Planet masaka played list 2021-07


  1. * 2番を冒頭に置き、「12のノタシオン」「アンシーズ」の次に1番、「天体暦の1ページ」を挟んで3番で締めくくるというピアノ独奏曲全集。明瞭で鋼のように強靭な演奏で堪能できる。Bridge Records BCD9456
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  2. * 一種のFl協奏曲で少しラテン風の土臭い要素とエレガントな独奏の組み合わせがなかなか良い。明らかに弦の音が聞こえるのはなぜ?「皇后」は静かなゆっくりした線の絡み合いが発展していくが、やはり弦が一部入っている。「ピアノ協奏曲」は楽器群ごとの対話を基本に据え、独奏もその1つのように扱われたりする。終楽章はより協奏曲らしいやりとり。この曲は弦はなく、良くも悪くもウインドらしい響き。Bridge Records BCD9489
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  3. * 不協和音を重いリズムで連ねた冒頭モチーフを15のいろいろなテクスチャを持つ“迂回路”で変奏する。中間部はかなり重力が軽くなるが最後にまた戻ってくる。ニコライ・カプースチンの「変奏曲」はすっかりジャズ。ヒナステラの「ピアノ・ソナタ第1番」はエネルギッシュな明るさと音列を用いた神秘的なほの暗さが交錯する。カール・ヴァインの「5つのバガテル」は少しドビュッシーを思わせるふわふわと軽やかなリズムの遊び心が交互に出てくる。それから武満徹の「雨の樹 素描 II」。さらに何故か調性音楽のジャヤ・スプラナ「短い歌」、グラナドス「演奏会用アレグロ」。Centaur CRC3636
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  4. * 冷静に和音のリズムを刻むPfと饒舌なVcの1楽章、軽やかな異空間の2楽章、じっくり熟させてから歌う3楽章、半音蛇行6連符モチーフがあちこちに飛び広がるアレグロ終楽章。1948年作。セイモア・シフリンの「チェロ・ソナタ」は捻れた半音上下モチーフを核にした急緩急の3楽章。これも48年。バーバーの「チェロ・ソナタ」は32年作で、時々踏み出すことはあるものの基本的にロマン派の調性音楽。Centaur CRC2267
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  5. * 虚無的なVc独奏に始まりPfが少し慰めのような和音を奏でるがまた独奏に戻るラルゴ、不気味にのたうつVcにPfが楔を打っていく急速なタランテラ、苦しげに絞り出す哀歌の終楽章。「きよしこの夜」とか「ムジカ・ノスタルジア」とか普通に見せかけて途中からパロディに。「静寂の音楽」はVn+Vcがずっとゆっくりしたpのみで緊張感ある音を維持する。「ピアノ三重奏曲」は弦楽三重奏曲を改変したものということで、優しげに始まるがすぐに崩壊していく。後期ロマン派風の響きやコラール断片を見せながらも行きつくのは歪んだ不協和音で、後半楽章では悲歌が聞こえる。 CDAccordACD278
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  6. * 12のフーガを前奏曲、間奏曲、後奏曲で囲んだ25曲の“音の遊び”。対位法、調性およびピアノ技法の練習という副題があり、各曲はさまざまな舞曲や様式を試す形を取りつつヒンデミットの少し突き放したふりしながら親密な音楽となっている(はず)。ヒューゴ・ワイズガルの「ピアノ・ソナタ」は厳密には十二音ではなさそうだが音列を用いた無調曲で、愛想よくしたいのにちょっと突っ張ってる感じもある3楽章。Bridge Records BCD9487
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  7. * 中世教会で隠者となって信仰に生きた女性修道士を描くケイティ・フォードのテキストによるモノドラマ。PRISMはSax四重奏、Piffaroはルネサンス楽団を名乗る管楽アンサンブルで、古いスタイルを一部装いつつ擬音的効果をふんだんに導入する劇場的音楽といえばよいか。「3つの独住修女の歌」はFl/Picc+TSaxによる対話でこの“世捨て人”を描くというもの。XAS Records XAS110
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  8. * 水、木、石、金属、空気、皮の6曲でそれぞれに相応しい打楽器が選ばれてセッションする、といって水音は録音、石は砂の音、空気は口笛など。皮は太鼓で終わり方はあまり好きではない。「鳥類のテレメトリー」は鳥の鳴き声のテープ、それを模したようでもある打楽器や電子音、安っぽいVibの旋律、ときどきシャーロット・スミスなどの英国ロマン派詩の朗読が挟まれる。良く言って環境音楽。Ravello Records RR8040
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  9. * 「幼年時代の響き」と題されて私小説っぽいウェットさがひっかかるが、響きとしてはまずまず面白い。ただそれ以上はどうかというと。「スパーク」は速い字余りアルペジオを背景に別要素が対置されるのは面白いが中間部あと一工夫。「ピアノ・ソナタ」は第1、3楽章はそれなりだが第2楽章は味わいが分かるまでに時間が必要。「アルカナ」は無調のヒーリングという感じの8曲でちと冗漫な部分も。ほか「ゆっくり探して」など。 INNOVA041
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  10. * 新古典主義時代の賑やかな1938年バレエ音楽。J.シュトラウスのワルツやらセビリアの理髪師やらベト5やらをパロディ引用したり。「オルフェウス」は47年でよりしっとりした情感に満ちた繊細な作り。「アゴン」は53/57年の作曲で部分的に十二音技法が使われるなど響きも新しい。ほぼ10年ごとに変化を確認できる好選曲。演奏もクリア。Decca 00028944377224
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  11. * アメリカの懐かしい曲や賛美歌などを引用しながら分裂気味でもある新しい音楽が作られる。第4番はピアノと合唱も用いた5管編成で今までにない響き。大仰に始まるがむしろ全体は親密かつ新しい。そしてしずしずと進みながら突然の暴走など。第3番はTpなしの1管編成で穏やかな基調の中で時々未知の世界が混じってくる。第1番はロマン派的、第2番も調性ははっきりしているが広がりが。煩くならない演奏も良い。DG 00028948395057
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  12. * 良く言えば素朴なAs↘Es↗Eという音列をもとに勿体つけたベタなコラールがあったり何やってるか分からないほどのppで木管がつぶやいたりPfがぱらぱら音を鳴らしたり。「アンナ・マリアのために」は素敵な優しいPf小品。「アリーナのために」「断続する平行」「アリヌーシュカの癒しに基づく変奏曲」はどれも切り詰められて単純すぎるほどの清澄な世界。Accentus Music ACC-30512
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  13. * 16分音符の細かな動きと大きな跳躍が交錯しそれらは分解されたりしながらバロックの姿を借りた5つの舞曲を構成する。「Vnソナタ」は荒っぽい不協和音連打から新古典派風に組み立てられる急緩急。「2台のピアノのための協奏曲」は勢いがありながら少しとぼけた味わいのアレグロ、神秘的な主題に始まる変奏曲、バロック風な小気味よさを少し着崩したフーガの3楽章。 DUX1615
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  14. * ジャズ・ブルース(ワルツ)が少し崩れた不思議な楽しさ。「スクエア・ブルー」「レディウェル駅」「ルイシャム市場」など、いずれもくだけた悪戯っぽいジャズの感じ。ジョン・ルイスの「ニオビウム」和音の連打の上で少し羽目を外した旋律がリズミックに上下する。ほか「塩素」「プラセオジム」「臭素」などの化学元素を冠してその特徴というか印象を描く。Convivium Records CVI055
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  15. * 海岸で日が昇り風が吹き一日が始まる。少しリズム突っ込み気味のところもあるがバランスの取れた演奏。いろいろな思い出が。Chandos CHSA5250-51
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  16. * 博士論文のための作例として1963年に書かれたという、12音と無調だけれどちょっとこぶしが効いている感じの作品。「管弦楽のためのソナタ」は75年だけれど逆に調性的で饒舌。3楽章になるはずが未完で2楽章のみ。ロジャー・セッションズの「ピアノ協奏曲」は1956年で12音列を用いたソナタ形式の第1楽章、無調ながら抒情的な第2楽章、そして活発な終楽章。Albany TROY1823
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  17. * ハーモニクスとスルポンの鋭角な音が電子加工されて渦巻き近寄ったり離れたりする。ペーパークリップを挟んだり調弦をオクターブ下げたりするので奏者は安い楽器に持ち替えて臨んだという。「ジャム壺の中の死んだスズメバチ(iii)」と「埋葬―死んだスズメバチ(死亡記事)」もギシギシしたSQだがこれらはサイン波の電子音も加わる。「失敗したエンターテイメント」はハーモニクスと鋸音のSQに加え卓上ベル、鳥笛などを用いてアクセントを加えている。Wergo WER6433-2
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  18. * チェーザレ・パヴェーセの詩を用いた混声合唱と弦楽の連作。柔らかく抒情的な響きながら旋法的だったりどんどん転調して調性はゆらぎ音の姿は変化する。急ぐところや激するところはなく、常に穏やかで透明で美しい。Ondine ODE1363-2
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  19. * 5人の女声詩人のテキストをPf伴奏でSopが歌う。凡庸な調性的伴奏の一方で歌は違う空間にいたり、その逆だったり、ポップかと思うと民族の踊り風でもあるリズムと無調の旋律が組み合わされたり。「さまよう魂の歌」はCl/Fg+Vn+Vc+Cb/EB+Pf+打をバックに女声Voが歌う。1曲目はポップなビートを基調にいろんな変化、2曲目は尖った倍音のゆっくりしたポルタメントが絡み合って混沌とし、3曲目はミニマリズム的。「軌道」はエレナ・チリッチのテキストをTen+Pfで歌う3曲。基本はバラード風の朗々とした歌だけれどPfが急にはじけたりする。Leaf Music LM237
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  20. * 囁き、擬態音などさまざまな声に紙やすりなどを加えたノイズ音のジャムセッションに風奏や鋸音などの楽音が少しずつ加わってくる。クリスティーナ・ウルフの「アリストクセノスの些細な反響」はいくつかの単純音が少しずつ無秩序に重ねて古代ギリシャのアウロスを模す第1部と鐘やPfで柱廊エコーストアの音響を模す第2部。音楽考古学研究の一環だそうだ。ピエール・アレクサンドル・トレンブレの「(解き)織り」は木管や弦の倍音がノイズに重ねられPfや打が徐に割り込み歪んで混沌とした空間覆う。ブリン・ハリソンの「デッド・タイム」はノイズ的単調音によるミニマリズム。Huddersfield HCR24CD
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  21. * ドリア旋法による中世ローマ旋律を用いたパッサカリア、その応用のようなタランテラ、狩りの歌やコラールなど古風な様式を用いながら新古典風に面白い響きが組み込まれる。Obのポルタメントがお茶目。「裸の王様」はアンデルセン生誕200年を記念して書かれたというミュージカル風の小さな歌劇。「夕暮れの歌」はSop+Fgの二重協奏曲的なたいへん分りやすい連作歌曲でFgが詩人、Sopがその恋の対象だという。Dacapo 6.220701
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  22. * フランス旅行の印象を綴った5つの性格小品。まずまずの響きもあれば何でこんな陳腐なというのも。「3つの即興曲」は平凡な感じながらいろいろ転調。「宇宙犬」は十二宮をそれぞれ犬になぞらえて表現。これも割と面白いのから凡庸な調性曲まで混在していて、不思議な感じ。Convivium Records CVI057
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  23. * ドビュッシーを思わせる繊細で壊れそうな4曲。1917年作曲で音楽雑誌の付録として出版されたという。「閃光」も同じ年でよく似たスタイル。「過ぎ行く仮面道化師」は18年で少し諧謔味のある5曲。「アーゾロの詩」は16年で暗いトーンの3曲。「オマージュ」は20年で調性の拡張を志向。さらに「ドビュッシーへのオマージュ」の第3曲も。Universal Classics 00743625092929
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  24. * 和泉式部、イェイツ、サン=テグジュペリの月にまつわるテキストを用いてSop+Vnが子供時代の別世界を表現する。技法のバランスが気持ち良い。リンダ・ダスマンの「ゴシップ三部作」は、同僚セリーナ・ヒルシンガーの三人娘の詩を表情豊かな曲にしたもの。サーリアホの「変化する光」はハーロウの二項対立的テキストを用いて壊れやすい存在を描く。バルトークの「44のVn二重奏曲集」から選んだ5曲はスロバキア民謡の歌詞を用いてボッティがSop+Vnに編曲(Sopは激しい)。さらに伝承曲など。絶妙のコンビネーションで楽しい。New Focus Recordings FCR305
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  25. * シルヴィア・プラスの詩の美と悪夢が入り混じる読後感を出発点にくるくる動くモチーフを核としてエアリアルの馬が駆け巡る。ミッシー・マッツォーリの「マブの女王のための四重奏曲」は、シェイクスピアにも出てくる妖精を、短い上昇三連符を基本モチーフにグリッサンドを多用して描く。コープランド「SQのための2つの小品」は懐かしさを感じる遅い楽章とシンコペーションに彩られた速いロンド。バーバーの「弦楽四重奏曲」は例のアダージョを同じ主題の速い楽章が囲む。 Azica71337
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  26. * 第1番は1999年作で微分音らしい弦の重音に導かれPfが暴れる。弦のカデンツァは音程悪い疑惑もあるがやはり微分音か。第2番は2015年で音はますます荒唐無稽、野蛮な味わいを増すが中身は薄くなる感じ。「VcとPfの二重奏曲」は一方が細かく動くと他方が攻撃的アクセントで応じてみたり、かと思うとしばらく独奏だったり。やはりVc音程悪い疑惑。「2つの歌」はSop独唱にAFl+BCl+Hr+Vn+Vc+Pf+2打で、ゆっくり静かに各楽器が絡み合ってなかなか良い感じを生むがTimpが入った強奏になるとどうも。歌や軽い打楽器は悪くない。フォルテがいまいちなのは演奏によるのかも。Centrediscs CMCCD28120
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  27. * 木管+弦+Pf+Vibかな。漂うパッセージが対位法的に連なる“時間の感覚に抗うような音楽”。併録の「無限の形式の迷路第6番」「同第7番」はほぼ同様、「夜に歌う詩第4番」「夜に歌う詩第5番」はTimpなども加わりやや煩い場面もでてくるが、どれも基本はゆっくりで、曲が進むとやや速度を増し絡み合いの密度が濃くなっていく。いずれも2017/18年の作という。ブクはBuchで、ブックとも。Centaur CRC3831
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  28. * 色彩豊かに、ジャズも感じさせる響きで複雑ながら靭やかで緻密に組み立てられた切れ目のない3楽章。第1楽章最後付近の低音が半音階(グリッサンド)で下降していくところなど、へぇと思う。併録はラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」とバルトークの「ピアノ協奏曲第3番」で納得の組み合わせ。 BIS-2310
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  29. * 歌はフランツ・グルントヘーバー、ヴァルトラウト・マイヤー、マーク・ベイカー、グレアム・クラークなど。昨日から何回目かな。Warner Classics 190295266288
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  30. * ゆっくり下降する疎な和音が基本モチーフになり寡黙なまま進んで最後近く少し頭を持ち上げるがまた目を閉じる。ゾロアスターの祈りだという。「シャバハング」は夜想曲、「ペンダール」は“思考”で、いずれも少し表現の幅が大きいがゆっくりなまま。「パサルガダエの祝典」は動きがある。ホルモズ・ファルハトの「ピアノ・ソナタ」は第1番が1955/57で無調の力作ながら終楽章がちょっと。第2番が2010年でやや民族風の香り。Metier MSV28610
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  31. * 例えば「第1巻(1985)では、服装的なリズムの反復を構造の基盤に据え」(沼野p216)というように高度な技術課題を取り上げながら表現内容も豊か。初期の1942年「四手ピアノのための5つの作品」から51/53年「ムジカ・リチェルカータ」、また沼野が「ミニマル音楽を参照しながら迷宮的なリズムを採用」と書く76年「記念碑・自画像・運動」まで、チェンバロ曲も含むピアノ作品全集。演奏は着実というかやや地味。TACET Musikproduktion TACET129DIG
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  32. * Va+弦楽のPf編曲版で重音、Pizz、スルポンなどを駆使し、宇宙空間を描くという。カルロス・ボット・ヴァラリノの「幻想曲」はVaとPfのゆったりした無調風対話。フェデリコ・ハインラインの「優しくしないで」はグリッサンドが効果的。フアン・アントニオ・オレゴ=サラスの「モビリ」は無調でかっちり作られた4楽章。ラファエル・ディアスの「誰かその手でこの落下を支えてくれないか?」はペウエンチェ人の祈り歌をもとに電気増幅Vaが山岳地帯の寂しい声のように響く。「私の距離の深さの中にあなたの家が現れる」は一転してPf伴奏のセンチな調性曲。New Focus Recordings FCR268
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  33. * F/Eに始まる2音往復をなど執拗なオスティナート軸にときどき突拍子もなく動いてみたり土俗の足踏みになったり。「エラスムスの子羊」は古風なあるいは単調な音楽が突然破壊的になったりするアナーキーな4楽章。「フーガ」はPf独奏で低音カオス、フーガかも知れない多声、気まぐれな遊びと瞑想が、間に長い休みを置いて連なる。「ヴェラチーニ焼き直し」は18世紀音楽を何か加工するのかと思いきやそのまま?「ヴィットリオのための夜想曲」はVn独奏だがPfがペダルを踏んで弦が共鳴する。Tactus TC950301
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  34. * 大阪万博の鉄鋼館で楽器兼彫刻《バシェ音響彫刻》を用いて演奏するために作られたが、ここでは打楽器+テープによる。唸る低音から長く続いて減衰する硬質音、鐘や銅鑼などが森の中のように響く。後半は全体に音域が低くトタンみたいなノイズや鞭打つような音なども。レベッカ・デールの「眠れない」は鍵盤形打楽器を用いたミニマル系。ニコール・リジーの「汚れた15」は挑発的なナレーションにVibなどの打を交えたコラージュ。Signum Classics SIGCD830B
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  35. * 3台のシンセサイザーとテープのための音楽で、1980年に作曲された当時の楽譜や設定資料をもとに当時の楽器(ヤマハCS-40M、Synthi AKS、ローランドのシステム100)を調整、パッチングしてクラヴィア・ノードG2の仮想アナログシンセ環境で再現したという。もわもわ振幅する背景音の上でチリチリカタカタやや時代を感じさせるいろんな音が。Mode Records MOD-CD-328
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  36. * 同僚ラウタヴァーラの追憶に、Vaのハーモニクスから高音域の実音、そして中低音に降りてきてまた上昇していく。「IV」はVc独奏であまり技巧に走らず無調だけれども懐かしさすら感じさせる歌をじっくり紡いでいく。「IX」はOb、「XIV」はCl、「V」はFg、「X」はHr「III」はFl独奏でいずれも高度な技巧を用いている。特に「III」の幽玄な世界の微分音音階は印象的。 BIS-2446
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  37. * スパイダーマンの主人公の名を冠して、飛び走り跳ねる姿をクラスターを多用する技巧的なフレーズで表現する。アイヴズの「ピアノ・ソナタ第1番」は讃美歌やラグタイムの要素をポリリズム、多調で料理する。「3ページのソナタ」はDes-C-Es-DつまりBACHを移調したモチーフに始まりビッグ・ベンの鐘がチェレスタで奏される中間楽章、十二音列が使われる激しい終楽章が続けて演奏される。 BIS-2409
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  38. * Vib+タイ式銅鑼+電子音(テープ)でアンビエントな空間を作り出す。動画を見るとVibを弓で擦ったりもしている。フェルドマンの「デンマーク王」はVib+銅鑼+Timpにベル、トライアングルなどを加え、上中下のグリッドを用いた図形楽譜に従って指や手で演奏する。クセナキスの「プサッファ」も高低だけを示す格子が楽譜で6群の打楽器を用いるが、太鼓群が中心になり普通に分かりやすく聞こえる。Signum Classics SIGCD830A
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  39. * ぐしゃっとした低音域の密集和音が解きほぐされるようにしながらこもったエネルギーが広がり、各楽器の独奏カデンツァを挟んで子供時代の思い出という穏やかながらねじれた後半に移る。「ピアノ三重奏曲」は十二音のパッサカリアを含む5セクションが連続して演奏される単一楽章。なんかいびつな感じがするのは演奏のせいもあるのか。 Phasma028
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  40. * エルリ・デ・ルカの作品から着想を得たそうで、いろいろな音が湧き上がるように交錯する。スペクトル楽派っぽい。「黒の上の明るい赤」は15部の弦と電子楽器によるマーク・ロスコの絵Light Red Over Blackへのオマージュ。「ギミー・シェルシ」はストーンズの曲名をもじってシェルシの実験音楽要素から構成。「テンペスターテ」はライブエレクトロニクスを駆使、「海の情景IX ミュンスター」は杉本博司の写真から白黒の階調の情景を表現。Stradivarius STR37186
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  41. * ローズ・ピアノ+2群弦楽器で、VibとPfの中間のような電子鍵盤の音にハーモニクスの多い刹那的な弦が妙にマッチする。スワヴォミール・クプチャクの「ペウニア」はRhodesのくねくねした音効果を生かしながら面白い効果を絡めるが途中ポップ過ぎ感も。マルチン・スタンチクの「ア・ドゥエ」は弦楽器の扱いは良いがRhodesが今ひとつか。ジグムント・クラウゼの「ロンド」はちょっと安っぽい場末の音楽風。Universal Classics 00028948191147
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  42. * 少しエキゾチックで躍動する世界から十二音音列を用いた神秘的な香りまでの4楽章。終楽章の執拗な低音リズムが生む力を感じるにはもう少し演奏が。バルトークの「ピアノ・ソナタBB88」は急緩急の3楽章で素朴な材料をもとに芯がありつつ枠からはみ出していく音楽を作る。ジョン・オグドンの「ピアノ・ソナタ」は“友人ステファン・ビショップに捧ぐ”と第され、AHCDの16分音符反復主題からややとりとめなく広がっていく。Brilliant BC96272
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  43. * 不条理を告発する荒々しい冒頭部はサイレンなども入り混じって途方に暮れたようなカオスとなるが、最後に静寂の中で鈴がなるような瞑想の音楽へ。「ユンカー・ツイスト」も打とPfの難詰から叫び声に至る厳しい音が呪術の踊りのごとく全力で奏されるが、疲れ果てて肩で息をするような風奏から呆けた踊りに。「ターボ・アリア」は1世紀前のアリアの録音をサンプリングして鍵盤で奏するという奇妙な音にオケのグリッサンドや不協和音が絡み合う。Ondine ODE1326-2
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  44. * マグナ・カルタ800年を記念し同第39条と第40条のテキストを用いて作曲されたということで、正統派のア・カペラ合唱にモダンな和声のセクションやときどき存在を主張する軽めの管弦楽を組み合わせた。デイヴィッド・フェネシーの「三部作」は、夫あての異常な「ミヒャエルへの手紙」、記憶を失った叫びが最後凡庸なコラールになるのかと思わせて裏切る「覚えていない」、軍艦島の落書きと更級日記を組み合わせ波のようにざわめく「端島のリフレイン」の3曲からなるア・カペラ合唱曲。Naxos 8.574287
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  45. * 鋭角的な楽器音の断片がぽつりぽつりと鳴り、間に打やプリペアド・ピアノなどの音が薄く敷き詰められ、たまに管楽器群が短くクレッシェンドして合いの手を入れる。高音のハーモニクスが遠く響きラジオ番組の録音が唐突に短く挿入される。「音の影」は48弦奏者+3Pfでやはりぽつりぽつりコル・レーニョだったり崩れるような音塊だったり。「ファサード」は少し音の鳴る時間が長めだが隙間がたっぷりあるのは同じ。チリチリ鳴っているのはテープのヒスノイズらしい。Kairos 782124122324
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  46. * 1947/49の作で抒情的で自由に広がっていく第1楽章としっとりした(しかし十二音音列を使っているという)主題と変奏の第2楽章。ミステリアスな雰囲気から異国趣味風のマーチまで。「ピアノ四重奏曲」は18/19年の作(74/75改訂)で、少し旋法を使ったりしつつも基本は調性的だが瑞々しく気持ち良い。ラヴェルの香りも。「トッカータ」は“実験時代”の22/23年で他とはかなり違う攻め方。「2つの小品」は映画音楽「ヘンリー五世」から。Naxos 8.573892
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  47. * 静かなときも絶えず動いて雄弁に語りかける。少し諧謔味を持った1982年の5楽章。フョードル・ドルジーニンの「無伴奏Vaソナタ」1959年の作で暗い色調のほぼ無調曲。作曲者自身もVa奏者ということで技巧豊かに凝縮された4楽章。アンリ・ヴュータンの「パガニーニへのオマージュ」は19世紀の小品、グラジナ・バツェヴィチの「ポーランド風カプリッチョ」は1949年の作だが普通に調性音楽。Naxos 8.551432
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  48. * Pf4手版だが冒頭が初めて聞くような新鮮な響きでちょっと耳をそばだてた。この曲は懐かしい思いを引き寄せる(ただし最後の拍手で興ざめする)。併録の「ピアノ協奏曲ト長調」、「ラ・ヴァルス」(2台Pf版)も懐かしさがあってよい曲だが、そういう演奏というわけではない。「夜のガスパール」はあまり懐かしさがなく。Warner Classics 190296667282
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  49. * 2018/20年の新しい曲でVaとPfが丁々発止のやり取りで活きの良い音楽を生み出す。アーサー・ベンジャミンの「Vaソナタ」は第二次大戦のさなかに書かれ暗い哀歌が基調のロマンチックな曲。ヒンデミットの「Vaソナタ」作品11の4はも第一次大戦直後でこちらは明るいロマン。ほかイザイ「サン=サーンスの「ワルツ形式の練習曲」によるカプリース」、エネスク「VaとPfのための演奏会用小品」、ヴュータン「エレジー」とどれもロマン。Rubicon Classics DRC1050
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  50. * Ob+Cl+BCl+Fg+Saxというリード楽器群が米独立記念日の花火の18秒クリップから取ったというリズムで打楽器的に音を発する。第2楽章は電子レンジでポップコーンを作る音からという。「メカニズムス」は細かい音符が絶えず動くフルートの合奏協奏曲。「震え」はFl独奏で微分音やフラッター的な音を組み込みながら舞う。「独白」はCl独奏で少し重音奏法もあるが比較的ノーマルで自在に動く。「マルチヴァース」はMarb合奏、「炉を叩いて」は掛け声入り打合奏。など。 INNOVA010
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  51. * Esを12回刻んでからFと行き来する単純なテーマがいろんな楽器で延々と繰り返され、それにさまざまな別の即興的モチーフが重なっていく。テーマは他の音にうもれてかすかに聞こえるだけになったりするが、最後まで消えることはない(いや、最後の2分ほどはテーマも消えて高音のノイズのような残響だけになる)。一種のミニマリズム。良くも悪くも。最近、再評価されているのだそうだ。New Amsterdam NWAM154
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  52. * Va独奏者が9つのモジュールを自由に組み合わせて5つの章を組み立てる。鋸音やグリッサンドから叫び声やハミングがあったり。ヒメナ・マルドナドの「木があったところは今は水だ」はテーブル上に置かれていた木を取り除くとその跡に水が残るというアンソニー・マッコールの連作写真のイメージを表現した儚い感じ。サラ・ライアン・ルイスの「風化」は瞑想的な基調が多様な技巧で変化する。カレイン・メツェラールの「リフト」はゆっくりした歌にときどきリズムが。パトリック・エリスの「組み合わせ、フレーズ」はシンプルな音の並べ替えによる。エミリー・アブディの「反芻」は語りを伴っていろんな音表現。Birmingham Record BRC012
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  53. * メシアンの四重奏と同じ編成で、少しジャズ混じりで急緩急の1楽章、バラード風で中間部はスケルツォのようになる2楽章、ボーカルも入る3楽章という構成。「巡礼」はややくだけたCl協奏曲というところ。「ミレニアル・ミサ」は神妙に始まりながらキリエ以降はポップスの要素を大幅に取り入れ、途中にブライアン・ベンナーのカントリー風「現代人」を挟む。col legno BCE1CD16011
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  54. * 柔らかい抒情にときどき朗らかなきらめきが混じる。概ね調性的だけれどもふわりとしたものでスクリャービン的な響きもある。その続きのようにハ長調で始まる「ピアノ・ソナタ第5番」(23年版)は2楽章では表現主義的なワルツ、終楽章は外れ音を含みながら靭やかに流れ、「ピアノ・ソナタ第7番」に続いていく。なかなか素敵な組み合わせ。演奏は硬質で輝きがあるがNMLがレベル調整に失敗したか音が割れてしまって残念。Artalinna ATL-A028
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  55. * 1932年の作、十二音技法の変奏曲で始まるが以降(特に2、3楽章)は舞台音楽という感じのリラックスした音楽。38年の「5つの管弦楽曲」と「3つの小品」、40年の「室内交響曲」は映画音楽を元にしたもので、技法に実験的なところもあるが全体に分かりやすい描写音楽。48年の「ある喜劇のための序曲」は気楽な調性音楽。CPO 999071-2
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  56. * 第1番は1923年の作品1で、活発な感じを保ちつつ無調(十二音かな)のなかなか面白い曲。第2番は24年で無調の単一楽章。第3番は43年で滑らかさとパワフルさが加わる。「4つのピアノ小品」は23年、「8つのピアノ小品」は25年でいずれも無調ながら後者は少しエレガント。「7つのピアノ小品」は32年、ソナチネ「グラドゥス・アド・パルナッスム」は34年で音構成がシンプルになる。「変奏曲」は40年、テーマと11の短い変奏+コーダ+長めの終曲でまずまず変化ある。ほか「子供のためのピアノ小品」「アレグロ・モデラートとワルツ」など。Berlin Classics 0092352BC
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  57. * 十二音技法的な主題による変奏曲と同じ音列を用いつつやや熱量が高いフィナーレの2楽章。1938年で「一時期はシェーンベルクにもっとも才能を認められた弟子であり、師譲りの無調作品を書いていた」(沼野p68)という時期よりは遅いがそう言われるのは分かる。「BACHによる前奏曲とフーガ」は題名通りの主題を用いた短い曲。テオドール・アドルノの「弦楽四重奏曲1921」という珍品はやはり十二音技法に基づき出だしなど部分的には面白いのだが進むと飽きる感じ。前年の「SQのための6つの練習曲」は習作というレベル。「2つの小品」は同じ頃ベルクの弟子として教えに従って書いた25年の作品で、案外面白い。CPO 999341-2
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  58. * 1924年、25年と続いた作品で、いずれも民族舞踊っぽいところがバルトーク風だが、1番の終楽章や2番の2楽章は少しウェーベルン風か。「弦楽六重奏曲」は24年で傾向は似ているがより無調志向が強い印象。「5つの小品」は23年で色々なスタイルの舞曲。Universal Classics 00099923123323
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  59. * 1927年の無伴奏ソナタで、ジプシー風とでもいうか激しく踊り狂うような第1楽章、呪術的な第2楽章、調性がありそうで崩れていく第3楽章、どこかの民族舞踊かとも思わせる終楽章。併録のVn+Pfソナタは第1番作品7となっている(ブックレットまで)が実際は27年の第2番で、無調というより民族的、冒頭の主題が終楽章に戻ってくる。「Vn+Vcの二重奏曲」は25年でやはりよく似たスタイル。「Vcソナタ」は14年の作品で、かなりロマンチックな要素が。 BIS-CD-679
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  60. * 「半ば無調的な語法とジャズのエッセンスが見事に溶け合っており、スウィング以降のジャズを予見するようでさえある」(沼野p65)ということで終曲あたりかなり。1926年。「ジャズ風舞踊組曲」はその5年後だがシンプルにエンタメ志向。「ホット・ミュージック」は中間の28年で“シンコペーションによる練習曲”という副題のとおり。19年「5つの音画」と22年「パルティータ」は基本は気楽なエンタメだが一部風変わりで、前者の第3曲に「休符と記号のみが楽譜に」(つまり無音)という「極端に実験的な趣向」(沼野p64)も。 Wergo WER6281-2
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  61. * 木管五重奏の各楽器が順にソロを奏で他群が覆いかぶさるようにリズミックで鋭い合いの手を入れていく。ハンナ・ラッシュの「レアンドロスとヘーロー」はギリシャ神話を題材に黙示録的なテーマを描き、PiccとE♭Clが二羽の渡り鳥となり他群が合唱の役割を受け持つ。エサ=ペッカ・サロネンの「メモリア」は初期作品の「ミーモ」が元になっているとのことで、各楽器がゆったりと舞いながら対話するよう。New Focus Recordings FCR294
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  62. * シェーンベルク、バルトーク、アイヴズ、ウェーバー、ラヴェル、ガーシュウィン、ストラヴィンスキーをそれぞれ下敷きに手を加えた7つのピアノ曲。「葬送の大二重奏」はVn+Vcが奏でる哀歌。「キプロスのスケッチ」はCl+Vc+Pfが対話する無調の4楽章。「マリオリーナの場合」はCl独奏で自由に。最後の管弦楽曲「美しきベネツィア」は何故かこれだけ普通のおめでたい調性音楽。SKANI LMIC115
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  63. * Fl+Cl+プリペアドPf+SQとなっているが木管はBFl、BClのように聞こえる。全て特殊奏法で第1楽章は楽器を叩くリズムに乗り、第2楽章はその余韻のような静止した音楽でSQは(も?)電子変調される。「後方誘導」はプリペアド・ピアノを弾くと脇の打楽器も鳴る仕掛け。「中国の囁き」と「歩け、歩け」はFl+Cl+Vn+Vc+プリペアドPf、「集合点」はAFl+電子音で、どれも特殊奏法に満ちて実験的というか遊び満載というか。New Focus Recordings FCR303
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  64. * 錬金術やユングの「赤の書」に触発され最初は舞踏音楽として書いたという、Fl/AFl/BFl/Picc+テープのための作品。4種のフルートによる即興をそれぞれ電子処理し(+シンセサイザー?)、実音による即興と重ねているらしい。“自然と哲学の子との対話”だとか“不滅の木からの果実”といった標題がついた22の部分から成っている。まぁこういうのもありだろう。Da Vinci Classics DV-C00321
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  65. * 親しみやすい旋律がきっちり不協和音で彩られて思い出が滲んでいるよう。「二重奏曲」の第6番はFl+Vc、第8番はVn+Pfで、やはり懐かしさを感じさせる主題が微妙に歪められて面白味がある。「祖父の時計」はPf独奏で少し狂った時計のユーモラスな描写。Albany TROY1864
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  66. * Fl+Accordにコクレ(kokle)というカンテレのようなラトビアの撥弦楽器が2台。民族の呪術的踊りを思わせる妙な世界。「アルトゥール・グリーヌプス追悼の典礼」は2Vn+Va+2Vcで、祈りの儀式に時折ひきつったような叫びが入ったりやはり踊りがあったり。「トリオ・ソナタ」はFl+Vn+Pfでミステリアスな響きから急に激しくうごめいたりする。「森の詩」はしっとりした夜明け前から日が昇って人間が喜びを表現するという感じの管弦楽曲。SKANI LMIC116
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  67. * 作曲家でもあるハブリジの素描に基づく語り付きの12曲でいろいろ引用を散りばめながら静謐からじゃじゃ馬まで。マーヴィン・バーチの「5つの格言」は短い緩急交互の小品5曲。コリン・デチオの「オルゴール組曲」はシンプルで少しメランコリックな小品4曲。グレアム・フィトキンの「家具」は少しジャズ風に8分音符の和音が連打されていく。フィリップ・マーティンの「プリズム」は性格的小品というところか。同「砂丘」はより曖昧模糊と表現が広がる。Priory Records PRCD1018
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  68. * 6人の打が聴衆を囲み高低さまざまな太鼓から中間部では鐘や木などの硬質音、さらに玩具系が混じって太鼓連打が戻ってきて混じり合う。フランソワ=ベルナール・マシュの「風」も6打でMarb、Vib、ベル、音階銅鑼、Timpなどの音を重ねて響きを変化させていく。鍵盤系の同音連打は煩くなりがちで、最後のTimpもやや興ざめ。アルシデス・ランサの「センサー VI」はアポロ11号の宇宙飛行士のセンサーから送られてくる信号を表現したと。同「ムナイス・ムネーメー」は中国の大型トンボの特徴によるという。ジフア・タンの「ソリテス」はブラシを使ったノイズ的音をポツポツ鳴る太鼓などと組み合わせる。Mode Records MOD-DS-325
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  69. * 「才気煥発を絵に描いたような」という交響曲第1番の2年後の1923年この作品8「もまたしかり」(沼野p67)と。少し気怠い各要素がなめらかに紡がれていく。ヒンデミットの「弦楽四重奏曲第3番」は厳しい両端楽章、激しい2、4楽章に弱音器付きの3楽章が挟まれる(NMLの4番は誤り。例によって)。1923年。エルヴィン・シュルホフの「弦楽四重奏曲第1番」は民族的要素が前面に出てバルトーク風の部分もある4つの楽章。1924年。Nimbus NI5410
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  70. * 「クルト・ヴァイルの才能は…スリルにあふれた楽想が自在に炸裂する、才気煥発を絵に描いたような音楽」(沼野p67)だそうで、冒頭など斬新だなと思うところも多いが、中間以降わりと通俗っぽい感じがなきにしもあらず。副題「ベルリン」で1921年作。「交響曲第2番」は冒頭のA-H-C三音上昇動機が一つの核になる第1楽章、付点リズムを内包するゆったりしたマーチの第2楽章、16分音符の細かな動きに三音上昇が時折見えるロンドの第3楽章。「大衆的な様式へと舵を切」った後の34年作ということもあり聞きやすいが逆に俗な感じはしない。主観だけど。併録「クォドリベット」は耳に楽しい。Chandos CHSA5046
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  71. * 『趙氏孤児』と『連環記』を元にした元曲のスタイルによる2幕の室内オペラ。器楽と声楽がシンクロすることが多い。併録「シドのミサ」は中世スペインの叙事詩「わがシッドの歌」とミサ典礼文から取ったテキストによるア・カペラ合唱とナレーションの音楽劇。「ハラルド王の伝説」はアイスランドのヘイムスクリングラを用いたSopのみによる3幕のオペラ。Musical Concepts MC9241
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  72. * 3枚の絵をモチーフに攻めの和声、引っ掻くようなハーモニクスGlissは印象的。マノス・パナイオタキスの「永遠に」はC音の倍音に基づくスペクトル楽派的か。高音コル・レーニョなど効果音が特徴的。ジョルゴス・パパミトルーのSQ2番「ウロボロス」はサルタンドなどの断片を伴う短いモチーフが連なりつつ部分的モノローグが聞こえたり。リチャード・プレスリーのSQ1番は捩れる不協和音から熱く噛み合わない旋律、連続同音/Pizzなど目まぐるしく入れ替わる。ブライアン・フィールドのSQ1番は少し民俗っぽい香りもあり面白いのに第2楽章が。ネイル・スティップのSQ2番はドリア旋法も含め調性的。 Phasma026
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  73. * 副題は地球に衝突するかもと言われた小惑星アポフィス。その惑星を描いているんだか人々の不安がテーマなのかよく分からないがシンコペーション多い。黄思瑜(ホアン・スーユー)のSQ1番は「鮮烈なるフォルモサ」は火山の様子だそうだ。パヴラキ=ピルーニアの「進化」は第3楽章のみ少し聴く価値あり。アラン・テッリッチャーノの「青い動き」はブルースの構造をSQにしようとしたそうでそれはまぁよし。ヴシナ=パパジャンニディ、コナー・ギブスの曲は何を今更という感じ。 Phasma025
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  74. * ゆっくり和声が変化する導入に続きトゥッティ中心の速い部分さらにVaとVcの独奏もあるが何か生まれるかと期待した割にはつまらない。カラスタティスの「弦楽四重奏曲」は瞑想的な1楽章と分かりやすい主題展開の2楽章、独奏とハーモニクスから動的になるがやや物足りないままの3楽章。ブリックマンのSQ1番「チェルノワイツァー」も分かりやすいがありきたり。アトハナサキス「弦楽四重奏曲第1番」が驚くほど素朴で陳腐だったので全体に疑問符がついて辛口になったのは否めない。アルター「ストリング・セオリー」も安易な感じ、ギブス「夜の航海」は甘々。 Phasma024
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  75. * 地味な感じの十二音主題が変奏されて行ってかなり高度な技巧を要する。1937年。ピアノの「基礎的な音列に基づく4つの練習曲」(35/36年)の終曲パッサカリアと同じ作りで、作曲年からするとその編曲になるのか。「モリエールの『病は気から』のための付随音楽」は34年でFl+Cl+Vn+Va+Vc+Cbの分かりやすい劇音楽。36年の「ヘクサコード組曲」はOb+Clで中東(パレスチナ)の要素、「小さなカノン」はVa+Vcの小曲。「協奏曲」は33/37に作曲されたがVnパートと総譜が失われ、残った8パートで再構成したというもの。ウェーベルンの下で学んでいた頃の作風。Mode Records MOD-CD-156
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  76. * 1969年作、2楽章のみの短めの曲。無調でちょっとミステリアスな感じがする。十二音かどうかはよく分からない。「オーボエ四重奏曲」はBo+Vc+Pf+打で1955年、いろんな響きがとりとめなく散乱しているが演劇風と言えるのかも知れない。「カンタータ」は1963年で、室内アンサンブル+MSのほか女声3+男声2でヘルダーリンやロバート・クリーリーを用いこれも芝居風か。CPO 999090-2
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  77. * 「ピアノと音楽的道化師のための」という副題を持ち、十二音技法の跳ね回る音楽にあのクルト・シュヴィッタースの詩を乗せる。1929年。作品7「4つの歌」も同年で通じるスタイル。「3つの歌」はカストナーの詩による同年のものとブレヒトによる43年のものがある。後者はよりシンプルで演劇的で31年の「8つの歌」もこれに近い。一方43/47年のピアノ曲「戦いの曲」では“従来の線的音楽概念を打ち壊して音楽の垂直的空間的次元に取り組んだ”ということで新しい広がりと切れ味を持つ7楽章。 NEOS10719
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  78. * 「音響詩(音素をさまざまな抑揚をつけて発する、音楽と詩の中間的な形態)を発表し、前衛的な声楽作品の先駆となった」(沼野p65)とある通り、DRESDENから"De des nn nn rrrrr"を導くような意味を解体された言葉を男女3人が交互にあるいは一緒に発音する。そのやり取りの形によってロンドやスケルツォとなりソナタが成立する。併録の他の曲も同じ単語をいろんな切り口で発音したり数字を順番に読み上げたり。面白いし音楽の原点も見渡す。Wergo WER6316-2
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