リザ・リム:
コンパス
(カリン・レヴァイン+ウィリアム・バートン+ポッペン+バイエルン放送響) エスニックな感じの歌声から始まりいろいろな楽器がジャングルのように絡み合う。Flが独奏楽器として尺八のように出てきたり、ディジュリドゥというアボリジニの金管楽器も使われる。「真珠、黄土色、髪留め」は粗野なCbソロが唸り管打の叫びが弦の高音で覆われ何か原色の世界。「ゲスト」はリコーダーが独奏楽器となり野性的なオケと入り混じる。ちょっとめずらしい響き。Hat Hut Records
889176888175
()
ペーター・アプリンガー:
グリザイユ 1-100
(ヒルデガルト・クレープ) 執拗に繰り返されるH音の合間を縫っていくつかのパターンの断片が挿入されるというか重ねられる。反復音が強圧的過ぎてほかが頭に残らないのだが、最高音鍵盤を細かくタイプライターのように叩いたり、軽やかに飛び交う花火のようなパッセージ、低音でモゴモゴする音なども、よく聴くとある。Hat Hut Records
888831591702
()
アール・ブラウン:
フォリオII
(エベルハルト・ブルム) 五線無しで16分音符や5連符などが♯♭やらスラーとともに詰め込まれた楽譜というか紙を自由に解釈して演奏するらしい。2つの演奏バージョンが収められており、どちらもFlを中心に声やおもちゃの笛を混じえての多重録音。「4つのシステム」はいろいろな長さの横棒が相対的な高低で並べられた図形楽譜を各種Flで奏する。それぞれのタイミングでロングトーンが奏でられ重なるといちおう和音になり響きが変化していくが、勝手に鳴っているだけで何も生じない。Hat Hut Records
889176561184
()
ジョン・ケージ:
冬の音楽
(ペーション+シュライエルマッハー+ショルツ+ヴィーゲラン) 20ページの楽譜に音が一群ごとのイベントとして書かれていて、それを1~20人の奏者が演奏する。全体の時間を先に決めてからテンポを合わせ、音の強弱、長さ、重ね方(複数音のうちどれをト音/ハ音記号で読むかなど)は自由だと。ここでは4人のピアニストが禅問答のような音を繰り広げる。「黄道星図」は星図に印刷された星々に五線譜をあてて作ったということで、楽譜にはやはり1~10の音がイベントとして書かれ、音符の大きさが強弱を示すのだそうだ。楽器がフルオケ分列挙されているがどんな組み合わせでもよく、ここではFl+Pf4台。意外にというか実は緻密な偶然性の音楽。Hat Hut Records
889176543142
()
福島和夫:
冥
(エベルハルト・ブルム) 恩人の訃報に接して書かれた弔笛だという。無から静かに立ち上がり暗く消えそうになりながら時に火花のように舞うFl独奏曲。「春讃」も静かに湧き上がり半音以下の揺らぎやポルタメントで漂う。風が出てきて花吹雪や荒れる水面。「レクイエム」もFl独奏。「エカーグラ」「伽陀迦廬那」「『中有』から3つの小品」はFl+Pfで比較的音がぶつかる。「風の輪」は低音にこだわるPf曲、「水煙」はいろいろな音の塊が間を置きながら緩やかにときに鋭く投げかけられる。中間部では鯰でも暴れたか。やはりPf独奏。Hat Hut Records
889176544743
()
ガリーナ・ウストヴォリスカヤ:
12の前奏曲
(マリアンネ・シュレーダー) 捉えどころがない朴訥な感じのモノローグだったり不思議な音律の強靭な音だったり。硬軟入り混じった奇妙なピアノ曲。1953年。「大二重奏曲」はVc+Pfで、かなり暴力的な音から始まり偏執狂的な感じもする進行だったり大柄な身振りだったりと濃い目の表現。59年。「コンポジション第1番」はPicc+Tuba+Pfというけったいな編成で、極端な高音と低音にPfのクラスターや無機質な音列がからむアナーキーな曲。副題がDona nobis pacemなのはどこまで本気なのか。71年。Hat Hut Records
889176548352
()
モートン・フェルドマン:
クリスティアン・ウォルフのために
(エベルハルト・ブルム+ニルス・ヴィーゲラン) AsとGesのロングトーンをゆっくり反復するFlに対してPfがGで答えるという構図が、繰り返されながら徐々に変化していく。おなじみのスタイルが3時間半にわたって続くので、演奏は大変だろうが、聴いている方は案外気持ち良い。しかしこの曲が歌劇「ほほえみの国」とは、NMLいったいどうなっているのか。Hat Hut Records
889176544880
()
アール・ブラウン:
フォリオ I
(エベルハルト・ブルム+フランシス=マリー・ウィッティ+ニルス・ヴィーゲラン) Fl+Vc+Pfのトリオが奏でるのは「最初の完全な図形楽譜である『1952年12月』を含む連作」(沼野p137)で単発的な音がほとんど即興のように飛び交う。「チェロとピアノのための音楽」も同様でポルタメントが多用される。併録はケージの「変奏曲I」「7つの俳句」「ピアノと管弦楽のためのコンサート」、さらにフェルドマンの「プロジェクションI」「エクステンションIII」「インターセクションIV」「デュレーションズII」、クリスティアン・ウォルフの「プリペアド・ピアノのための」「1、2もしくは3人のための」。Hat Hut Records
889176543357
()
シュトックハウゼン:
ピアノ曲
(デイヴィッド・チューダー) 作品2とされているI~IVは群作法だそうで、音があちこち飛び回る実験的な曲。1952年。作品4のV〜VIIIは新しい記譜法の模索ということで図形楽譜などを導入しているのか。54/55年。作品7のXIは4曲から成っていて、細かく複雑な動きがより間をとりながら配置される。56年。録音が58/59年なので、これらの曲がまさに熱かった頃の記録。Hat Hut Records
889176548987
()
エルンストアルブレヒト・シュティーブラー:
…イム・クランク I…
(テオドロ・アンツェロッティ) アコーディオンのHのロングトーンから始まって上下の音が少しずつ加わったりしながら進んで行き最後はCに収束する。同IIはオルガンでBから始まりHに収まる。「ピアノ小品'87」は上音がAを中心に下音はその四度ないし五度下を動き、上もHやBと行き来するようになるが、結局A-Eに戻る。それだけ。Hat Hut Records
888831582359
()
ジョン・ケージ:
フォンタナ・ミックス&声楽のための《ソロ》2
(エベルハルト・ブルム) 図形楽譜を用い電子音楽を想定したフォンタナ・ミックスをフルートで演奏し、かつ声だけでさまざまな表情を描き出す《ソロ》2を同時に重ねている。Part IIは声中心。ケージの作品は同時に演奏しても良いとされていたりするし、間がたっぷりある即興なので、それほど荒唐無稽ではないが、知らないと面食らう。Hat Hut Records
889176548185
()
クリストファー・フォックス:
トポフォニー
(ヴォルコフ+西ドイツ放送響ほか) ロングトーンが少しずつcrescし変化しつつ楽器を変えていく中で、別のいろいろな楽器が、短い合いの手をときどき入れる。パートIIIでは鳥の声らしきものが入ったりSaxなどの即興ぽいのも加わる。39の相互連関する和音だそうだ。まったくゆったりした音空間。Hat Hut Records
752156021124
()
ガリーナ・ウストヴォリスカヤ:
クラリネット三重奏曲
(ハルメン・デ・ブール+ヴェラ・ベス+レインベルト・デ・レーウ) 十二音技法なのかなと思うような不安定かつ表情豊かなClの旋律がPf、Vnと広がっていく。ドルチェの中間楽章を経て最後は7/8拍子のように感じられる壊れた機械のようなフーガもどき。「ピアノ・ソナタ第5番」は荒々しい動機で始まり静けさと暴力的和音が交互に。「二重奏曲」はVn+Pfで冷たく病んだ訴えと厳しい闘い。Hat Hut Records
889176544781
()
マティアス・カウル:
クトゥンガ
(カウル) よく分からない暗闇のような音響に乗ってスワヒリ語の詩がつぶやかれ枠太鼓2台を操る。「ティンパニ・ライド」は倍音歌唱が加工されたようなのがアンリ・ミショーのテキストに結びつくらしい。自転車云々という副題はスポークでも叩いているのか。「マッツァ」は副題“打楽器と声のための音の食用性について”で変調されたような打がときおり響く中に声も少し。「ローマ」はツィンバロンとゴピチャンドを引っ掻き回すかと思うと静寂。「ヘンドリクス」は電気ティンパニなる奇妙な楽器で、冒頭のうねうねのもその音なのだろうか。ときどき金属打楽器やドラム、声が絡む。後半ではジミ・ヘンドリックスを引用して加工したらしき音も。Hat Hut Records
888831591887
()
クリスチャン・ウォルフ:
組曲第1番
(シュテッフェン・シュライエルマッハー) 切れ切れの断片を少し間を置きながらつなぎ合わせていく。一部プリペアドになっているようで、その結果としての微分音も混じってくる。1954年。「ピアノのためにI」は52年、「同II」は53年で、やはり間が多いが後者のほうが強い音。「プリペアド・ピアノのために」は本当なのかFor Piano with PreparationsとFor Prepared Pianoの2種類あって、これも通常とプリペアドの混合。「ピアニストのために」も実はプリペアドでこれが一番それっぽい。Hat Hut Records
888831591177
()
シュニトケ:
ピアノ五重奏曲
(エヴァ・クピーク+ペーターゼン四重奏団) 母の追悼として書かれ悲哀と苦悩の不協和音が織りなす。調性を装って始まってもすぐに絡め取られるが響きは何か透徹したところがある。「ピアノ協奏曲第2番」は室内オケの楽器が様々に繰り出す断片的要素とPfが向き合う。1964年の曲でセリー技法が用いられている。「ピアノ四重奏曲」はマーラーのPfQの未完スケルツォを補筆完成すべく試みたといことでロマンと前衛が入り交じる。「ピアノ三重奏曲」はロマン的な詩情が出ては否定されまたすぐに戻ってくるという感じ。Delta Music Entertainment
0859381138136
()
ストラヴィンスキー:
兵士の物語
(イザベル・ファウストほか) 7人がピリオド楽器を用い、台本もラミュのテキストというオリジナル仕様で演奏も語りも見事。「協奏的二重奏曲」はVn+Pfで新古典主義ではあるがけっこう抒情的な面も。ジーグはプルチネッラを思い出させる。さらに「エレジー」はここではVn独奏で、常に弱音器を付け古い音楽のスタイルで。Harmonia Mundi
HMM902671DI
()
ジャチント・シェルシ:
キャ
(マルクス・ヴァイス+アンサンブル・コントレチャンプス) 本来はCl+7楽器のところをSaxに置き換えている。残る楽器はBCl+Ehr+Hr+Tp+Tb+Va+Vcで、エキゾチックなような奇怪な3楽章。Kyaは何なのか不明。「イクソール」も元はCl独奏曲。「いきなりのぞく」はOb+Piccを編曲。Piccが面白い。「3つの小品」はもともとSSaxもしくはTSaxのところを前者で。「ヤマオン」はバス独唱+ASax+BSax+CFg+Cb+打で預言者が出てくる。「マクノンガン」は低音域楽器用とされていて、ここではBSax。シェルシは結構好きなのだが、サックスばかりこれだけ聞かされると気持ち悪い。Hat Hut Records
888831585657
()
モートン・フェルドマン:
ジョン・ケージのために
(アイヴズ・アンサンブル) カールソン+カリスよりさらに2分ほど短いが、まぁそれは誤差の範囲。VnがPfと半音ずらして答える反復音を微分音程で変化させている。こんなのあったのかな。あ、ほかにも半音階上昇などにしっかり微分音混ぜてる。Hat Hut Records
888831585381
()
ジョン・ケージ:
龍安寺
(ケージ) ボーン・フルートと打楽器版ということで、ポツンポツンと叩かれる鈍い鐘の合間に高低の笛がポルタメントで揺らぎながら鳴らされる。人の声ほか何かを弓奏したようなよく分からない音も入っている。人のいないお寺という感じで時間が流れていく。Hat Hut Records
191773477721
()
イワン・ヴィシネグラツキー:
24の前奏曲
(ヨーゼフ・クリストフ+シュテッフェン・シュライエルマッハー) 四分音調律の2台ピアノで、音が溶けて崩れていくような、ダリみたいな世界。「音の魔方陣による練習曲」はたぶん通常Pf1台。アイヴズの「3つの四分音小品」は元は四分音調律Pfのためだそうだが今は調律を四分音ずらした2台ピアノで演奏するという。「3ページのソナタ」は通常Pf1台でBACHモチーフを使ったり十二音技法を激しく用いたり。中間部ではチェレスタが使われるはずだが、この演奏ではPfだけみたい。Hat Hut Records
888831582809
()
チェン・シャオヨン:
透かし
(E-MEX-アンサンブル) 中国楽器と西洋アンサンブルによる競演だが、これは笙とでさまざまな音素材がゆらぎ絡まる。「ヤン・シェン」は陽深だろうか。Sopと3つの中国伝統楽器とされていて、詩経の柏舟や孔子、列子、老子のテキストを静寂の中で断片的に語り歌いする。「対と花」琵琶、古筝、揚琴、阮咸といった撥弦楽器が活躍。「無言、明快そして安楽」は胡弓かな。Qian and Yanは漢字が分からないが訳すと「変容と進化」だそうで、琵琶や笛が用いられる。よくこなれていて、なかなかのもの。col legno
WWE1CD20449
()
フランコ・ドナトーニ:
影I
(サンティ・マバド) コントラバス・クラリネット独奏という変わった曲で、ppからのクレシェンドによる断片的フレーズが変容するかなりグロテスクな世界。ジャチント・シェルシ「マクノンガン」、ジェラード・ブロフィー「ツイスト」も同じく超低音の独白ですごい。セルジオ・ブラルドニ「ラ・マドレ・パラーダ」、セルジオ・フィデムライザー「トンネル第7番」はそれに電子音が加わり、前者は語りも。オルティスモラレス「シルシュ」も同じくだがスラップタンギングで始まりあとはほとんど電子音と変調された楽器の咆哮。Columna Musica
1CM0389
()
ロジャー・レイノルズ:
ピアノ練習曲
(エリック・ヒューブナー) 2010年の第1巻、16/17年の第2巻それぞれ6曲の計12曲で、それぞれ「移り気な」「不変なもの」「循環」などの表題がついている。どんな順序で演奏しても(略しても反復しても)よいとされていて、ここでも順序はシャッフルされている。自作や過去の著名曲からの引用もある模様。第1巻は飛び跳ねるメカニック、第2巻は細かくうねったりする、というか各曲それぞれ個性的で詩情もあったりする。Mode Records
MOD-CD-329
()
アンソニー・ブラクストン:
コンポジション
(ヒルデガルト・クレープ) CD4枚組で、収録されているのは第1,5,10,16,30,31(Part I/II),32,33,139番。どれもかなり密集した不協和音をほどほどの強度で繰り出して即興的なモチーフにする。139番は比較的枯れて軽みが出ているような気がする。他のことに集中しながらずっと流しておくのに具合がよく昨日からこればかり。Hat Hut Records
889176574856
()
ゲオルク・ハース:
影…考えられないような森の中…
(マクロコスモス四重奏団) 素材を三角関数で縦横(音程/時間)に変換して組み合わせるのだという。Pfの高音モチーフが木漏れ日のよう。微分音ぽい音も。ステファノ・ジェルヴァゾーニの「スヴェーテ・ティヒ」は“沈黙の光”という意味だそうで、ゆっくり静かに流れる時間の中できらめくような断片がポツポツ鳴らされ時々溜まった水が急に流れるように。ジョージ・クラムの「マクロコスモスIII」は“夏の夜(夕べ)の音楽”と第され、Pfの内部奏法から笛のような打楽器そして掛け声まで多彩な響きに魅了される。収録曲はみな2Pf+2打。Hat Hut Records
752156017028
()