Planet masaka played list 2019-06


  1. * 複雑なパズルの組合せが息つく間もなく繰り出されるかと思うと、しなやかな弾力性に支えられる巧妙な和声になったり、しっとりした歌があったり、パワー溢れる野性的なリズムだったり、なかなか聴かせる。このアンサンブルは楽しかろう。Navona NV6234
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  2. * 20世紀後半にしてはかなり調性志向が強くわりと口当たりのよい見かけ。僅かにずらしながら遠くへ行ってみたり、遊びっぽいフィギュールが混じったり、小粋なリズムを用いたりで、飽きさせない。というか結構面白い。Claudio Records ClaudioCC4431-2
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  3. * シンプルな素材が無理なく発達して視界良好なのに密度は濃い空間が生まれる。ジョージ・ベンジャミンの「影の輪郭」はやや捉えどころのない模糊とした音の戯れが、よく分からないながら何かに向かう。フィリップ・キャシアンの「ベン・ハートレーの絵画に基づく6つの小品」は小粋だったりしっとりしていたり、それぞれの絵の印象を凝縮。演奏者自身の「6つの練習曲」は無理に何かを語ろうとせず淡々と音を並べることで何かが浮かび上がってくる。みな6小曲で構成される作品というのも一つの趣向か。Odradek Records 0855317003080
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  4. * いちおうピアノ三重奏曲ながら、Vcはモーターで回す薄紙が弦をこする微かな音のみ、Pfは多分指定キーを押し込みペダルか何かをゴトゴトさせて響かせ、Vnもほとんど断片的なハーモニクス。もしかしたらマラ9のオマージュかもしれないターンが何度も。「まぶた」はプリペアド・ギターを用い、途切れ途切れのB♭音に打楽器などが絡み、途中でセミが一斉に鳴き出すような高音のトリルの中かすかにラ・カンパネラが。「エルヴ・アルヴ・アルヴァ」は民族風舞曲が徹底的に解体され、「美が紡ぐ繊細な糸」は繊細な打楽器アンサンブル、「ズッカー」はこれらが集められて静寂から狂騒まで。どれも音ならぬ音が音の本来性を問う問題空間。Kairos 0018002KAI
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  5. * バンドネオンとVcが技巧を駆使しながら、タンゴ/ミロンガで軽やかに、またしっとりと対話する二重協奏曲。「ビストロの情景」は、パリのビストロで出会った二人の、喧嘩あり恋あり踊りありの描写。「とても朝早いブルース」はハーモニカも加えて。Aurora ACD5102
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  6. * もやもやと夢現の境のようなひんやりした空気の中に時おり硬質な事件性が紛れ込んでくるが目覚めはしない。シャコンヌだそうだ。SQのVn奏者でもあるウナ・スヴェインビャルナルドッティルの「オパシティ」は4つの楽章が4人それぞれのソロ中心に構成される。スカンジナビアの民謡的な雰囲気から微分音まで。ヘイクル・トウマソンの「セリモニア」はピチカートとコル・レーニョの組合せで始まり単純な素材による変則構造など幾何学的なモザイク模様。なかなか面白い味わい。Dorian Sono Luminus DSL-92232
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  7. * ややミニマルっぽいわずか3小節のパターンが8回繰り返されると、3人の囁きがまるでスルポンのように投げ込まれ、少し変化した次のパターンがまた繰り返され…という不思議なSQ。スコット・ゴディンの「全ては空中に溶ける固体」はボードレールやらフーコーやらに関するいろんな面を描くのだという、比較的ソロによる部分が多いがクールな感じのSQ。ローズ・ボルトンの「むせび泣きの到来」はゆっくりした和音の推移が長い時間をかけてクレシェンドしまた消えていく。第2楽章も同じ展開かと思いきやかなり強いパッセージが。終楽章は喜ばしく始まるものの最後はまた同じく。21世紀カナダの繊細な作品集。New Focus Recordings FCR226
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  8. * シェイクスピア「ヘンリーV世」聖クリスピンの祭日の演説にあるWe happy fewから採ったタイトル。短短長リズムのモチーフのようなものが捻れた感じで広がっていき、常に抱えている不協和を発散しようとするが結局力尽きる、というのか。トーマス・コチェフ「夜に去りゆく者は全てが目」はボルヘスの詩集によるタイトル。丁々発止かと思うとゆったりした歌もあり矛盾からの力が時々。キルヒナーのピアノ三重奏曲はこの中では分かりやすい。アイヴズの三重奏曲は普通っぽい感じながらそうは問屋がおろさないタイプで、フォークソングが織り込まれたりもするが、最後は予定調和の期待を裏切る。Odradek Records 0855317003134
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  9. * さまざなまハーモニクスが散りばめられる部分と実音による技巧的部分が呼応し入り混じっていく「ソナタ」で、後者は微分音チューニングの効果が強烈。同第2ソナタは一つの弦を弾いた音が減衰する間に他の弦を爪弾いたりこすったりする、研ぎ澄まされた響きの音楽。ミュライユの「テルル」はフラメンコのラスゲアード奏法を用いて同じ音を多様に響かせながら散文的無重力な動きを組み入れる。フォックスの「チリ」も同奏法で高い音域の反復音を独自のリズムで。ラドゥレスクの「意識下の波」はきらきらした電子音とハーモニクスが組合せられる。いろいろ面白い。Metier MSV28586
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  10. * Tacit-Citat-ionの訳がこれいいのか分からないが、スルポンの冷たく透き通ったスタイルが、サーリアホやシャリーノなどに連なり、そういうコンテクストなしでは音楽作品は成り立たないというようなことだろう。やはりSQの「気分でない」(?)、電子楽器が奏でる「風」、Cl独奏に声が重なる「木への頌歌」、Vaとライブエレクトロニクス(?)の「ビオラのための歌」、さらに女声のための自由自在な曲など、北欧の新しい風。Ravello Records RR8011
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  11. * 激しい感情のほとばしりが厳しく前衛的な音と難度の高い技巧に埋め込まれる第1曲と、悲しく凍りついた哀歌に途中から人声が加わり空中に消えていく第2曲。併録はコダーイの無伴奏チェロ・ソナタとガスパール・カサドの無伴奏チェロ組曲。どれも深みと切れを備えた見事な演奏。SKANI LMIC073
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  12. * 高音のきらめき、ゆったりした波動、スルポンもが溶け込んで響く硬質ながらなめらかな感触。併録「チェロ組曲」はバッハ的な分散音にやはり硬い音と和声や微分音。弦楽四重奏曲は更に表現の幅が広がって、つややかな輝きから荒々しいざわめき、そしていろいろな動きを包み込んで鳥の囀りへ。Innova INNOVA022
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  13. * 第12番から10年遅れて完成した11番は、紆余曲折を経て四重奏習作を拡大する形で書かれ、コラールの先にあるホモフォニックな部分と、各楽器が激しくぶつかる部分(ソリスティックだったりトゥッティだったり)が対比される4楽章。凝縮されるのではなく、カンバスを目一杯使って太い筆で描いている感じ。「書の間」はSQ12番のピアノ五重奏版。PfとSQのデュエットとされているが、Pfは控えめなような気がする。「グラーヴェ」はレクイエムとして書かれた、重く深い曲。Wergo WER6756-2
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  14. * 第10番はこれまでもしばしば用いられた叩きつけるような連符やバルトークピチカートの嵐の中に「誰がボタン取った遊び」の歌とラ・フォリアが埋め込まれる長い中間楽章を、冷たく短い両端楽章が包む。12番は寡黙なピチカートから始まり徐々に音が増えてく。自作のFetzen(ボロ布)の素材を用いているということだが、そもそもがよく分からないアクロバティックな展開。「四重奏習作」はゆっくりしたコラールをはさみながら、Va、Vc、そして全楽器と焦点が移っていく不思議で雄弁な単一楽章。col legno WWE1CD20227
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  15. * 第7番は各楽器が互いに様子を伺いながら瞬発的な音を繰り出していく「変奏曲」。ウッドブロックが加わる効果が目覚ましい。第8番は微細な禅問答のような要素のモザイクが鋭い音塊に成長してはまた空にもどって新しく描き直される。「四重奏断章」と題された第9番は手裏剣のような断片で始まりながら繋がりを持つ要素やリズミックな伴奏的も出てくるが旋律になるわけもなく散り散りになってはまた再結合する。col legno WWE1CD20213
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  16. * かなり激しい感情というかエネルギーを鋭くほとばしらせながら、最後にはそれらをすべて振り払って芯だけに凝縮するような5番、より複雑で振幅が大きく最後まで緊張感が持続する長大な(47分)6番。瑞々しくかつ充実した演奏。col legno WWE1CD20212
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  17. * いろんな表現を手探りで確かめる第1番、グリッサンド、そして凝縮された音が躍動する第2番、6つの楽章で少し深い表現に分け入ろうとする第3番、バルトークのような太さが加わる第4番、いずれも聴き応えたっぷり。col legno WWE1CD20211
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  18. * Pf+テープ+管弦楽の6部からなるプレリュード。第1部はPfのみで最後に少しだけ+オケ。テープが右から聞こえると第2部でPfオケが混沌と入り乱れる。3はPfに始まる変奏曲ということだが途中でブラ1冒頭が引用されて不気味。4はまたテープを多用しながら打や独奏Vnなど、そしてかなり攻撃的に。5は目まぐるしく変化する壊れた行進、6はPf独奏に朗読を含むテープ、そして重々しい管弦楽。1冊まるごとこの曲を取り上げた本もある問題作。併録はピアノ協奏曲第2番、バレエ変奏曲(抜粋)、それにギター曲「3つのテントス」。DG 00028944986624
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  19. * 20代初期にダルムシュタットで学んだ十二音技法を取り入れた、最初のピアノ曲。ゆっくりしたテンポ、響きが柔らかいので聴きやすい。「トリスタンへの前奏曲」はピアノ+テープ+管弦楽「トリスタン」の独奏部分を元にした4曲。「トッカータ・ミスティカ」は緩急おりまぜ少し打楽器的なパルスも。さらに「ルーシー・エスコット変奏曲」「ケルビーノ」「ピアノ・ソナタ」ほか。col legno WWE1CD20250
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  20. * 同名のゴヤの風刺銅版画集を題材に、自身のルーシー・エスコット変奏曲の主題(それはさらにベリーニの「夢遊病の女」から)を用いた変奏曲にしているという。版画のNos.6,5,43,27,2,40,23,24,68が順に表題になっているが、ゴヤの諧謔味はなく、よくできたミュージカルのような華麗さ。併録「ヘリオガバルス皇帝」は8人の木管独奏+管弦楽で効果音も入って描写的、「イギリスの愛の歌」はVc独奏+管弦楽で7つの英詩による。「劇場のための序曲」は最後の完成作で豪華な終結。オケがこなしきれていない部分も若干あるが、いずれも演奏効果の高い手腕が光る。Wergo WER7344-2
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  21. * 微分音を多用しながら下降するVnと打楽器の対話。スカンジナビアの海、海岸、川を描くのだそうだ。併録「スロール」Pfが半音階やアルペジオで動き回るのを背景に、各楽器が特殊奏法で不条理な音の断片を挿入する。BClの異常な叫びがすごい。さらにVn+Vc+Pfの「オスカルム・インフェイム」、2本ギターによる「5つの微分音研究」、弦楽四重奏曲第2番ほか野心的な作品が満載。MicroFest Records MF13
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  22. * Carrion-Miles to Purgatoryの訳がこうなのか不明だが、ロバート・ローウェル「ウィアリー卿の城」から採られた13のテキストに基づく、切り詰めた厳しい表現。内なる悲しみを見つめ、ため息を付き、時に鋭く叫ぶ。「…炸裂する背骨」はミドルトンの詩句を語りつつVnを弾くコパチンスカヤ+Vc、さらに「VnとPfのための音楽」。いずれも無駄なところなど微塵もない凝縮された音楽。New Focus Recordings FCR229
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  23. * 鴨長明のテキスト英訳を、描写的な音楽を伴ってカウンター・テナーが歌う。ゆく河の流れそのものの揺れ動く音型とか、天災の場面とか、庵から見える山々の情景とか、大河ドラマっぽくもある。併録は喜歌劇「フライト」から4曲をとった「空港の情景」、ラブロックの著作に触発された「ガイア理論」など。軽やかなオーケストレーション。Orchid Classics ORC100097
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