Planet masaka played list 2021-10


  1. * 3Vc+CbにBCl、打などの楽器とIRCAMのライブエレクトロニクスで、前半はスルポン的な金属音の変容、後半はCb協奏曲という感じの凄い野性的低音。「ネメトン」は緻密で見事な打独奏、ヘブライ語の標題を持つ「マーレイ」「ヌア」は(Hrから始まる)それぞれVn、Pfの協奏曲。「音蝕」はTp、Hrを独奏に据えるが、特にIの前半はアンサンブルの各楽器が多種多様に扱われる。「越えて」は技法を駆使するFl独奏、「歌と雪の写真」はSop+Pfの7部からなる幻想的な感じの連作歌曲。充実した2枚組。 ALPHA769
    ()

  2. * Fl+Cl+Vn+Va+Vc+Pf+打+4独唱で、詩篇、ランボオ「地獄の季節」、ヘルダーリン、ダンテのテキストを用いて罪と償いを歌うというがおよそ宗教曲的ではなく各楽器の断片的音が打に彩られ声はモダンなテクスチュア。「良心の危機」はVaが抜けてPfがAccd、Guitを兼ねる。奏者が声を出すらしい。音響的には持続音が増えそこにポツポツ短い断片。正式タイトルはもっと長い。「ユー・チューズ」はFl+Pf(一部プリペアドか)で奏者の声も入る。息音、内部奏法などが随時加わって多彩に変化していく。なかなか良い。7 Mountain Records 7MNTN030DIG
    ()

  3. * 三声部の2つを予め録音し合わせて歌うというMSの無言歌(3人で歌っても良いとのこと)。と思ったら途中から友人オハラの詩Windによるテキストも入る。半音の動きが跳躍になったり下降音になったりしながら儚い和声を形作る。最後に近いsnow fallsあたりはちゃんと聴くと複雑なフレーズが舞う。いつもの反復が変化していくパターンなのだけれど、暖かさが凝縮されているというか。Hat Hut Records 752156018827
    ()

  4. * 「三枚のコインをトスし、さまざまな音の要素が配置された…からひとつのマスを選び取ることによって作曲された」(沼野p130)という偶然性音楽はトータル・セリエリズムと通じるところがあり、音はあちこち飛び跳ねて無秩序なのだがそこに内部奏法のグリッサンドがたまに加わって新鮮な気持ちを取り戻す。D.スカルラッティのソナタを間に挟むというのはありがちな趣向だが、ちょいと邪魔ですな。Hat Hut Records 752156018827
    ()

  5. * 第1巻は音高、音価、強弱、アタックをすべて順列化したトータル・セリエリズムで「楽曲はほとんど自動的に生成される」(沼野p121)。第2巻のNo.1は同じ系統でパラメータが増えた感じ、No.2は5年置いて作られているが細かく連なる音が増え景色がかなり違う。ケージの「ピアノのための音楽」4~19、42、47、53~68番を併録して「構造」を挟み込む。静と動のサンドイッチ、と思ったが、ケージの42番から構造Iへは案外スムーズにつながる。Hat Hut Records 752156017523
    ()

  6. * 独奏Clが微分音やポルタメントで埋め尽くされたくねる線を描く。(NMLがいうような「堂々たる」ものではなく)軟体動物みたいに。久田典子の「イエロー・アクシス」は六重奏曲でCl+Vn+Vc+Fl+Pf+打かな。前半は3楽器で張り詰めた表現、後半Fl以下が加わって色彩豊かになる。カタリーナ・ローゼンバーガーの「スカッター2.0」も同編成でメカニカルなフレーズの間に特殊奏法の響きがすり抜ける。カルメン=マリア・カルネーチの「前兆。宝物」も六重奏でそれぞれが気ままに発する音が寄り添うというか。アダ・ジェンティーレの「小さな演奏スタジオ」は繊細な動きが襞のように折り重なるPf独奏。Hat Hut Records 191773465421
    ()

  7. * 李白らの詩のベトゲ独訳テキストを用い、Bar独唱がロマン派と見紛う色彩豊かなオケを背景に歌う。いくつかの楽章の末尾に胡弓の長いソロが置かれ、旋律にも中国風のモチーフが多用される。ずっとスケッチのみだったものを2017年に完成して初録音だという。クラリネット協奏曲はため息動機ほか下降2音(またその反転)が重要な役割を演じダイナミックに変化する。緩急緩急緩の5部構成で急の部分はショスタコを思わせるメカニカルな力で押し通す。 CDAccordACD270
    ()

  8. * 副題は“聴衆の風景”で、何だかとりとめなく楽想が湧き上がって連なる感じ。地味なんだけれどときどき微分音が出てきたりして油断できない。「湖の底の情景」はFl+Vn+Va+Vcかな。ポルタメントで揺れるフレーズはやや尺八風でもあり、幽玄ですかと思っていると弦が不協和音で踊りだしたり。「霧深い日本の情景」はFl独奏でこちらは笛的な邦楽っぽい要素が多い。Es-Dur ES2042
    ()

  9. * 音楽でダダイズムというのは聞いたことがないが、そういう要素があるということで、シェーンベルクの影響も響くか。無調でゆっくりとした楽想があちこち飛び跳ねる。シュライエルマッハーによる管弦楽編曲版も併録。「歌のための音楽」は詩人でもあった自作テキストをもわっとした雰囲気で歌わせる。「イェイツによる3つの歌曲」は穏やかな曲。「クレムによる2つのピアノ小品」も歌曲というか無言歌風なところがある。Es-Dur ES2069
    ()

  10. * Pf+SQと朗読が室内オペラ的なやり取り。内部奏法やスルポンなど硬質な音を多用する短いパッセージの応酬で、テキストはイムレ・ケルテースの「運命ではなく」から取ったのか、あるいは「ガレー船日記」ということなのか、前後や他の曲との間にも朗読が入る。それからウェーベルンの「ピアノのための変奏曲」、ギデオン・クラインの「弦楽三重奏曲」、ベルント・アロイス・ツィンマーマンの「管弦楽のための協奏曲」という組み合わせ。演奏はまずまず切れ味良い。謎が詰まった一枚。Es-Dur ES2055
    ()

  11. * 占星術師でもあるという作曲家らしく謎めいた連作で、全9曲中1~3番が収録されている。平行和音のフレーズがあるかと思えば単音のパズルのような音形もあり。「ペンタグラム」から第3番はやや重心が低いが同じようなゆっくりした謎掛け。「グラニット」は跳躍音が特徴的なモチーフで始まりやはり音の詰まった和音フレーズで進む。中間部はやや動きあり。「3つの賛歌」はさらに跳躍音の傾向が強く。どの曲も密集した重めの和声でやや圧迫感あり。Hat Hut Records 888831591146
    ()

  12. * ニ短調とされているが調性感は乏しく分厚い和音とスクリャービン風の響きが混在する。特に左手が重いので圧迫感あり。アルトゥール・ルリエは「2つのマズルカ」「子守歌」「不死鳥公園夜想曲」と小品が並ぶ。全体に響き重視の感じだが子守歌が一番騒々しく眠れないのでは。ニコライ・ロスラヴェッツは「2つの詩曲」「3つのコンポジション」「前奏曲」でやはりふわっとした響き。レオニード・ポロヴィンキンは「マグニティ」「6つの小品」それぞれ抜粋と「フォックス・トロット」でわりとオーソドックスな作りが基本か。Hat Hut Records 888831581277
    ()

  13. * Vn+Va+Vcが笙のようにすら響く和声とポルタメントがかかったやや民族香のする旋律で粘り気のある波のごとく打ち寄せ激しく踊ったりする。「燃料」はCl+Vc+Pfによる6つの小品、「瞬間の光」はVn+Vc+PfにHrが加わる、「Clソナタ」はキラキラ光る色彩。この3曲の冒頭は同一音を細かなリズムで重ねるよく似たスタイル。「スケルツィック」はVa+Vcで敏捷なリズム。「SQ第1番:内に向かって」は6楽章あってドラマ仕立てという感じの振幅の大きい曲。 BIS-2324
    ()

  14. * 一種の十二音技法ながらスクリャービン風の魔法的響きも持つ5曲の小品。1914年。「大気のかたち」は「図形的に五線譜を配する試み」(沼野p76)を行なっているという。1915年の3曲。「2つの詩曲」は1913年で幻惑的な響き。ニコライ・ロスラヴェッツの「5つの前奏曲」も無調ながらふわっとした響きで音が漂う。1922年。セルゲイ・プロトポポフの「ピアノ・ソナタ第2番」は若干音を重ねすぎの感じもあるが近い世界。1922年。アレクサンドル・モソロフ「2つの夜想曲」は1926年、「3つの小品」「2つの舞曲」は27年かな。やや重心が低くなり運動量と構築性が増している。Hat Hut Records 888831584506
    ()

  15. * へぇベリオにこんな分かりやすい曲がと思ったが、4曲目あたりからそれぞれ独自の旋法を持っていたりして案外面白い。「室内音楽」も曲名のイメージとは違って歌曲。ジョイスの詩集がChamber Musicという標題なのだと。しっとりした空気感ながらセリーを使っていたり1曲まるごとほぼA音のみだったり。エディソン・デニソフの「赤い生活」はSopとFl+Cl+Vn+Vc+Pf+打で、ボリス・ヴィアンの詩をシャンソンやジャズの語法からセリーまで駆使して歌う。変幻自在かつ香り高い。Hat Hut Records 888831581239
    ()

  16. * Cl+Vn+Vc+Pfを惑星に見立てた“移動する四重奏曲”だと。チープなVnに音程が狂うCl(という全楽器妙な旋法)、内部奏法や打みたいなPf、髪振り乱すVcというアナーキーな世界。「遠くて近い」はCl独奏でこれはつまり自然倍音による音律?「座礁」はVn+Vc+Pfが互いを追いかけるかと思うとそれぞれ勝手に語りゆらゆら揺れ動く。「ガイア」はVc独奏で少しノスタルジックなパントマイムか。「寝言」はCl+Vc+Pfで息と内部奏法だったり粗野なリズムに微妙にずらした音程で絡み合ったり。「田園詩」は頻繁に転調するけれど穏やかなPf独奏。LAWO Classics 7090020182469
    ()

  17. * 5Vcが沈黙から徐々に声を上げ始めで哀歌になったり混沌や強い抗議になったり。「ゴー」はCl+SQ+Pf+打で5人の踊り手によるバレエだという。いろんな踊りが脈絡なく変化していく感じ。「ジムツム」は武満かというようなギターデュオ。「セファルディック・リート/ミニクリ」はギターにAccd、テオルボ(テープ)で微分音もあって面白い。「サマルカンドの王女」はVibで始まる打独奏。「母語」はツェラン、ベケットらのテキストを朗読したりつぶやいたりする背景で映像な音の組み合わせ。コンセプトは分かるがちょっとチープ。「8分46秒ジョージ・ロイドの追憶に」はため息や呼吸のみ、ケージの曲の2倍ということ。 NEOS12108
    ()

  18. * IはFl+Cl/BCl+Vc+打でちょっと禅っぽい間で小さな事件が起こるが音は鳴り続ける。IIはCBCl+Accdでこちらは無音領域から始まって引っ掻いたり延々とのばしたり。III「フィシス」はFl+Cl+Vn+Vc+Accdで絶え間ない細かな運動が連なる。「ストリングI」はOb独奏で同じ音が指や息遣いによって変化していく。「ストリングIII」はVn+Pf+Accdで最弱の高音から下に向かって広がる。「相互依存」はギター+打で微分音もありなかなかおもしろい味わいの掛け合い。 NEOS12103
    ()

  19. * パラパラと鳴るPfのアルペジオの合間にSQが疎な和声をのんびり奏でる。SQの和声は徐々に連続した反復運動になって行き、Pfはそれに部分的に重なるゆるやかな上昇分散和音に。最後の方でSQは各声部が独自の動きを見せるが、また和声に戻る。Hat Hut Records 888831591856
    ()

  20. * 単純な音形の野性的なフレーズが少しずつ移動していく。「リイリーク」は短い休符をはさみながらやはり同じ運動が続く。イヴォ・ヴァン・エメリクの「多声的にはめこまれた白」はクレーの絵のタイトルを使っているが断片的な音でちょっとイメージ違う。リシャルト・ラインフォスの「5声部の習作」は不協和音を強調しながら広域に運動する。ジェイムズ・ロルフの「馬鹿な悲しみ」は逆に音を絞ったつぶやきが高まりかけるが沈黙に戻ってしまう。ルカ・フランチェスコーニの「マンボ」は低音の不器用な動きが奇妙な連続上下運動に成長する。Hat Hut Records 888831582557
    ()

  21. * 旋法風に下降する動機をPf伴奏で歌い始め、管弦楽のクラスター的な音が加わってくる。40人の声と44人の器楽を4つの層に分けて配置してブレンドするのだと言う。テキストはパブロ・ネルーダのほか各国の無名詩人のもの。「ロンドンの呼び声」は8声のア・カペラでベリオ自身のテキストによる7セクション。ハイセンスな歌唱から言葉遊びっぽいのまで多彩。 BIS-2391
    ()

  22. * Fl+Pfで順次下降が裏返った七度上昇などのパターンがゆっくり変化していく。途中からGlockというかVibのような鍵盤打も加わってPfが装飾的になったり。「なぜパターン?」は半音下降がいろいろ組み合わされて揺らめく。Hat Hut Records 889176533242
    ()

  23. * 部分的にプリペアドなピアノでくすんだ低音を連打しながら渦巻のような動機が残響たっぷりに飛び回る。「銅の輝き」はより敏捷な動き。「ミコス」はAccdで長音の間を縫うように渦巻き音。「歌」はCl+Pf(以下すべて一部プリペアド)。「すぐに」はディーノ・カンパーナの詩をシュールに歌うカウンターTenをPfがなぞる。「腫れ」はVc+Pfで結構アクロバティックなことをしている。「では彼を見つけよ」は室内管が何らかの曲の断片らしきものを不気味につなぎ合わせるが元は分からないまま。F-Es-Cって何だっけ。Stradivarius STR37146
    ()

  24. * Fl+BCl+Vn+Vc+Pf+打かな?6楽器が短い金属的な音をパラパラ奏でつつ、足踏みしたりおもちゃを鳴らしたりして点描画のようなコミカルな音画。「それでもまだ、ふたたび」も6楽器でゆっくり軋みながら。「イオタ」は12楽器で金管も加わりよりおもちゃ箱ひっくり返し効果。「私の周囲」はプリペアド・ピアノ+5楽器で割と忙しく。Stradivarius STR37137
    ()

  25. * シンプルで活きの良いな素材を組み合わせながら面白い響きがある。「戸外で」はいきなり暴力的なパワーで始まり不協和な要素を活用して野生の雰囲気。「4つの哀歌」BB58は重々しく旋法的。「組曲作品14」は民族素材を思わせるが直接的には使われていないそうだ。「10のやさしいピアノ小品」は素材がそのままだったりする曲もあり、よくも悪くも素朴。Urania Records LDV14074
    ()

  26. * アルバムのタイトルがアイリッシュ・ミニマリズムで、民族的要素を取り込んだ舞曲の趣。第2番の副題Cranningはバグパイプの装飾の一種だそうだ。変な音程は微分音ではなく単に外れているだけなのだが、敢えてそうしているのか。SQ第3番「哀歌」はそれこそバグパイプのような響きも聞こえ、終楽章はハーモニクスを多用し外れ音連発。「カッティング」はSQとバグパイプの五重奏、「旧世界からの物語」はさらに語りを加えて民族的世界。やはり普通の音程とは微妙に違う。First Hand Records FHR116
    ()

  27. * 三島由紀夫の『午後の曳航』のオペラ化だという。緻密に各楽器が無駄なく使われて屈折した心情を表現している。モダンだがそれほど突飛な響きがあるわけではなく、管打も効果的だがでしゃばりすぎず、物語をつくるという感じ。Capriccio C5460
    ()