music & knowledge sharing
Planet masaka played list 2019-03
チャン・ウノ :
弦楽四重奏曲第2番
(アルディッティ弦楽四重奏団 )
山水画からインスピレーションを得たという、鋭く起伏に富んだ音画。併録「白い影」は6人の打楽器奏者によるアンサンブル。韓国語で“魅力”を意味する「Gohok」は尺八のようなフルート。「パノラマ」はFl+Cl+Vn+Va+Vc+Pf+打の7人で、色彩豊かに(やはり自然を?)描く。いずれもよく作り込まれていて面白い。Kairos
0015035KAI
(2019-03-31 )
デイヴィッド・フェネシー :
パノプティコン
(プサッファ+ヘブリディーズ・アンサンブル )
ツィンバロンが同じ音を抑揚をつけて延々と反復し、他の楽器が徐々に重なっていく。最後に、機械のふりをしていた監視人が急に姿を現して、実は幽霊だったというような。併録ピアノ三重奏曲はケージとフェルドマンの語録から再構成した語りの合間に楽器がポツポツ。「13の工場」は微かな背景音にとらえどころのない断片がいろいろ。「ヒルタ・ラウンズ」はややアンビエント風の弦楽。若い頃ロックバンドというのは確かエリッキ=スヴェン・トゥールもそうだった。NMC Recordings
NMCD244
(2019-03-29 )
アンナ・ソルヴァルドスドッティル :
静寂
(ライオット・アンサンブル )
アイスランド語の表題Róの通り、静かなユニゾンのロングトーンが全体を支配する。壊れやすい花を持って綱渡りをするようなものだそうだ。併録レベッカ・ソーンダース「なおのうごめき」(ベケット)は音域が広がりPfも加わるがよく似ている。チェルノヴィン「空気」もゆっくりした静かな流れだが、軋んだノイズや打楽器の一打といった抵抗物が加わり、そちらの力が増していく。ミレラ・イヴィチェヴィチのBaby Magnifyは逆に最初からノイズが乱れ飛ぶが、様子をうかがう間が時折り。リザ・リムの「語れ、静まれ」はクールなVn独奏とキッチュな合奏の協奏曲。Huddersfield Contemporary Records
HCR20CD
(2019-03-29 )
ウォルフガング・リーム :
画家の詩
(ティアンワ・ヤン+ミュラー+ラインランド=プファルツ州立フィル )
独奏Vnがしなやかに歌い、控えめだけれども凝縮された(たまに爆発する)管弦楽が寄り添う。叙情的というよりベルクっぽいというか。2014年の作品。併録の「第3の音楽」は1993年でHpとアコーディオンがときおり特徴的な響き。落差が大きく余白たっぷりという感じ。「光の強迫」は1975/76で、騒々しく始まり、どちらかというと鋭角的な音が多い。Naxos
8.573812
(2019-03-28 )
ハラ・ステヌン・ステファンスドッティル :
H e (a) r
(ノルディック・アフェクト )
「聴く」「ここ」「彼女」を掛けた表題“曲”は、電子音を背景にパンされる断片的な朗読が7部に分かれ、その間に北欧の作曲家の6曲が挿入されるのだが、後者が8割以上を占め、表題“曲”だけでは成立しない、というか全部合わせて一つの表現と言いたいのだろうけど。挿入曲ではアンナ・ソルヴァルドスドッティルの2曲がまずまず。ミリヤーム・タリーの「氷山の麓の暖かい生活」も面白い。Dorian Sono Luminus
DSL-92224
(2019-03-27 )
ウラディーミル・ゴダル :
マニフィカト
(イヴァ・ビトヴァー+ブラティスラヴァ音楽院合唱団/ソラメンテ・ナトゥラーリ )
Hpの低音だけに支えられた民謡風哀歌の独唱後、三音上昇を繰り返す合唱に弦楽器が鋭い二音下降で答えながらクレッシェンドする。最後に両者が少しミックスされるが、極めて平明かつ透明。両端に置かれた「マイコマシュマロン」、そして「子守唄」「スターバト・マーテル」「天の女王」という曲をあわせて、全体で一つのミサ曲とでもいうか。古楽器を用いた澄んだ響きは、癒やし音楽に陥りかねないところだが、スロヴァキアの旋律とリズムが味わいを出している。ECM Records
00028947656890
(2019-03-26 )
エリッキ=スヴェン・トゥール :
サルヴェ・レジーナ
(エルツ+ヴォクス・クラマンティス+NYYDアンサンブル )
単旋律のグレゴリオ聖歌風合唱にアコーディオンのような響きの管弦楽、そしてシンプルな打楽器。短い曲だけれど独特の和声感がよく出ている。併録「献呈」はVc+Pfで、お互いの特殊奏法を交えてこれもなかなか面白い。マリンバ協奏曲とかオクシモロンもそれぞれ響きはいいのだけれど金管がうるさい(これは好みによる)。ECM Records
00028947657781
(2019-03-26 )
ジョージ・クラム :
「マクロコスモス」I,II,III
(清水美子+柴田晶子+ストルーバー+清水なつみ )
内部奏法あり、口笛ありのファンタジーに満ちた自在な宇宙。IIIは本来Pf2+Perc2であるところを各1で多重録音したという。2枚組でたっぷり楽しめる。Kairos
0015029KAI
(2019-03-25 )
ホラチウ・ラドゥレスク :
内的時間
(ロジャー・ヒートン )
ほとんどクラリネットとは思えない高域倍音成分で、絞り出すような断片が繋がれる。7本のClで奏するInner Time IIになると、その微分音的なずれが滲むように重なってこだまするさまは弦楽器のハーモニクスかと思えるほど(Youtubeにあり www.youtube.com/watch?v=rRFLsNcHY5g )。併録ブーレーズの「ドメーヌ」、シェルシの「イクソル」も特殊奏法を駆使してはいるが、はるかにクラリネットらしい音がする。Clarinet and Saxophone Classics
CC0067
(2019-03-24 )
ホラチウ・ラドゥレスク :
弦楽四重奏曲第5番
(ジャック四重奏団 )
旋律の断片にすらならない単純音の反復はよく聴くと何やらリズムらしいものもある?大半が硬質の高音ハーモニクスで覆われ、まさに弦を擦る楽器であることを再認識させられる、奇妙な強度。併録はピアノ・ソナタの第2番と第5番。前者は老子に触発されたという。後者は少しルーマニア民謡の要素が混じる。スペクトル楽派に連なるのだそうだ。Mode Records
MOD-CD-290
(2019-03-23 )
ホラチウ・ラドゥレスク :
ピアノ協奏曲「探求」
(シュトゥーマー+ツァグロセク+フランクフルト放送響 )
冒頭から(自然倍音による)壊れた楽器のような和音が響き、名人芸が披露されるわけでもなく、破天荒な脱力音楽が続いていく。第3楽章には民謡風旋律も出てくるが、こんなのありですかという破壊的面白さ。併録のピアノ・ソナタ1~6番も、変則調律こそないものの放縦かつある種の美しさも備え、それぞれ充実。
NEOS11805-07
(2019-03-23 )
フレデリック・デハーネ :
静寂な合竹との音楽
(怜楽舎+アンサンブル・モデルン )
雅楽と西洋アンサンブルを融合させるのではなく、そのままぶつける。そのために雅楽を旋律ではなく和声の音楽として扱い、不協和音として組み込む。リズムは鞨鼓(かっこ)と呼ばれる太鼓の片来と諸来に合わせる。第2部、第4部がそれぞれ早四拍子、早六拍子、そして奇数部が音取と第された構成。うまく行っているところもあればどうかなと思うところもあるが、意欲的な試み。Ravello Records
RR8008
(2019-03-22 )
トーマス・ラルヒャー :
悪い細胞
(ティル・フェルナー+ラッセル・デイヴィス+ミュンヘン室内管 )
無から徐々に何かが芽生えてきて、何かが起こって消えていく、そんな楽章が4つ。第3楽章はほとんど打楽器と化したプリペアド・ピアノが管楽器と勢いよくやり取りする。最後は、え?これで終わり?という。併録Va協奏曲の「静寂」、弦楽四重奏曲第3番「マドハレス」も、静かに始まり、じっくり組み立てられた頂点を持ちながら、何か言い残したまま終わる。ECM Records
00028947636519
(2019-03-21 )
ジョン・ケージ :
バッカナール
(ラーゲット=キャプラン+アダム・レヴィン )
プリペアド・ピアノが使われた最初の作品を「プリペアド・ギター」2本で演奏するというもので、これは面白い。「6つのメロディ」をVn+PfではなくGtで演奏したのも味わいがある。他にギター曲を書かなかったケージの作品をいろいろ編曲しているが、良くも悪くも素朴に聴こえる。Stone Records
5060192780833
(2019-03-20 )
エリック・ランド :
メモ
(ジュピター弦楽四重奏団 )
硬質な響きのなかに速い動きで上下するパッセージや朗唱が入り混じる。即興奏者でもあり、そういった要素も多い。イタロ・カルヴィーノの「新たな千年紀のための六つのメモ」に触発されたということだから、6部から成るのかな。併録「ションイン」(声音?)は古筝と電子音、「ブリッジ」は古筝とCbという組み合わせが面白い。ほかピアノ三重奏の「出自不明」など。Centaur
CRC3687
(2019-03-18 )
グバイドゥーリナ :
太陽の賛歌
(ニコラ・アルトシュテットほか )
Vc独奏に合唱、打楽器、Celという変わった編成で、広い音域を自由にグリッサンドしながら行き来する独奏の呼びかけに歌が応えるレスポンソリウムのような形。第3楽章ではC線の調律をどんどん下げて行って生命の始原のようになところで超高音域の断片が聞こえてくる。最後は魂が飛んでいくように。併録「オルフェウスの竪琴」は、2音の差分で鳴る低音の関係から音列を導いたということらしいがよく分からない。上昇する力と下降する力のさまざまな対比。最後の方は入り混じってうるさくなる。ECM Records
00028947646624
(2019-03-18 )
ハンナ・クレンティ :
呼吸
(コヴァチッチ+レオポルディヌム・ヴロツワフ室内管 )
生々しい不協和音がうねうねとグリッサンドでつながれ、半音進行で上下するパッセージが絡まる。攻撃的な弦楽合奏。併録の「シネクアン・フォルテB」はVc独奏と管弦楽で執拗な刻みの反復が神経を逆なでする。他の2曲はいまいちしっくり来なかった。
DUX0823
(2019-03-17 )
クルターグ :
リヒテンベルクの雑記帳から
(ローナ・ウィンザー )
18世紀の物理学者の私的なメモというか警句集のようなテキストから18篇を選んで曲をつけた。殆どが30秒足らずで、旋律は全く無くてさまざまな発声と抑揚の実験という感じ。併録カーゲルの「バベルの塔」抜粋は時折り響く鋭い装飾的下降音が印象的。マクミランの「深い悲しみ…II」はじっくりと物語る哀歌。フェルドマンの「オンリー」、さらにアンリ・プスール、ルイス・デ・パブロと多彩で味わいのあるソプラノ独唱集。Brilliant Classics
BC95791
(2019-03-16 )
ベネディクト・メイソン :
弦楽四重奏曲第2番
(アルディッティ弦楽四重奏団 )
思い思いに弾きつつ要所で合流とか、微かな断片を組み合わせるコラールとか、叩いたり呟いたりとか、ピックを使ってギターのように弾くとか。何でもあり。併録レベッカ・ソーンダースの「フレッチ」はスルポンを多用した鋭い矢のような音の連続。リューク・ベッドフォードの「素敵な四頭小夜啼鳥」は微分音的なずれた音が叙情的な曲を侵食していく。ジョン・ゾーンの「パンドラの箱」は声入。col legno
WWE1CD20421
(2019-03-16 )
アーロン・ジェイ・カーニス :
弦楽四重奏曲第2番
(ジャスパー弦楽四重奏団 )
そんなわけでピュリッツァー賞受賞作品というのを聴いてみたわけだが、なんだか朗らかで分かりやすい「新調性主義」だそうで、いくつかの部分を除くと、それみなロマン派の先達が極めたことなのではという感じ。まぁいちおう。Dorian Sono Luminus
DSL-92142
(2019-03-14 )
アーロン・ジェイ・カーニス :
弦楽四重奏曲第1番
(ラーク四重奏団 )
新ロマン主義といわれればそうかと思う素朴な甘さの中に、ときどきシャープな切れ味のリズムやかけ離れたな響きが混じる折衷的な作り。併録の第1交響曲も映画音楽ぽい要素に支配されつつも、部分的には面白い。初期作品なのでまぁこんなものか。Phoenix USA
PHCD165
(2019-03-14 )
エサ=ペッカ・サロネン :
ノック・息・輝き
(ウィルヘルミナ・スミス )
ピチカートで扉をたたき、微分音の不思議な祈り、そして重音を駆使した終楽章。併録「ユタIII」は超高音域から始まってVcの様々な技巧を駆使する。サーリアホは「7羽の蝶々」をはじめ、どれもスルポンの冷たく凍った音色で透明な夢幻の世界に誘う。Ondine
ODE1294-2
(2019-03-11 )
メシアン :
クロノクロミー
(ブーレーズ+クリーブランド管 )
いろんな鳥がひっきりなしに飛来する。あるときは一羽で、別のときは群れをなして。木琴の複雑な囀りと木管群の重層的な響き、そして歪んだコラール。「高貴な都」はPfが入ってますますトゥランガリーラ風。「われ死者の復活を待ち望む」は弦なしの宗教的テーマの曲だが、第4曲に他と通じる要素があるといえばある。DG
00028947938156
(2019-03-09 )
スコット・ウォルシュレーガー :
アメリカン・ドリーム
(ベアトーヴェン )
荒涼とした西部を夢を求めながら不安に歩むという感じか。Pf+Cb+Percという変わった組み合わせのトリオで、G-A-C-Fisのモチーフが何度も出現したり、わりと単純な要素を核に景色が移り変わっていく。面白い音はする。Cantaloupe Music
CA-21145D
(2019-03-03 )
ウォルフガング・リーム :
歌われた時
(ダレル・アン+楊天堝+ラインラント=プファルツ州立フィル )
無からゆっくり立ち上がる独奏Vnに管弦楽が寄り添い、ふわふわと漂いながら時に動的なモーメントが挟まれるもののすぐにまた無重力状態になっていく。併録「光の遊び」は牧神の戯れみたいな少し事件も起きるけどゆったり微睡むような。「コール・アルコ」は山あり谷あり少し浪漫の香りの名人芸。Naxos
8.573667
(2019-03-03 )