ルイス・ニールソン:
シリス
(ダマスク+エークナル) Fl+Cl+Vn+Va+Vc+Pf+打+4独唱で、詩篇、ランボオ「地獄の季節」、ヘルダーリン、ダンテのテキストを用いて罪と償いを歌うというがおよそ宗教曲的ではなく各楽器の断片的音が打に彩られ声はモダンなテクスチュア。「良心の危機」はVaが抜けてPfがAccd、Guitを兼ねる。奏者が声を出すらしい。音響的には持続音が増えそこにポツポツ短い断片。正式タイトルはもっと長い。「ユー・チューズ」はFl+Pf(一部プリペアドか)で奏者の声も入る。息音、内部奏法などが随時加わって多彩に変化していく。なかなか良い。7 Mountain Records
7MNTN030DIG
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モートン・フェルドマン:
3つの声
(ジュリエット・フレイザー) 三声部の2つを予め録音し合わせて歌うというMSの無言歌(3人で歌っても良いとのこと)。と思ったら途中から友人オハラの詩Windによるテキストも入る。半音の動きが跳躍になったり下降音になったりしながら儚い和声を形作る。最後に近いsnow fallsあたりはちゃんと聴くと複雑なフレーズが舞う。いつもの反復が変化していくパターンなのだけれど、暖かさが凝縮されているというか。Hat Hut Records
752156018827
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ジョン・ケージ:
易の音楽
(チェン・ピシェン) 「三枚のコインをトスし、さまざまな音の要素が配置された…からひとつのマスを選び取ることによって作曲された」(沼野p130)という偶然性音楽はトータル・セリエリズムと通じるところがあり、音はあちこち飛び跳ねて無秩序なのだがそこに内部奏法のグリッサンドがたまに加わって新鮮な気持ちを取り戻す。D.スカルラッティのソナタを間に挟むというのはありがちな趣向だが、ちょいと邪魔ですな。Hat Hut Records
752156018827
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ブーレーズ:
構造第1巻&第2巻
(チェン・ピシェン+イアン・ペイス) 第1巻は音高、音価、強弱、アタックをすべて順列化したトータル・セリエリズムで「楽曲はほとんど自動的に生成される」(沼野p121)。第2巻のNo.1は同じ系統でパラメータが増えた感じ、No.2は5年置いて作られているが細かく連なる音が増え景色がかなり違う。ケージの「ピアノのための音楽」4~19、42、47、53~68番を併録して「構造」を挟み込む。静と動のサンドイッチ、と思ったが、ケージの42番から構造Iへは案外スムーズにつながる。Hat Hut Records
752156017523
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リザ・リム:
鳴り響く体
(マンフレート・シュピターラー) 独奏Clが微分音やポルタメントで埋め尽くされたくねる線を描く。(NMLがいうような「堂々たる」ものではなく)軟体動物みたいに。久田典子の「イエロー・アクシス」は六重奏曲でCl+Vn+Vc+Fl+Pf+打かな。前半は3楽器で張り詰めた表現、後半Fl以下が加わって色彩豊かになる。カタリーナ・ローゼンバーガーの「スカッター2.0」も同編成でメカニカルなフレーズの間に特殊奏法の響きがすり抜ける。カルメン=マリア・カルネーチの「前兆。宝物」も六重奏でそれぞれが気ままに発する音が寄り添うというか。アダ・ジェンティーレの「小さな演奏スタジオ」は繊細な動きが襞のように折り重なるPf独奏。Hat Hut Records
191773465421
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デーン・ルディア:
テトラグラム
(シュテッフェン・シュライエルマッハー) 占星術師でもあるという作曲家らしく謎めいた連作で、全9曲中1~3番が収録されている。平行和音のフレーズがあるかと思えば単音のパズルのような音形もあり。「ペンタグラム」から第3番はやや重心が低いが同じようなゆっくりした謎掛け。「グラニット」は跳躍音が特徴的なモチーフで始まりやはり音の詰まった和音フレーズで進む。中間部はやや動きあり。「3つの賛歌」はさらに跳躍音の傾向が強く。どの曲も密集した重めの和声でやや圧迫感あり。Hat Hut Records
888831591146
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アレクサンドル・モソロフ:
ピアノ・ソナタ第5番
(シュテッフェン・シュライエルマッハー) ニ短調とされているが調性感は乏しく分厚い和音とスクリャービン風の響きが混在する。特に左手が重いので圧迫感あり。アルトゥール・ルリエは「2つのマズルカ」「子守歌」「不死鳥公園夜想曲」と小品が並ぶ。全体に響き重視の感じだが子守歌が一番騒々しく眠れないのでは。ニコライ・ロスラヴェッツは「2つの詩曲」「3つのコンポジション」「前奏曲」でやはりふわっとした響き。レオニード・ポロヴィンキンは「マグニティ」「6つの小品」それぞれ抜粋と「フォックス・トロット」でわりとオーソドックスな作りが基本か。Hat Hut Records
888831581277
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アルトゥール・ルリエ:
合成
(シュテッフェン・シュライエルマッハー) 一種の十二音技法ながらスクリャービン風の魔法的響きも持つ5曲の小品。1914年。「大気のかたち」は「図形的に五線譜を配する試み」(沼野p76)を行なっているという。1915年の3曲。「2つの詩曲」は1913年で幻惑的な響き。ニコライ・ロスラヴェッツの「5つの前奏曲」も無調ながらふわっとした響きで音が漂う。1922年。セルゲイ・プロトポポフの「ピアノ・ソナタ第2番」は若干音を重ねすぎの感じもあるが近い世界。1922年。アレクサンドル・モソロフ「2つの夜想曲」は1926年、「3つの小品」「2つの舞曲」は27年かな。やや重心が低くなり運動量と構築性が増している。Hat Hut Records
888831584506
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ルチアーノ・ベリオ:
フォーク・ソングズ
(アンサンブル・ノイエ・ムジーク・チューリッヒ) へぇベリオにこんな分かりやすい曲がと思ったが、4曲目あたりからそれぞれ独自の旋法を持っていたりして案外面白い。「室内音楽」も曲名のイメージとは違って歌曲。ジョイスの詩集がChamber Musicという標題なのだと。しっとりした空気感ながらセリーを使っていたり1曲まるごとほぼA音のみだったり。エディソン・デニソフの「赤い生活」はSopとFl+Cl+Vn+Vc+Pf+打で、ボリス・ヴィアンの詩をシャンソンやジャズの語法からセリーまで駆使して歌う。変幻自在かつ香り高い。Hat Hut Records
888831581239
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モートン・フェルドマン:
ピアノと弦楽四重奏
(アイヴズ・アンサンブル) パラパラと鳴るPfのアルペジオの合間にSQが疎な和声をのんびり奏でる。SQの和声は徐々に連続した反復運動になって行き、Pfはそれに部分的に重なるゆるやかな上昇分散和音に。最後の方でSQは各声部が独自の動きを見せるが、また和声に戻る。Hat Hut Records
888831591856
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クリストファー・フォックス:
イリーク
(ジョン・スナイデルス) 単純な音形の野性的なフレーズが少しずつ移動していく。「リイリーク」は短い休符をはさみながらやはり同じ運動が続く。イヴォ・ヴァン・エメリクの「多声的にはめこまれた白」はクレーの絵のタイトルを使っているが断片的な音でちょっとイメージ違う。リシャルト・ラインフォスの「5声部の習作」は不協和音を強調しながら広域に運動する。ジェイムズ・ロルフの「馬鹿な悲しみ」は逆に音を絞ったつぶやきが高まりかけるが沈黙に戻ってしまう。ルカ・フランチェスコーニの「マンボ」は低音の不器用な動きが奇妙な連続上下運動に成長する。Hat Hut Records
888831582557
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バルトーク:
14のバガテル
(フランチェスコ・パスクアロット) シンプルで活きの良いな素材を組み合わせながら面白い響きがある。「戸外で」はいきなり暴力的なパワーで始まり不協和な要素を活用して野生の雰囲気。「4つの哀歌」BB58は重々しく旋法的。「組曲作品14」は民族素材を思わせるが直接的には使われていないそうだ。「10のやさしいピアノ小品」は素材がそのままだったりする曲もあり、よくも悪くも素朴。Urania Records
LDV14074
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デイヴ・フリン:
弦楽四重奏曲第2番
(コンテンポ四重奏団) アルバムのタイトルがアイリッシュ・ミニマリズムで、民族的要素を取り込んだ舞曲の趣。第2番の副題Cranningはバグパイプの装飾の一種だそうだ。変な音程は微分音ではなく単に外れているだけなのだが、敢えてそうしているのか。SQ第3番「哀歌」はそれこそバグパイプのような響きも聞こえ、終楽章はハーモニクスを多用し外れ音連発。「カッティング」はSQとバグパイプの五重奏、「旧世界からの物語」はさらに語りを加えて民族的世界。やはり普通の音程とは微妙に違う。First Hand Records
FHR116
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