music & knowledge sharing
Planet masaka played list 2021-12
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ジェイソン・エカート:
16
(クレア・チェイス+ジェニファー・カーティス+ウェンディ・リッチマン+キヴィー・カーン=リップマン)
息音などを駆使するFl独奏に弦楽三重奏が加わり丁々発止の競演。ネイサン・デイヴィスの「pneApnea」は激しくブレスするAFlの音をリアルタイム処理。藤倉大の「毒キノコ」は電子音を従える尺八あるいは笛。エドガー・グスマンの「プロメテオとエピメテオ」は孔音や息音を処理しつつ。マルセロ・トレドの「息/溝」はその名の通りさらに息音を徹底。ドゥ・ユンの「墓地での走り」はBFlの幽玄に電子音が徐々に進出する。クレア・チェイスさすがに面白い。New Focus Recordings
FCR109
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マティアス・クリューガー:
脂肪の塊
(アンサンブル・ブルッフ)
グスタフ・マイリンクのテキストを奇妙な雑音を混じえながら朗読あるいは語り歌い、軟体動物のような器楽が絡みつく。「失うべき空虚」は金属的で不快な音を畳み掛け静まってからもノイズ的な信号が続く。「基板」はギシギシ軋むオーケストラが雑多な要素をコラージュ。いろいろ引用もあるみたいだがよく分からず。最後は打の乱舞。「掃いて捨てるほどある」は年代物のポップ曲が鳴るかと思えば浮遊する電子音に混じって笛吹いたりナレーションが入ったり。映像と合わせて演奏されるらしく何ともスラップスティック。Wergo
WER6435-2
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ヴォイチェフ・ブワゼイチク:
平和の天使
(クラングフォルム・ウィーン)
Ob+Cl+Hr+Cbでバスの単調なリズムの上で即興的な断片が展開されたあと無重力ぽく浮遊する音にバスが切り込む。声も出る。「ネットワークの音楽」はFl+Cl+Sax+Vn+Va+Vc+BG+Accd+打に声とライブエレクトロニクスでいろいろ喋る。「一般相対性理論」はCl+Vn+Pf+打となっているが録音の声と電子音に破壊的な断片やジャンクのコラージュ。「M.A.D.(相互確証破壊)」はFg+Hr+Trp+Trb+弦+打で元気よく始まり浮遊したり叫んだり。「エーテル」はFl+Cl+Tp+Vn+Vc+Cbにライブエレクトロニクスで反復やら揺らぎやらが変化していく。みな変である。Kairos
9120010289118
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ルイジ・ノーノ:
光の工房
(サラ・マリア・スン+ヘルマン・トロ・ペレス)
Sopがパヴェーセとスカビアの詩を歌う背景で群衆の声を含む破壊的な音のテープ。「森は若々しく生命に満ちている」は渦巻くノイズと叫びのようなテープ音にSop+3人の声優+Cl。「エミリオ・ヴェドヴァへのオマージュ」はこれらの背景音テープを取り出したような音楽。ベリオの「別の声」はMS+Fl+ライブエレクトロニクスで録音なのか電子的なのか2つの声が重なる。シュトックハウゼンの「コンタクテ」はPf+打とテープが「綿密に縒り合わされて、両者の相互浸透が図られる」(沼野p.161)。ゴットフリート・ミヒャエル・ケーニヒ「音の波形 II」「テルミヌス X」は初期の金属的な電子音楽。col legno
WWE2SACD40003
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オリ・バレル:
遠心力
(バレル)
即興のようながら自動ピアノなので計算づくでフリージャズその他の要素を組み合わせている。Pythonでセルオートマトンのプログラムを書いて作曲したのだそうだ。機械的な感じはあまりせず、生身の奏者が弾いていると言われても納得しそう。音色は確かに均質だというのはある。Albany
TROY1793
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フベル・ゼルメル:
ストルガ
(サボルチ・エステニ+ゼルメル)
電子音とも鐘ともつかない響きに乗ってプリペアド・ピアノのような微分音ピアノのような不思議な音が揺らぐ。「ルパ」はプリペアド×通常ピアノに軋むノイズ、「パレ」はスティールドラム風、「ポレ」は残響に浮かぶ電子音、「タマ」は引っ掻き内部奏法に太鼓、「オコ」はそれがリズミカルに、「オパル」は鐘と内部奏法、「トロプ」はトムトム+いろんな仕掛けのピアノ。面白いね。Fundacja Automatophone
5903600806339
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グレツキ:
あなたに捧ぐ
(マジェフスカ+シタルツ)
Desを基調とする旋法的なFlが単調なE音連打のPfの上でさまよう。そこを抜け出すと減5度Pfの上で鳥のように囀り、調和的な三和音に収まりそうになるが微妙にずれる。「バレンタインの小品」は短三度下降をモチーフとするやはり鳥のようなFl独奏。最後にベルが鳴る。「おやすみ」はFlの低音とPfのユニゾン、ヘ短調の旋律、そしてシェイクスピアを歌うSopが加わる。予定調和っぽいが残響による不協和が。フベルト・ゼルメル「グッッドラック」はなぜこんなのでアルバムを締めるのか首をかしげるつまらん調性曲。Fundacja Automatophone
5903600797064
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グバイドゥーリナ:
弦楽四重奏曲第1~4番
(シュターミッツ四重奏団)
Asからのもやもやがグリッサンドして広がり浮遊する第1番、Gの応酬が揺らいでA軸に移る第2番、Pizzの乱舞から研ぎ澄まされた合奏に変化する第3番、サルタンドで作る軸にいろいろな弓奏が絡みつくテープも用いた第4番。「B-A-C-H主題による反映」はこの狭い音域の動きをいろいろな形で組み込みつつ冷たい音が凝縮する。Supraphon
SU4078-2
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ケン・ウエノ:
ガッカ
(ウェンディ・リッチマン)
Aを中心にする声とDを軸にするVaの微妙に揺れる長音そしてトレモロのぶつかりは「仙台のための歌」の下降低音パッサカリア上の変奏と歌で癒やされる。クリスティアン・キャリー「かの者天の衣を望む」は古風な旋法。スティーヴン・ゴーボス「覆われた」は掠れるハーモニクスと電子音。ルー・バンク「シェルシ・フランメンティ」はギシギシするノイズ。デイヴィッド・スモーク「とてつもない与え」はGを軸にうねり外れ音に弾ける。アーリン・シエラ「クリケット・ビオル」は細かなVaにゆったり声。ホセ・ルイス・ウルタド「声に出す言葉」は掠れ軋み唸る。ジェイソン・エカート「開催予定…」はぶつかる隣接音が滲んで広がる。素晴らし声とVaの組み合わせ。Tundra
TUN008
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ホセ・セレブリエール:
Vaソナタ
(ロナルド・カーボン)
素朴な舞曲のようでいて徐々にずれていく不思議な渋い無調の無伴奏。1955年で16歳の時の作。「Vnソナタ」は1948年で9歳の時の作品だそうだがエキゾチックな音律の立派な無伴奏。「夕暮れ時、影の中」は1988年のFl独奏。「チェロ独奏のための組曲」は2006年でメランコリックな5つの楽章。「M.N.P.」はFl+Vcの対話で2021年。「もし誰かの心が壊れていくのを止めることができるなら」はVn+Hrの掛け合いにナレーションが重なる2017年。「ノスタルジア」は2020年のVa曲をVn編曲で演奏。鋭い音も特殊技法もなくとりとめない旋律が移ろう曲ばかりだが、しみじみした感じではある。Affetto Recordings
AF2104
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アレシャンドリ・ルンスキ:
素材
(ジェレミー・ミュラー)
ガタつく蓋や擦音、撥音などが飛び交う音風景。ヘルベルト・ブリュンの「茎と木と水滴と雲」は太鼓と硬木と金物。マシュー・バートナーの「場の輝き」は鳥の鳴き声テープを流しながら金物や電子音を重ねる。ハビエル・アルバレスの「テマズカル」はいろんなテープ音を電子処理しながらマラカスをリズミカルに。クリスティン・マグヌスの「ピッチ対コンピュータ」はVibの即興に電子音を絡める。Albany
TROY1877
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カレヴィ・アホ:
コールアングレとハープのための二重協奏曲
(ディミトリー・メストダグ+アンネレーン・レナエルツ+オラリー・エルツ+アントワープ交響楽団)
ゼロの霧の中から徐々に立ち上がるというのはちょっと陳腐だが、珍しい組み合わせの独奏は個性がなかなかうまく生かされ、北欧ぽいクールさと少しラテン味もある打など、良い塩梅に散りばめられる。「Vn、Vc、Pfのための三重協奏曲」は奇数楽章がえらくロマンチックだが偶数楽章でそれに抗う音が拮抗するという感じか。結局ヘ長調の三和音で終わる。
BIS-2426
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ドミートリー・クルリャンツキー:
プレポジションズ
(ウラディスラフ・ペシン)
Vn独奏で細かなスピッカートでハーモニクスを散りばめる隙間に呻くような低音とか片手で細かくPizzとか変なグリッサンドとか。「FL(ファルサ・レクティオ)第2番」はいちおうBFlだがおよそFlとは思えないような奏法不明のノイズから音孔をパタつかせる音まで。「シヴァー」はAccdだけれどもやはりほとんど何か分からぬ音が続きそれらしいのは最後の1/3ほど。「声=オフ」は口の中をネチャネチャさせるような不快な音の上に喉を鳴らしたりで最後の方に少しボーカルぽい声で。FANCYMUSIC
5055807310222
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アレクサンドル・マノツコフ:
ニコデモによる受難曲
(フィリップ・チジェフスキー+クエスタ・ムジカ+モスクワ現代音楽アンサンブル)
新約外典の一つニコデモ福音書(ヨハネ福音書第3章に出てくるパリサイ派の長老、田川訳ではニコデーモス)からと題されるがニーチェのテキストの方が多いという。民族風フレーズを用いたり、バッハのコラールが音程が崩れて溶けていったり、ラテン系リズムに乗って奏でられたりというパロディもどき受難曲。FANCYMUSIC
5055453696602
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アレクサンドラ・グリカ:
エムティループ
(クラングフォルム・ウィーン)
SQがギシギシ言わせて始まりPizzと短音の応酬からグリッサンドの迷宮へ。「ユーメク」はチェンバロとライブエレクトロニクスの奇妙な交錯。「細胞間」は打Pf入アンサンブルで激静の落差ある波。「どちらにしても」はおどろおどろしく始まるが基調は静寂で減衰反復音が彩る。後半はノイズのカオス。「無言の障害」は目隠しで歩くような静寂の中で打的な音が間欠的に響き渡る。Kairos
9120010289101
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マルチン・スタンチク:
ゲイシール=グリゼー
(パトリック・ハーン+クラングフォルム・ウィーン)
Vn+Va+Cb+2Pfという編成で、E音のユニゾンやオクターブ上下(の滲み)、グリッサンドのみで構成される恐ろしくシンプルなスペクトル空間。Cbの音が強烈。「ため息」は16人編成アンサンブルで2013年武満徹賞受賞作。「モザイク」は指板を押さえるだけの風奏のような音とPizzばかりのVcをライブエレクトロニクスで演出する。「閉眼歩き」は無からゆっくり立ち上がり金属質かつ森のざわめきのように。「後聴」はFl+Cl+Vc+Guit+Pfで静かに弦を弾くハーモニクスに管が風のように絡む。Kairos
9120010289088
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チェザリ・ドゥフノフスキ:
我愛生
(アガタ・ズベル+クラングフォルム・ウィーン+アンドレアス・ハラー)
絶叫型の声+くねくねグリッサンドなど切り裂く弦に電子楽器のノイズ。かと思うと野生の歌のような素朴な音。原題はWelovelive。「ドローン音楽」はFl+Vc+Accd+Pf+打で民族舞踊的奔放さ、そこに電子音が乱入する。「音幽霊マチック」phonoPhantomaticsはCl+Trb+Vn+Vc+Pf+打でゆっくり静かな音楽が電子音にかき乱される。「パラレルズ」はVc+Pf+打が滲んだ微分音アルペジオから安物軽音楽ばら撒きそして叫び声混じりの混沌へ。Kairos
9120010289095
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レナード・V・ボールJr:
夜景
(マイケル・ヘルド+ティモシー・ラヴレース)
Vn+Pfがくねくね動き回りながら鋭いハーモニクスなどが飛び交い中間楽章は静かな瞑想。「森もしくは/でなく木」はVn独奏が囁くトレモロに固いPizzそして屈折した鎮魂と踊りが交互に。「今日の模様」はVn+Vaのデュオがもわもわからギシギシまで丁丁発止で語り合う7つの小話。「内で~無しで」はVn+Pfが静かに語り始め2曲目でぐいぐい動く。なかなか密度濃い。Ravello Records
RR8025
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マイヤ・エインフェルデ:
バイオリン・ソナタ
(マグダレーナ・ゲカ+イヴェタ・カーリーテ)
Pf付きの第1番~3番は、どれもそこはかとなく叙情的ながら、1番の終楽章のように時々鋭いハーモニクスグリッサンドとか爛れてずり下がる音などが混入する。無伴奏のソナタは集中した力で掘り下げられてまずまず聴き応えあり。SKANI
LMIC129
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アレックス・テイラー:
3つの結尾
(アンドルー・ビア+サラ・ワトキンズ)
単純な三和音のPf伴奏に微分音混じりの荒唐無稽なバラードを投げつけるVn。ジュリエット・パーマーの「小さな過剰」は消音されたプリペアド・ピアノの上でPizzが踊りくねる弓奏からハーモニクスへ。ガオ・ピン「山に問う」は胡弓っぽい節回し。ジリアン・ホワイトヘッド「トルア」、フィリップ・ブラウンリー「トゥイのいる水のスケッチ」は鳥の歌。レオニー・ホルメス「ウィンタースミスの踊り」は長いVn独奏のあと寂しげな対話。ジョシア・カー「舞曲」、アンソニー・リッチー「狂詩曲」は静から動へ。ガレス・ファー「予期せぬ進展」は動の落差。ほかルーベン・ジェリーマン「変奏曲」、アンソニー・ワトソン「演奏会小品」。Rattle
RAT-D093
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ルーベン・デ・ラトゥール:
編込まれた平明な音歩
(ジャスティン・デハート)
硬質の細かな打音に風的な電子音響が絡まる。グレンダ・キーンの「トートロジー」は太鼓の単純な反復に雑多な音を絡める。デイヴィッド・ダウンズ「鐘/鏡」はMarbで飛び回る音。アレックス・ファン・デン・ブルーク「オーダー81」は木の反復の休みに金など。マーク・メンジーズ「スケールとタオンガ」はGlockにグラスハーモニカかな。クリス・ゲンドール「高原」は太鼓がぽつぽつ。ローザ・エリオット「着陸」はVibの安っぽいオルゴール風に打が茶々を入れる。ロバート・ブライス「新音楽舞」はVibの遊び。サイモン・イーストウッド「銀風」「金地」「白水」は各種打のうめき。Rattle
RAT-D113
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ジリアン・ホワイトヘッド:
ヒネラウカタウリ
(ブリジット・ダグラス+アル・フレイザー)
Flとタオンガ・プオロというマオリ族の民族楽器のデュオで、題名は音楽舞踊の女神だという。プオロはアホウドリの骨から作ったのと木から作ったもの3種が用いられ、笛吹いたりラッパのように鳴らしたり人声のように響かせたりで即興する。同じ組み合わせでロージー・ランガビアーの「井戸から火を引く」、ブライアー・プラスティーティの「固い土地」は息音がふんだんに、ジョン・サーサスの「瞑想」は虫の声、ジョシア・カーの「ティヘイ・マウリ・オラ」は両者が交互に波打ち、ガレス・ファーの「銀の石、木の骨」は打のようになったり揺らいだり。Rattle
RAT-D115
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フィリップ・ダッドソン:
ポータル
(961)
打+EBassにグリスフルート、クラスタシャン、スカッチプレートなどの独自発明楽器を加えた(打も独自?)トリオで、東南西北(One~Four)の4部から成る。適当に作った電子音楽の類かと思って聴き始めたら案外味わいがある。間に挟まれた「降着」「マントル」「向斜」いずれもへんてこな変調された音が連なるが、より打が前面に出てくる感じで、馴染みやすいかも。Rattle
RAT-D091
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トバイアス・ヒューム:
エア集 第1巻
(レイフ・ヘンリクソン)
16世紀後半~17世紀初期の大佐だそうだ。時代的にはダウランドとほぼ重なり、初期バロックというか、ポスト・ルネサンスというか。この曲集は「音楽の諧謔」という通称があるそうで、Vaダ・ガンバでの演奏。久々にこの時代のものを聴いたが、ヘボい現代曲よりは、よほど心が洗われる。Daphne RecordsDaphne
DAPHNE1071
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ペーター・コセジー:
魂
(エイト・ストリングス・アンド・ホイッスル)
Fl+Va+Vcというちょっと変わったトリオ(8本の弦と笛)で、Gを中心にしだれ柳のような下降が繰り返され通常の音程をはみ出した呪術的というか変な音が投げ出される。ポール・テベルゲの「マカーム」はとりとめなく頼りない断片の継ぎ接ぎ。マーク・ウィングスの「ロキの隠れ家」は呪いめいたくねる旋律ユニゾンがずれて分裂しては集まる。パメラ・スクラーの「二つの旅」は静かにゆっくり成長し、ジョン・ネウェル「…そして何も同じままでは残らない」は繊細に様子をうかがうが主張はない。ホルヘ・アマド「エイドスII」は動きはあるがどうにもいびつ。奇妙なトリオだ。Ravello Records
RR8061
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ネイサン・デイヴィス:
ゴーストライト
(ジェイコブ・グリーンバーグ)
反復連打音が特徴的な単純な音そして軽くプリペアドにしたというPfによるポコポコする打的音。「シードリング」はハルモニウム(hrm)に吹雪のような電子音。エイミー・ウィリアムズの「5つの言葉」はSop+hrmでそれぞれドイツ語の一つの複合語を歌う5曲。「映画の形 4」は低音で暴れるPf。イオネの「現在の記憶」はhrmのいろいろな奏法に載せて女声が表題を語る。藤倉大の「白い虹」はhrmで滲むような和声、「明るいコード」は4つのPf小曲で響きや短音形の遊び。どの曲もAIでも作曲できそう。Tundra
TUN010
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ステファノ・ジェルヴァゾーニ:
6つの暗闇の手紙
(ディオティマ弦楽四重奏団)
1音毎に細かな指示のある鋭いPizz、スルポン、ハーモニクスなどの組み合わせが生み出す光と影。2つの便りに挟まれた中間楽章は時間が圧縮され細かな動きとグリッサンドが目まぐるしく、そしてフレスコバルディのクレドを奏しながら鋭い光が飛び交う。これは見事。「クラムール」「通らない道」も緻密。ジェラール・ペソンのSQ第1~3番も鋭くかつ透明な空気。「ネーベンシュテュック」はブラームスのOp.10を用いClも加えて。エンノ・ポッペの「本」は不条理な音がさまざま変化する5楽章。さらに「ズヴォルフ」「フライツァイト」そして「ティエル」は微分音も含んで音が溶けていく。圧巻の充実3枚組。Naive
V7159
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ヨランタ・スモルスカ:
トリ・エルゴン
(ザヴィシラク+コウォジェイ+プジビルスカ)
Fl+Vc+Pfのトリオで、短いパッセージがグリッサンドやフラッターを伴って対立したり慰め合ったりしつつ最後は融和するのかと思えばそうでもない。「クアジ・ソナタ」はFl+Pfで短長の弾むリズムの主題などがが展開したりするが全体の印象は刹那的。「コンセプト」「3つのアクセント」はVc+Pfで割とアグレッシブ。「置換」はFl+Pfで短三度↗短二度↘音形がいろんな形に変化していく。「デュアリス」は2本Flが密に絡み合うがここでは一方を録音しておいて一人で奏している。
DUX1724
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ソフィア・グバイドゥーリナ:
終末の光明
(アンドリス・ネルソンス+ライプチヒ・ゲバントハウス管)
疾風のように上下する半音階と自然倍音列が拮抗し、平行和音などが渦巻く中、静寂な中間部での自然倍音ホルンの呼び声が印象的。「神の怒り」は重い低音からのテーマから厳しく激しい審判の音楽だが最後だけなんだか協和音。「Vn協奏曲第3番 対話-私とあなた」は独奏Vnと打で分節される管弦楽が交互に音を投げ合う。二度あるいはその裏返しの七度の上昇がいろいろ用いられる。DG
00028948614585
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エリオット・マイルス・マッキンリー:
弦楽四重奏曲第8番
(アルリーガ弦楽四重奏団)
無調のワイルドな曲なんだけれど第2楽章あたりかなり濃厚で終楽章も少しリリカルな主題で始まったりする。「ピアノ三重奏曲第1番 シャドウ・ダンサー」になるとよりポップな旋律志向に。もっとも6つの楽章はそれぞれ異なった個性で、寡黙だったりプリペアドとハーモニックスの組み合わせなど。「愛している、さようならと言うための手紙」はVc+Pfの叙情曲。Navona
NV6264
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クリス・ゲンドール:
弦楽四重奏のための組曲
(ニュージーランド弦楽四重奏団)
タンゴやバガテルなどの形式に触発されつつ衝突音を自由に用い柔軟な4曲。「心地良い調べ」はPfトリオでハーモニクスを多用して透明感のあるきらめき。「違いのある友人」はバッハ、スカルラッティ、シューマンの曲から発想したという辺りを伺いながらも小気味よく踊るPf独奏3曲。「内向きに行く」は風奏や声との多重などを駆使するFl独奏曲。「狂ったように行く」はユリシーズの最後のフレーズだそうで、分裂気味のPf独奏。なかなか面白く味わいがある。Rattle
RAT-D089
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