Planet masaka played list 2021-05


  1. * I~VIの6部から成り、草稿に基づいてVc奏者が即興演奏するのに合わせ作曲者がその場で指示を加えていくという。無音の中の軋みから激しいノイズ、電子変調まで。「永続性からの論理」はグリッサンドを多用して形が溶けるよう。ウンベルト・ペドラリオの「ポリフォニーI、II」は限られた音をにじませたり。パオロ・ロサートの「影I、II」は静から動へ。アレッサンドラ・ラヴェーラの「不―安定な均衡」「強度の衰退」はハーモニクスに焦点、アレッサンドラ・ベッリーノ「2つの間奏曲」は広い音域を自在に行き来し、ソニア・ボー「序奏、間奏曲とカプリッチョ」は高度に技巧的。Tactus TC960004
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  2. * Fl+Cl+Sax+Vn+Vc+Cb+打という編成でウェーベルンの「6つのバガテル」を拡大鏡で見るようにしてつくったという(reinhören)。「聴く」(Hörzu)はE音のファンファーレ崩れのような素材を中心に、軸を移動しながらいろいろ入り混じる。エルナズ・セイディの「フレームI」は奇怪な不協和音斉奏から低音と金属音やプリペアドPfが残るというパターンが繰り返される。ゴードン・カンペの「Schnulzen」は複調を用いたり面白いところもあるが大半が耳障りな雑音。Dreyer Gaido DGCD21128
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  3. * 作曲者自身が語り歌うベケットのテキストは、太鼓や弦トレモロとシンクロする断片が何度も遮られ、囁き、周囲でざわめく声と拮抗して飲み込まれていく。「迷宮」はヴィスワヴァ・シンボルスカの詩のSopにBFl+Tp+TSax+Cbで、密やかと思えば騒々しく、無音の暗闇を手探りし、無法状態の即興は一転して声に寄り添う。「ミウォシュの格言」はテキストにゆっくりまとわりつく音が消えると躁状態またすぐ鋸音ノイズ、暗闇の手探りと(格言ごとに?)次々に変化する。「氷の影」はCl+Vc+ライブエレクトロニクスの器楽曲。変調された音と滑稽なから騒ぎに時折ジェット噴射が加わる。Kairos 9120010281976
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  4. * 和声の柱の間をスキップしたり急速に駆け巡ったりするとでもいうか。動きには次第にグリッサンドが混じり滑り台のようにも。後半一旦ほとんど消えてから再びぐいぐい芽が出る。SQ第1番はPizzの応酬に始まり、波打ったり鋭いトレモロやハーモニクスなど多様な表情が休符を挟んで入れ替わる。「クラリネット五重奏曲」は非常に複雑で精緻ながら靭やかな印象。「チェルトナム断片集」は上昇装飾を伴った和声的な断片が休み休み奏でられる。どれもセンスいい感じ。Toccata Classics TOCC0573
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  5. * Sop+小管弦楽で十二音技法を用いた柔らかな叙情ある表現。サッフォー、アナクレオン、アルケウスに基づく3部から成る。「構築される時間、壊される時間」はSop+MS+ア・カペラ合唱で音が多方面から差し込むよう。「囚われの歌」は合唱+Pf+Hp+打で怒りの日のモチーフも用い重心低め。「ミケランジェロ甥による6つの合唱曲」からの2曲は初期の軽やかな調性的作品。Erato 190295316778
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  6. * 怪しげな叙情で始まり、ひねりの入った空元気ぽい動きやひと言ずつ間を置く切口上だったり。跳躍が多く高音域を酷使するかと思えば囁きだったりするSopは大変そう。分裂気味で面白い。「ヴィジョン・コンセルタンテ」はギターと弦楽合奏の協奏曲。ほぼ無調で微分音もどきのチョーキングがあったり、ハーモニクスやコル・レーニョ、独奏の同叩きなどがうまく織り込まれ、Cbも活躍。独奏と合奏の対話がなかなか小気味よく、なぜかボレロの引用が一瞬聞こえたり。楽しめる。Erato 190295037369
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  7. * ウォルト・ホイットマンの詩を16声のア・カペラで歌う。質問にどう答えようかあれこれ逡巡し、音楽も彷徨う。ジョエル・パケットの「私は地に入る」はD音のハミングから和声を行き来し、カラハリのクン文化宗教民話の言葉を訳したテキストが徐々に力強く輝き始めるがまた神秘に帰って行く。グレゴリー・スピアーズの「塔と庭」は、3人の詩人のテキストによる合唱+弦楽四重奏で、危険と背中合わせの技術とそこから逃れる場所を描く。合唱には調性的な響きが多いものの必ずしもめでたいばかりではなく。Navona NV6303
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  8. * テネブレ礼拝からとった7つ応唱テキストを、ものすごく精緻な、しかし無調のア・カペラで、神秘的といえばよいのか。元になるラテン語は、マタイ、ヨハネ、イザヤ、エレミヤ、詩篇などからの抜粋が中心。ジャキェス・デ・ヴェルトのモテットが交互に歌われて、それでもいいが、トラックを解除してリームだけ聴く。見事な精度の合唱。PentaTone PTC5186948
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  9. * アイスランドの抽象画家カール・クヴァランの思い出にということで、微妙な音の交差やサルタンドを織り交ぜるためらいがちなモチーフは、うねる線や多様な弓使いの速いパッセージになり、最後は切々とした歌が聞こえながらも寂しげに消える。「クレーのスケッチ集」はクレーの日記から選んだエピソードを小曲それぞれの表題とし、不思議な音階練習だったり蝶を観察している様子だったりという具合に自由に表現した曲集。Metier MSV28616
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  10. * 複雑に飛び交う音が“断続”する第1曲と不規則なアクセントを持つ細かな音符が“架空電車線”のように続いていく第2曲で、98歳の時に書かれた。ジョージ・クラムの「行列聖歌」は模糊とした連符にときどき異質な音が挿入される。ペダル使いすぎか。奏者シムクスの「ピアノ・ソナタ」は田舎で星空を見つめた記憶から生まれたといい、無重力的な“あちら”と重心が下がった“こちら”の2楽章。チャールズ・トムリンソン・グリフィス「ピアノ・ソナタ」はスクリャービン風で全体に過剰。フィリップ・グラス「マッド・ラッシュ」はミニマリズムそのもので飽きる。Artalinna ATL-A031
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  11. * ハーモニクスで提示される壊れそうなモチーフから各楽器が少しずつ加わり変化していく第1番、長い音符をゆっくり噛み合わせて後半にはグリッサンドも導入される第2番、G音の長い反復から徐々に和音が広がり離れたところで跳躍モチーフが加わったりPizzが用いられたりする第3番。フェルドマン風のゆったりした音楽。Metier MSV28613
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  12. * 全てハーモニクスなのか超高音域和音が並ぶ中にあれこれ挿入される。鈴木治行「想起 - 迂回」は曲の説明らしき語りに沿って音が奏でられ。ヴィンコ・グロボカール「水についての対話」は口笛に始まりアコースティックとエレキが交錯。山本和智「ドルドラム Ia」は一部微分音調弦を含めいろんな落差が。アルヴィン・ルシエ「月光に輝く散り敷ける落葉の上に」はサイン波のE音に対しギターが10秒間隔でFからEsまで徐々に下降していく。松平頼暁「オスティナーティ」はEギターでゆったり、川上統「ゴライアスオオツノハナムグリ」はEベースで激しく遊ぶ。ジェイムズ・テニー「七重奏曲」はEG/BassでA反復から始まる多重録音。あとアルド・クレメンティ。ALM Records ALCD-114
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  13. * 8人で木製打楽器から太鼓類などが加わり、マリンバとVib、そして鐘へ。安良岡章夫「10スティックス」は10人とより大規模で、太鼓系から金属系が混じったあと鐘が少し、そしてチャカポコ。松平頼暁「トライクロイズム」はVibやXyloに音程のある太鼓、サイレンも加わって饒舌な遊び心。岸野末利加「散華」はTimpに擦音系ほか仕掛けのある音多数。福士則夫「青海波」は硬質ないくつかの音グループが間を取りながら提示される。ALM Records ALCD-7240
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  14. * 箏+尺八+チェロだが冒頭以外は半ば過ぎまでほぼVc独奏曲で、後半突然和楽器が参入してくる。庭に嵐が吹き荒れるというところか。四重奏曲は第1番のみ《尺八、二面の箏、十七絃のための》と題され、2番、3番は邦楽四重奏曲。どれも弱音の作りはそれぞれそれらしく自由な動きだが、強音で全合奏になると難しいな。3番の箏が一定のリズムで奏し始める部分はかなり邦楽度高い感じ。「夜想曲」は十七弦箏独奏でよく味が出ている。ALM Records ALCD-112
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  15. * 宮沢賢治のテキストをSop+Vn+Vc+Pfの小編成で奏する。歌は語りに近く言葉がよく聞き取れ、器楽も凝縮された書法で答える。竹田恵子の「オペラひとりっ切り」シリーズの一つで、「芝浜」「めをとうし」も同シリーズから。「祖母の歌」はSop+Pfで山形のおばあさんが語り歌うのを書き写し曲をつけたという。ALM Records ALCD-7237
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  16. * Pfと四分音ずらしたTuba、Vib、(Vn、)Trb、Fl+Vn、Fl、Vn+Vc、2Clという組み合わせ。いや、チューニングをずらすだけでなく各楽器が四分音を駆使するのか。音程だけでなくてリズムもずれていく。各曲の主題はずれが分かりやすいようにか、比較的シンプルだが、例えばVの冒頭Flソロのように、個別に聴くとかなり美しかったりもする。これが徹底的なアナーキーになる様は、壮観というほかない。ALM Records ALCD-121
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  17. * 無言和声をゆっくり響かせる上で蒲原有明のテキストが複数声部で念仏っぽく、あるいは対位法的に語られる。2011年作品。「嗟嘆」は上田敏訳のマラルメで2017年、「雪が降ってゐる」は中原中也で2001年だが、基本的な形はほぼ同じで、時間があまり動かない。「2つの小品」は1981年で無言ア・カペラ、「サッフォーの三つの詩片」は2003年でFlと太鼓が加わる。「女声合唱のための歌二篇」は蒲原有明による2013年で、これはテキストが鮮明なこともあり少し新鮮に感じた。ALM Records ALCD-115
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  18. * 無調だけれど肩肘張らず、この楽器の組み合わせでも十分面白い、というか制約を踏まえてうまく生かした音楽。トーマス・アレン・レヴァインズ「神の子どもたちはみな踊る」は村上春樹からの5つの印象だそうで、これもなかなか面白い。バーバラ・モンク・フェルドマン「青白い北の空」はギターもトレモロで、間をたっぷり取りながら。グイド・サントルソラ「ソナタ第6番」、スティーヴン・ファンク・ピアーソン「山の月」はおおむね正統派。Naxos 8.574060
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  19. * きらきら雲母のように舞う動機と不協和なコラールがPizzやコル・レーニョになったり、カデンツァがあったり堂々と歌ったり、小気味良い無調ぶりの単一楽章。「弦楽三重奏曲」は短三度と半音が呼び交わしたり1つのモチーフを構成したりしながら緊密にあるいは対位法的に織り上げられる。デイヴィッド・エリスのSQ第1番、三重奏曲は形としてはわりとオーソドックスながらほぼ無調しかし靭やかに。Campion Records 739574202724
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  20. * 2Picc+Hp+Cel+打という変わった編成で、二度上下のシンプルな動きを組み合わせながらやがて民話のような旋律の対話が始まり(メシアン風?)旋法的な上昇の反復へ。「アベラールとエロイーズのための墓碑銘」はFl+Cl+Vn+Vc+Pf+打で、水底でゆらゆらと揺れときどき気泡のような上昇音形(やはり旋法)、後半ようやく少し動き出すものの夢見心地のまま。繊細ではある。「ムジカ・エテルナ」はピアノが一定のペースでいろいろ和音を交互に奏する。ミニマリズムっぽい。Campion Cameo 7395742037272
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  21. * 二度の重なりから一言語っては一息つく歩みが不意に転がって集まる第1楽章のあと、急速な動きがほとんど崩壊しそうな2楽章、静かながらだんだん濃くなる3楽章、短い対話が文節されていく終楽章、それぞれが変奏という構成。デイヴィッド・エリスのSQ第3番はトゥッティの刻みリズムと上昇音形などが次々繰り出される第1楽章、ほとんどPizzのみの短い第2楽章、刻みリズムで始まり硬軟盛り沢山な第3楽章。ダンカン・ドルースのSQ第4番は激しい連続下降音形の嵐からヒースの野に薄日がさすような単一楽章。ジョン・リーマン「情景」はゆるゆると探るような仕草が急に素早くなってまた静まる。Campion Cameo 7395742046274
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  22. * 合唱+Cl+Hp+チャイムという編成で、柔らかながら旋法的変化を含んで離れた世界を行き来する。60歳の曲。「日没の前」はCl+Va+Pfで同じ頃。「瞑想のソナタ」はVa+Pf、「4つのエレジー」はVc+Pfで40歳前後の作品。音がすごく吟味されていて味わい深い。「フルート・ソナタ」は70代後半になってからで、さり気なく違う場所にすっと進んでいく感じ。「2つの愛の歌」はア・カペラ合唱。あとオルガン曲も。SKANI LMIC100
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  23. * 民族音楽風というか三度を避けた不思議なテーマに無調的断片が紛れ込む。朝から夜までを5楽章に分け、慌ただしさは最後に三度が加わって安らぎに。演奏が完全にノンビブラート。「シメオンの賛歌」は6声のア・カペラで、H-durを中心に変化する心地よい響き。「パスカルの賛美歌」は10声合唱とハルモニウムによるモテットで、正統派のコラールかと思うと異端の響きが鳴っていたりして最後は自由に宙を舞う声が満ち渡る。「かりそめの旋律」はSax独奏の原曲を奏者のマライン・シモンズがVnに編曲したもの。Quintone 9789078740131
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  24. * 娘のために書いた曲を娘自身が弾く。2002年だから旧ソ連を出て11年後でアリッサが16歳、エレーナ自身が16歳の時に作ったテーマによる変奏曲だという。成長への期待というか。ディミトリー・スミルノフはアリッサの父でその「ピアノ・ソナタ第6番」はウィリアム・ブレイクの名を用いた変奏曲を持つ。やや力強過ぎるところもあり。そしてアリッサの「紅い月」は自身と両親のイニシャルA-F、E-F、D-Esを用いたという。同じくソ連から亡命した音楽家ということでラフマニノフも(メインに)取り上げられているが、これはまた別の話として。 VIVAT109
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  25. * オシップ・マンデリシタームの流刑地での詩をSop+SQが雄弁に掘り下げられた厳しい響きで語る。OMの詩を「トリスティアII」はSop+Vcが悲哀を込めて、「星明かりに向かって」はSop+SQが物語のような起伏で。「星降るフルート」はFl独奏、「冬に向かう道で」はPf独奏でいずれも詩のイメージが深く響く。「スラヴァのために」はロストロの追悼歌。Vc曲をCbで。E.デニソフ「転換点で」、V.シルヴェストロフ「不眠」もOMの詩をSop+Pfでそれぞれ。グバイドゥーリナ「詩人リマ・ダロスによる手紙」はSop独のIとVc独のIIで4分半だが深く素晴らしい曲。Genuin GEN21741
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  26. * 能管と尺八の共演で、風に靡く竹林のような柔軟で変幻自在な時空が広がる。篠笛+能管+琵琶の「奏」は、田中之雄の琵琶が描く寂しげな風景と謡に導かれて笛が独り舞のような調べを奏する。平経正・敦盛兄弟がテーマだそうだ。プレームダース・ヘーゴダとの「篠笛とシタールによるインプロビゼーション」は異化作用はあるものの単調な繰り返しに陥っている感じ。辻幹雄との「悲統の曲」は笛の自在さに比べてギターの単純なリズムや音形が窮屈。ALM Records ALCD-7256
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  27. * 端正な美しさを微妙に外しながら姿を変えていくのでぼんやり聴いていると単に二十五絃箏がきれいに鳴っていたことだけが残るのかも。井上鑑「サウンド・アフター・ザ・サイレンス」は英日の歌入りで1楽章がお洒落なつくりだがそれに惑わされずに付き合うと案外面白い。溝入敬三「茉莉花」ふやけた和音ばかりに見せかけて僅かに外れ音が紛れ込む。森亜紀の「リバーブレーション」正統派邦楽的な佇まいながらボーカルを組み込み箏のもつ音の変化で一味違う。高橋久美子「萌」は安全な調性圏で環境音楽でもしたいのかな。ALM Records ALCD-120
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  28. * トレモロのコラールで始まる第1部の大半が退屈だが第2部で生気ある動き。チャバ・ゾルターン・マルヤン「ニブルヘイム」はリズミックなアルペジオに少しトレモロの情緒部で普通の分かりやすさ。アナス・コッペル「タランテッラ」はVn+Marbで少し期待を抱かせるが結局単純。安倍圭子の「マリンバ・ダモーレ」は引用が白地でうへぇとなる。「プリズム・ラプソディ」は独奏曲「ラプソディ」を元にした協奏曲でキラキラ楽しげなのはよいがPfリダクションだと興ざめ。セジョルネ「マリンバ協奏曲」はPf版ということもあってか陳腐な駄作にしか聞こえない。ALM Records ALCD-7249
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  29. * 意味があるのかないのか不明な歌詞を「普通の」と過激が入れ替わる歌唱にプリペアドや微分音などいろんな仕掛けを凝らしたPfが伴い最後に暴発する。「反射係数」はVaも加えて童謡あるいは民謡風の素朴さを脱構築する。「アーロンのための悲歌」はシェーンベルクのテキストと音列を借用しSopが一人で演じる。「歌う木の下で」はSop+Cb、「ローテーション II」はSop+Saxのデュエットで声と楽器の可能性を駆使して自在に音世界を飛び回る試み。「時の声」はEGuitを使う(しばしば耳障り)。ALM Records ALCD-123
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  30. * 微分音調弦したギターで忙しく動き回る小気味よさ。西風満紀子「メロディア」ほとんどが単音で囁くように語りはじめるが徐々に音が開いていく感じ。近藤譲「オリエント・オリエンテーション」は2台ギターの単音ユニゾンがずれていく。三輪眞弘「七ヶ岳のロンド」は時計のようなハーモニクスと軋る摩擦音を多重録音で。中川統雄「滅びの中の滅び」エレキギターとベースのリミックス。ステーン=アナーセン「実践の難しさ」口笛や歯ぎしりなど不思議なノイズ系。ファン・デル・アー「栗毛色」は電子音が重ねられ、バーク「5つのギター」は耳を覆う暴力音。ALM Records ALCD-123
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  31. * 柔らかで鄙びた物腰の中、調性がありそうで次々思わぬ転調をしたり無調になったり。いろんな引用が見え隠れし、おしゃれに響くときもあれば捉えどころを手探りすることもある。両面がそれぞれ味わい深い。デュオROSCOのなかなか素敵な演奏。ALM Records ALCD-7248
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  32. * バスSaxの曲だが、オーバートーンや重音奏法を駆使して裏声のような高音やらこもった音とグリッサンドの並行が次々繰り出される。TenSの「ルイナス」、AltSの「フラグメントス・ファクトゥラドス」、SopSの「セラン・セニサ」、BarSの「オブヘトス・デ・ラ・ノーチェ」、SpninoSの「アリエッタ」という連作で、スラップやらキーノイズやら特殊奏法のオンパレード。倍音を無理に鳴らす刺激音が続くと疲れる。Kairos 9120040731205
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  33. * Vn独奏と8トラックのテープが対話する超越的空間。広い余白だったり軋むノイズだったり、声や物音が混じったり。遠い彼方の世界から届くような音楽。Kairos 9120010280863
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  34. * 大岡信の戯曲「水炎伝説」に横笛と打楽器で音楽をつけた。幽玄というより鬼気迫る厳しい音世界。佐藤聰明「薄墨 - 義経の笛」は琵琶を加え、和歌の朗読もある。こちらはやや孤独な響き。ALM Records ALCD-117
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  35. * Ob+SQで、半音もしくは四分音下降の動機が広がりながら掴みどころのない感じで波打つ。中間部は動的だがやや荒っぽい。「モルフェウスの輝く門」はHr+SQ、「大空のかなた」と「誰もいない場所の子守唄」はVn+Pfデュオで、いずれもふわふわ模糊とした箇所とアクティブに攻める部分が交互にでてくる。Vnが音程をグリッサンドで探ったりして難あり。つまらないわけではないが、動き出すと演奏が雑に聞こえる。Navona NV6346
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  36. * 6人の打奏者による“ヴァレーズへのオマージュ”で、静かな境地から太鼓連打に導かれて動き出し、静けさと連打が繰り返されて最後はサイレンまで鳴り出す。「エプタード」はTrp+打、「協奏的組曲」はFl+4打、「打楽器協奏曲」はここではPf版。さらにヴァレーズの「イオニザシオン」は「セレモニアル」の続きのように始まって金属音とウッドブロックとサイレンがシュールな空間。ALM Records ALCD-7204
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  37. * 微分音を含むトリルや特殊発音が寄り集まってきて滑ったり。ジョアン・ケイティル「サラバンド」は各楽器がとりとめなく単音を発し集合がぼんやりと曖昧な舞曲に。アンドレアス・ツィアルタス「イエルコス」はハーモニクスの高音にClが乱入し他の楽器も。Yiqing Zhu(逸清朱?)「パルティータ」は各楽器の協奏曲からなる5楽章で、Cl以外は細かな音符がモチーフ。どの曲もFl+Cl+Vn+Vc+Pf+打。Stradivarius STR37181
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  38. * 2Sop+Alt+弦五部で、コンピウタ・ドンゼッラのテキストを清澄に歌い始めるが、途中から音が微妙にずれて行き、奇妙な感じの舞曲で結ばれる。同IはVc独奏、同IIはVn+Pfで、自然と人間のアンビバレントな関係が主題という連作。「弦楽四重奏曲第2番」は精緻に音を組み合わせて始まるが、3楽章あたりから外れ音が混じりこのヘタウマは何だと思わせておきながら、真面目ぶって終わる。「ライトスケープ」はFl+Cb+Pfでやや退屈な歌からジャズ風のセッションまで。「コン・テンプルム・コエリス」はVc+Pfで疑似メシアン風、「われは御身を敬虔にあがめ」はそのア・カペラ版で、少し含まれる変な不協和音が目立ったり。Tactus TC960701
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  39. * 原曲はAccd+合奏だが、Vn独奏による。鋭いクレッシェンドの反復から刻みで走り抜け周囲を切り落とし、静寂を経て霧のように消える。「線VI」は間をたっぷり取る打、「エディ」は幽玄なCl、「声」は広い音域を駆使するTrb、「ブーレーズのための俳句」はPf、「呪文のうた」はOb、「小さな歌」はPizzで始まるVc、日本民謡はHp、それぞれ独奏が余白をたっぷりとって楽器の可能性をさぐる。Kairos 9120010280955
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  40. * シェイクスピア「アントニーとクレオパトラ」のテキストを作曲者自身がSopで歌い、狂気をはらみながらも怪しい甘美さをまとった音楽。Hpが1/4音低くチューニングされるなど、奇妙な微分音も。「ダブル・バッテリー」はある種お囃子のように繰り出される打の間を断片的な音がかいくぐり、狂ったように咆哮する2BClが拮抗しながら静まっていく。Vn協奏曲はライブエレクトロニクスを用いているのかと錯覚しそうなハーモニクス領域の独奏に各楽器が徐々に絡みつき、間歇的な柱が徐々に波のように連なっていく。終わりはどれもあっけない。Kairos 9120040735685
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  41. * H.266、1937年作曲、編成はOb+Cl+Fg。調性がありそうで絡まりながら崩れていくが各楽章最後はまとめる。「四重奏曲ハ長調」H.139は1924年、Cl+Hr+Vc+打という変わった組み合わせで、基本調性はあるものの人を食った方向へ。それぞれ、なかなか面白い味わい。ほか「ロンド」H.200は1930年、Ob+Cl+Fg+Tp+2Vn+Pfで元気よく6楽章。「六重奏曲」H.174は1929年、PfにFgが2本の木管で、平和な5楽章。Supraphon 81-1348-2
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  42. * 微分音的な音のズレが静謐さの中に隠された異質要素を垣間見せる。マレク・コペレント「カント・エスパンシーヴォ」も微分音とグリッサンドを混ぜながらの独白。ハヌス・バートン「ClとSQのための協奏曲」は緩やかな中に特徴的なグリッサンドの1楽章、土の香り×モダン感覚の2楽章、神秘的なppに終始する3楽章。ズビニク・マティユ「禁断の石碑」はCl+Hpで懐かし気な響きを装いながら放蕩な要素が顔を出す。ペトル・ポコルニー「山の夏の夕暮れ」は2Clの幻想的呼びかけ。ピーター・グレーアム「異なる幾何学」は移ろい行くアルペジオ。Supraphon 81-1397-2
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  43. * Pf(左手)+Fl/Picc+2Trp+3Trb+Tbという変わった編成のサーカスみたいなカプリッチョ。HrがないのでTrbの役割がかなりアクロバット的。「コンチェルティ-ノ」はPf+Cl+Fg+Hr+2Vn+Vaでこれも変わっている。ごく普通の素材をつないで独自の異郷を組み立てるヤナーチェクらしいつくり。1楽章のタラランというリズムとか。さらにピアノ・ソナタ 「1905年10月1日、街頭にて」。Supraphon 81-1393-2
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  44. * 時に声を交える独奏Flと、その音を縦横無尽に変化させるエレクトロニクス。「リフト」「空で高すぎず」はそれぞれ電子音のみ。「ドラッグ」はVc+Cb、「移行する流れ」はVa、「推力」はギター四重奏とそれぞれエレクトロニクス。すべてフルクサス連作の一環で、流体力学への関心に触発されているという。楽器はみな特殊な奏法も含めて発音という原点に呼び戻され、加工された音と拮抗し絡み合う。Kairos 9120040735807
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  45. * 形式的にはかっちり古典、楽想としてはロマンティックに始まるが、第2主題はリズミックに。スケルツォは勢いで、緩徐楽章はしっとり、そして終楽章でウォルトン節が炸裂して嬉し懐かしとなる。併録はフランク・ブリッジの弦楽四重奏曲第3番で、無調らしいがロマンというか情念が濃い。Erato 190296738630
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  46. * オペラ「光の金曜日」の最後近くでエルーとルーファが奏する二重奏をヴィブラフォン用に編曲したものだそうだ。中川俊郎「エヴァンタイユ(扇)」はハーモニカが混じったりする。新実徳英「風のかたち」は2Vibに加え読経時に叩く小鐘(鏧)9個を用いる。西村朗「プンダリーカ(白蓮)」はスティールドラムやベルも動員されるようだ。平義久「モノドラマ IV」は中間部で少し動きがあるが、ジュゼップ・ソレール「そしてナイチンゲールの歌のように」などVibの単調な響きは、これだけまとめて聴くとなかなか辛いものがある。ALM Records ALCD-7227
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  47. * シンプルで少しおかしなところを交えた、サティらしい短い10曲(2つの遺稿を含む完全版だそうだ)。オネゲルの「7つの小品」は1曲平均1分未満。ルイ・デュレの「2つの小品」もやや調子外れな素振り。ミヨー「ジャン・コクトーの3つの詩」、プーランク「4手ピアノのためのソナタ」、ジェルメーヌ・タイユフェール「イマージュ」、ジョルジュ・オーリック「さらばニューヨーク」どれも軽く冗談交じりの小品。そして彼らの共作による「6人組のアルバム」もまた。ALM Records ALCD-7246
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  48. * 最弱音から動物の唸り声のような低音、そしてグリッサンド。ぶつ切りの音素材を並べてみせるアコーディオンのデュオ。フアン・アーロヨの「ソスペソ」は微分音アコーディオンを用い振動音やら圧迫音やら。バスティアン・ダヴィドの「オン・オフ」は微分音と通常のアコーディオンによるデュオで密集和音を。ビクトル・イバラ「線の研究」は一つの音が太さを変えたり滲んだり。ダヴォル・B・ビンチェ「コピー・ペースト」はマーラーやピアソラらの引用から。レジス・カンポ「光」は笙を模したようでいながら微分音的にずれていく。さらにファニー・ヴィセンス/ジャン=エティエンヌ・ソッティの短い導入とエピローグ。Initiale INL05DBI
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  49. * 二度移動のあとぐっと上昇するモチーフを軸にさまざまな技巧が組み合わされる高難度の無伴奏Vn。途中で疲れたか、上昇音が上がりきらずに修正する感じになって惜しい。アンドレ・ジョリヴェの「狂詩組曲」はヘブライ音楽的な要素を含むエキゾチックな音が縫い合わされる。「呪文」は交錯する五連符の捻れた音階がすべてG線上で弾かれる(元はFl)。「Vnソナタ」は急緩急の古典的形式に奔放な音が込められた初期作品。そしてこれらはやはりバルトークにつながるのだろう(収録されるのは狂詩曲第1番)。Initiale INL04D
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  50. * Clが重音や空音などを含めて密やかに動きつつ突然叫んだりする。「廃墟」はTrbの超絶技巧。「影絵」はVaが微分音をやグリッサンドを交えたくねくねしたテーマ、少しピチカートも。「線のみ」はVnが人工ハーモニクスだけでSPレコードのような頼りない音。「P.S.」はSaxが細かく喋るように。「夜のない日」はコントラフォルテというCFgの改良版楽器。すべて独奏の曲集。ライナーノートによると「音のジェスチャーを作曲する」のだそうだ。Kairos 9120010280993
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  51. * 旧約「哀歌」の最後(バーンスタインのエレミアと重なる)を用い、長い響きの上でこだまのように反復したり悲痛な叫びになったり演説だったり。微分音で隣接するア・カペラ合唱とは!「我らの過ち」はスコット・ディールのテキストをSop独唱+弦アンサンブルで呪術的に。「一般教書演説」は同じくディールのテキストで、環境、支配層、中流層、下級層の4つを表す12声によるア・カペラ。Dis-quatere(ラテン語:議論)あるいは多面的(multi-panel)オペラだと言い、強いメッセージ性を持つ。Alba ABCD500
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  52. * 荒っぽい基本動機提示に始まるが2楽章からは控え目に徐々に展開される。Fl+Cl+Vn+Vc+Pf。同「午後の色合いは無し」はSopとHr、Cbが加わる。節約された音に装飾音が印象的。マルクス・ブレニマン「歌は軽やかになりたい」はHp+BCl+Vcで同音を重ねる導入から突然遠くに移りつつ後半は敏捷に。カミーユ・ケルジェ「秋の歌」は日本の和歌とキーツの詩を用いたSop+Fl+Cl+Vn+Vc+Pfで、感傷的調性的な導入から舞台音楽あるいは描写的なつくりへ。ジョルジュ・レンツ「ングーラー」は連作「天は語る…」第7部の3曲目で、Clを中心にVn+Vc+Pf+打。Toccata Next TOCN0011
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  53. * 微分音的にくねくね絡み合う2つの音。タイトル訳が適切か不明。ジェレミー・ワグナー「架空電車線」はハーモニクスや叩きつけるスピッカートを駆使して空中を漂うような。マイケル・パトリック・デュフィ「無生物、生きて」は2本の糸が捩り合わされ膨張し炸裂する。ジョシュア・ムジカントフ「オートクローム」は生き物のような2声部がそれぞれじわじわ。サム・クラーン「抵抗/共鳴」のこぎり音やグリッサンド。アダム・ツァーラー「困難なシダ」胞子が飛び出したり蔓が急に巻き付いたりするのだろうか。とても雄弁な2Vn。New Focus Recordings FCR291
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  54. * 冒頭に現れるシンコペーション的刻み、順番に尾を引く強いクラスター、ハーモニクスに始まるコラール的響きという3つのテーマが2回変装される。金属、ゴム、木の弱音器を使い分けサウンドを変えるのだそうだ。「ルディ・ムタティオ」はPfと電子音による9の断章で、規則に従い順序を入れ替えることができる。「ヴィオラ・パルティータ」はバロック的装いの高度な技巧の中に深く新しい息吹を込めた独奏曲。「シレイ」はFl+Cl+Vn+Vc+Pfによる急緩急緩4部構成の単一楽章で、自由にやり取りしながらユニゾンで集う。さすがKairos 9120040735722
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  55. * ドレミという音階(名)を解体して無関係な音程に関係づけたり調律を狂わせた楽器と正調ハーモニーとコラージュしたり。12曲全部合わせても8分少ししかなく、徹底的にくだらない遊び。面白い。Yuta Bandoh Studio YBS-001
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  56. * 三度のインターバルで上下反復するパターンを基本に、波のような振幅を繰り返しながら徐々に変化してく。この手のミニマリズム音楽はコンピュータで容易に作れてしまうだろうという気がするが、それでも1時間近く真剣に付き合う演奏家がいるということは、何かがあるのだろう。たぶん。ちなみに作曲家は映画監督とは別人。Cantaloupe Music CA-21159
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  57. * かなり執拗な反復音をベースにモチーフが少しずつ姿を変えていく。遅い楽章は最小限の音で、親しみやすく始まって期待を逸らすアレグレットに、マシンと化すかのような終楽章。「サイン」はFl+Cl+Pfでやはり反復音がベース。「静寂の音」はFl+Vn+Pfで各楽器の響きを重視。「砂の時間」はTen+Pfの分かりやすい調性的歌曲(終曲のみ少し変化)。「夕べの祈り」は何かの間違いのようなメロウなサウンド。「希望の苦痛の夜想曲」は短いCemb独奏で単線的に思考が彷徨うが途中で暴れだしトリスタンの模倣で終わる。SKANI LMIC106
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  58. * 召集される兵士と送り出す女役の歌手2人にVn+Cb+Pf+Accd(+電子音)という小編成で進む民話歌物語。心の葛藤や厭戦感が大げさな身振りなく凝縮して描かれる。民謡風モチーフが各楽器とうまく噛み合い、録音も演奏もしっかりしている。SKANI LMIC093
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  59. * ツイン・ピークスに出てくるような意味でのTulpaをシュルレアリスム風というか分裂気味に描く。3曲めではプルースト「スワン家の方へ」からの抜粋をSopがくねくねと歌う。「融合」は2Vc、「羽音」はCl+Pf、「練習計画」はBCl独奏で、それぞれ奔放で面白い。「悪名高い」「控えの間」「8つの無題の物語」は打楽器系。New Focus Recordings FCR298
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  60. * 鋭いタンギングや倍音、グリッサンドなどの技巧を組み込みつつ、ふわっとした空気から急速な運動へ。ASaxここまでできるという意欲作。同「霞の中で」はASax二重奏。何度もクレッシェンドして強いタンギングで分節されるモチーフ、僅かな時間差による立体感など。藤倉大の「ダッシュ」はSSax+Hpで水がくるくると回るイメージ。HPハーモニクスが多用される。あとはピアソラ、イベール、ドビュッシーの編曲もの。Cryston OVCC-00160
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  61. * 微妙に捻れた和音のアルペジオが磁場が歪んだ奇妙な氷の城を思わせる。ランダムなようでいて終楽章の冒頭には最初のテーマが帰ってくる。「冬の踊り」はシンコペーションを伴ってくねる音の流れが少し崩れた拍子感になる踊り。「光の色彩」はより滑らかな音列や分かりやすい響きを前面に出しリラックスした描写音楽。Grand Piano GP843
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  62. * 毛筆で書く線を音で表現した「音のカリグラフィー」だそうで、強いタンギングによるアクセントが一画を分節するのか。時折かけ声も挟み、身体的ダイナミズムも音に盛り込む。1984年作品。「鳥たちへの断章III」は笙に支えながらのBFl、そしてPiccに持ち替え。「垂直の歌I」は、うたは水平軸の時間上にではなく「垂直的に生まれる」のだと。「息の歌」はBFlでまさに風奏、「リート」はFl+Pfによる無言歌、「黒田節」はAFlで。Kairos 9120010280924
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  63. * DGレーベルが創業された年を題名に、75周年である1973年に作曲され、録音メディア以前の家庭内合奏の戯画であるチープな素材にわざと滅茶苦茶な児童合唱を組み合わせる。「ルネサンス楽器のための音楽」は時代楽器なら何でもよいという22楽器が荒唐無稽なノイズ音を連発する。ほかリーム「出発」、リゲティ「アトモスフェール」「ロンターノ」、ノーノ「愛の歌」、ブーレーズ「ノタシオン」と豪華。あとライヒ「6台のピアノ」「マレット楽器、声とオルガンのための音楽」、グラス「Vn協奏曲」、シュニトケ「合奏協奏曲第5番」も収めたDG120周年セットのうちの現代音楽4枚組。DG 00028948361687
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  64. * 12弦楽器(4-3-2-2-1)で不協和音クラスターの色の変化を描き、短↘長音で下降する動機やトレモロが細い線描のように。リゲティの「ラミフィカシオン」もやはり12弦楽器で、四分音だけ調弦をずらした2群に別れて模糊とした音のクラスターが広がっていく。アンドレ・ブクレシュリエフの「影」は、静かな弦和声上のゆっくりした移ろいが、低弦の動機をきっかけに変容するも、また元のような流れに。の繰り返し。ベートーベンへのオマージュだという。Erato 190296766756
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  65. * Fl+Vcによる、とぼけたというか素朴というか、いまいちよく分からない対話が淡々と続く。何かの童話なんだろうか。「沸点」はCl+Vn+Pf、「エリス島へ」は(ヘタウマな)Fg+Vn、「日没の精神」は木管五重奏で、いずれもいっけん単純でどこかに罠が仕掛けられているようなナンセンス音楽。という感じ。最後まで首を傾げたまま。Centaur CRC3845
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  66. * ダンテが古典ラテン語と土着語の関係を論じた書物の名を借りて示すように、既存の音楽言語とは異なる特殊奏法をこれでもかと投入してみせる。「イカロス」はVn独奏が翼を得たかのように細かい刻みで動き回る。「シリアの射手のごとく」はFl、「力のロンド」はPfの独奏。「オルランドのフォリア」はCl、「おお、私のエウリディーチェ」はPf+Clで、前半を無音にして存在しないものを描く。「牧神の午後への前奏曲」はFl+Vnで始まる著名曲のパロディ、「誰もが語る」はSopを加えた。どれも何か不条理のようなものを表現しようと。Kairos 9120010280849
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  67. * DWはDifferenz/Wiederholungすなわちドゥルーズの「差異と反復」で、FlとCbという両極端の楽器がさまざまな特殊奏法を用いて、繰り返しながらも前回と異なるというコンセプトを音にしていく。反復細胞は冒頭の四度↘↗音形と思われ、それが変形されたり切断されたり。「DW25…U.のためのさらなるループ」はCb独奏で、技巧を駆使。「モナドロジーXVIソルフェージュ」はFl独奏。刺激を受ける一枚。Kairos 9120010280894
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  68. * 独奏Vn+Pf+13管楽器の編成による3楽章。1mはほぼPf、2mはほぼVnの協奏曲で、3mが両楽器のカデンツァから始まる。1977年録音で、最後に拍手が入っているからライブだろう。もちろん何回目かの再発。やや緊張感に欠ところもあるが、リヒテル御大は62歳でも元気そうだ。Warner Classics 190295416713
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  69. * 2Pf+2打に電子音を加え、複数の波紋が広がり交わる静かな水面が徐々に風に翻弄されていくような感じ。しかし結尾部はつまらなくないか。「マレア」は中規模の管弦楽作品。イタリア語で「湖」だそうだが、こちらは最初から不穏な風が吹きすさぶ。それが凪ぐと雑多な風景が見えてくるものの、結尾は最初の圧迫感が戻り、あっけなく力尽きていく。サントリーホール委嘱作「オーラ」は、演奏が消化不良なこともあり、ごちゃっとして駄作疑惑。他の曲もそうだが音が過剰な箇所が多いので的確に整理してくれないと鬱陶しい。何度か聴くと、音が絞られた部分には良いものもある。Ondine ODE1384-2
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