Planet masaka played list 2020-12


  1. * 複数声部が独自のリズムで進行して人間の手に負えない複雑な重なり合いを生む。時折ジャズのイディオムが混じったり、グリッサンドが連続したり。ナンカロウの自宅のアンピコ自動ピアノによる録音だそうで、ちょっとプリペアドっぽい音がよりシュールな空気を醸している。異次元空間を味わえる5巻の曲集(CD番号は第1集の6907から連番で、これは第5集)。Wergo WER6911-2
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  2. * 最初のカノンAは左手の5音の間に右手が7音弾く7:5、Bは6:9:10:15というどうするのやらという比率、Cは左手のソロに右手が3:2の比率で答える。70代後半(1989)の曲。「前奏曲とブルース」は20代前半(1935)の頃の作品。「自動ピアノのための習作」は3c、6、11番が収録されている。これまた変わった比率で各声部が絡み合う。これ一人で弾けるのか?全曲集を聴いてみなくては。SoundCircus 3614598817703
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  3. * 「神の主題」「星と十字架の主題」など、移調の限られた旋法につながる複数の主題が循環したり、鳥の歌が入ったり、トゥランガリーラの頃のメシアン色満載の大作。ぼんやり聴いていると幻想的な部分のみ印象に残るのだけれど、第6、10曲のように込み入って激しいものもある。マグレガーの演奏はとても明瞭。SoundCircus 3614592534309
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  4. * ペルーの不思議な愛と死の昔話は、呪文のようだったりはたまた甘美だったり。『5つのルシャン』と合わせ『トゥランガリーラ交響曲』との3部作を成すもので、あの和音、旋律の感覚が蘇る12曲。SoundCircus 3614597504673
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  5. * ジャジーなマーチに始まり、しっとりしたアダージョを経て「リッキー・マーティン風」と題されたトッカータ。秀作でもないが、珍しい曲。併録アイヴズの第2ソナタは硬派な抽象表現から柔らかな抒情まで、引用も明確なものから隠されたものまで、さすがに広く深い。間のグレン・グールドのピアノ・ソナタは、稀代の演奏家も作曲の才はなかったとしか。あるいは両曲をつなぐ何かがある? Brilliant BC96295
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  6. * こんな音をピアノで生み出すという発想に改めて唸る。各楽器に様々な特殊奏法があるとはいえ、これはもう別の楽器。併録「危険な夜」も味わい豊か。おもちゃの国のような別世界で羽ばたく、湧き出たままの感覚。「バッカナール」も。SoundCircus 3614598817499
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  7. * 終楽章に高難度の4声フーガを置くなどがっちり書かれているが、モダンなリリシズムに満ちて素敵な曲。「遠足」はジャズやブルースの要素をふんだんに盛り込んで洒落ている。アイヴズのピアノ・ソナタ第1番もアメリカン要素たっぷりにロマンとモダンを往き来する。SoundCircus 3614598054696
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  8. * 各楽器の厳しい音片が複雑に組み合わされるカクカクしたつくりの協奏的交響作品。戦いが終わって静寂に至りましたという。「ハリソンの時計」はみな同じ出だしを持ち、メカニカルな反復だったり止まりそうだったり流れが渦巻いたりする5つのPf独奏曲。SoundCircus 3614598585787
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  9. * 作曲者自身による古ノルド語のテキストを用いた、Sop+Fl+Guit+打のモノドラマ。摩訶不思議な音律の歌に各楽器が寄り添ったり独自に響いたりして、古代の神殿で巫女が儀式を行なっているような。「運命の月」も同じく古ノルド語でBar+Pf。「ハーガル」は古代楽器の役割を与えられた管を含む室内オケが混沌と入り乱れる(北欧の冬時雨だという)。「サンド」はPf独奏で、ス北欧の水の様態を描くというミステリアスな音世界。MicroFest Records MF15
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  10. * 緩急織り交ぜた6曲で構成されるのはバッハと同様だが、微分音などが土の香りと溶け合い、深く力強い。クルターグの「サイン、ゲーム、メッセージ」は弦三のほかにVa、Vnの版が出ているようで、Vaは大地から湧き出てくるような、生命ある響き。ECM Records 00028947647294
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  11. * 副題が「エドワード・コーエンを偲んで」で、イニシャルのE-C、それに自身のB音をモチーフにしているという。離れた音がいろいろ飛び交うが基調は沈んだ無調。併録「地平線へ向かって」「幻想ソナタ」「侵害」それぞれ増音程を持つ主題から抑制された破調という感じかな。Bridge Records BCD9434
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  12. * 十二音やら無調やらの曲なのになぜタイトルが抒情なのかよく分かるというか、にこにこしながら存分に楽しんで弾いている感じ。併録のシェーンベルク弦楽四重奏曲第4番ものびのびと気持ち良い。ウェーベルン「緩徐楽章」は定番の組み合わせなんだろうけれどロマンチックすぎて辛い。Zig-Zag ZZT070502
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  13. * ブレヒトの「ガリレオの生涯」仏訳から選んだテキストを語りながら、打奏者が13の異なるキャラクターを表現するという不思議な作品。スーザン・パレンティ「語る打楽器奏者と短詩」は“左右の手と淋しい口のための試作4”という副題で、より独立性の高い語りと打(同一人でもよい)。ホワイティング自身の「社会的事象となり得る朽ちやすい構造」はヴァレーズのテキストを語りながらSDを叩く。フレデリック・ジェフスキー「地球へ」は説明がないがやはり語り付き、リチャード・ローガン=グリーン「あなたが聞きながら考えること」は打のみで、書かれたものでなく音によるスコアを模倣するのだと。New Focus Recordings FCR259
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  14. * 複雑すぎてほとんど演奏不可能で、管弦楽の楽譜は読解可能なように書き直したという2台Pf協奏曲。「モノローグ」はそれを元にPfデュオ用に編曲したというが、バッハのカンタータなどの引用が出てきたりする。「遠近法」“架空のバレエ”も2Pfでセリーを用いた初期前衛曲。「フォトプトーシス」は静止主義に向かった後期作品。col legno WWE1CD20002
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  15. * 題名の通り短くウィットある性格的小品集で、「12音調性」なんだろうか、調性的ではないけれども包み込まれる柔らかさがある。SQ第9番 「短い出会い」はバルトークというかヤナーチェクの香りがする14の短い楽章。「セレナード第3番」はPf+室内オケ、「ソロ・パルティータ」はVaとVnが交互に弾く。「6つの祝典的インヴェンション」は6人の作曲家の誕生日などに書かれた。いずれもさり気なく自由。「弦楽五重奏曲」は初期作品。ほかFg独奏曲やPf協奏曲など盛りだくさんの2枚組。Bridge Records BCD9214
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  16. * ゆっくりした序奏からジャズの要素もかすかに聞こえるアレグロに移り、冒頭が少し回帰したあと再びテンポアップして結尾まで進んで行く。無調ながらリリカルで洗練されている。Vnソナタは無伴奏で、十二音技法の第1楽章、高速で駆け回る第2楽章、ゆっくりした二声の第3楽章、跳ね踊るようなマーチの終楽章。Pfソナタ第2番は休みなく音が飛び回るアレグロ、十二音技法のレント、少し皮肉なマーチにも聞こえる終楽章。さらにPf独奏のアダージョと「ブレンダのためのワルツ」。充実した一枚。Bridge Records BCD9453
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  17. * たそがれた砂の中から建築物が立ち上がる1楽章、民族風を意図したのかも知れない舞曲の2楽章、パッサカリアの3楽章。何か甘味だなと思ったら父のジョージではなく子の方だった。ピアニストがペダル使いすぎかな。「9月のエレジー」はVn+Pfで、9/11への哀歌だという。「サウンディングズ」はCl+Fg+Pf、「原初のファンタジー」はピアノ室内協奏曲で、混沌というか壊れたおもちゃ箱というか。凡庸というほどではないが光るものも特になく。Bridge Records BCD9450
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  18. * 1957年第3ソナタ未完のあと遠ざかっていた独奏楽器曲に37年ぶりに戻ったという、複雑、というより目まぐるしく忙しい曲。「天体暦の1ページ」は2005年作曲で茫漠とした空間に複雑な物体が紛れ込んでくる短い曲。ほか12のノタシオン、第1~第3ソナタを収録したピアノ独奏曲全集。Bridge Records BCD9456
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  19. * 2本のBFlがいろんな技巧を駆使しつつ、掛け声やら口笛やらを交えて掛け合う。「ミル・パナデロス」(千のパン?)はVn独奏が矢のような単線クレッシェンドと単弓スピッカート(ジェテ)の減衰断片を組み合わせ、その六重奏版「千のパンへの使徒」は打やPfも加わってさらに多彩な表情。「さよならのあとで/フェルト」はHp独奏でこれまた特殊技巧の連続。前半はシャリーノの「トラキスにさらば」を受けての作品、後半はフェルトピックを用いることによる名だという。「眠りの歌」はギター四重奏で、やはり特殊効果オンパレード。実に面白い。スコアもみな公開されている。New Focus Recordings FCR252
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  20. * ミーントーン(中全音律)調律のアコーディオンのための曲で、中低音の密集和音をときにグロテスクに響かせつつ、いろんな音を持つ身体が進んで行く。「ハーモニーI-IV」は澄んだ響きからクラスター、走り抜けるパッセージまで。これらを包むようにフレスコバルディのカンツォン集やフローベルガーのパルティータが配される。ドメニコ・ツィポーリのソナタ集のホ短調で転調すると妙な音程になるのは中全調律だからか? NEOS22001
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  21. * Fl+Vn+Va+Vcで、細かく振動する断片がばらばらに奏でられながら時折集合する。Umbrisはラテン語で色合い。併録はVc独奏「ソルス・クム・ソロ」、Fl+Va+Vcの「来い深い眠りよ」、Ob+弦三の「記憶、円」、Fl+Ob+弦三の「夜想曲」。編成は違えどみな似たところがあり、ちょうど等類ということばを覚えたばかりなのでもしかするとこれ?という感じもあるが、そういう意味ではVc独奏のSolus cum Soloにエッセンスがあると言えなくもないか。いや、それぞれ密度は濃く、なかなかのものではある。Claves Records CD50-3007
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  22. * Fl/AFl/BFl+SQで、激しい息音や高音ハーモニクス、バルトークPizzなどを組み合わせてエジプトの砂嵐に埋もれるモノリスが描かれ、それが浮かび上がって奇妙な渦巻になる。ダイ・ボー「囚人の子宮」は軋む第1楽章からワルツを含むポリリズムの第2楽章、そしてくねくねしたパッサカリアを経て干からびたような終結。ピョートル・モス「讃歌と祈り」は古代ギリシャの賛美歌が徐々に姿を変え、踊り子であるFlにSQが絡みついたり戯れたり覆い被さったり。 DUX7646
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  23. * 五度のドローンが自然倍音のハーモニクスに移り、作曲者のいう「16弦のエオリアン・ハープ」のように織りなされる、鏡の国のお伽噺のような音空間。併録「歩いてきた線」はゆっくり上昇していく五音音階や逆に下降してくる線がカノンのように重なり合う。いずれもミニマリスト的な同パターン反復によるアンビエント風ではあるものの、緩やかに包み込まれる感じはこれはこれで。Cold Blue Music CB0058
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  24. * 空中を舞うかのようにグリッサンドが滑空し、さまざまな柱をすり抜けていく。伸びやかで小気味好い。併録「忘れられない」はジヴェルニーと龍安寺の間にクセナキスと武満徹を置き、そしてエリオット・カーターに現在という6章で印象深い思いを描く。大きなグリッサンドと軋む音。最後は一つに収斂して消えていく。Mode Records MOD-CD-326
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  25. * 作曲者自身の指揮によるこの名盤はCDでも繰り返し聴いたが、リマスター時にリハーサル付きの盤が出ていたとは知らなかった。ブリテン50歳の誕生日プレゼントにしようとプロデューサーであるカルショーが隠し取りしたのだという。明確でユーモアもある練習風景でこれまた素晴らしい。Decca 00028948501854
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  26. * シャルル・マルタンの20枚のイラストにそれぞれ短い曲を付け、序曲を加えた小品集。それぞれ絵の雰囲気が、やや明後日方向ながらもなんとなく伝えるものではある。イラスト画像を見つけてIIIFギャラリーを作ったので、眺めながら聴くと楽しい。併録アンタイルの「百頭女」はマックス・エルンストの同名作品による45もの小曲。ほとんどが1分未満だけど、シュルレアリスムっぽかったりむしろお茶目だったり、それぞれなかなか。col legno WWE1CD20010
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  27. * プリペアド・ピアノのための6つの楽章で、処理された弦と通常弦の混合が打楽器とピアノの二重奏のようにもなる。ほか初のプリペアド作品「バッカナール」、マース・カニンガムのダンスのために書かれた「得体の知れない冒険」、ハンス・リヒターのシュルレアリスム映画の一部を担った「マルセル・デュシャンのための音楽」、偶然性を取り入れ始めた「2つのパストラール」など、CD2枚分のプリペアド・ピアノ尽くし。col legno WWE2CD20027
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  28. * このためにファウストは1710年のストラディ“Vieuxtemps”、ピアノは1885年頃のエラールを用い、話すフレージング、ビブラートも抑えたアプローチで素晴らしい成果を生み出している。「PfとVnのためのソナタ」を意識してかVnがけっこう控えめ。併録ショーソンの「Vn、Pfと弦楽四重奏のための協奏曲」はやや音が多すぎる気がするロマンティックな六重奏曲だが、サラゴン四重奏団も含めピリオドアプローチで見通しは良い。Harmonia Mundi HMM2254DIDI
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  29. * 初期の曲ながら没後40年して出版されたため「遺作」と呼ばれる。亡き王女と同時期に書かれた1楽章はややロマンティックながらも十分彼らしい香りに満ちている。併録フランクのVnソナタは、ゆっくりめの素朴な演奏で若干音が上ずり気味なのに、心を掴まれた。リゲティの「二重奏曲」はちょっとくだけた遊び心。メシアンの「主題と変奏」は結婚プレゼントとして妻に贈られたというチャーミングな曲で、移調の限られた旋法第3番を用いる。ECM Records 00028948167821
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  30. * ちょっとキラキラしていろんなパレットが組み合わされる、お伽噺アニメ映画の音楽とでもいうか。「ロチェスターの祝典」は気まぐれな感じのPf独奏曲。「クエスト」「バルカローレ変奏曲」はそれぞれFl、VnとHpのデュオ。調性音楽というわけでもないが、根がロマン派なのかも。Bridge Records BCD9543
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  31. * Bcl+Vc+Gtrで、楽器を叩く音や息音も含め、短い断片がまばらに連なり、時おり交錯する。アルヴィン・シングルトン「小さな民謡」はBcl+Vc+Cb+Vib+Egtr+Pfという変わった編成で面白い重なり方。ジェシカ・メイヤー「許し」はほとんど無音からBclにループ・ペダルを用いた多重演奏。ライアン・ストレーバー「ピアノ四重奏曲」ははにかみ屋の声が最後に決然と。ディエゴ・テデスコ「スケルツォ」はBcl+Gtr+ Vn+Va+VcでPizzを含めた撥弦音がCl(たぶん持ち替え)を包む。ダグラス・ボイス「夜の狩」はCl+Vc+Pfでこちらこそスケルツォという感じ。New Focus Recordings FCR278
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  32. * 5世紀の教会で尼僧の晩課の歌声と15世紀の宗教フレスコ画のイメージが重なってできたというモダンな音響。併録クックソン独奏の「息のできない色」はピチカートやハーモニクスの分散和音を軸にした音の織物。「時間の地図帳」「ライアンとダン」「サイレンの歌」はスクラップを寄せ集めたドサ回りの芝居のような音の混沌。New Focus Recordings FCR277
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  33. * ウシャブティは古代エジプトで王などの墓の副葬品とする人形だそうで、神秘的な感じがしなくもない即興風小品。併録はシェーンベルク「6つの小ピアノ曲」、クシェネク「8つの小品」、さらにリゲティ、ベリオ、カーター、ジョン・ベックウィズ、ブルース・メイサー、ブライアン・チャーニー、ジョン・ワインツワイグ、アリス・カラスタティス、ゲイリー・クレシャと、12人35トラックからなる小品集。ながら聴きに最適。Navona NV6294
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