クリストファー・フォックス:
サーモジェネシス
(フィリップ・トーマス) 鍵盤を拳で叩くような密集音塊を上下させる原始的というか子供の遊びというか。これを最初はミットを嵌めて、次にそれを取ると手袋で、最後に素手でと3回繰り返す。まぁ確かにタッチは変わる。「昇降機」は超低音の蠢きで始まり徐々に最高音域まで上昇していくモザイク的パターン。「時の果てに」はプリペアド・ピアノでEsを反復しながらアルペジオなど。「共和党のバガテル」はベートーベンとアイヴズの変奏の変奏ということで硬軟織り交ぜて組み合わされる。Hat Hut Records
889176091353
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ジョン・ケージ:
アトラス・エクリプティカリス
(エベルハルト・ブルム) 星図の星を音符に見立てた音列から86のパートを構成したという図形スコア。演奏方法は任意で、ここでは1人でPicc、Fl、AFlを奏している。暗い天空に光る星を渡り歩く如く、ポツリポツリと音が鳴る。Hat Hut Records
889176544484
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モートン・フェルドマン:
クラリネットと弦楽四重奏
(ハウスマン+ペッレグリーニ四重奏団) HCABのモチーフがずれたリズムで奏されながら変化していく。バッハの逆読みで、実際に念頭にあるのかどうかは不明だが、想起させないわけにはいかない。併録「クラリネットと弦楽四重奏のための2つの小品」はハーモニクスとピチカートの薄い音にClが答える離散的で儚い響き。2つのバージョンが収録されている。Hat Hut Records
888831582076
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ハウベンシュトック=ラマティ:
クライゼ
(エベルハルト・ブルム+ジャン・ウィリアムズ) ザラザラした打と早口で打のような息音を連発するシュプレヒシュテンメ。2バーション収録。「バッテリー」はいろいろな打の組み合わせ。「デシシオン」はFl+Trb+打で特にFlが複雑で激しい動き。「アローン1」はBFl+BTrb+打で低音で絞り出される断片的つぶやきにギロのような軽い乗りと大太鼓。これがけっこう面白い。Hat Hut Records
888831584650
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リュック・フェラーリ:
細胞75
(井上郷子+松倉利之) せせらぎと鳥の囀りのテープ音にB-C-Ges(-Es)のモチーフ、妙な電子音、そして割と生真面目な打が順に加わり、拡大しながら徐々にズレが生じる。制約の中で即興してみようともがくPfと淡々と安定した打に隠然と支配するテープ音。中間部はそのバランスが崩れて偶然性に委ねられるものの、壊れたマーチから執拗な反復パターンが冒頭のモチーフに回帰していく。「ないしょの話」は気だるく始まるがだんだん興が乗ってくる対話。「ヴィザージュI」「ソナチネElyb」はPf独奏で自由な分裂感。驚くようなことはないが、Pf的にはこちらの方が面白い。Hat Hut Records
888831581710
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マリア・デ・アルベアル:
最高の甘さの中で~泣きそうになりながら
(ヒルデガルト・クレープ) ずっとペダルが踏まれているような模糊とした響きの中に、とりとめなく、旋法的でもある音列が散りばめられる。併録「ハーブの草原で」「オレンジ色の爪で作曲するために遅くまで座っている」「ピンクの薔薇にキスをして」という具合で、耽美っぽい装いの中でずれていくというかいかないというか。最後の「沈黙は…」がまったく無音なのはそういう意図なのかNMLの失敗なのか、はて。Hat Hut Records
889176544507
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モートン・フェルドマン:
弦楽四重奏曲第2番
(アイヴズ・アンサンブル) 二度、三度の並行和音上下反復を基本にしたパターンが、例によって少しずつ変化しながら繰り返されていく。ずいぶん長いこと演奏してるなと思ったら、全部で5時間も(6時間かかる演奏もあるという)。それでも単調な感じはなく、退屈はしない。まぁ、ながら聴きだが。途中のスクラッチノイズや音飛びは、そういう曲なのではなく音源の問題だよね?Hat Hut Records
889176642036
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エミリアーノ・トゥラッツィ:
フルートとチェロのためのコンポジション
(ベアトリクス・ワーグナー+ブルカート・ツェラー) 暗闇の静寂の中でときどき刃が光るように走り抜けたり、薄暗がりになってただよったり、墨絵のような世界。併録「テナー・リコーダーのための~」は(事前録音された?)基音に向かって、あるいはそこからの上行グリッサンドをゆっくり繰り返す。「Quelli che vivono」(生きている人々?)は電子音(あるいはいろいろぶつかる音)と木管&弦&打8人による、切り詰められた音(の消失点)の重なりで、まさにタオという感じ。不思議。Stradivarius
STR37122
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