music & knowledge sharing
Planet masaka played list 2019-05
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フォウジエ・マイド:
ファラーギ
(モーガン+クーパー)
不在とか別れという意味だそうだ(ペルシャ語?)。二度の重音がゆっくり動く静かな諦念のような響きから、四分音、半音の前打音、飛び跳ねる動きが入り混じる不安定な様相に。第2楽章になると前打音が九度下降、そして一つの音を軸に忙しく上下し始める。「ドリームランド」はよく似た要素を持つ弦楽四重奏で、第2楽章では時々明るくなる響きの中にペルシャ音楽のダストガー的素材が奏でられる。併録はタフレシプールのVn独奏「ペンダー」とSQ「壊れた時」、いずれも緩急自在で透き通った不思議の国の響き。Metier
MSV28576
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ミカエル・ジャレル:
…プリズム/投射…
(カン・ヘスン+パスカル・ロフェ+スイス・ロマンド管)
独奏Vnが分光する光を受けて大編成管弦楽の楽器が反応していくということか、ゆっくり響きを味わうかと思うと急激に密度の高い「結合」が生まれたりする。併録「航跡」はFl+Ob+Cl独奏と管弦楽の振幅が大きい対話。「別れ」は渦巻くPf協奏曲。どれも確固たる狙いというよりはいろんな響きのメニューを並べましたという、それはそれで面白い。「3つのエチュード」だけは全然らしくない、何事かと思えば、ドビュッシーの練習曲から3つ選んでオーケストレーションしたもの。aeon
AECD0752
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パナヨティス・ココラス:
モルファラクシス
(モルフォシス・アンサンブル)
Fl+Vc+打+電子音で、それぞれがポツポツと並べる刺激な断片が音響的に加工され、墨絵のような音空間が生まれる。併録オクタビ・ルマブの「修復不能な裂け目」はPf+打+弦+電子、エクトル・パラ「時場」はCl、ジョアン・バヘス・イ・ルビ「青いクォーク」は途中でSaxなど、カルロス・デ・カステリャルナウ「静物」はアコーディオンにそれぞれ電子加工、パブロ・フレデス「ウルトラ・レベル」はほぼ全面的に電子音という、いろいろ面白く実験的な作品集。Recording Consort
7503026075630
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オッド・スネーゲン:
弦楽四重奏曲第1番
(ステンハンマル四重奏団)
アナーキーというかメタリックというか、ざらざらした手触りのメカニカルな反復の後ろに民族的素材を分裂させたような落ち着かない断片モチーフが微かに見える。静謐な第2楽章であってもその感覚は流れ、終楽章ではモチーフ要素が前面に出るがいっそうぎこちない。併録「息子よ世が統べられる知識の小さいことを知っているか」はBFlを様々な効果で扱う。「形と合図」はVc+Pf、「豚のための矢」はFl+Vn+Vc+Pfでさらにアナーキー。Nosag
NOSAGCD235
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モーリス・オアナ:
24の前奏曲
(ペヌティエ)
タイトルからしてドビュッシーの影響も垣間見える無重力的寓話のようなところと、敢えて言えばバルトーク的なメカニカルというかキラキラした打楽器的な要素もある、まずまず面白いピアノ曲集。併録「3つのカプリース」はよりもこもことして、ペダルを多用した響きで遊ぶ感じ。Arion Music
3325480680915
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クルト・ワイル:
七つの大罪
(ノヴァーク+シリヤ+SWRカイザースラウテルン管)
ブレヒトとの最後の共作となった歌付きバレエで、ミュージカルという感じの聴きやすい音楽。併録「クォドリベット」はパントマイム「魔法の夜」の音楽を組曲にしたもの。ワイル自身がライトミュージックと位置付けたそうで、これもまた口当たりの良く、リラックスして聴ける。
SWR19519CD
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キャロライン・ショウ:
8声のためのパルティータ
(ルームフル・オブ・ティース)
最年少でピュリッツァー賞を受賞という、ア・カペラ合唱曲。ラップのようなのやゴスペル風の乗りから、心地よい和音をわずかにずらしてみせつつすぐ分かりやすい(しかし別の)地点に戻る。ハミングのみの多彩な声+息の表情と効果、生き生きとした躍動感、まっすぐな肯定の優しさ。New Amsterdam
NWAM078
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キャロライン・ショウ:
アントラクト
(アタッカ四重奏団)
穏やかな心地よい音楽がゆっくり進みながら、時々顔を出していた奇妙な要素がだんだん勢力を増して、響きは解体していく。という事件は夢だったのかなと静かな幕。併録「バレンシア」「平面図と立面図」「斑点」「リトルネッロ 2.q.2.j.a」「石灰石とフェルト」どれも美しい響きや名作の引用などをふんだんに用いながら、どこかが捻れて向こう側の別世界が微かに見えたり、いつの間にか侵入してきたり。それも含めた夢の世界。Nonesuch
075597926088
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ジョルジュ・アペルギス:
14のレチタシオン
(ミシェル=ダンサク)
フランス語テキストを音節と音素に分解し、セリーに当てはめたり変形したり(ウェーベルンの音色旋律との対比)という手法による、声の万華鏡。楽譜を上下左右どこから読んでもよいとか、テンポのパラメータを選べるとか、演奏者の選択肢も多彩。最終曲はブレス無しで一息に歌うよう指示されているという。全力で伝わってくる眩いばかりの声の身振り。col legno
WWE1CD20270
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オルガ・ノイヴィルト:
死と乙女II
(ベンネント+シグラ+ノイヴィルト)
というか二人のナレーション+テープ音楽。イェリネクのテキスト(いばら姫)を用い、ハノーヴァー万博のドイツ館でのバレエのために委嘱されたという。遠くで少しずつ変化する合成音と軋みに流麗な朗読、ときに重唱、また一昔前のコンピュータ合成音声になりどもってみたり。音の方向が変わり、声のトーンも変わり、そして殴りつけるような騒音に変容された楽器音が時々入り混じる。奇妙な上昇音と降雨のあとに現実音のコラージュが溶崩して地下に吸い込まれていく中、ナレーションのアンサンブルと哄笑。そして強い磁場を発して消える。なんという。col legno
WWE1CD20261
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ランド・スタイガー:
嘆きの霧
(キヴィー・カーン=リップマン)
分厚いライブエレクトロニクスを用いて、独奏Vcの音が幾重にも変調され、重ねられる(テープやシンセサイザーは使われていない)。けっこう興味深いモチーフが書かれているように思うのだけれども、響きが過剰なため表層的な環境音楽に聞こえてしまう。Clの「サイクロン」、Flの「ビーコン」、Fgの「結合」、Fl+Pfの「水面の明かり」いずれも豊穣で過剰なエレクトロニック。Tundra
TUN013
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田中吉史:
エコ・ロンタニッシマII
(ダメリーニ)
柱のように並べられる和音打の間に緩急のある渦巻きを描いていく。やはり68/69年組。ダルムシュタット夏季現代音楽講習会の1940年代からのピアノ演奏会を集めた7枚組というアルバムで、シェーンベルク、バルトークからブーレーズのソナタ自演とか、あらゆる現代ピアノ音楽が詰まっているので、じっくり鑑賞中。
NEOS11630
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田村文生:
存在の恐怖I
(内本久美)
68/69年組として挙げられていた一人で、神経質でメカニカルな動きが面白い線を描く。木下正道「海の手IV」も同じく68/69年組、取り憑かれた並行音に人を食ったステップが絡む。奏者の委嘱曲を中心に24邦人の小品を集めたもので、他には星谷丈生「羊飼いのやみ」伊藤弘之「天使の梯子」森田泰之進「音/輪VI」川上統「大紫」あたりなかなか面白い。短い曲ばかりなので掘り下げたことは言えないが、楽しめる1枚。Stradivarius
STR37089
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サーリアホ:
真実の炎
(フィンリー+リントゥ+フィンランド放送響)
バリトン独唱と管弦楽のための6章で、テンポや楽器法の違いはあるがどれも暗く鬱とした色調で、支えがないというか溶けて崩れていくよう。テキストはエマーソン、ヒーニー、ダルウィーシュ、などから採られているが、これらを選ぶ前に作曲が進んでいたという。「冬の空」は大管弦楽曲「オリオン」の第2楽章を通常編成に書き直したもの。「トランス」は2016年のサントリーホール委嘱作品(共同委嘱)でもあるハープ協奏曲。Ondine
ODE1309-2
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ジャン・フランセ:
クラリネット協奏曲
(フィリップ・キュペール+フランセ+ブルターニュ管)
朗らかな楽想と軽快で遊びのあるリズムに結構高度な技巧(とはいえ特殊奏法はない)が組み込まれた楽しい曲。作曲家自身の指揮ながらやや切れ味鈍いのは惜しい。併録「陽気なパリ」やTp「ソナチネ」Fl「ディヴェルティメント」など、技巧を楽しく生かしている。藤岡幸夫がこの協奏曲を現代音楽批判の文脈で引き合いに出したとは(原文未確認だが)いったい何事?Indesens
INDE045
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一柳慧:
ピアノ音楽第4
(デイヴィッド・チューダー)
「アタックを取り去り、持続音と沈黙を使用する」という指示のみの楽譜で、この演奏は弦をこすったりする音を電子的に加工した“エレクトロニック・バージョン”。怪獣番組の効果音の連続のようだ。「コラージュ」は尺八、箏などの音と(かなり時代を感じさせる)電子加工音が入り混じる。「トライクローム」はFl、Vnの高音にPfなどが切り込んでいく。「リカレンス」はいろいろなパターンの反復と変容の室内楽。後者2つは電子音なし。時代の記録。Naxos Japan
NYNG-011
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