽によるモノドラマのよう。初演当時の作曲家自身の指揮による録音。DG
00028944987225
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フォレスト・ピアース:
シルバーバーチの巻物
(キヴィー・カーン=リップマン)
C-G C-G調弦のチェロを用いて、スルポンを多用しながら分散和音をバネに進み、ハーモニクスと重音がリズミカルに入れ替わる上に断片的な旋律が聞こえ、最後は通常の音階から外れた胡的な音になる。「六月の主」はアメリカギンヤンマという蜻蛉の名前だそうだが、Vn+Va+Vcが生気あふれるエキゾチックな響き。「ダンテ瞑想」は平行移動から表情を変えていくVcとともにSopが天国篇最終章を歌う。味わいある。New Focus Recordings
FCR207
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原田敬子:
5番目の季節
(ユルゲン・ルック+シュテファン・フッソング)
ギターとアコーディオンという組み合わせで、ゆっくりしたグリッサンドが微分音を感じさせたり、動かない時間を手探りで進んだり、最後は慌ただしく対話して終わる。Acc+Trbの「ミッドストリーム+」、+Flの「第3の聴こえない耳II-b」、+Pfの「F. フラグメンツII」などいろいろな響き。Wergo
WER7354-2
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ベルトルト・フンメル:
3つのピアノ小品
(マルクス・ベルハイム)
副題「アルバン・ベルクへのオマージュ」が示すように12音技法を用いた詩的な曲。CDではまとめて収録されずに、作曲者自身によるヘッセの朗読や歌曲「ヘルマン・ヘッセの詩による6つの歌」「コプフロス」などを前後に挟んだ、ヘッセの詩をめぐるアンソロジーの構成。Musicaphon
M55719
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ウォルフガング・リーム:
ヘルダーリン断章
(ソルター+ヴァンバッハ)
ヘルダーリンの詩9篇(の一部)を一つの思考の流れのように並べ、凝縮された音楽をつけた。ここではピアノ伴奏版。「息の転換の4つの詩」(ツェラン)はいいとして、「新アレクサンダー歌曲」(ヘルベック)や「ヴェルフリ歌曲集」はロマン派風素材を見せつつ崩していくつもりかもしれないが違和感。CPO
999049-2
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ジャチント・シェルシ:
コ・ロ
(エボニー・デュオ)
FlとClがユニゾンや半音で近接してくねくねと絡み合う、不思議な対話。併録は同じデュオの「小組曲」、Fl独奏の「ケアンズ」「プゥィール」、Cl独奏の「影を通した祈り」、Pf+Flの「クリシュナとラドハ」など。独奏もさることながらデュオの拘束されつつ自由を探る姿が面白い。col legno
WWE1CD20035
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エリック・クレイヴン:
もつれた状態
(メアリー・ダレー)
作曲家と奏者の関係が「量子もつれ」のように入り組んで多層化された状態にあることを表すタイトルだそうで、「非規範的」書法は高中低という段階=自由度を持ち、48曲のうち奇数番はすべて低段階、偶数番の曲は異なる自由度で(II/XL、X/XXのように)同じ楽譜を用いる12対を構成する。手の込んだ作りだが、音楽は自由で軽やかなピアノの運動。Metier
MSV28571
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ガブリエル・ジャクソン:
スタバト・マーテル
(マクリーリー+マリアン・コンソート)
10声のア・カペラのために書かれた、色彩豊かな和声と美しい応唱が印象的な曲。最後にジェイムズ・マクミランの「ミゼレーレ」(詩篇51)を置き、間にパレストリーナとアレグリの作品を挟んだ。聴き応えのある歌唱。Delphian
DCD34215
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シュトックハウゼン:
ピアノ曲I-XI
(ザビーネ・リープナー)
19あるピアノ曲連作のうち1952~1961年に書かれたもので、I–IV、V–X、XIがそれぞれグループになる。群(Gruppen)によるトータルセリエということだが、曲ごとにさまざまで、IXの冒頭の暴力的な連打、Xのきらめくグリッサンド、XIの不確定性など多彩。しかしリープナーはXを45分近くかけ間をたっぷりとって弾いており、現代最高峰の難曲というイメージとはかなり違う。Wergo
WER7341-2
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カレヴィ・アホ:
バイオリン・ソナタ
(レナーテ・エッゲブレヒト)
シャコンヌから始まる4つの楽章は、バロックの傑作を想起させるような重音奏法から静かなピチカート、そして柔軟な運動へと発展していく。微分音を多用する不思議な音程…と思ったら演奏が下手すぎて音が取れていないだけ。フレージングもずたずたで、これは酷いなぁ。併録のラウタヴァーラ、ノルドグレンも含め、フィンランドのVn音楽を知るための貴重な録音なのでメモしておくけど。Troubadisc
TRO-CD01452
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ジョン・ケージ:
ピアノのためのソロ
(トマス・シュルツ)
63ページに84通りの記法で書かれた楽譜をどんな順序でも、一部でも、Fl、Cl、Tpなどと組み合わせても、室内楽としても、管弦楽との協奏曲としてもよいという何でもありの偶然性音楽。内部奏法なども交えながら、禅問答のように音がぽつぽつと流れる小一時間。Mode Records
MOD-CD-304
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野平一郎:
波の記憶
(福田進一)
チョーキングとか複数の弦同時トリルとか胴叩きといろんな技法を取り入れ、時にギターが琵琶のようにも響く。福田曰く「野平版のセクエンツァといった趣き」だそうだ。併録の武満徹「海へ」はFl+Gtの、ちょっと甘めの名曲。野平多美「ウォーター・ドロップス」もしなやかなギターの佳曲。ほか日本歌曲の編曲は、まぁ悪くないけど。Naxos
8.573911
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アフメト・アドナン・サイグン:
弦楽四重奏曲全集
(ダネル四重奏団)
トルコの伝統音楽を西洋音楽と融合させようとしたということで、トルコのマカーム音階(ここでは微分音を用いるわけではない)やウスル・リズムが取り入れられている。そういう要素が色濃く現れたり、ややバルトークっぽいとも言えそうな書法の中に溶け込んでいったりする。CPO
999923-2
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