music & knowledge sharing
Planet masaka played list 2021-04
シュトックハウゼン :
マントラ
(ヌーブルジェ+エッセール )
半音階全部と最初に戻る音の13音からなる「式」の提示後、13のセクションで反復音、アクセントずらしなどさまざまな方法により変形され、最後にまた式が戻る。リング変調されて滲んだり揺れ動いたり時には捻れたり、さらにそれぞれウッドブロックとサンバル・アンティークを使うこともあるものの、基本の音作りはシンプル。むしろだからこそ、聴き込むと味わいが増していく変幻自在な音楽。Pfの二人に加え電子楽器のルムトンもクレジットされている。Mirare
MIR518D
(2021-04-30 )
フィリップ・マヌリ :
ラボラトリウム
(モリア+アウゲスタ+ロト+ケルン・ギュルツェニヒ管ほか )
軋むノイズの中で始まる男女の俳優による対話劇に、エレクトロニクスと管打の叫びが重ねられ、トゥッティが奏でる断片は次第に厚みと強度を増していく。Sop+MSに合唱も加わり、オラトリオと対話劇が入り乱れる。難民の地中海での惨事をテーマにした厳しい音楽。ケルン三部作の結論となる大作。Wergo
WER7396-2
(2021-04-30 )
ラヴェル :
鏡
(ジャン=フィリップ・シルヴェストル )
よく知っているはずなのに、1854年エラールで聴くと全然違う曲のよう。派手な豪快さが取り払われ、ころころ珠をころがすように、一つ一つの音が渋く粒立つ。内声を厚く響かせ無骨な「亡き王女のためのパヴァーヌ」。儚く壊れてしまいそうな「クープランの墓」もすっかり違う姿。「ボロディン風に」がいかしている。「ハイドンの名によるメヌエット」はかなり速いテンポ。ATMA Classique
ACD22773
(2021-04-29 )
スティーヴン・ラッシュ :
カリヨン・ソナタ
(ティファニー・ヌグ )
いや、カリヨンがこんなふうに演奏できてソナタまで書ける楽器だとは知らなかった。バトン式鍵盤を拳で叩くのだそうで、動画を見ると確かに力技で楽器を操っている。これでこんな動き豊かなフレーズを奏でるとは。他に3つの練習曲、6つのトリートメント、ダークマータズ。倍音と微妙な音程が摩訶不思議。
INNOVA050
(2021-04-29 )
シェーンベルク :
月に憑かれたピエロ
(マリアンネ・プスール+アンサンブル・ミュジーク・オブリク+ヘレヴェッヘ )
古楽アプローチかと思いきや特に変わったことはなく、プスールのシュプレヒシュテンメの柔軟さが際立つ。併録「室内交響曲第1番」はウェーベルン編によるFl+Cl+Vn+Vc+Pf版(ピエロと同じ)。この手の編曲版は、すっきりはするが、各楽器が頑張りすぎて交響ではなくなってしまうんだよな。Harmonia Mundi
HMA1951390
(2021-04-29 )
ヴィキンタス・バルタカス :
ドバイへの昇降機
(アンサンブル・ヴィリニュス )
ドバイの街で録音されたさまざまな音を電子処理してコラージュし、アナーキーな合奏の音と組み合わせた。工事の騒音、コカ・コーラやソニーエリクソンの広告などがおまけでなく音楽の一部になっているのが面白い。「スモーキー・アーノルド」はFl+Cl+Vn+Vc+Pfで、「月に憑かれたピエロ」の、特に「郷愁」の別トラックとすることを念頭に書かれたと。「ウロボロス・ツィクルス」は、同一音が上下に広がって厚みを増していく中でSopが語り歌うouroborosと、トリル素材が途切れながら灯る(co)ro(na)が、(d)ou(ble)で繋がれる。らしい。Kairos
9120040732134
(2021-04-29 )
トン・デ・レーウ :
告別
(ルネ・エックハルト )
親しみやすい旋律を切れ切れにして少し音を踏み外させた、そんなためらいがちの主題がゆっくり変容しつつ動きを増していく。1988年の作品。これを最後において、最初のパルティータ(1943)からピアノ・ソナタ第1、2番、組曲、前奏曲、舞曲などかなりボリュームのあるピアノ作品全集。とりたてて斬新な手法を駆使するわけではなく、形式的には古来の枠組みを利用しているが、よく聴くとそれぞれ微妙なずらしの味わいがある。3組の練習曲あたりは結構面白いかな。Quintone
9789078740162
(2021-04-28 )
ペンデレツキ :
ラ・フォリア
(マルチン・ダニレフスキ )
ムターの50歳の祝いに書かれたという2013年の曲。ピチカートで始まる主題が超絶技巧で変容する。同Vnソナタ第1番は1953年の曲で、古典の形式に奇妙な音が挿入される。ルトスワフスキの「スビト」はテンポや表情が急に変化するVnコンクール用曲。クシシュトフ・メイエルの「カプリッチョ」もコンクール用でPfと息を合わせることが求められる。同「6つの前奏曲」は古い形式を装いながら自在に。クラジナ・プストロコニスカ=ナワラティル「ステンドグラス」は水がさまざまに姿を変えるようなPf独奏曲。
CDAccordACD283
(2021-04-27 )
スティーヴン・ハートキ :
ウィロー・ラン
(ノア・ゲッツ+オバーリン・コンテンポラリー音楽アンサンブル )
表題は第二次大戦の軍需工場のあった場所で、それが解体される時に撮った写真から、誕生と死と再生の物語を構成したという。Willow Runを表すモールス信号が模されたりする。ジェシー・ジョーンズの「ある明るい朝」は反復要素の多いアンサンブルとともにSopがお呪いっぽい歌。エリザベス・オゴネクの「水の章」は標題音楽ぽい4つの楽章で、それぞれ耳あたりよく書かれているが多少の仕掛けがないわけでもない。Oberlin Music
OC21-01
(2021-04-27 )
ジャチント・シェルシ :
シーラカンス
(マルコ・フージ )
この曲と「3つの習作」がVa、ディヴェルティメント第2~4番がVn独奏で、1954~56年に書かれたもの。どれもヘタウマというか、不十分な発音と曖昧な音程(微分音含む)で、デタラメにしか思えないような支離滅裂な音(実は超絶技巧)を並べていく。それでも聴いているうちにそんなものかなと思わされるので不思議だ。フージのノートによれば、この時期にシェルシがオンディオリーナを導入したことが影響しているという。Kairos
9120040732240
(2021-04-26 )
ブライアン・ファーニホウ :
反自然の技
(イアン・ペイス )
副題《話すピアニストのための影芝居》の通り奏者がボソボソ呟きながら変に重々しい序章に続いて軽く明るい複雑性の中心部があり、また勿体つけた終結部が来る。「渦巻き」は緩やかな流れの中に時々複雑性、「カラブリアの王」は飼い猫を追悼するという哀歌。これらは2000年以降の作。60年代の「インベンション」「エピグラムズ」も思ったより静かな部分が多く、「2台のピアノのためのソナタ」「3つの小品」になってやや複雑さが全面に出てくるか。80年代の「レンマ=イコン=エピグラム」でイメージ(先入観)と一致。Metier
MSV28615
(2021-04-24 )
サルヴァトーレ・シャリーノ :
フルート作品集
(マッテオ・チェザーリ )
初期の「遠くのオーラに」(1977)から「パリのチベット人」(2018)までを集めたCD3枚。どれも特殊奏法のオンパレードで、息音はもちろん、ホイッスルトーン、ジェットホイッスル、ハーモニック・クラスター、ビスビリャンド、キーノイズなど、楽器のあらゆる可能性を追求する。空白が多用される中で鋭い音が禅寺のような景色を描く。若林かをり「S.シャリーノ作品におけるフルートの特殊奏法とその記譜法について」という論文も見つけた。Kairos
9120040735746
(2021-04-24 )
尾高惇忠 :
交響曲『時の彼方へ』
(広上淳一+日本フィル )
広上氏は「どんな現代音楽の手法が出てこようとも、『音の美しさ』を求める」と褒め称え、まぁそう言えそうなところもあるが、むしろ「洗練された部分とそうでない部分が交互に出てくる」というひと言が当たりだな。後者はかなり無骨というか、ちょっと辛い。併録のピアノ協奏曲も共通した印象だが、オケと独奏がよく対話している。単純な動機が生で出てくる部分は、困ってしまう。Japan PO Recordings
JPMD1001
(2021-04-23 )
ルーカス・リゲティ :
残ってきたもの…これから現れるもの…
(マジェフスカ+ザクロツキ+クレク+パウォシュほか )
ポーランド・ユダヤ人歴史博物館のアーティスト・イン・レジデンスとしてのプロジェクト「オープン・ミュージアム」の一環で、インタビューや民謡、民族音楽、フリージャズなどが電子処理されコラージュされる。Sopの歌語りや弦、Cl、Mrmbなどの楽器も加わり、音のインスタレーションだという。作者はジェルジ・リゲティの息子。col legno
WWE1CD20452
(2021-04-23 )
クリスティアン・リディル :
広場の演奏会
(モニャ・ホイラー+アンドレアス・フレーセほか )
Cemb+Chrom.ハーモニカ+木管群(2Fg+BCl)という変わった編成で、三群の人形がぎこちなくやり取りする劇のような乾いたユーモア感覚。「2つの死の舞踊」はFl+Cl+Tp+Trb+Vn+Cb+Pf+打という八重奏がやはり操り人形のような雰囲気で。「おとぎの絵本」はFl+打というこれも面白い編成で、4つの個性的な楽章。「会合」は金管五重奏で楽しい雰囲気だがどうしても音色が単調。「ハンガリーの舞曲による変奏曲」はCl+Fg+Pfで、これはちょっと俗っぽい感じ。Genuin
GEN21737
(2021-04-22 )
リゲティ :
2台のピアノのための3つの小品
(ピアノデュオ・レルッケ・グレンメルシュパッハー )
二人が弾く単純な音形が微妙にずれたり重なったりして複雑な幾何学模様が描かれる。併録はドビュッシーの「白と黒で」、メシアンの「アーメンの幻影」。けっこう楽しめるデュオ曲集。Genuin
GEN21714
(2021-04-22 )
ルチアーノ・ベリオ :
ロンドンの呼び売りの声
(レ・クリ・ド・パリ )
混声無伴奏の8声がシシリアの俗謡に基づく調べにベリオ自作のテキストを乗せて歌う(原作は6声)。洗練された和声と民謡的、遊び的要素の組み合わせが魅力的。「おお、キング」は「シンフォニア」第2部と同じ音楽をMS+5楽器で。「フォーク・ソング」はMS+7楽器による11曲。「節なしで」「そしてもし僕が魚だったら」はア・カペラ、「セクエンツァIII」はMS独唱の技巧の饗宴。Harmonia Mundi
HMM902647DI
(2021-04-22 )
ビル・エヴァンス :
ワルツ・フォー・デビイ
(ジャン=イヴ・ティボーデ )
主としてジェド・ディストラー編曲によるジャズの名曲集。エヴァンスが6曲、ほかにデューク・エリントン、ミシェル・ルグラン、さらにバーンスタインなど。新しい部屋で寝る前に聞くのにちょうどいい。1996年録音当時かなり話題になった1枚。Decca
00028945551227
(2021-04-20 )
ペア・ノアゴー :
無伴奏チェロ・ソナタ
(ウィルヘルミナ・スミス )
第1番は1950年代前半の作品で、北欧風情緒を感じさせながらもいろいろな表現で雄弁に語る。第2番は第1楽章が50年代半ば、第2楽章が80年に書かれたという組み合わせで、主題を徐々に変容させながら深々とした味わい。第3番は1999年で息の長い不思議な旋律をゆったり切々と歌う。併録ポウル・ルーザスの「華麗なる練習曲」は中世の俗謡『武装した人』による10の変奏曲。ひと組の鐘をいろいろの調子に鳴らすchange ringingのコンセプトで作られているそうだ。Ondine
ODE1381-2
(2021-04-19 )
ヒナステラ :
魔術的アメリカに寄せるカンタータ
(シーネ・アスムセン+トレル+パークラマ打楽器アンサンブル )
妻であったメルセデス・デ・トロが集めたコロンブス以前のテキストを用いSop+打アンサンブルが奏する6曲。ジョン・ケージ「第1コンストラクション」は1副題にイン・メタルとあるように金属系打楽器を中心とした16種の楽器とサンダーマシンを用いる939年の曲。ルー・シルバー・ハリソン「Vnと打オーケストラのための協奏曲」は十二音の技法にインドやアフリカ音楽の要素を取り入れたという。エドガー・ヴァレーズ「イオニザシオン」消防車用のサイレンまでを含む37の打楽器の音色が交錯する。Naxos
8.574244
(2021-04-19 )
エリオット・カーター :
ルイス・ズーコフスキーの詩
(サラ・ヴェゲナー+セルジオ・ピレス )
Sop+Clという面白い組み合わせ。20世紀アメリカの詩人による9つの短詩を選んだ。「ラ・ムジーク」はボードレールの詩をSop独唱で。「5人で9本」は木管五重奏の木奏者が持替えで計9つの楽器を奏するというもの。「リトレイシングII」は6曲の独奏楽器用小曲のうちHrのために。弦楽三重奏曲は103歳の時の作品でVaの色調が濃い小品。ソナチネはOb+Cembの未出版曲の第1楽章。「8つの練習曲と幻想曲」は初期作品でFl+Ob+Vc+Cemb、やや音が生々しい感じ。Genuin
GEN21731
(2021-04-18 )
シマノフスキ :
仮面劇
(パトリシア・アラウソ )
印象派っぽい色彩感とややエキゾチックな香りのピアニスティックな3つの楽章。併録は作品50のマズルカ抜粋、同作品62、ロマンティックなワルツ。変奏曲変ロ短調は退屈。演奏は硬めの音質、ほどよい華やかさで、まずまず。
IBS-42021
(2021-04-18 )
ゴンサーロ・ガトー :
#我々はどこに行く
(リミックス・アンサンブル・カーサ・ダ・ムジカ )
室内オケがいろいろな和声を響かせ、単調なピチカートのリズムから捻れて組み合わされる喧騒へ。「田舎の散歩」はFl独奏で不思議な音律。風奏の倍音アルペジオが珍しい。「エレメントス」はVn+Vc+Pfで旋律、反復、パルス、響きの4章。題名通りの面白い工夫。「均衡」はFl+B/Cl+Vn+Vc+Pf+テープでゆったりした響きのやり取りに動きのある場面が挿入される。「グラデーション」はFl/Picc+B/Cl+Vn+Vc+Pfで波打つ動機が徐々に変容して微細な音程の響きに。「ナウステート」「派生物」はPf独奏で、後者は冒頭の素材が変容していく。Kairos
9120040735753
(2021-04-17 )
シモーネ・モヴィオ :
地球と魔法の書
(ラード+フラー+Mdiアンサンブル )
アンドレア・バヤーニの「プロメモリア」から採ったテキストをSopが歌い、Fl+Cl+Vn+Va+Vc+Pfという小アンサンブルが縁取る。テキストは死、言葉、子供の3つのグループに分けられ、それぞれの前に間奏曲、そして前奏と後奏の8曲構成。音楽はゆっくりと静かに流れながら、歌に応じて動き出す。不安なような深遠なような神秘。Kairos
9120040735708
(2021-04-16 )
ダニエレ・ヴェントゥーリ :
アルリア
(リサ・チェッラ+マーク・メンジーズ )
ゆったり揺らぐFlにハーモニクスを多用するVnが包み込むように絡みつき、表裏がくるくる入れ替わる。「ルーメン」は重音奏法を用いながらゆっくり素材を提示し、とぎれとぎれの旋律めいた線は消えるかと思えばしぶとく取り留めなく。「3つの強い悲しみ」「二重」「光」が通常の(ソプラノ)Fl、「ラディ」はCemb付き、「ペリオという名の歌」はAFl、「流れ星の夜」「スペットリ」はBFl、いずれもゆっくり深々と。Stradivarius
STR37170
(2021-04-16 )
ティモシー・マコーマック :
カルスト
(エンノ・ポッペ+アンサンブルコレクティヴ・ベルリン )
風水の浸食によってカルスト地形ができていくように、風水のように絶えず流れながら、静寂が訪れるかと思うとギシギシと軋み混沌として渦巻く音。最後はノイズの洪水が襲って静まる。「カルスト調査」は室内オケと電子音響による圧縮版。ノイズは電子的に変調されて破壊的に飽和する。「あなたは実際に蒸発している」はVa+Vcの音がゆっくり引き伸ばされる中に鋭角のスルポンやハーモニクスが織り込まれる。やはり最後はノイズの塊になり、消えてゆく。Kairos
9120040732295
(2021-04-15 )
レベッカ・ソーンダース :
孤独
(アンドレアス・リンデンバウム )
静かに始まりスルポンのギリギリした音でねずみ花火のように目まぐるしく動き回るVc。「フレッシュ」はアコーディオンのジグザグ断片和声に少し声も加える。「ハウク」は掠れた倍音がゆっくりポルタメントで動くVn、「影」「発話へ―習作」は細かく動きながら時々和音の残響を味わうPf、「ダスト」は金属系中心の打楽器でこれも余韻をたっぷりと。余白が面白いソロ楽器曲集。Kairos
9120010280986
(2021-04-15 )
ミカエル・ジャレル :
緊急対応
(タベア・ツィンマーマン+ロフェ+フランス国立ロワール管 )
緊迫した面持ちで断片を重ねながら訴えるVaを四方八方から放たれる音の束が支える、そんな感じの協奏曲。静かな調べも急速なフレーズも雄弁。「4つの印象」はカピュソンが奏でるVn協奏曲。より靭やかで華麗。「…大空は今なお、とても澄み渡っているのに、急に不安がこみ上げて来る…」という長い題名はルクレティウスから取ったというが、荒々しく波打つ景色が凪ぐけれども何かが満たされない、という感じの管弦楽曲。
BIS-2482
(2021-04-14 )
セバスチャン・ヒッリ :
影を讃えて
(ウーシンタ弦楽四重奏団 )
アルゼンチンの9人の詩人のテキストから着想を得たという。スルポンてきなギリギリした倍音を多用し、ときおり手裏剣のように音が飛び交うSQ。「パラフレーズII」Fl+Cl+Pf+Vn+Va+Vcで、コルトレーンに触発されたという細かく短いフレーズが、忙しく語るように交錯し、唱和し、最後は声の囁きや叫びが混じる。ギター協奏曲「合流/分岐」は擦ったり滅茶苦茶かき鳴らしたりする独奏にFl+Vc+Hp+打が風奏やらポルタメントやらで応じる、破天荒な3楽章。Kairos
9120040735784
(2021-04-13 )
オルガ・ノイヴィルト :
疲れが傷を癒す
(ディミトリオス・ポリソイディス )
Va独奏が三連符に続いてグリッサンド下降するテーマをいろいろな奏法を組み合わせながら緩やかに展開する。なかなか味わい深い。「ねじれ」はFg、「魔法の流‐動性」はFl+タイプライター、「手探りと宙返り」はTpでいずれも独奏楽器の多彩な技法が生かされる。「コロ・ネーション」は打に声っぽい電子楽器、「刻印/流体」は内部奏法も含むPf+電子楽器。Kairos
9120010280979
(2021-04-12 )
イヴァナ・ロウドヴァー :
ノーム
(トリオ・カンタービレ )
Sop+Fl+Hpという編成で、民族風の調べを用いて語り歌う。「夜想曲」はVa協奏曲。夜霧の中から少しずつ姿が見えてくる。「スプリーン」はボードレールへのオマージュという副題を持ち、静寂と喧騒が入れ替わる。弦楽四重奏曲第2番をは、不協和音をかき回してカオスを作り出すというのか、静かな部分が多いのに徹頭徹尾不安感。「ラプソディ・イン・ブラック」はObと打の協奏曲。後半、特に打マーチ風のところはダサい。さらに「打楽器とオルガンのための協奏曲」。Supraphon
81-9001-2
(2021-04-11 )
キム・セヒョン :
時調
(アンサンブル・ジェオリ )
同じ音を楽器を変えながらロングトーンし、時どき半音や微分音のずれが混じったり別の倍音に移動したりする。Sijo(時調)は朝鮮の定型詩のことだそうだ。011115、020517、271015の3つがあり、それぞれFl/Cl+Pf、テグム+Pf、Sax+Cb+Pfという編成。こんなに息が続くわけもないので何か処理されているのか。Austrian Gramophone
9120040738204
(2021-04-10 )
セルジオ・アサド :
影と光
(デイヴィッド・タネンバウム )
ゆったりとした流れに上行アルペジオが配され、中間部では少しブラジル風の香りも。ロナルド・ブルース・スミス「ギターのための5つの小品」は独奏Guitとライブエレクトロニクスを組み合わせた5つの小品。エリアス・タネンバウム「ギターのための音楽」は“音楽のモービル”だそうでさまざまな表現を試みる。デュージャン・ボグダノヴィチの「ゲーム」はGuitにSop+Fl+Cb+2Gongを加え、ヴァスコ・ポパのテキストによる即興舞台風の7曲。ジョン・アンソニー・レノン「彼女が歌うから」は作曲者自身の詩による三部作「フォーチュネルズ」の第2曲。ReEntrant
REN01
(2021-04-10 )
ホセ・ルイス・ウルタド :
パラメトリカル・カウンターポイント
(タレア・アンサンブル )
木管2+木/金管1+打+Pf+弦3からなる2つのグループが7つのモジュールを任意の順番で奏するという、ノイズ系音楽。4つのバージョンが収録されている。「復帰」は木管1+金管(もしくは声)2+打+鍵盤+弦2の任意の楽器によるノイズ的即興の組み合わせ。「白熱灯」AFl+Fg+BCl+Trb+打2+弦5の編成でギシギシいう即興的な要素を反復する5つの部から成る。「檻に入れられた者、閉じ込められた者」はトラテロルコ事件50周年に書かれた、ペダルの残響の中でクラスターが炸裂するPf曲。「恒星」はPfとフィクスト・メディア(テープ)による、この中では珍しい静かに変化していく音楽。Kairos
9120010280931
(2021-04-09 )
フィリップ・ルルー :
AMA
(クラウディア・チャン )
スペクトル楽派第二世代。ロマンチックにすら響く不協和音の間を縫う反復音形とすばしこい音群。マット・チェンバレン「拒否されたバレエ音楽」は静かな内省的呟きは僅かに姿を変えながら時に浮上するがまた引きこもる。エリオット・カーター「ピアノについての2つの考察」は次々と変身していく第1曲と忙しく動き続ける第2曲。アニー・フイシン・シア「半径」は内部奏法を交えながら切り詰めた音を密やかに紡いでゆく。マエル・バイイ「まだ用意されていない」は反復される中心音からあちこちに音が飛び跳ねたりくねくねと枝分かれしたり。内部奏法のハーモニクスとは珍しい。クセナキス「エブリアリ」は樹形図を用いて輪郭から旋律を増殖させていくという。B Records
LBM031
(2021-04-09 )
マルコ・ストロッパ :
ミニアテューレ・エストローゼ第1巻
(エーリク・ベルチュ )
繊細な動きが連なったり途切れたりしながら織物を紡いでゆく7つの章。ピアノのいくつかのキーをあらかじめ押し下げたままにしておき、モチーフの動きが残響を生むようになっている。各楽章それぞれ異なる個性を持ちながら、全体として一つの響きの中に埋め込まれているような感じ。Kairos
9120040735715
(2021-04-08 )
フリードリヒ・チェルハ :
カインターテ第1番
(グルーバー+アンサンブル・ディ・ライエ )
オーストリアの詩人エルンスト・カインのテキストを用いて、戦争直前のウィーンで聴いていたワルツや俗謡を、有名曲の引用も含めながら、ある種の疎外として構築した。2Fl+2Hr+SQ+Acord+打。題名はカイン+カンタータ。「ある芸術的な歌曲」はフリードリヒ・アハライトナーのテキストに自作を加え、名曲の引用も見せながら非真面目な芸術を作る。こういうキッチュさは、音楽だとなかなか難しい。Kairos
9120010289002
(2021-04-08 )
サルヴァトーレ・シャリーノ :
変奏曲
(ディロン+チェッケリーニ+RAIトリノ交響楽団 )
高域ハーモニクスの刻みを背景に、金属的響きの波が寄せては返す。「夜の寓話」はメンコンの断片を使いつつ変奏曲と似た響き。「断章とアダージョ」は風奏を多用するFlと禅問答的な。「ボッロミーニの死」は単音のロングトーンにまとわりつく刹那的な断片と語り。「地域を超えた火災」は風奏と細かなトリルがぽつぽつ絡まりながら拍子木のような連打へ。「曖昧なレチタティーヴォ」はPfと。「音と静寂」は中音域の短い動機が巨大な音塊に。「音の影」は更に短い動機が見え隠れしながら最後に一つの姿が立ち現れる。いろいろ面白い。Kairos
9120010281372
(2021-04-08 )
ジム・フランクリン :
舞い降りる霧
(フランクリン )
尺八をテルミンやシンセサイザーと組み合わせ、ライブエレクトロニクスを使って既存の概念にとらわれない表現をするという作品集。新しい世界かキワモノか、微妙な感じではある。
NEOS12029
(2021-04-07 )
リンドベルイ :
リードの戯れ
(ヤンネ・ヴァルケアヨキ )
独奏アコーディオンがいろんな周期で波打つ緻密で切れ目のない織物を紡いでゆく。「メタル・ワーク」はAcrdと金属系打で、特に銅鑼の役割が後半どんどん高まる。「2匹のコヨーテ」はAcrd+Vc(原曲はPf+Vc)で民俗風要素がけっこう濃い4楽章。「祝宴」(Jubilees)はAcrd独奏(原曲はPf)で芳醇な響きをさまざまに組み合わせる6楽章。
NEOS12027
(2021-04-07 )
クリスティアン・オッフェンバウアー :
破壊-部屋/現在2000
(ヨハネス・マリアン+ディオティマ弦楽四重奏団 )
弦(440Hz調弦)のハーモニクスが霧のように広がる中で時々Pf(445Hz調弦)が上昇分散不協和音を奏で、徐々に変化していく。同1999はPf独奏。舞台のために書かれた音楽が元になっているという。題名Zerstörung des Zimmers / der Zeitはむしろ「空間の、時間の解体」という感じか。
NEOS12018-19
(2021-04-07 )