music & knowledge sharing
Planet masaka played list 2021-06
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ノーノ:
愛に満ちた偉大なる太陽に向かって
(ローター・ツァグロセク+シュトゥットガルト州立歌劇場管&合唱団ほか)
革命、労働争議、ベトナム戦争などでの苦しみをモンタージュ的につなぎ、11人の独唱、管弦楽+合唱にテープを加えた巨大な作品。何もない荒野から始まり遠くからの叫びが徐々にリアルになってくる。厳しい告発の連続かと思うと雑踏やおしゃべりらしきものや空虚な人工物、それにもしかすると哀歌も混じり(逆かな、強音部分の方が抑制された表現の合間にときどき)、ぼんやりしているとついていけない。最後は悲しげに静かに終わる。「太陽のもとで」とも。Warner Classics
190295230593
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ベルク:
弦楽四重奏曲
(アルバン・ベルク四重奏団)
付点上昇を持つ主題ほか靭やかさと複雑な緻密さが織り交ぜられ無調ながらしみじみする。併録「抒情組曲」は十二音技法満載なのだけれどタイトル通りのしっとりした味わいが届き第3楽章の氷を滑り降りるような細かな動きなども面白くとても親しい音楽に思われた。ABQは細かい音のビブラートがなければもっとクリアになるような気がする。Warner Classics
190295173524
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ウォルフガング・リーム:
弦楽四重奏曲第4番
(アルバン・ベルク四重奏団)
鋭い上昇三音動機から始まって突き放すような硬質な音の矢が飛び交う。狂ったように掻きむしる高音のあと急に心情を吐露するような場面に戸惑ううちに冷たく尖った暗闇を抜けてやはり情緒があったのかと。併録のシュニトケの「弦楽四重奏曲第4番」は暗くうごめく低音に冷たい和音が答え不協和なよじれはやがて太いうねりに。悶える激しい動きと身をかがめた慟哭はいずれも厳しく感傷が入り込む余地はない。Warner Classics
190295168599
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ヘンリー・カウエル:
ピアノと小管弦楽のためのアイルランド組曲
(シェリル・セルツァー+ザックス+コンティニュアム)
ポツポツとアイルランド的?断片を繰り出すアンサンブルにピアノ内部奏法を打楽器的に、また素朴な旋律として試した1929年の曲。カデンツァもある。「フェアリー・アンサー」も29年のPf曲で控え目に内部奏法。Pf曲でも30年の「虎」や38年の「ディープ・カラー」は拳や腕で鍵盤をまとめて叩く密集和音型、20年「ファブリック」はシンプルな奏法の無調、24年の「VnとPfの組曲」はかなり素朴。30年「ポリフォニカ」、38年「3つの反モダニストの歌」は少し前衛ながら聞きやすい作り。62年「Fl、Ob、VcとCembの四重奏曲」はさらに親しみやすい方向へ。Naxos
8.559192
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ヘンリー・カウエル:
ピアノ協奏曲
(ジェレミー・デンク+MTT+サンフランシスコ響)
常に不協和音を含むが結構名人芸的な1楽章、二度隣接の静かな主題が突然動的になり中間部のソロもかなり激しい2楽章、トーン・クラスターは2楽章の副題だが密集和音という点ではむしろ終楽章、ただし最後は普通になりたがる管弦楽との綱引き。「早くからピアノの内部奏法を開拓するとともに、世界音楽的な視点で」(沼野p136)とあるがこの曲では不使用かな。「シンクロニー」は長いTp独奏のあと波打ち進行主題がそれなりの色彩で扱われていく。ルー・ハリソン「オルガン協奏曲」はリズミックな両端楽章に挟まれた結構味のある5楽章、さらにヴァレーズの「アメリカ」はサイレンも鳴って賑やか。SFS Media
190295688974
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ノーノ:
不寛容
(コンタルスキー+トガルト州立歌劇場管&合唱団ほか)
イントレランツァとも。1960年の作品でセリエル的な作曲の最後の時期にあたり、急激な強弱変化や広い跳躍音程、突き刺すような管弦楽の響き。複数の物語が並行しマルチ・スクリーン・プロジェクションや別の場所から合唱を中継してスピーカーで流すなどの試みも導入される総合舞台作品(歌劇と呼ばれることを拒否したという)。Warner Classics
190295173197
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ハリー・パーチ:
ビター・ミュージック
(ウォーレン・バート+シーラ・ガイマー)
各地を季節労働者として放浪していた1935/36年頃につけていた日記の朗読と、日記中に書きつけられた楽譜を音化したものだという。「動機とイントネーションの四つ割りセクション」は作曲理論についての解説、「ハリーズ・ウェイク」は友人らとの会話、また独自楽器を用いた「ダーク・ブラザー」「ヤンキー落書きファンタジー」「バーストウ」「USハイボール」などの1940年代の録音など、貴重な音源を集めた4枚組。Innova
INNOVA401
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ハリー・パーチ:
11のイントリュージョン
(ロバート・オズボーン+アリソン・スニッフェン+ニューバンド)
ハーモニック・カノンが奏でる五音音階の序奏に始まり、“応用ギター”とダイアモンド・マリンバなどを伴いながらエラ・ヤングやら老子やらのテキストが歌われる。後半にはクラウド=チェンバー・ボウルというグラス製鐘群も出てきて音色も音律も摩訶不思議。「ダーク・ブラザー」は特に“応用ビオラ”が軟体動物のような対旋律を。ディーン・ドラモンドの「最後の笑いの前に」はFl+Vc+打に微分音シンセとハーモニック・カノン、「議会議事録」は議事録テキストを歌うBar+“応用ギター”などに加え彼の発明した“ズームーゾフォン”と“ジャストストロークロッド”他の8奏者。Innova
INNOVA561
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ハリー・パーチ:
USハイボール
(ロバート・オズボーン+ニューバンド)
アメリカ大陸を横断する浮浪者の歌で、highballはどうやら鉄道の発車合図の方らしい。「自作楽器による非平均律の音楽を追求した」(沼野p137)と言われるパーチ音律(1オクターブの中に43の音がある)の楽器群で、キタラ、足踏みオルガンのクロメロデオン、バス・マリンバなどが語り歌いとともに聞ける。「バーストウ」はダイアモンド・マリンバが活躍するほか代用キタラなど。「サン・フランシスコ」はパーチ自身が奏する“応用ビオラ”が聞ける(指定のVcの代わり?)。「手紙」は調弦が狂ったようにも聞こえるキタラIIの侘びたアルペジオやハーモニック・カノンなど。Wergo
WER6638-2
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ルイジ・ダラピッコラ:
アンナリベラの音楽帳
(チーロ・ロンゴバルディ)
「早くから十二音技法を用い」(沼野p118)ていて、このPf曲もその一つだが、バッハへのオマージュも込められていて良い塩梅。「聖パウロの言葉」は聖書のテキストを歌うMS+11楽器でやはり色彩豊かな十二音。「タルティニアーナ第2番」はVn+Pfで疑似バロック風の分かりやすい曲に少し不協和音が混じるのかと思ったがVnが下手なだけか?ゴッフレード・ペトラッシ「秋のセスティーナ」はVn+Vc+Cb+Guit+Mand+打で各楽器が活躍する盛り沢山な曲。「セレナータ・トリオ第2番」はGuit+Mand+Hpで十二音技法が入っているのかも。「天使の対話」は2Flが無調ながら甘美な響きで。Mode Records
MOD-CD-166
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サーリアホ:
雨が降る
(キャサリン・ダイン+サム・アームストロング)
最高音から最低音までゆっくり半音階で下降するPfに乗ってSopがアポリネールの詩を歌う。同「瞬間の香り」はマアルーフの詩による「4つの瞬間」の第3曲で劇的要素の多い曲集の中では流れ落ちるような伴奏で高音の調べ。これらが最後と最初で、その内側にデュティユー「女流刑囚の歌」「永遠を見つめて」、その内側がドビュッシー「抒情的散文」の抜粋、さらにデルボス「芽生える魂」ときて、メシアン「ミのための詩」が中央に置かれる。どちらかというとやや硬めの声質だが、なかなか味わいのある。7 Mountain Records
7MNTN024DIG
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ベリオ:
セクエンツァVII
(アルテュール・クラーセンス)
H音から始まるオーボエが、技法をいろいろ組み合わせて音色を変化させ運動しながら広がっていく。ジェシ・ブロークマン「不在の声」は重音奏法と多重録音を駆使して、さまざまな重なりが左右から浮かんでは消える(Obへの編曲版とあるが、クラーセンスのための新作らしいから例によって誤りでは)。ライヒの「ニューヨーク・カウンターポイント」はClの原曲をObに編曲し多重録音で。結構行ける。併録は多重録音でのバッハVn無伴奏2番編曲、さらにタリスの40声モテット「スペム・イン・アリウム」をオーボエ族の40楽器を集め多重録音したと。7 Mountain Records
7MNTN026DIG
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クセナキス:
コトス
(スチュアート・ピンコム)
Vc低音の鋸音から始まり長い重音グリッサンド、荒々しい分散不協和音からジグザグの線そして地を這うシンコペーションが空の彼方へ。モートン・フェルドマンの「プロジェクション1」「インターセクション4」は図形楽譜によるVc独奏曲で、上下広い音域にわたる断片的な音の合間にピチカートが散りばめられる。ラッヘンマンの「プレッション」は瞑想と激しい鋸音が交錯する特殊奏法のオンパレード。ガット弦古楽器に低めの調弦で演奏しているということで、併録バッハの無伴奏5番とドメニコ・ガッリのVcソナタ第6番も渋い響き。(NMLの作曲者表示が誤り。相変わらず信頼できない)7 Mountain Records
7MNTN019DIG
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ジェシ・ブロークマン:
狭い多数
(エークナル)
Fl+Cl+2Vn+Va+Vc+Pf+打。旋律はなく繊細で倍音の多い響きが浮き沈みする。2019年入野賞受賞。ジェイソン・エカート「アンダーソング:16」はFlのみ、後+Vn+Va+Vcで密やかだがスピードのある技巧的絡み合い。4曲構成の2曲目。ナタン・ハイデルベルガー「一息」はFl+Cl+Vn+Vc+Cb+打で、少しcrescしては途切れる反復が徐々に強まるが消えていく。レイコ・フュティング「道、白鳥の歌」はGのユニゾン反復を基調に柔らかな歌がかすかに聞こえる。アシュカン・ベーザディ「カーニバレスクIII」はFl+Cl+Vn+Va+Vc+Pf+打で騒音ぽい断片の連なりにときどき静寂。7 Mountain Records
7MNTN012DIG
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マウリシオ・カーゲル:
エクゾティカ
(ノン・ヨーロピアン・インストゥルメンタリスツ)
「楽器奏者たちに、あえてまったく慣れていない民族楽器を演奏させ」(沼野p200)て西洋音楽を茶化すというか非神聖化する“器楽による演劇”で。「タクティル」はギター2本+ピアノでチープなリズム伴奏の上に何やら仕掛けがいろいろ。DG
00028947770954
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ジェラール・グリゼイ:
音響の空間
(ASKOアンサンブル)
Va独奏の「プロローグ」から始まり「ペリオーデ」は7楽器、「パーティエル」(パルシエル)は18楽器(「コントラバスの低い『ミ』音から倍音が次々にわきだして」(沼野p203)ぐぐっと展開し、鳥が囀るような領域に至って放散していく)。さらに「モデュラシオン」は33楽器、「トランジトワール」は大管弦楽、「エピローグ」は4Hr+大管弦楽と拡大していく編成で、それぞれ前の音空間を拡張する形で作られ、同じ素材もしばしば用いられる。面白いな。続けて演奏されるが、「エピローグ」以外は単独でも可。Kairos
0012422KAI
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ジェラール・グリゼイ:
時の渦
(チェッケリーニ+アンサンブル・リソニャンツェ)
Fl+Cl+Vn+Va+Vc+Pf(+Hp?)で渦巻くような管や引っ込み思案な弦が絡み合い、中間部では微分音調弦されたPfが淡々と下降していく。原題はラテン語でヴォルテクス・テンポルム(1996年)。NMLでは「ペリオド」としている併録は「『ペリオーデ』(1974)ではヴィオラの『レ音』から…倍音が次々にわきだしてくる様子を作品化する」(沼野p203)と、スペクトル楽派の例として紹介されている。NMLではグリゼー。Stradivarius
STR33734SD
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ディーター・シュネーベル:
弦楽四重奏曲
(ディオティマ弦楽四重奏団)
2005/06年に書かれ「空間内で」の副題を持つ。テトラコルドとセリー的順列に基づくという。胴を叩いたり足を踏み鳴らしたりもするが、タイトに引き締まって寡黙で無駄口をたたかないタイプ。「弦楽四重奏曲第2番」は 2006/07年作の3楽章で、委嘱機会の国際会議テーマでもあるフロイトの「想起、反覆、徹底操作」が各楽章の標題になっている。音はより絞り込まれるがときどき爆発する。声も入って演劇的要素が増し四分音も使われる。「小品」はウェーベルンの影響のもとに書かれた1955/56作の短い5章。
NEOS11048
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ディーター・シュネーベル:
シューベルト・ファンタジー
(ペシュコー+フランクフルト放送響)
D.894の幻想ソナタを精緻な管弦楽に編曲。弦が複雑に織りなす和声の上に浮かび上がる主題が神々しい。「ベートーベン-交響曲」は第5の第1楽章を足し算、引き算によってふわりとした優しい音楽に変身させる。「ワーグナー-牧歌」はジークフリート、「ウェーベルン-変奏曲」は作品27のPf変奏曲から。短い“モーメント”として「マーラー」は交響曲第9番の終楽章最後、「シューマン」は子守唄、「モーツァルト」はK201のメヌエット、「ベルディ」はファルスタッフという具合に素材を選び新しい姿に。バッハは「フーガの技」をいくつか声楽で(ライブでイマイチ)。Re-Visionenシリーズ。Wergo
WER6616-2
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ディーター・シュネーベル:
モヴェメント
(エゲラー=ヴィトマン+AGノイエ・ムジーク)
「キャンプファイヤーと子守唄」「忍び足」「ジャンプ」などの標題を持つ楽章ごとに子供たちが動き回りながら楽器と声で曲を構成していく。併録「シュルムジーク」はその原型ともいえる声だけで奇怪な表現を生む作品で、同時期のマウルヴェルケ(収録されていない)について「身体の諸器官の内部から外部へと声が発せられてゆく過程が、そのまま作品化されている」(沼野p200)というのがほぼ当てはまる。Wergo
WER7352-2
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ブリテン:
休日の日記
(スティーヴン・ハフ)
作品5という1935年の小さなピアノ組曲。素朴ながらところどころ調性の枠を外れていく。「12の変奏曲」は1931年で非調性志向の変奏も。1925年「5つのワルツ」、1930年「3つの性格的小品」はほぼ習作、1940年「ロマンティックなソナチネ」も含め調性的。1938年「マズルカ・エレジアカ」、1941年「序奏とブルレスク風ロンド」は作品23の1と2で、1936年「2つの子守歌」とも2台Pf曲。調性的な中にゆらぎ。「夜の小品」は1963年で自然に調の範囲を広げている。Erato
190295169541
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ハンス=ヨアヒム・ヘスポス:
スプラッシュ
(シェーファー+ラウル)
打+Cbで、かなり曲芸的な技巧も用いるのに、間がたっぷりあってお芝居を見ているよう。「極限的な超絶技巧によって奏者の身体が演劇的に提示される」(沼野p200)のがこれか(例に挙げられている「ポイント」は収録がないがほぼ同時期)。「キタラ」はギター独奏、「-z…」はFl+Recrd+Cb+Hp+Guit+3打でいずれも69-71で同時期、似た傾向。「カンク」はツィンバロン、「ピコ」はRecrd、「ドゥーマ」はAFlの独奏で76~80年、「ライヤ」はHp、「モンスケ」はTimpで90年代、どれも凝った特殊奏法が禅寺かというような節約された音で繰り広げられる。CPO
999890-2
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ペテリス・プラキディス:
3枚の子供の絵
(ザリンシュ+ゼンベルガ+クラスティンシュ)
Vn+Vc+Cembという古めかしい編成で、旋法のような風変わりな響きと自由で縛られない断片の短い3曲。「ほとんど忘れられた感傷的なメロディ」「推理小説からのエピソード」はFg+Vn+Vc+Pfで分かりやすい旋律かと思うと仕掛けあり。「インタープレイ」は木管群とオケの賑やかな協奏曲、「2Obと弦楽オケの協奏曲」はメロウなふりをして弾け飛ぶ。「眠れぬ」はCl+Vc+Pfで哀歌が近づいてきて狂詩曲に。「ロマンティックな音楽」はVn+Vc+Pf、さらに「Vcのための2つの変奏曲」、短い歌曲「星は夜に泣き明かす」。SKANI
LMIC114
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ニコ・ミューリー:
縮小
(ペッカ・クーシスト+ノルウェー室内管)
弦楽オケとのVn協奏曲。車窓からの景色が刻々と移り変わっていくような動きと水面をゆったり走るような息遣い、あるいは冷たい空気感。調性を感じさせたかと思うとふっと離れていく。終楽章は張り詰めた重く速い刻みを軸に。なかなか雄弁に聞かせてくれる。併録のフィリップ・グラス「画面 - 果樹園」「弦楽四重奏曲第3番 ミシマ」はまったくの蛇足。PentaTone
PTC5186745
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アーロン・ジェイ・マイヤーズ:
地衣類II
(ニコル・パークス)
植物でも茸でも藻でもないという菌類の一種に触発されたという奇妙なVn独奏。8つの楽章がその8分類によるのだと。「おお、皮肉」は偽善についての詩を2Sopが歌う。「持って―いない」はBCl+Mrb、「自分の影を持て」はBCl+Vnで、一定のリズムを持ちながら後者は特に激しく乱れる。「パンの夜」はFl+Hp+Vib+トイピアノ、「スキン」はTSax+Mrbで、それぞれ即興ぽい掛け合い。「賢い機械」はBCl+Mrb+電子音でやや爛れかけ、「パロクシズム」はBCl+Pf+EGにドラムセットが加わり安っぽい。New Focus Recordings
FCR297
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イルヴァ・アルクヴィーク:
Vn協奏曲第1番
(アンナ・リンダル+ヨナス・ドミニク+スウェーデン室内管)
「鳥占い」の副題を持つ4楽章。ウッドブロックやバルトークピチカートのような破裂打音、鋸音などを集中的に用いつつ、緩急の旋法的だったり荒削りな民族舞曲的(たぶん)だったりする要素が不思議な彩り。最後は掠れて消えていく。「ノーコメント」は無調の伴奏を淡々と紡ぐPfにASaxが一人アルペジオからの上昇を繰り返していたのが、いつしかPfも運動を始め、ASの息音を尻目に独白、そして最後はAS。ルクスリアはSax四重奏+管弦楽で軽いタッチが徐々に強靭な運動そしてノーコメントで聴こえた音形へ。Nosag
NOSAGCD239
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ゴードン・カンペ:
囁きのカンタータ
(LUX:NMほか)
Trb+Accd+Pf+打他からなるアンサンブルと囁くだけの4声にテープも加えているのか、奇妙な音のコラージュ。「ノットゥルノ」「タランテラ」はCl/Saxも加えてふざけたような音。「トロンボーンの怪物~」はTrb+Accd+Vcなどの奇声にエレクトーン紛いの変なビブラート鍵盤。かと思うと民謡やコラールのパロディがあったり、ヤン・ブラウアー、ルート・フェルテンらとともに音響実験的な電子音や語りを取り入れたり。どれも短い実験的な作品で雑多。Genuin
GEN21744
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セバスチャン・ファーゲルルンド:
ノマド
(アルトシュテット+リントゥ+フィンランド放送響)
大規模なVc協奏曲で、6つの楽章で主人公がいろいろな場面に遭遇する絵巻物のよう。豪華絢爛な部分が多いが5楽章は全体が神秘劇のようなカデンツァになっていたり。最後はC線を緩めて通常以下の低音まで沈む。「水の世界地図」は石、風、水の三部作のひとつで、荒い波だったり凪だったり、オケがよく鳴る分厚い起伏が。いずれも2019年。
BIS-2455
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マシュー・シュライバイス:
サンドバーグの歌
(トニー・アーノルド+ズーン・コレクティブ)
Fl+Cl+Vn+Vc+Pf+Guit+打にSopがサンドバーグの「シカゴの詩」を歌う。都市の路地裏というか脱力した感じで最後の「通行人」は枯れた味わいとすら言えるかも。「内なる真実」は捉えどころなく漂うPf独奏。「気づき」はEs上のフリギア旋法的な動きをするClをポルタメントのVnが追いかけいつしかカデンツァが。「惑星Xを探して」はPfの上でCl+Vnが頼りない分散和音など。「彼らは言う」は語りや同叩きも含むギター独奏。Albany
TROY1856
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ヴィンコ・グロボカール:
歴史の天使
(ボロン+ブラビンス+バーデンバーデン・フライブルク響)
「冒頭、突然にスロヴェニア民謡の録音が聴こえ…二群のオーケストラはそれを切断しようと…背後では打楽器の連打…シュプレヒコール、調子外れのマーチ…判然としないノイズ、電子音…ほとんど絶望的な混濁であると同時に、どこか甘い郷愁を含んだ音の瓦礫」(沼野p249)という何でもあり。併録「人質」も犬や馬の鳴き声、電話などの具体音、ライブエレクトロニクスにオーケストラの特殊奏法と、すさまじく雑多な音響。col legno
WWE2SACD20609
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ヴィンコ・グロボカール:
アイゼンベルク
(イリノイ・モダン・アンサンブル)
16人の奏者が形式構造だけ与えられた楽譜を一定の規則で満たしていく。囲われた即興の交錯。「航空宇宙船」はSSAATTBB+Cl+Trbで互いの音に反応することが求められるのだという。人と楽器の奇声の応酬。「耕す」Labourは埋もれているものを掘り返す、いろんな位置から絶えず観察される音楽のスパイラルだと。コミュニケーションの例として紹介されるディスクールIII(沼野p199)は収録されていないが、確かに模倣、抽象、合流という様はある。col legno
WWE1CD20004
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ルイ・アンドリーセン:
労働組合
(バング・オン・ア・カン・オール=スターズ)
BCl+Vc+Cb+EG+Vib+Pfで妙な不協和音の細かな連打が変化していく。不確定性を取り入れているらしい。1975年。「ホケトゥス」はASax、パンパイプなどが不協和音を左右から交互に打ち鳴らす一種のミニマリズム。1977年。「ハウト」はTSax+Pf+EG+Mrbがとぎれとぎれの旋律を少しずらしてエコーのように奏でていく。1991年。コラージュ作品の例として紹介されているアナクロニーI(沼野p189)は残念ながらNML収録なし。Cantaloupe Music
CA-21012
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ペア・ノアゴー:
交響曲第3番
(ダウスゴー+デンマーク国立放送響+合唱団ほか)
「自然の植物を眺めるような、あるいは古代の呪術に触れるような奇妙な感覚」(沼野p127)を生むと。無限セリーの集大成とあるがよく分からず。第1楽章は下降音が降り注ぎOrgまで登場する過剰さだが最後は妙に神秘的。ユニゾンでわざと音をずらすのか。第2楽章は声楽も入って水面の霧からさまざまな音塊が飛び出して渦巻く(ヴェートのライブ盤は歌が酷かった)。大掛かり。交響曲第7番も盛り沢山で色んな要素が次々出てくる。太鼓の音階下降上昇、ジャズや民俗のリズム、突然の三和音ffとその裏に流れる不協和音。で呆気なく終わる。面白い。Dacapo
6.220547
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シュトックハウゼン:
グルッペン
(アバド+ベルリン・フィルほか)
3群のオーケストラで「テンポのセリーが採用されており、さまざまなリズムが錯綜する」(沼野p127)。音色も多彩。クルターグの「シュテファンの墓」は暗い響きの中で突然激しい叫びが。同「ステーレ」はGのユニゾンffで始まって何事かと思うが音が消えてからは暗闇の中を手探りするように広がり中間楽章では混沌とした波動、そして減衰する六連符の鼓動。DG
00028944776126
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ジャン・フランチェスコ・マリピエロ:
明日への5つの練習曲
(アルド・オルヴィエート)
無調で終楽章は十二音も使っているようだけれども形式は古典的で落ち着いた感じ。1959年。「秋のプレリュード」は1914年で基本は調性的ながらチャーミング、「共鳴」は1918年で控え目ながら調性を抜け出そうとしている。「アルメニア」は1917年でメランコリック。1910年の「3つの古風な舞曲」、1932年の「カ・ティエポロのメヌエット」は三和音の世界。モンテヴェルディ全集の校訂者だそうで、本来は保守的なのかなとも思うが、時代的にいろいろあるのは興味深い。Stradivarius
STR37164
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ミルトン・バビット:
3つのコンポジション
(ロバート・タウブ)
独自の十二音システムの「実験作」(沼野p124)で1956年。「デュエット」「セミ=シンプル・ヴァリエーション」は同年、「パーティションズ」は翌年。66年の「ポスト=パーティションズ」は時点集合(音列中の音高の順序を時間=時点から時点までの間隔=によって並べる)なる複雑な技法により、72年の「絵画」も同様。75年の「反響」はシンセサイザーを用いているが、83年「カノニカル・フォーム」85年「ラニアップ」はピアノに戻っている。演奏家の技術が上がってバビットの複雑な譜面もきちんと弾けるようになったからという。Harmonia Mundi
HMC905160DI
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シェーンベルク:
管弦楽のための変奏曲
(ブーレーズ+シカゴ響)
十二音技法を用いた最初の大規模管弦楽作品。「変奏曲という古典形式を保持しつつも、もはやぎこちない印象はまったく受けない。…理屈抜きに面白いのである」(沼野p117)。Vn協奏曲(Op.36)とピアノ協奏曲(Op.42、沼野p118)も十二音技法で、前者は急緩急の3楽章、後者は単一楽章。「ペレアスとメリザンド」は初期のロマンチックな大作。Erato
825646998449
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クルターグ:
遊戯
(マリア・グラツィア・ベロッキオ)
第1~3巻から4-4-7曲、5~7巻から7-5-3曲、第9巻から2曲という抜粋。しばしば~へのオマージュという副題があるので、そのたびに~の曲が挿入されているが、関連よく分からず無い方がいい。第6巻以降の曲は随分静か(選び方にもよるのか)。全体として面白みが伝わりにくい。Stradivarius
STR37161
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シュトックハウゼン:
シュティムンク
(グレゴリー・ローズ+シングサークル)
さっき読み終えた沼野雄司「現代音楽史」によれば「1時間以上にわたって変ロ音上の属九の和音とその倍音のみがホーメイのように特殊な倍音唱法で歌われる」(p.186)というもの。生憎NMLにはこの抜粋しかない。ほかウェーベルンの「5つの小品」のように短いものは全曲入っているが、ほとんどは抜粋で、それはいいからというのもいくつか。Naxos Educational
8.558168-69
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シア・マスグレイヴ:
即興曲第1番
(レベッカ・ジョンソン+エリザベス・N・サリヴァン)
FlとObが寄り添ったり追いかけっこしたり他愛なく戯れる。同第2番はClが加わり、やはり重なり合いながらしかし複雑度を増した絡み合い。「夜の窓」は最高音を駆使しPfと緩やかに戯れるObが、突然慌ただしく駆け回るかと思うとまたゆったり。「トリオ」はFlが加わりここでも寄り添う。十二音技法だというがむしろ鄙びた味わい。「ニオベ」はOb独奏+テープで神殿の中をたゆたうよう。「悲歌」はCl+Pfの曲をCiで奏でる(難しそう)。怒りの日だというがもう少し異教的感じも。「夜明け」は低音域を多用しややエキゾチックな旋法のOb独奏。Albany
TROY1835
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ブルース・ハミルトン:
インターゾーン
(カイ・シュトローベル)
おどろおどろしく始まってモダンジャズ風になるVibを中心にしたセッション、と思いきやテープ相手だそうだ。朴泳姫「響きの柱」は太鼓と金属など硬打のコンビネーション。クセナキス「ルボン A」は大小の太鼓のみで基本テンポも一定だが味わいある。アナス・コッペル「フェア・ワイルド」Mrbでトレモロ中心の前半はつまらないが後半は躍動する。フィンセント・ハウダイク「マーパ」はVib独奏で優美な調性世界。さらに武満の「ギターのための12の歌」から2曲をMrbで大甘に。E.セジョルネの「前奏曲第1番」はまたしてもつまらないMrb。Genuin
GEN20723
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アタナス・ウルクズノフ:
ソナチネ
(小倉美英+ウルクズノフ)
息音を交えながら小気味良いリズムで民族的旋法を操ったり東洋風味を利かせてみたりのFl+Guit。「ブル・ボップ」僅かにずらした旋律が怪しげに動き声も。「3つの東方の物語」は明るい素振りの民謡風。「4つの伝説 - マケドニア人の歌」はさらに素朴な装い。「おばあちゃんの物語」はちょっと妖術めいた仕掛けのようでもありFlの息音奏法とハーモニクスの掛け合わせがよい。「迷宮」はそういう感じの妙な音律と尺八風+声、そして速い舞曲。Soundset Recordings
196006510466
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エンノ・ポッペ:
ハーレ
(ハンナ・ヴァイリッヒ)
ポルタメント満載のくねくねしたVnは元は鳥の声を思い出すものだと。「シュトーフ」は9を要素にした指数関数的操作による素材を9楽器がそれぞれ勝手に奏で最後に苦しげな上昇へ。「ブロート」は金打Pf5奏者がとりとめない長短の断片を繰り出しながら力を増していくが最後に力尽きる。オペラ「仕事、食物、家」に基づくという。「ズーク」は7金管がA♭付近の微妙な音から始まって微分音や自然倍音を取り入れながらよくあるブラスアンサンブルのパロディと見せかけつつ。「フェル」はドラムセットのソロでギロなども用い暴れまわるだけではない。Wergo
WER7395-2
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アン・ルバロン:
AからZythum
(アストン+ドーン+アンアースリー・ディライツ・アンサンブル)
19世紀末のOEDの脊柱にある全単語をSopとBarで歌うという荒唐無稽な曲。「金って金」はガートルード・スタインの言葉だそうでこれもナンセンスを装う。「Four」と「Fore」はVnで後者は図形楽譜、「つぶやき」はPfを弾きながらルルフォの小説「ペドロ・パラモ」の怪しげな言葉を呟く。「鳥の誕生」はレメディオス・バロの絵に触発されたPf曲。「鐘楼の悪魔」はエドガー・アラン・ポーの小説によるVn+Pf、「裂け目」は+電子音、「ドリーンのための詩」はHp、さらに「この世ならぬ美しさのジュリーの庭」「地獄に堕ちた後」はFg。
INNOVA026
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エディー・ヒル:
回想
(アン・デュアメル)
ブラームスのOp.119とOp.5から着想を得たという4つの楽章で、第1楽章は半音階的なモチーフが期待をもたせるがだんだん調性的になり、後半楽章は辛い。ジョセフ・ダンガフィールドとルーク・ダーンが8曲を分担して作曲した「手紙」もBから素材を取っているが十分昇華されている。マルク・チャン「ブラームスを弾く」はワルツを4拍子にしたり左手で弾いたり、「ブラームス博士のラグ・ブック」はジョプリン風に遊んでみる。ジョスリン・ハーゲン「ブラームスの主題による変奏曲」はベタにロマンチックな調性曲。Furious Artisans
FACD6821
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スコット・リー:
マングローブのトンネルを通って
(ジャック四重奏団+ベック+レイシー)
フロリダのウィードン島の湖沼を巡ったイメージによる8楽章。SQの部分はそれなりに面白く、第6楽章「エンジン故障」はグリッサンドを多用して丁々発止だが、調性的で甘ったるい部分も多く、ドラムスが入ると一気に陳腐になるのが辛い(しかし第4楽章は悪くない)。Panoramic Recordings
PAN-20
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デイヴィッド・ケックレー:
エピソードと独白
(クルコヴィチ+スティーヴンソン)
無調というより調子っ外れといいたい感じもする5つのエピソードとその間に挟まれた短いVn独奏。「予感:短いドラマ」はVc独奏、「暗くなる画像:劇的モノローグ」はVn独奏で暗い影のある悲歌。「未来への展望/過去への展望」はサラエヴォからのと副題がある調性と非調性が交互のPf小品。「龍の門にて」は龍安寺を訪問して触発されたというがむしろ中国っぽい主題にも聞こえ、最後はジャジーなリズムとなるものの少々演奏に難あり。
INNOVA053
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ヤニク・ギーガー:
オルケスター
(ギーガー)
さまざまなサンプリング音と電子音を用いたインスタレーションとしてのオーケストラは、微分調弦ピアノを始め本物の楽器音のように聞こえる断片も入り混じるが、実のところ「本物の」オケ録音もさんざん加工されているので境目は曖昧という皮肉でも。「一人で、それとも一緒に?」は現代曲のSax四重奏とルネサンス男声合唱が奇妙にミックスされる。「キャリー・メアリー」はジャズ、ポップなどの音楽家を集め即興で奏する音を加工していく。「クリプタ」は架空?オーケストラのリハーサル風景断片集のようなものを曲に仕立てるという奇策。Kairos
9120010280856
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クララ・イアンノッタ:
濡れたセメント中の肉球跡(ii)
(ウィレム・ラチュウミア+ランスタン・ドネ)
Pf+2打+電子増幅アンサンブル(AA)で、ときおりPfの内部奏法的な音が混じるがほとんどギシギシの電子変調でヒス音が鳥のさえずりだったり恐竜の吠え声だったり。題名はドロシー・モロイの詩から。「MOULT」は室内管だがやはりギシギシで巨大な歯車が回っているよう。「隠者の天使がちゃがちゃ」もモロイの詩で、AAがいろいろ玩具っぽい音を。「ジャム壺の中の死んだスズメバチ(ii)」は弦楽オケ+オブジェクト+サイン波だそうで、キラキラとガタガタが絡み合う。Kairos
9120040732301
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ベルンハルト・ラング:
ハサンの最後の7つの言葉
(ウォルフラム・エットル)
モナドロジー連作の第5番で、ハイドンの「7つの言葉」を書き換えたものだというが、音楽は躓きながら行きつ戻りつするもどかしい不協和音。「3つの間奏曲」はひとつの密集不協和音にこだわる感じでその周辺に何か散りばめられ、楽章が進むと少し展開もあるが、全体にちょっと地味。Kairos
9120010280948
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メシアン:
幼な子イエスにそそぐ20の眼差し
(アルフォンソ・ゴメス)
若干硬い感じの音色だが、これはこれでひとつの味わいかも。切れ味は悪くない。今日はこれを繰り返し聴いている。Kairos
9120010280818
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ヴェルナー・ヴォルフ・グラーサー:
4つの断章
(デュオ・ジュラン)
短いながら新しい感覚で面白い。ホーカン・ラーション「エピソード」、ユーハン・サムスコーグ「上の変更を見よ」、イングヴァル・カーコフ「強度をもって」はそれぞれ特徴ある佳作。セシーリア・フランケ「イクスタ」、クリスター・ハンセン「センプリーチェ」、ハンス=エーリク・ダールグレン「トロルのために」「子守歌」、インゲル・ヴィルストレム「3つのVn二重奏曲」、モーリス・カルコフ「井戸端の歌」はゆっくりでちょっと変わった感じ。ブー・リンデ「2つの二重奏曲」は少し旋法的。ペッテション=ベリエル、ホーレヴァ、ラングストレム、セーデルルンド、カルステニウスは古い様式の曲。Nosag
NOSAGCD191
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スティーヴ・ライヒ:
2台またはそれ以上のピアノのための音楽
(ジモン+シュヴァインベンツ)
長めの静かな序奏の後、反復音シンコペからアルペジオで突っ走るかと思いきや、ゆっくりになって内部奏法も加わる。「エイト・ラインズ」は木管+Pf1のアルペジオに弦+Pf2のシンコペーションリズムを基本に5部構成で移行時に転調もある。「ヴァーモント・カウンターポイント」はFl属5本でのアルペジオ+シンコペでテンポが緩む(音符の単位が変わる)ところも。音色が軽やか。「ニューヨーク・カウンターポイント」はCl+Bclの多重録音で強弱波打つ連音からシンコペのアルペジオに移る3部構成。「シティ・ライフ」は打楽器や声も加えた編成で速いリズムパターンとゆっくりした反復が交互の4曲。Naxos
8.559682
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ペンデレツキ:
スターバト・マーテル
(クラクフ・ポーランド放送合唱団+クラクフ・フィルハーモニー合唱団)
暗く重々しいバスのAに少しずつ音が重ねられ、SopのEでいろいろな方向から光が差し始め精妙な響きが広がるが最後は唐突なニ長調協和音で。シマノフスキの「スターバト・マーテル」は管弦楽付きで旋法的要素と半音階が混じった柔和な主題、土の香りの主題、古いポーランド聖歌など起伏の大きなの6楽章。ルトスワフスキの「葬送音楽」は弦楽で十二音からチェイン技法まで。ペンデレツキの「アダージェット」は歌劇「失楽園」の追加間奏曲として作られたもので、ロマンチックな苦悩というか。演奏は最上というわけではない。Polskie Radio
5907812245924
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ペンデレツキ:
フローレセンセス
(ポーランド国立放送響)
6群の打を含む大規模管弦楽でサイレンや鋸、掃除機など妙な音も鳴ったりするが煩くはない。訳すと蛍火。「放射」(エマナツィオーネン)は2群の弦楽合奏がトレモロとハーモニクスを多用し早くもトーン・クラスターのような響きで。「ポリモルフィア」は無から始まりクネクネしたグリッサンドが絡まってコル・レーニョの乱れ打ち、ユニゾンが滲んで行くが最後はハ長調和音という弦楽合奏。「デ・ナトゥラ・ソノリス」(本性の響き)は第1番が1966年、Saxなども含む大編成でTimpあたりがやや煩い。第2番は1971年で間をとった散発的な音が徐々に騒々しいカオスに向かい、また静まる。Polskie Radio
5907812247997
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朴泳姫:
絹糸
(E-MEX-アンサンブル)
BIDAN-SILはOb独奏+木管3+弦4+打で、シナウィの即興スタイルに触発されたという。「打令」Ta-Ryong VIはFl+Cl+Vn+Va+Vc+打、Ta-Ryong IIIは打2で、やはり韓国民謡に基づく。「銀の弦」はVn+Vc+Pfの変幻自在。「イオ」「傷跡の夢」はオペラ「月影」によるそうで、前者はCl+Tp+Trb+Va+Vc+Cb+Accrd+打2、後者はFl+Ob+Cl+Vn+Vc。どれもゆったりした時間の流れにやや乾いた独特の響き。朴泳姫はパクパーン・ヨンギーとも。Wergo
WER7397-2
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トマス・エーヤフェルト・オレセン:
風が吹く場所
(タウスク+デンマーク国立響)
フリージャズもどきのアンサンブルからスケール上下、擬音的遊び、多彩な打楽器と表層に徹して始まり、旋法的ユニゾンの旋律も見せながらずっと音色/効果を追求し、自棄っぱちのようなffを経て懐かしい感じの旋法逆行下降旋律、そして再び音色のサービス。子供向けミュージカルに良いかも。「チェロ協奏曲」は冒頭からDのスケールが多用され、その後も調性的なノスタルジーを振りまくかと思えば実は無調だったり時に派手な不協和音で楽しませるも、最後はまたDへ。Dacapo
8.226586
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スティーヴン・デンブスキ:
バイオリン・ソナタ
(フルカーソン+アブラモヴィツ)
率直に言って捉えどころのない旋律がだらだら続くばかりだが、念のため3回聴いて情緒と情熱が込められ(空回りし)ているらしきことは分かった。もっと聴くとさらに違ってくるかもしれない。Bridge Records
BCD4009
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ロス・ハリス:
遠く
(ダーラナ・クラリネット五重奏団)
ブラームスのCl5をクチャっと潰したような言及フレーズがときどき出て軸になるらしいが全体に曖昧な断片がゆっくり連なっていく散漫な印象。ただ終楽章は少し動きがある。アンソニー・リッチーの五重奏曲は割と単純なつくりが耳につく感じだが、第2楽章は少し面白みがあるかも知れない。同「夜明けのプラカウヌイ」は海辺の村の情景描写。Atoll
ACD316
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ハインツ・レーバー:
間
(萩原公子+キム・ドヒョン+栗林純子)
Pfが間欠的に鳴らす和音の間に、レチタティーボというか自由に動く旋律がゆったり歌われる。第1曲は「ウィーン楽派」と第してSop独唱の歌曲。第2曲は「アテネ楽派 - 能楽派」でアンティゴネに基づく演奏会形式オペラだということで、Barが加わりPfは一部プリペアド(あるいは適宜ミュートか)。あくまで静だが最後少し声の動きが忙しくなる。Sopはよく聞くと日本語(が混じる)らしい。ECM Records
00028948173570
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ジョン・ケージ:
チープ・イミテーション
(高橋アキ)
サティ「ソクラテス」 のリズム構造(譜割り)だけそのままに、易で選んだモード(旋法)と半音移行から音高を決めて旋律を作った(冒頭はソクラテスのCiと近い)。全てが単音かオクターブユニゾンで、これを30分以上続くのも禅修行みたいなものだが、何度か聴いていると味が出てくるのが不思議。フェルドマンがFl+Pf+Glockに編曲したバージョンも収められている。併録「スウィンギング」「果てしないタンゴ」はサティ「スポーツと気晴らし」の2曲を不確実性で色付け。そして高橋アキの「エリック・サティのための公案としての小石の全面(そして密かにジム・テリーに渡された)」なるジムノペディもどきのワルツが最後に。Mode Records
MOD-CD-327
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メシアン:
黒つぐみ
(ドゥゴシュ+パシュキエヴィチ)
Fl+Pfで、独自の旋法から発達した(のだと思う)セリーを用いて鳥の鳴き声を描く。グレツキの「クラリネット・ソナタ」はだんだん煩くなる1楽章、ジャズの影響ありの2楽章、瞑想的な3楽章。ダニエル・シュナイダー「アルト・サクソフォン・ソナタ」は速いジャズ、妖艶な歌、陽気なブラジル風という3楽章で。
DUX1728
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グラジナ・バツェヴィチ:
無伴奏バイオリン・ソナタ第2番
(キンガ・アウグスティン)
重音やアルペジオの古い枠組みに不協和な反調性音を埋め込む技巧的な。エリオット・カーターの「4つの賛美」は伝統的な無伴奏の技法を多用しながらも音が縦横に飛び回る。ベリオの「セクエンツィアVIII」は重音奏法が細かな動きとなりそこに切り込む鋭い和音が。ペンデレツキの「無伴奏Vnのためのカプリッチョ」は切れ味良く上下しつつ畳み掛ける。尹伊桑の「大王の主題」は音楽の捧げものの主題を用いた変奏曲。デブラ・ケイの「ターニング・イン・タイム」はアウグスティンの求めでバッハのシャコンヌとのつながりがある曲を書いたと。Centaur
CRC3836
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ブルーノ・リベルダ:
富士山百景 第1集/11
(クリスティーナ・アッシャー+リベルダ)
声+ライブエレクトロニクスで、囁きばかりかと思っていたら裏声を交えた妙な念仏もどきや擬音語などいろいろ繰り出され、電子音も溶岩のようなのから虫の声風までさまざまながら基本はおどろおどろしい。しかし最後は浄化されるかのように遠ざかりながら消えていく。富士山百景は異なる編成のものや第2巻、第3巻もあるらしいが音源不詳。Pan Classics
PC19101
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グバイドゥーリナ:
10の前奏曲
(ウラディーミル・トンハ)
もともと「10の練習曲」として奏者に献呈されたチェロの独奏曲。スタカートとレガート、スルポンとスルタストなど奏法を対比する形で書かれているが、求められるのは表現方法の探求で、全体としてくすんだ渋い味わい。「そして:祭りは高らかに」はVc協奏曲で、最初の方は独奏と一部の楽器が密やかに不安げに対話しているが、徐々に殺伐としてきて後半はTimpが威圧的。人々の営みが最後の審判に至る云々の詩によるらしい。col legno
WWE1CD31881
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細川俊夫:
ウィンター・バード
(漆原朝子)
Vn独奏が荒っぽく餌をついばみ、抑揚ある長音で滑空、強いpizzなどの表情も。「時の深みへ」はVc+Accdで寄せては返す音の波、長い音で呼び交う。「デュオ」はVn+Vcでこちらも大きく波打つがpizzや鋭いトレモロなどアクセント。尹伊桑「歌詞(ガサ)」はVn+Pfで細かな動きのあと長い余韻。「エスペース I」は訴えかけるVcにPfが細かく呼応し、民族風の響きも。「イマージュ」はFl+Ob+Vn+Vcで模糊とした長音が少しずつ動きだし精緻な織物を。ここにバッハの無伴奏を組合せるのは、不可とは言わないまでも、蛇足な気がする。ECM Records
00028948173655
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エディソン・デニソフ:
無伴奏クラリネット・ソナタ
(G.T.ヴァッリ)
微分音やポルタメントを用いてくねる1楽章と極端な跳躍が溢れる2楽章。ペンデレツキ「~前奏曲」は無から拡大しまた無へ。シェルシ「イクソル」は7度を核に抑揚大。T.オラフ「Clソナタ」はvibやら奇矯な跳躍アルペジオ。ベリオ「歌曲」は前打音や速い同音を交え翳りある表情。ホリガー「レシャント」は広い音域を行き来。ヴィトマン「幻想曲」は技巧をを駆使し雄弁に。奏者ヴァッリの「クロマニョン人の悲歌」微かな重音、微分音、声や語りも。「セベラサルレベス」は2時間で書いたと。さらにストラヴィンスキー「3つの小品」H.アイスラー「楽興の時」H.ズーターマイスター「カプリッチョ」。NMLトラックでたらめ。Da Vinci
DV-C00197
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ペンデレツキ:
弦楽四重奏曲第4番
(ティペット四重奏団)
悲痛なモノローグから始まり、怒りをぶつけるワルツ、憂いと隣り合わせの民族風の声へ。さらにSQ1~3番と弦楽三重奏曲、そして「壊れた思考」と揃った弦楽の全集。SQ3番と弦三以外はどれも10分未満と短いが、凝縮された濃密な音楽。Naxos
8.574288
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ラモン・ウメ:
光
(ラトヴィア放送合唱団+パウニニャ+ストラウトマーネほか)
モンセラートの修道士ビセンス・サンタマリアのテキストによるア・カペラ合唱で、すっかり癒やし系。Humetは以前ウメトと読んでいたような。Ondine
ODE1389-2
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