Planet masaka played list 2020-07


  1. * ポスト・セリエリズムというのか、テンポが頻繁に変わる込み入った作りで面白そうながら、演奏がちょっと。「レッド2」はさらに複雑な室内オケ協奏曲。「悲しき鳥」はPf独奏、「マラルメの3つの詩」はSop+Cl+Vc+Pf、「他の空の中で」はSop+室内オケ。どれも凝った曲なのに演奏が、というか録音のせいなのか。Kairos 0015054KAI
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  2. * AFl独奏が高低の跳躍を頻繁に繰り返しながら捉えがたいテーマを追いかける。「ムネモシュネ」はBFl独奏に録音された8声BFlが重なる。さらにBFlで原田敬子「BONE++」は息を叩きつける音を組み込みつつ楽器の特性を生かし、トレヴァー・バカ「シャーリー」は息音をはじめ楽音以外の効果が半分以上を占める。K.H.シュターマー「クマニャイ」はFL+声に自然音のテープ。加えてドビュッシー「シリンクス」、ベリオ「セクエンツァI」、武満徹「エア」。Musicaphon M55721
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  3. * ホモフォニックで穏やかな聖歌の主題を54回変装する。テンポやリズムは一定だが、2つのSQが重なり合って和声が少しずつ変化し、不協和/緊張が生まれる。とはいえ驚くような響きが聞けるわけでもなく、休みなし73分はさすがに長い。ヒーリングには良いかも知れんが。エクリプスQが2つのSQ譜を奏して多重化しているようだ。これを都合2時間半も弾くとは、お疲れさま。Cold Blue Music CB0055
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  4. * ホケットは旋律を分割し複数パートに割り振って演奏するもので、ハンドベルも近い。オライリーが一人で両声部を歌い、左右のスピーカーに分かれて聞こえてくる。1分強の曲が7つ、全体で10分しかないが、それぞれ2声を△と●の高低のみで示し線で繋いだ図形譜例があって、仕掛けが分かり面白い。Cantaloupe Music CA-21149
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  5. * Fl+Cl+Vn+Vc+Pf+打の音断片が電子的に変調され硬い打や鋭いアクセントで分節される。靄のかかった空間で未知の物体がうごめいている感じ。「自我へのノートについて」は個々の音が直線/曲線運動を持ちながら最後は遠くの声も。「AMONGU AM A」は吹き矢のような鋭い音が飛び交い音圧も高まる。「単独そして非単独」は加工された音がときおり水底から湧き上がってくるというか。夜の森のような世界に最後に光がさすが、夜明けではなく人工的な御伽の宮殿が浮かんで消える。Ravello Records RR8020
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  6. * トム・フィリップスの「ヒューメントの心」という詩画集に触発されたという8つの楽章で、色彩感豊かな心象風景。「ファン・ゴッホの青」は弟テオへの手紙からの印象5楽章。「祈り」はVn、「もうひとつの祈り」はVnの同じ主題による深々とした独奏曲。「輪舞」は2Vnでスペクトル楽派風、「髭の生えた淑女」はCl+Pfで茶目っ気、「ザクロの色」はAFl+Pfで憂いをたたえた表現。NMC Recordings NMCD256
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  7. * 美しい思い出の断片のようなものが形になったかと思うと少し崩れて奇妙になりかかりまた元に戻る。そんなフリは止めたというようなギシギシした3楽章からやはり思い直して断片を取り上げては崩れかかる終楽章。「内緒の動き」はサイバーパンクなVc+打。「チャールズ・ミンガスの愛に」はかすれたダンスのような6声のVnを一人で演奏。「羽の問への答え」はナレーション入りSQ。「誰のものでも」は足踏みするVa独奏、「器」は掠れたVn+Vaそして最後にミュートされてほとんど音にならないPf。New Focus Recordings FCR241
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  8. * 東欧の民謡旋律を素材に、スルポンや内部奏法なども組み合わせたVa+Pfデュオ6曲。併録はいずれも東欧の旋律を材料にしたPfとのデュオで、「二重像」は自作オペラ「リナと狼」のアリアに基づく+Vn、「月が帰る」は民族楽器の語法を応用した+Fl、「移動中」「1930年代からの手紙」は+Vn、「5つのモーメント」は+Vc。Albany TROY1817
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  9. * ブズーキというギリシャやバルカン半島で用いられるマンドリンのような楽器+Vcで、タクシムと呼ばれる中東音楽の即興的旋律に呼応していく。ブズーキをギターに持ち替えたり、Vcを2本弓で奏したり、スクラッチノイズからあれこれ叩く音まで、それが正統なアルペジオと組み合わされたり。楽譜があるのかという疑問を遥かに置き去りにする見事な音造形の応酬。そして最後は軽々と高みに登り消えていく。さすがはMode Records MOD-CD-316
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  10. * 星と空をリズミックに、あるいはノスタルジックに描いた5楽章で「アストラル」の副題。「美味しい沈黙」はクックソンのVn独奏で。「しばらく作ることには」はSop入り室内ミュージカル風。「2つの黒ダイヤ」「ククルカン II」は室内オケ、「室内協奏曲」はVnとTpがソロ。いろいろ工夫されていて悪くないんだけどな。いい人なんだろうな。 INNOVA011
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  11. * 次々投げつける球が跳ね返ってそれぞれ運動するようにいろんな断片が動くかと思うと落ちて転がって見えなくなるような。「ヨンド」「ディバガント」は近いイメージ。「ベルブム」は少し構築的、「詞」は出来事、「さよならバロック」は少し歌がある感じか。1970年代後半から80年頃のピアノ作品集。 IBS-102019
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  12. * Sax+EGuit+Pf+打の編成で、挑発的な、刺があるが馬鹿みたいな騒音とは違う音響がスローモーションのように浮遊する。「5つの裸体」は特殊奏法満載の同じ編成をさらにライブエレクトロニクスでかき回す。「ルディカII」も同じ編成ながら連続する下降音階などより楽器っぽい要素とノイズの対比が。ときに耳を覆いたくなるような刺激音も含め、硬質の音楽。Kairos 0015056KAI
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  13. * 少しラテンの香りがする要素を気怠く反復していく。「5人の音楽」はトムトムの合間に管が控えめに、「3人の音楽h」はFl+Va+Pfが疎結合、「そして今?」はPf独奏が4度下降したり上昇したり、「我らは何について話している?」はVc+BCl/EsCl+Fg、「普通のこと」はCl+Fg+Vc+Pf、「歌」はさらに+Fl+Va、「手紙」は15奏者、「メスチゾ」は管弦楽。短く単純で調子外れな動機がずっと反復される中にときどき異質な楔が打ち込まれる。楔は姿を変えたり種類が増えたり成長したりする。Wergo WER7374-2
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  14. * 80年代MTVから微分音までの混合素材をブロツキーのテキストによる線に乗せるという。「ワウ・フラッター」は2Trb+アンサンブルでナンセンス・ジャズまがいから微弱な音楽未満まで。「ボヘミアの歌」はラ・ボエームからだそうだが、v.3はヴィオラ・ダモーレのピチカート等変則奏法のみで。「5つの間奏曲」はEBass+打、テルミン、オルゴール、旧式シンセによるさり気ない日常の再発見。「7つの序奏」はナンセンスと神妙なふりが交錯する単一楽章。騙されているようでもあり、額面通りでよさそうでもあり。Wergo WER6430-2
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  15. * 静かなうちはいろいろ組み込んだ楽器を細かく用いつつ、二度上下のモチーフが発展し終盤4Trbの金管が破壊的な微分音コラール。SaxQ入はアトリ・インゴルフソン「妊娠」が+弦3+打+、ダニエル・クエト「キプ」は+Fl+Hp+弦4、朴泳姫「詩人の創造的な踊りII」はスマイヤース編で+Vc(原曲Ob+Cl+Fg+Vc)。サミール・オデー=タミミ「マルドゥク」は男声入りで呪術的、ほか松澤貫史「人生の万華鏡の旋律」、さらにパク・ミョンフン、リサ・シュトライヒ、フリアン・キンテロ・シルバ、ダミアン・ショル、ニクラス・ザイドルは程度の差はあれ静かに始まり繊細さの中に時おり荒唐無稽な騒音強奏というパターン。 NEOS11810-11
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  16. * 副題の通りノスタルジックな要素もあったりするが、やがて姿を変えてトゥッティの厳しい和音をまじえ動き回る。クリストファー・ヴァルチャク「4つの夢」もSQ曲。舞台の両側に何か絵を掲げている。いろんな形をとる線は何かの核がありそうだがよく分からず最後は案外普通に終わる。ヴァン=アン・ヴォー+ヴ・ニャット・タン「雲」SQとダン・チャインというベトナム民族楽器。微分音というかポルタメントというか、くねくねと摩訶不思議。アレクサンドラ・ドゥ・ボイス「地球で木々は成長する」もダン・チャインを用いるが基本は管弦楽曲で映画音楽ぽい。Navona NV6262
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  17. * Syzygyは惑星直列とも。微分音成分が極めて多いので音程が狂ってるのと区別がつかないほど。ナヴィド・バルグリザンの「4人の小人の旅」(Se-Chahar-Gah)は微分音8弦ギターの摩訶不思議な音。同「10の格言」はSax二重奏。ハンス・バッカー「ティエント」は16世紀スペインのギター曲を元に。ピーター・デイトン「ルリンの海」はOb+Guit、リ・ユアン=チェン「テル」はASax。ちょっと玉石混淆な感じ。Navona NV6259
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  18. * 時々打を加えながらどこの地方とも分からない不思議な旋律での語り歌い、さらに「タイアガル4」「山羊座の歌No.8」「CKCKC」。カーゲル「レチタチヴァリー」場末酒場のようなCembと打を断片的に弾きながら。ノーノ「光の工房」テープの音響に囲まれての歌が突然途切れてホワイトノイズになったかと思うとまた。ケージ「ソンネクス2」は旧約、シルヴァーノ・ブソッティ「涙」は自作詩、ニコロ・カスティリオーニ「バルタザールはこう語った」はカスティリオーネの「宮廷人」、フェルドマン「オンリー」はリルケのソネットから。さらにベリオ「セクエンツァIII」。Sopによる、こんなのもあるのかとさまざまな声の世界。Metier MSV28593
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  19. * “一時的で儚いもの”というタイトルのとおり、音は鋭い立ち上がりから減衰しつつ上方あるいは下方にグリッサンドして消えて行き、連なって旋律を構成することがない。その分、スルポン、タスト、コル・レーニョ、フラジオさらにバルトークピチカートと、モダンSQで用いるあらゆる技法が組み合わされるが、7つの楽章が似てしまうのは仕方ないか。併録「基層」は管弦楽曲で、複雑な音の演奏にSQ同様の緻密さを求めるのは無いものねだりか。「相対的自律」「反転」はそれぞれ16、11奏者でオケよりはまとまりがあるものの、やはり管楽器の微妙な遅れなど混沌として未整理な感じが残るのは。NMC Recordings NMCD247
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  20. * 四分音を用いたスコラダトゥーラ楽章でのハーモニクスが少しずれた鏡のように乱反射する眩暈、そして通常調弦の“歌”との落差(共作)。カリン・ヴェッツェル「アモルフォーズ2」もスコラダトゥーラのギター。ジョン・リンク「似た心」、セルジオ・カフェジャン「最初から」、クリストファー・ベイリー「無限の弧」は実演と録音/電子音のさまざまな混合実験。ライアン・ストレーバー「下降」、シドニー・コーベット「デトロイト雨の歌落書き」、リッペル「足場」はEGuit。ほかダリア・ラウドニクティエ・ウィス、ダグラス・ボイス、イーサン・ウィックマン、カイル・バートレット。New Focus Recd. FCR239
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  21. * 素早いクレッシェンドやグリッサンドが次々繰り出されるスリリングな展開。「動物、それにちなんで他の動物が名付けられた」6声+電子楽器で、さまざまな形の声が離散集合し変容。「行列」は各パート1名の室内オケが窓外の出来事を断片的に描く。「ドゥクス」Pfの最高音部と最低音部の両端動機が中央で反響するというか、カノンの先行主題(dux)と追走句(comes)だというがよくわからない。「空間の形」はFl+Cl+Pf+Vn+Vcで、彫刻に触発されて一定空間内で自由に動く運動という概念を音に。「タキティポ」は書字機械を表現する2Pf+2打の微分音的即興的表現。1823年製タイプライターのモデル名と。New Focus Recd. FCR227
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  22. * 日常の雑音というか発酵が始まったばかりの液面というか、ランダムでとりとめないが変化していく各奏者の音の中で、女声がときどきメランコリックに歌い語り、ギシギシきしみつつ最後に溶けるように消えていく。Multimodal MM04
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  23. * ハーモニクス、スルポン、コル・レーニョなどを駆使するSQとライブエレクトロニクスによる、生活音というか自然音をズームアップして見せるような実験音響。「存在違反」はVn、「2つのサウンド・ピース」はVn+Vc、「プレックス」はCb、「一人二役」はVn+Sopリコーダー、「見て、見て」はV.d.Gmb+Guitと楽器は変わるが、どれも変調されて楽器本来の音とは程遠いエレキの禅世界。 NEOS11910
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  24. * 弦三重奏×2、木管同1、金管同1、Hp+Pf+打という5組の三重奏を離して配置し、絡み合いながらの多彩な音色。「アンサンブル・ブックI」はエーリカ・ブルカルトの詩によるBar+器楽の音楽詩劇。「夜に歌う」はインゲボルク・バッハマンとブルカルトのテキストでSop+室内オケ。 NEOS11903
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  25. * 色彩的な打楽器で行くのかなと思いきや、ミュートTp、BCl、弦Pizzなどの断片が入り乱れたり金管がVibと交錯したり、意外にも縮小して消えてしまう。ボリス・アルバラード「アッラ」は金管+打?Tubが酷使される。ラモン・ゴリゴイティア「違反行為」は重心低めジャズ風でやはり金管+打、かと思ったらPfや木管も。パブロ・アランダ「アルマ」は独奏VnのカデンツァにPf、Flが加わりちょっと面白い。クララ・ソロベーラ「花火」は多彩な楽器法でこれも悪くない。チリの現代作曲家集。Da Vinci Classics DV-C00074
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  26. * 一定のテンポで各楽器が呼応する、使用楽器の音高が異なる4楽章。シェーンベルクに師事していた時代の作品。「打楽器三重奏曲」はおもちゃの行進やワルツのような短い3楽章。「しかし紙をクシャクシャにする音~はどうだ?」は一転してリズムのない不確実性。「Three2」は楽器の指定されない3打の曲で、ここではBD(鉄板?)+Marmb+WB?10の時間枠で音がときどき鳴る。窓外のクラクションが混入する(しかし「3の2乗」ときたか)Da Vinci Classics DV-C00030
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  27. * Bleu Ébène(青みがかった黒檀)と題された4番はテープ+SQ。ハーモニクスやスルポンの硬質の響きで、グリッサンドそれに終楽章では微分音が多用され、空中に浮遊する感じ。1番はわりと普通の音が時々崩壊して変な和音。2番は短く透明感ある切れ味良い5つの楽章。3番は硬質な響きと微分音が次曲につながる単一楽章。ピチカート多用。Paraty PTY199346D
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  28. * Mrmb+SQによるしなやかな作品。「ショート・カッツ」はカラフルな鍵盤打楽器、「マインド・ザ・ギャップ」はMrmb独奏、「遺伝子組み換えファドス」はテープ録音の歌+Mrmbでポルトガル民謡、「ズーム・イン - ズーム・アウト」はブラジルのリズム入り、「群島」はVibとワウ・ワウ・チューブの組み合わせによる響き、「スティール・ファクトリー」はその名の通りスティールドラムの合奏。Odradek Records 0855317003981
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  29. * Fl+Vn+Vc+Pfの四重奏で、ソロだったりモノリズムの斉奏だったり、口笛と弦ハーモニクスが重ねられたり、なんとも不思議な響き。「シラーズ」はホモフォニックな激しい階段状の動きは徐々に緩やかなきらめきになり疑問符のようなコラールで終わる。「プラウ・デヴァター」はガムランを模したような響きに始まりPfとXylなど打が対話したり重なったり。「チェロとピアノのための小品」は厳しいトレモロから深々とした旋律や高音の囁きまで。「ピアノフォルテ」はフィボナッチ数列から導いたリズムや旋律だという。Brilliant Classics BC96082
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  30. * カフカの「巣穴」のテキストを用いたMS+Ob+Vc+Pfそれにミュージックソーとライブエレクトロニクスによる音楽劇。そのラジオ劇版。奏者は各楽器で限界いっぱいのシュールな音を奏するだけでなく、最後には楽器を放置して客席の後ろで別の楽器を扱ったりする。ライブエレクトロニクスで変調するほか(の一種として?)電波に乗せてラジオで受信したような効果も加えられ、不条理感いっぱい。MS始めみな熱演。Wergo WER7384-2
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  31. * あちこち飛び跳ねる複雑音列と前打的な連続音でつながるフレーズが対話するというか。「2つの間奏曲」はペダルを多用した響きの中でトリル的な短い断片が動き回る。「秘密の主題による変奏曲」奇妙な音列で休みなく動く主題が姿を変えて行き、いろんな音柱にぶつかりながら進む。「ティヌム」忙しく動く動機が句読点を打たれながら次々と。「ソノーラ」シンプルな打と交互にやや神秘主義的なフレーズから複雑音列の跳躍アルペジオへ。「夜のロンド」オルゴールのように始まるフレーズが打に分節されつつ、自分で動き出す。Da Vinci Classics DV-C00152
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  32. * それぞれ12音高のセリーで作られた12曲で中心音が半音ずつ上がっていくという、調性でも無調でもない和める響き。元はオルゴールのために作られ、さまざまなバリエーションがあるが、これはSop+Pf版(電子オルガン版を聴いてあまりにひどかったので別版を探した)。ティアクライス、黄道十二宮とも。併録ベリオのセクエンツァIIIは気合の入った絶叫。「4つの民謡」は14世紀のシシリア民謡に基づき、素敵な歌唱。さらにシュトックハウゼン「ピアノ小品IX」は例の和音連打。Wergo WER6749-2
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  33. * 4人の打楽器奏者のために書かれたケージの遺作で、凝縮された音がしばらく奏されたかと思うと、長い無音の静寂。窓の外から鳥の声や風の音、ときには飛行機の音などが入ってくる。これらの音が打楽器と入り混じって枠を取り払った音楽を構成する。というにはもう少し音と正面から向き合う必要があり、ながら聴きでは気づいたら曲が終わっていたとなりかねないが、まぁそういうものだ。Da Vinci Classics DV-C00111
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  34. * Fl+打、Guit等+Pf、弦三部の3グループの内、間および楽器vsテープでの対話が行なわれる。モノロゴスはFL他の6奏者が同じパターンの絡み合いを繰り返す。オクトロゴスは8奏者がそれぞれ独自に動き、ソロになったりデュオやトリオになったり。プロロゴスはテープ音を背景にFl+Cl+Vn+Vc+Pfのアンサンブル。メトロノミエはFl+Va+Hpでややエキゾチックというかストラヴィンスキー的というか。「マドリードのエレジー」はFl+Guitで、ポルトガルのベイラ・バイシャで歌われていた旋律によるという。La Ma de Guido LMG2159
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  35. * ソナタ、ロンドという枠を用意した上で、そこをはみ出してくということか。斬新というわけではないが、面白い部分もある。ただ2楽章夜想曲はやや踏み込みが甘い感じで、2曲目Vc+Pfのつまらなさにもつながる(演奏の問題かも)。ピアノ三重奏曲第1番は「影のダンサー」という副題を持ち、太陽、月光、希望、夢などの影での踊りを表現する6楽章。ゆっくりじっくり歌い上げたり、ジャズ的な軽妙さがあったり、内部奏法を組み合わせたり。やはり叙情的な表現でへなる部分もあり。Navona NV6264
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  36. * 表題にある3種類の指示が書かれた楽譜により、各奏者が音を発して重ね、日常生活の音の関係を表現する。ビリー・ハワード「ロール」は1奏者がロングトーンして最後に少し上下し、他奏者がホワイトノイズで答える。ケン・クンプ「三和音拡張(2)」は1奏者のロングトーンに対し他奏者が適当な音階で最後に三和音に達するという反復。マイケル・ピサロ「保持/解放」はもう少し多様な要素が用いられるが、やはり楽譜は組み合わせの要素となる素材を提供し、演奏者が構造を決めて音を作る。先月末は敬遠したこの手の実験音楽を受容できる状態になってきたかな。New Focus Recordings FCR249
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  37. * 魔法の回転木馬、魔法使いの鍛冶屋などの表題を持つ14曲は、主題に応じた技法が自在に組み合わされ、シンプルなようでいながら精妙な小品集。「イントロイトゥス」はPf協奏曲だがオケはFl+Ob+Fg+弦6-4-4-3-1と小編成で派手な見せ場もない。瞑想する反復音のあと短二度上昇、戻って下降というシンプルな動機にいろんな音程幅で動く儚げな旋律が寄り添う。終盤堰を切ったようにPfが駆け巡り弦もダイナミックに呼応するが、最後は上昇しかかったまま不思議に消えていく。Universal Classics 00028948031535
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  38. * 琵琶を独奏に民族的な旋法を用いて、下手をすると単なるオリエンタリズムに陥りそうなところを巧みな楽器法で昇華させている。陳怡「夜想」もよいバランス。周龍「五行」も打楽器の使い方など魅力的、ヴィヴィアン・フォン「鳥の歌」、ル・ペイ「窓からの景色」もそれぞれ美点はあるが、やや東洋趣味的要素の消化不足感が拭えない部分無きにしもあらず。Cedille CDR90000-193
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  39. * BCl/CbCl独奏にファンキーなあるいはラテン風アンサンブルやキラキラした打が応じるごった煮。打+Pf+Vcに、Clを加えた「エステラス」は半音隣接の長い音符が多様な装飾をまとい、+Flの「CBR」は民族風のモチーフとゴシゴシ擦る連符、+BSaxの「パレット」は硬質の打に分節されながらだんだん音が尖っていく。「液状の声」はBCl+Vn+Va+Vc+打にギターやCembまで加わり、短い上下波打ちを基本動機に、高尚さに背を向けるチープな歩みが反復されながら姿を変えていく。Kairos 0015011KAI
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  40. * アイザック・レヴィのユダヤ・スペイン語テキストを女声2部+Hrなし管+Cel+3Vcで奏する。歌の旋律はなく徐々に音程を変えながら言葉を詰め込み時おり歓声。最後ナレーションから神妙に。「フィナーレ」はつまらないので途中で止めたが「指揮者が倒れる」という指示で有名だそうで最後の方だけ再生。「イーゴリ・ストラヴィンスキー公」はBar+Vn+EHr+Hr+Tub+2打で、Br独白の内容は何だか分からないが途中で泣き叫んだり、呼応する楽器は荒唐無稽な音ばかり。打の一人は舞台袖で板を木槌で叩くが、最後に舞台に現れ歩き回りながら奏する。Universal Classics 00028946179123
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  41. * メシアン版グランド・キャニオンという趣で、自然が描写されたり鳥が鳴いたりする。第2部の「恒星の呼び声」は丸ごとHr独奏曲。弦は6-3-3-1で独奏者扱い。 LPO-0083D
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  42. * 編成はVc+Pf+打、ハンマーのようなPf内部奏法の動機に他の楽器が上昇あるいは下降の短いフレーズで答える。カルナータカ音楽の要素だという。「神秘的なアンジュナの鐘」は弦楽合奏とTp+Tb+Pf+打+EG+Vcという楽器群が応答する形で、上昇音形あるいは下降音形を繰り返す部分あり静けさの中で鐘が時々鳴る部分あり。「重力の虹」は電気拡張されたCBClを用いる。「アルフ・ソナタ」はVn+Hrに掛け声やポップなテープ音が混じる。「邪悪な踊り」はアンサンブル+オケ。音響実験のような導入のあと低音の怪しい蠢きの上でラ・ヴァルスを遠くに見るようなしかし全く破壊された舞踏が。Kairos 0018001KAI
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  43. * 軋む音、グリッサンド、微分音などなど刺激満載だが枯れた味わいの単一楽章。マルトン・イレーシュの弦楽四重奏曲第3番は、ねずみ花火がすごい勢いで回転しながら跳ね回るような強烈なパッセージから、線香花火が炸裂の頻度を増していくような楔音の連続へ。リサ・シュトライヒの「(天使...)まだ触れている」は、大きな跳躍に合わせて一斉に空気が振動してくるくる舞い上がるような瞬間が何度かあると、長い空白、時おり出来事、音は純化されていくが、隣接微分音が執拗に続いたり、なんと言えば。Genuin GEN20639
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  44. * 微分音程で重なる捩れた糸から断片が剥離しはじめやがて糸はなくなって断片が組んず解れつ唸り出す。IIIは一転して攻撃的な低音から上昇する。重音奏法やその境界ギリギリの軋んだ倍音にあぶくのようなトリルが重ねられたり、波打つ半音階のデュエットが交錯したり、サキソフォン特殊奏法のシュールな玉手箱。さすがWergo WER7390-2
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  45. * 三度+三度の跳躍を核に、凛と密度高く技法と表現内容も噛み合っている。ジェニファー・ヒグドン「ヴォイシズ」はぐるぐる回転しながら疾走したあと鏡面のようなハーモニクス、そして柔らかな抱擁。エレン・ターフィ・ツウィリッヒのASx+SQ五重奏曲は、お客様ソロ楽器ではなく組み合わせの響きが追求される動きの速い部分が特に興味深い。Cedille CDR90000-196
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  46. * 短三度を上下する4音モチーフを出発点にいろいろ変奏しながら展開する単一楽章。ややミニマリスティックで反復が安易な感じがするところもあるが、これだけの素材でちゃんと最後まで引っ張る。「フォーガ」はCl+Vn+Va+Vc+Pfで、SQ1に通じそうな4音動機から16分音符のフレーズが作られ、それを蝶番に自由な展開。「アテナ」はCl+Pf+SQで、冒頭の虚仮威しを別にすれば、やはり16分音符の基本パターンを反復しながらちょっとニヒルなテーマが面白い方向に発展する。Alba ABCD447
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  47. * ハンブルク「エルプフィルハーモニー」落成記念委嘱作品で、創世記風の「光あれ」「洪水」とミサ曲の「怒りの日」「我らに平和を」の間に「愛」が挟まれる5部構成。無からcrescして光という勿体つけた導入、歌は退屈、頻繁な語りも興を削ぐがオケ部分はまだ聴くべきところも多少はある。3は冒頭Sop期待をもたせるがBar以降オフ・ブロードウェイもどき(しかしまだよい)、4は安い映画音楽風の作りのあと驚きの合唱幻想曲そのまま、5は少し違う切り口になりそうかとも思ったが結局丸く収めてしまう。いったいどうした。ECM Records 00028948170081
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  48. * 増四度が強調される不安定な線が民族っぽい動機と入り混じり、ひんやりした感覚からやや歪んだ熱を帯びていく。併録第2番は叙情圏からはみ出すのかと思うとそうでもなく、あまり面白くないまま。Cl五重奏「スウェーデンの夏の空気」、Cl+Pfの「ディヴェルティメント」もふわっと甘い音楽で、SQ1の覇気はどこへやら。LAWO Classics 7090020182155
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  49. * 5人の奏者でガムランほか高低音のある打楽器を組み合わせる。「第5シムフォニー」は打四重奏で、オケ版第4交響曲の50年前に書かれている(13番というのもある)。「ラビリンス第3番」は打11人、「二重音楽」はケージと共作した四重奏、ほか「フーガ」「カンティクル第1番」「ケツァルコアトルの歌」「ボンバ」いずれもフレクサトーン、クラベスから木魚、植木鉢まで多様な打楽器で、音律というか音程のようなものがあるフレーズを組み立てている。1940年前後の打楽器作品群。Hat Hut Records 888831582762
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  50. * スルポンのトレモロを多用し、短い攻撃的パッセージを繰り出す、かと思うと隠れて居ないふりする。2番の2楽章以外は短く凝縮されているというかあっけないというか。「3楽器の協奏曲」はPf+Tb+打がそれぞれ技巧をこらして競演。Tbはかなりアクロバティック。「カンディンスキーのために」Fl+Ob+Clが日向ぼっこしながら絵画鑑賞してるか。Hat Hut Records 888831581925
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  51. * Cl5各楽器の古典旋律らしき勝手奏が絡み合い溶け出す。「働く昼には」次々に湧き出るカノンもどき。「七重奏曲」くねくねにプリペアドぽいPf点打。「スケルツォ」木管弦が奏するも電子Org単和音が全てかき消す。「…天国にて」Cel単純和音連打上で9重奏。「スタディ」はVn+Tp+Pfが小さくcrescしては打ち止め。「デュエット」はFl+ClにTpがエコーで重なる。「マドリガーレ」は4手Pf+Vib+打+テープか、おもちゃの巻きねじが切れていく。「2つのカノン」Fl+Vnの極遅カノンもどきに意味不明Pf。「来たれ創造主」9重奏がCel単調和音上でグレゴリオ聖歌を解体。超アナーキー。Hat Hut Records 888831585442
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  52. * Fl+Cl+Vn+Vc+Pf/Cel+打に声を加え、オズの魔法使いに基づく音物語を描く。出会いがあったり、状況が切迫したり、などなど、いろんな情景が浮かぶファンタジックで多彩な表現がふんだんに盛り込まれ、よくできているのだけれど、1時間近い構築物としてはややとらえどころがなく、(表題に引きずられ過ぎかも知れんが)舞台なり紙芝居なりと組み合わせるとよいのかも。Hat Hut Records 191773465506
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  53. * 5人の奏者はFl+2Vn+Cb+Pfかな。各楽器の緊張関係がうまくコントロールされ緩慢なところがない。Cbがよく働く。「プログレッション」はPf独奏(手叩4重奏版もある?)。「ランドスケープ」はFl+Cl+Vn+Vc+打の5重奏でポルタメントが印象に残る。「コンティニュアンス」はVn+Vcで、中間部は動きがあるが前後は緊張を維持しきれないかも。「プライムα」はFl+Cl+Vn+Vc+Pf+打の6人でバランス良いまとまり。どれもよく聴くとそれぞれの味わいがある。Hat Hut Records 191773465506
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  54. * 14番は急緩急緩急の5楽章、それぞれ主題も構造もはっきりしているのだがどこか捻れている。最後は妙に名残惜しい。15番は穏やかそうに始まるが、小さな異質物が少しずつ広がる。複雑なことをするわけでもないのに、VIあたりへぇそんな手があったかという。最後は静かに消えていくが、存在感。併録「3本の椰子の木」(詩篇ではないよ)はレールモントフのテキストを歌うSopとSQで、ちょっとシェーンベルクっぽい。フレシェルの歌唱が艷やか。 CDAccordACD268
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  55. * 第1番は内部奏法Pf+Cymbにランダムな電子音を加えるが、電子音が単調な正弦波なのが辛い。第2番は音高差のある鳴り物にいろいろ横槍が入る行進曲、第3番は圧縮された2番に1番の正弦波が乱入する。第4番は12台のラジオ、第5番は42の録音機から出てくる音のコラージュ。併録「しかし紙をクシャクシャにする音~はどうだ?アープは水や森に触発された」は+やoで発音が指示された10パート譜から3つを任意に選んで各奏者がそれぞれのテンポでゆっくり奏するとされていて、静かな庭でときおり水が滴ったり葉が風に鳴ったりするような、無の音楽。冗談みたいな落差。Hat Hut Records 888831591221
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  56. * Vn+AFl+Cl+Pfという編成で、Pf内部奏法で示される断片のような主題に始まる11のエコー。楽器をPfの弦の近くで奏して倍音を生んでみたり、弓の毛を緩めて弾いたりと、試みもさまざま。併録「4つの夜想曲『夜の音楽 II』」はVn+Pfで、ハーモニクス、ピチカート、内部奏法などをシンプルに組み合わせる繊細な景色。「鯨の声」は例のFl+Vc+Pf、マスクを(口にではないけど)付けて演奏するというのは、このご時世にあってシュール。「印象第2集『夢の流れ』」はVn+Vc+Pf+打+グラスハーモニカで音が時々しか鳴らない。静かな庭のよう。Hat Hut Records 888831581604
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  57. * ABA'CA''D型ロンドの6部構成で、弦主体の創世記B、メカニカルな動きが崩壊していくC、弦ハーモニクスのA''は面白いが、両端は金管が煩くなりかねない。「時の印/時の塊」は5楽章のPf協奏曲。1拍ずつ区切って奏される和声やミニマリスティックなPf独奏、クラスター的音膜にときどき暴力的金管が挟み込まれる。「666600~焦点は人々にある」はハーモニクスの凍った響きにバルトークピチカートが突き刺さり、少しずつ介入が増えていく。どの曲もTpの強奏が下品で耳障りだが、それぞれオケも異なるので、これが作曲者の意図なのかね。 NEOS11909
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  58. * 第1楽章はVnがいきなり何かのパロディっぽい節回し、HrやPfがやや雄弁な導入部的、第2楽章はワルツや童謡のような親しい旋律になるはずが押しつぶされ、第3楽章はLargoながら時々打が炸裂しいろんな曲の断片的引用も。第4楽章はマーラー第1交響曲4楽章の全面的パロディで声楽まで入る。終楽章はホルストの火星そしてベートーベンSQ15を下敷きに声も入って崩れた音楽、そして突如謎の乱舞で終わる。全編これ諧謔。併録「戦闘行為/夢の行為」は雄叫びのようなものは時折あるが、混沌とした中で無秩序にいろんなパッセージが出入りする。 NEOS11912
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  59. * 冷たい靄のような長音符の響きが何度も反復されながら変化していく。半ば近くで中音域に移って徐々に楽器が増え始め、2/3でようやく全体が姿を現すもfになったかと思うと遠ざかる。最後にffは置かれるが急速に減衰してppの反復。併録「希望の誤り―ドイツ・レクイエム」は4群32声のSATBが、息音や口笛を交えながら、やはりゆっくりした音のパターンの反復で歩む。半ばに一度ピークを置いて無に戻り、言葉のない音楽から第2のピークに至るがまたも切断される。テキストはペーター・ヴァイス「レジスタンスの美学」第3巻による。 NEOS11911
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  60. * Fl+Cl+SQでアラブ/イスラム音楽のルーツを持つというパッセージがぶつかり合う。「媚薬」は特殊調弦Vnの独奏。「悪魔的な鳥」はPicc+BCl+Vib+Pf+Vn+Vcという六重奏、「ブードゥーの子」はSop+7楽器、「ベール」は8楽器、「Inguz」(ルーン文字で豊穣)はCl+Vc。どれもグリッサンドあるいは微分音的なスライドで紡がれるフレーズを持ち、複雑でなんというか魔術的。速いテンポやリズムはなく、空間がゆっくり捻れていく。Hat Hut Records 888831582649
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  61. * いろんな抑揚で話しかけるVcに答える打の対話(紅の豚)。ジェニー・ヘットネ「ベルと潮流」は南印カルナータカ音楽ベースのとぼけたような遊び感覚。リカルド・エリツィリク「レ/風/レ/書く」は素早いグリッサンドとコミカルで多彩な動きの打の交錯。エサイアス・ヤルネガルド「石―灰、灰」は凍った表面を引き剥がしていくような硬質の響き。チャン・レイレイ「終わらない旅」は湿っぽい旋律にGsplや打が絡むうちに踊りだす。イーヴォ・ニルソン「場所について I」はフラジオレットの倍音にVib、フレクサトーンが重ねられた浮遊する音空間。フランギス・ヌルラ=ホーヤ「もし…」はcymだけの長い前奏の後ため息とともに行進が始まるがそれもまた。 NEOS12002
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  62. * 各楽器がバラバラに勝手なフレーズを奏していながらも一つの物語にはなっていて、BClがなかなか饒舌。併録「灰色と緑色に関する研究」も楽器を変えながらつながっているような長い線の周りで多芸な断片が飛び交う。「フランシスコ・トレドへのオマージュ」「私の背後のパリの風」「水の化学」「脆弱な次元」それぞれ楽器法も異なり特徴的な部分もあるのだけれど、印象としてみなかなり似通っているのは、もう少し聴き込むとまた違ってくるのか。 NEOS12001
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  63. * コントラルト、Pf、打、室内アンサンブル、電子楽器で演奏される2時間超の大作。6部構成の連作で、2003-2013年(改定も入れると2016年)にかけて順次書かれている。「出エジプト記」「エレミヤ書」のテキストを用い、音楽もそこからゲマトリアによって素材を導いているそうだ。楽器と電子音による「余白(negative spaces)」の創出を試みているというが、著しく禁欲的で切り詰められた音が間欠的に浮かんでいる感じ。ミシュパティムはヘブライ語で掟あるいは法。 NEOS11919-20
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  64. * 盤渉調の越天楽という主題を軸に、音は不確実性をもってあちこちに飛び散る。併録「ガッゼローニのための韻」は松平頼暁の曲で、奏者は何やら呟いたり打を扱ったりもする。12の韻に各36秒が指定されるが、順序は自由だという。さらにAFlのための嶋津武仁「カシオペイア」、BFlを増幅してステレオで動かす篠原眞「パッセージ」、《ノグチの旅のように幾つかの地点を経巡りながら変化を続けていく》という武満徹「巡り」、BFlが尺八のような音がとても少ない細川俊夫「息の歌」。Hat Hut Records 888831582717
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  65. * 5楽器室内楽曲のPf独奏版。ポツポツとした単音を結ぶ線が、ほとんど同じようでいながら少し変化を加えて反復される《偽反復》あるいは《力動的静止》。「歩く」もFl+Pf曲の独奏版で、少しスキップして歩くような単純な基本動機が横跳びになったり躓いたり。「早春に」は旋律のオクターブ上(または下)の《影の音》が不規則に遅れて対話のように。「ヨーロッパ人」「撚りII」はかなり線的、「夏の小舞曲」はランダム、「記憶術のタンゴ」「高窓」はゆっくり和声が変化する。Hat Hut Records 888831591528
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  66. * かつて作曲者が住んでいたロウアー・マンハッタンを舞台にした物語を、24声のア・カペラ合唱で綴る。ゆっくりした基本主題が繰り返し、少しずつ変奏されて登場する間に、エピソードがそれぞれの手法で語られる。エコーのようなわずかな時間差のカノンを用いた、催眠術的な音響。Cantaloupe Music CA-21154
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  67. * 扉-星-海の3部構成で、トラックが1つなのではっきり分からないが、冒頭はすばしこいパッセージと様子見の静、「星」と思われる中間部はファンタジーが、内部奏法のグリッサンドからであろう「海」はペダルが多用されて広がりがある。「未来」は各楽器がうまく無理なく生かされ、斉奏のフォルテも煩くない。VcからVnに受け継がれる独奏部も味わいがある。「鬼火」も面白い曲でVcとアコーディオンが効果的に扱われるがサックスの音色が良くも悪くもはみ出している感じ。Austrian Gramophone AG0015
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  68. * 速いテンポは第3楽章だけで、基調は穏やか。二度上下の組み合わせあるいは順次上昇/下降という三度音程の動機を用い、旋法的にはずれていく音や不協和音がときに厳しくあるいは悲しく、しかし最後は柔らかいEs-durに回収されていく。名曲だな。併録の第1番、第2番も攻撃的な不協和やリズムを経ながら最後は瞑想的にB-durで締めくくられるが、第1番は上声に、第2番はVcにずれた音が残る。第3番でそれが解消されることになる。ATMA Classique ACD22802
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  69. * Hyojoとあるから平調(mi)なのだろう。動いたかと思うと様子をうかがい、音もあちこちに飛ぶのに、ある方向に進んでいく不思議な曲。伊藤祐二「ソロイスト」はゆっくり流れる時間の中で和音にこたえて少し動く反復。藤枝守「ジャイロ・タンゴ」は退屈な舞曲に空中でアルペジオが答える。平石博一「鏡の中の虹」は速いアルペジオの中で。戸島美喜夫「冬のロンド」はリズミカルな遊び。近藤譲「高窓」はホモフォニックな和声がゆるやかに変化していく。甲斐説宗「ピアノのための音楽I」は低音の鬱陶しい蠢きから徐々に重心が高まっていく。それから武満徹「雨の樹 素描」。Hat Hut Records 888831584551
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  70. * チベットの湖を描いた一連の作品の一つ(ラムラ・クオもその仲間)で、古筝+5奏者による。全体的に動きが多くかなり波高しな感じ。中間部は少し凪ぐがまた忙しく動き始め、筝とHpの下降グリッサンドが繰り返される。併録「経幡」はPfトリオで、緩やかなやり取りから忙しい動きに進む。「12月の菊」はFl+Pf、「ナムクオ」はPf独奏(やはり湖)、「ハイビスカス」は室内オケ曲、「San Die」は尺八と琴のための曲をFl+古筝で。エキゾチックな音律のグリッサンドや走句が続くと、ややチープに響くきらいが無きにしもあらず。Delos DE3559
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  71. * 2つの部分がAlamogordo、Hiroshimaと名付けられ、4つのナレーションが重なり合いながらその様子を「証言」する。4群の打楽器を場の四隅に配置し、客席を真ん中にして演奏するという。併録「ルーン」は音程のない楽器による和声空間というアイデアだそうで、異なる高さの音の打五重奏。「ドラム四重奏曲のための3つの小品」は逆に同じ音の打でどんなものができるのか。「マキシミュージック」はドラのトレモロらしき単調な音が5分ほど続いた後で突然各種打が忙しく騒ぎ始めるが、ドラの一撃で打ち消されて元に戻る。Hat Hut Records 888831582281
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  72. * 比率ネウマという、五線譜から図形楽譜に至る試行錯誤のひとつを用いて記されているという。コロンを挟んで秒数と演奏内容が指示され、音高などは演奏者が選べるが時間軸は概ね定まっている。「プリペアド・ピアノのための」も同年の作品だから、手法としては同様だろうか。ポツポツと音が断片的に投入される。併録はケージのピアノのための音楽第52番~56番、コーネリアス・カーデューのピアノ・ソナタ第3番、フランコ・エヴァンジェリスティ「音の反射」、ボー・ニルソン「量」、アンリ・プスール「即興曲と変奏曲 II」、みな1950年代後半の、同時代性の濃い音楽。Hat Hut Records 889176569951
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  73. * Fl+Ob+Cl+Trb+Pf+打+SQの10人で、かつ打は10種類の楽器を選んで使う。微分音の長音が入れ替わりながらゆるやかに上下しときどき打やPfが合いの手を挟む。「龍安寺」は打+Trb版となっているが、ふにゃっとした上声はFl。Trbはペダルトーンでブツブツ言う。仏頂面で気が向いたときに鳴る鐘太鼓。FourteenはTen-ObにBFl+BCl+Hr+Tp+Cbで、やはり長音の入れ替わりで進むが音の幅は広い。短いインターバルでいくつかに区切られ、少し音景色が変わる。Hat Hut Records 889176561429
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  74. * ソネット53番、54番のテキストを用い、Sop+Pf+打のために図形楽譜で書かれた1960年の作品。後の絵画のような楽譜ではなくて、五線に書かれた断片が枠に配置されるモービル(浮動)楽譜。併録「リエゾン」はVib+Marmb+テープのための、やはりモービル。「認定書あるいは考えろよラッキー」はベケットの「ゴドーを待ちながら」によるSop+室内楽。弦楽四重奏曲第2番は1977年で、短い6つの楽章。ジンメルの思い出は静かな感傷から強い感情に変化したり、スルポントレモロとピチカートの胸騒ぎが鋭く交わされたりするが、全体の基調は静謐。Hat Hut Records 888831585640
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  75. * 短波ラジオが受信した音声をソリストが模倣し、楽譜の「螺旋記号」に従って変形するという作品で、ここではFl、(奇)声、電子楽器をソリストが扱っている。ラジオの音がかなり古臭い雰囲気を醸すが、それも含めてこの時代ならでは。Hat Hut Records 889176548697
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  76. * 芭蕉の句から着想を得たという、秋風、竹、台風、雲などの題を持つ24の小品集。よく言えば俳句の詩的インスピレーションが表現されているが、表題通り儚く通り過ぎるだけでもある。「ステップス」はシャラーモフの「コルィマ物語」に触発されたという、冷たいシベリアの空気感が流れる三部作。オーソドックスな時間軸で音が進む。NoMadMusic FF001D
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  77. * もやもやした暗い混沌の中からキラキラした打楽器が浮かび上がり、合唱が言葉の矢を投げつける。力を増した混沌が騒がしくなると一撃によって文節され静まる。上昇するトーン・クラスターと下降グリッサンドを繰り返す声。など。併録「ストロフィ」は出世作で、ギリシャ語、ヘブライ語、ペルシャ語のテキスト朗読にSop、独奏Fl、Pf、打など10楽器が絡み合う。「母校~を讃えるカンタータ」大仰な導入部に始まり、静寂から湧き出てくる合唱、重なる管弦楽が2つの半音隣接基軸音中心に。Warner Classics 190295214401
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  78. * 1960年頃の初期作品。多彩な打楽器を核として合唱のトーン・クラスターなど音響的な実験がさまざま取り入れられ、管弦はほとんど出番なし。併録「デ・ナトゥラ・ソノリス第2番」は弦楽器がクラスタをつくったりそれを切り裂いたりしながら、だんだん混沌としていく。頂点は管打も入り乱れて煩いがまた最初に戻る。「コスモゴニア」は独唱3人が加わっていろいろ歌い上げるが、大仰でちょっと困る。Warner Classics 190295214395
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  79. * 荒っぽかったり気まぐれだったり物静かだったりという異なる性格がそれぞれ練られた表現。併録「クラリネット五重奏曲」もClと弦の性格的な対話、「連峰」はヴェルナー・クナウプの絵によるピアノ。「建築」は管弦楽で饒舌だが最後は室内楽的に。 NEOS12005
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  80. * Fl+Cl+BCl+ASx+Hr+Pf+打という編成で、眠っているような状態が徐々に目覚めて緻密で活発なやり取りに至る。ダルムシュタットでの短縮版付き。併録「それは優しい沈黙」はゆったりしつつ繊細な技巧が駆使されるア・カペラ。さらにシャリーノ「言葉のアリバイ」ほとんど聞こえない声から単発音の組み合わせ、ポルタメントなど声の実験室。「石のない3つの歌」は二度三度下降モチーフを繰り返す静かなつぶやきのようなアンサンブルにどこからか合いの手の叫びが飛んでくる。モチーフが高音からだんだん下降するモノローグが順番に登場して重なり、最後はまた短い下降音節で何かを訴える。そんな感じ。Divox CDX-21701
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  81. * 超絶な技巧を用いつつ深く、歌もある名曲。ブタンはまだ若いと思われるが、しっかり弾いている。サーカスのパフォーマンスと共演するなど面白い活動も。5月にも来日していたらしい。NoMadMusic NMM039D
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  82. * 人間によって絶滅に追いやられる動物種があるということについて。悲哀のような、願いのような、イマジナルなピアノ。併録は望月京「メビウスの輪」。ゴツゴツとした鼓動の上で徐々に転がり始めまた立ち止まる変装。さらにエミリー・プレトリウスの「存在の」は、宙吊りの時間から流れる時間へ、前者を愛しんでささやくように描写する感じ。時折まじる内部奏法も繊細。New Focus Recordings FCR242
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  83. * 不協和ながら静謐に響く和声がいくつかの楽器群で交互に奏でられ、SQはその中に埋もれつつ時々ふっと浮かび上がる。オルガンはないのに一瞬それが鳴ったかのような錯覚に陥ることも。併録「コプトの光」はより大きな編成で厚みがあり、動きも仕掛けもあるのだが、その音ベクトルは通底する。Capriccio C5378
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  84. * いろいろ叩いたり擦ったりするノイズのみが、日常の喧騒と機械室的な虚無が入り混じったようなねじれた空間を生む。最後は壊れてしまったあとの空白。サンティアゴ・ディエス=フィッシャーの「プラスチックの無秩序」もノイズ的電子音だが、息を吹き込んで絞り出されるうめき声的なくねりと無機質な壁のような不快音の交錯。壁に飲み込まれるというか壁自体もかすれて行き時々うめきが断片として。あまり面白くはない。New Focus Recordings FCR254
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  85. * ジャジーなClの雄牛の尻尾ダンスと、不思議な旋法で忙しく動き回る傅玄ダンス、面白い。併録シュラミト・ラン「3つの情景」は一人でいろんな表情のパントマイムという感じ。テレサ・マーティン「パラゴン」は五音音階的な幻想から一転してブルース風になり、融合する。ベルク「4つの小品」はしっとり軸、ロバート・ムチンスキ「タイム・ピース」は動と静の交代の中で。Soundset Recordings 195081394541
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  86. * ベケットのテキストに基づく、極めて限られた音がゆっくり変化していくフェルドマンらしい音構造。モノトーンなソプラノ。9連音の半音階的にくねる主題。時おり管打を少し伴って遠慮がちに何かが演じられる。音は高まっていくのだけれど、混沌のままくねりながら途切れる。Hat Hut Records 888831584629
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