music & knowledge sharing
Planet masaka played list 2022-01
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ロジャー・セッションズ:
ピアノ・ソナタ第2番
(ピーター・ローソン)
音があちこちに飛び跳ねる両端楽章と神秘的に和音が変化していく中間楽章。1946年。チャールズ・アイヴズの「ピアノ・ソナタ第1番」は捉えどころなく始まり複雑な不協和音が駆使されるがフォークソングが引用されたりと混合する。1921年。チャールズ・トムリンソン・グリフスの「ピアノ・ソナタ」は最初おっと思うがだんだん平凡な調性曲になっていく。1918年ならこんなものか。グリフィスとも。Erato
190296325687
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鈴木輝昭:
チェロ組曲第1番
(鈴木皓矢)
基本枠組みはオーソドックスだが考え尽くされた密な構築物でバルトークからの流れにも通じそうな土から湧き出る力も感じる。「スピリチュエル II」はVc+Pfで旋法的あるいは自然倍音的に駆け上がるモチーフのエネルギーが前半は外側に向かい後半は凝縮するが天啓のような響きで翔び立つ。「弦楽四重奏曲第3番」は各楽器バラバラに好きなことやっているかと思うとDユニゾンに集まったり。「ピアノ三重奏曲第1番」も自由で全音音階的な旋法と外に向かう志向が強い。「ディベルティメント」はVc八重奏で厚みのある音が多く現代的アンサンブルを楽しむ。Nippon Acoustic Records
NARD-5062
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ロビン・リーリャ:
クシシュトフ・ペンデレツキへのオマージュ
(ユーレック・ディバウ+シンフォニエッタ・クラコヴィア)
エキゾチックな独奏も含む弦群が色とりどりの打と組み合されけっこう波打つ。アンドレア・マッテヴィの同名曲は半音のうねりがいろんなかたちを取って。マチェイ・バウェンコフスの「時が刻む」はレミドシの並べ替えのような上昇主題のベタな展開。マイケル・ガトンスカの「シヴィアトヴィド」は短二度上下動機が発展してしっとりする部分も。ドリノル・ジムベリの「動く景色」は細かく動く主題と透明な和声が交互に。ザビエル・ファン・デ・ポルの「イヴァノヴィチ王子の物語」は民族旋法の忙しい動きに甘い中間部。トマシュ・チタクの「アキラ」はゆっくり動く和声に錐が打ち込まれるが予定調和的に。
RecArt0044
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ジョセフ・シュワントナー:
影の遊び
(アレハンドロ・エスケール+フアン・ロモナコ+メキシコ国立響)
管弦楽はいわば作曲者のいう深い森でその聖地を飛び回る鳥のようなFl独奏。下品にはならないが後半で飽きる。ヘベルト・バスケス「海洋のレクイエム」は各楽章Fl、BCl、そして両者による協奏曲で独奏の技法はなかなか凝っている。中間楽章はやや煩い。デイヴィッド・ズベイの「流れ」は面白く始まるのに2楽章半ば以降ガサツになってアメリカンで終わる。マイケル・マシューズのFl協奏曲も最初は興味深いもののだんだん品がなくなり後半楽章は虚仮威しで残念。フルオケは鳴らすべしという思い込みでもあるのかな。Urtext
JBCC325
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アリカン・カムチ:
負け
(ベン・メルスキー+エマ・ホスペルホルン)
微分音ハープを様々な技法でギシギシ鳴らしBFlを語りながら吹く。トマス・ゲリオの「別れの言葉の後/感じた」はいきなりHpらしからぬごりごりした音からハーモニクスを駆使して。フレデリック・ギフォードの「モバイル2015:諷刺」はギターを加え微妙にずれた音をルー・ワンの「CWが作品について語った後」は多重発音などを駆使するClとともに。イーゴリ・サントスの「アニマ」はコミカルな打とともにポルタメントから微分音にも踏み込むHp。エリザ・ブラウンの「伝聞」はハーモニクスとグリッサンドの響きにヴォルテールのテキストを乗せる。ハープの認識を改めさせられるアルバム。New Focus Rec
FCR236
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イアン・エリクソン:
オースロ
(シリウス弦楽四重奏団)
2つの隣接和音を同時に鳴らす不協和から紡ぎ出される挑発的で音刃と冷たいスルポン刻みがずらされたリズムで交錯する。マーガ・リヒターの「弦楽四重奏曲第3番」は調性的な叙情曲のようでいて微妙に変則な味もある。ジェニファー・カステリャーノの「パウル・クレーの心像」はシンプルな枠組みに少し捻れた音やリズムの3楽章。ブライアン・フィールドの「弦楽四重奏曲第1番」も両端楽章などいい感じの遊びはあるが概ね調性周りで2楽章は平凡。珠希真利の「Qシティへの潜入」は分裂気味に始まったかと思うとすぐに安物劇音楽みたいになって何事でしょう。Navona
NV6249
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マーティ・エプスタイン:
歌劇「ルンペルシュティルツヒェン」
(ゲリラ・オペラほか)
グリム童話を材料にした室内オペラで、2Sop+MS+Barの同音反復を中心にした単純歌唱をVn+Vc+Sax+打というこれも小さな編成のアンサンブルが支える。とりとめないフレーズにポコポコ打が加わる非現実なおとぎ話の感じで、これはこれで良いが、この歌でVibたくさんかけられると辛い。Navona
NV6390
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アルウィン・プリチャード:
敗者
(クラウス・シュテフェス=ホレンダー)
重かったりハーモニクスだったり刹那的なPfに奏者がトーマス・ベルンハルトのテキストを語ったり妙なテープ音やらグールドのゴルトベルク断片が重なったり。「行進、行進、行進」は管打の行進曲パロディ。「デコイ」は高音の楽器とノイズ。「ロッカバイ」はベケットの戯曲によるということで女声と管弦楽。「グラフィティ」は波打つ金属的ノイズの隙間に太鼓類が即興的に。「グロルヴィーナ」は硬質な高音打から雑多なコラージュに。「電気イレーネ」は声を含むノイズにVnの掠れた超高音ロングトーンや低音Pizz。どれも実験劇場的。Kairos
0015047KAI
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ベルンハルト・ラング:
楽劇「パルツェフール」
(シモーネ・ヤング+クラングフォルム・ウィーンほか)
シンプルなAs和音ロングトーンから捻れた音が生み出され古典派のパロディ引用からフリージャズやポップス要素までかき集めた3時間近い大曲。名前から「パルジファル」との関係が想像されるがze foolはオランダ語なら「彼奴等バカ」なのでかなり挑発的だ。ライトモティーフ的な要素展開もありワーグナーの楽劇手法を下敷きにしているのは分かる。混沌とした霞のような音が微分音も含む響きなどよく聴くとなるほどというところ。Kairos
0015037KAI
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ジルベール・アミ:
ピアノ協奏曲
(ジャン=フランソワ・エッセール+ジュリアン・ルロワ+ヌーヴェル=アキテーヌ室内管)
スタイルとしてはオーソドックスな対話型3楽章ながら紡がれる音は自由自在で効果的に用いられる打をはじめ響きも楽しい。2005年。「チェロ協奏曲」は最低音域とハーモニクスの高音を対比させる長い独奏で始まり軽やかな踊りから星屑が散るような空間あるいは呟くような瞑想などさまざまな姿が現れる7楽章。2000年。見逃していた掘り出し物。Editions Hortus
HORTUS175
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ムニール・ベーケン:
靴べらの思い出
(ISSAソナス)
Fl+Vn+Va+Vcにウードを加えた編成で、不思議な五音音階のような音律と思ったらトルコ音楽の要素を取り入れているらしい。鄙びた感じから癖のある舞曲へ。「陶器の破片」はFl+Pfで懐かしくも旋法的な子守唄が途中で大きく動いて表情を変える。「行灯の穴」はVn+Vcで勝手に遊んでいる二人の子供が時どき手を取り合うのかと思ったら突然踊ったり。「ピアノ・ソナタ」はウィーン古典派風正調で始まってあらぬ方にずれては戻ってくる。「シアトルのトルコ」はFl+Cl+Vn+Vcで戯けたファンファーレのように始まりワルツが不協和変則リズムの対位法にすり替わったり更に歌声まで。意外にしんみり終わるのも味わい。North/South Rcds
NSR1067
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ティーモ・アンドレス:
小さな不思議
(アシュリー・バスゲート)
公園の遊具で遊んで滑り降りるようなアルペジオとグリッサンドの軽やかなVc。アンドリュー・ノーマン「アシュリーへ」はさらにリズミカル、な分散和音、ジェイコブ・クーパー「レイライン」は逆に激しい刻みで、アルペジオと下降。クリストファー・セローン「悪いことについて」は透明なハーモニクスとワイルドな音の交代。ロバート・ホンスタイン「祈願」はゆっくり静かな長音の電気増幅、テッド・ハーン「DaVZ23BzMH0」は雑多なコラージュによる、それぞれの瞑想。New Amsterdam
NWAM124
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ジョアンナ・ベイリー:
交響曲・通り・土産物
(プラス=マイナス・アンサンブル)
徹底的にポルタメントで滑り落ちていく。止まりかけのオルゴールも含めて。その中で半音階下降は中途半端に聞こえる。「列車」はノイズに重ねてD音からやはり下降そして自然倍音で上昇。軋む音もあり。しかしバッハ混ぜても面白くない。「人工的環境」は街の騒音コラージュにナレーション断片を交えながら。これは上昇と思ったら下降も。No.8では微分音ピアノぽいのが弦の自然倍音ハーモニクスとぼそぼそ対話。NMC Recordings
NMCD252
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マシュー・バーンソン:
ヴァニタス
(ニュー・モールス・コード)
Vc+MarbでPizzや素朴な歌、タランテラ、舞曲など古い組曲の形を借りたシンプルな音の“死にゆく芸術第1巻”。「夕暮れのサミュエル・ベケット橋を渡った」はFl+Hpで同音反復に時どき装飾音が加わるやはりシンプルな構造で押していくが後半1/3ほどで突然しっとりした低音域の自由な動きになる。「聖なる死の規則と演習」はシンプルさが裏目に出たオケ曲で虚仮威しみたいな勢いで単純な和音、あるいは細かい音ばかりを繰り出すつまらぬ楽章が3つ。
INNOVA020
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アナ・ソコロヴィチ:
無伴奏バイオリンのための5つの舞曲
(ギリアン・スミス)
大きな跳躍下降とその反行形、同音反復バス、逆付点リズムなどの要素を色々組合せて多彩な舞を描く。ホ・アリス・ピン・イの「カプリース」は異形の分散和音を弓やPizzで奏でつつハーモニクスの透明な空気も。ヴェロニカ・クラウサス「石の内側」はエキゾチックなテーマが変奏される。カティ・アゴーチの「約束」は広い跳躍が特徴的な主題がだんだん古風な形に収斂していく。シャンタル・ラプラント「空はきっと近い」はゆっくり長い音をじっくり重ねながら時どき激しく動く。Leaf Music
LM228
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リシャルト・ラインフォス:
リフレッシ
(アイヴズ・アンサンブル)
イタリア語で「光沢」の意味だという。No.40「スル・タスト」はPf+Vibほか鍵盤打できらきらとした流れが少しずつ変化しながらも淡々と進んでいく。No.42「弦の上で」はBCl+Trb+Vc+Pfで低音域を中心とした長音から時どきするすると枝が伸びる。No.43「時空上で」はある(不協)和音往復によるパターンを何度か繰り返して次のパターンに移っていく。フェルドマンほど退屈ではないがそれでも長い道のり。他の番号も多分存在するのだと思うが未確認。Nimbus Alliance
NI6383
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ジェラルド・ペープ:
欲望の河III
(アルディッティ弦楽四重奏団)
あてどもなく浮遊する掠れ軋む音がだんだん凶暴になり砕け散って沈んでいく。嶋津武仁の「荒野の幻影」は即興的な三味線と謡に逢えて(?)陳腐なノイズを重ねる。クセナキス「クリュニーのポリトープ」は金属的なノイズのコラージュ、「ミケーネ・アルファ」はより無機質でほぼ騒音。ジャン・クロード・リセ「サクサタイル」はSaxと電子音。ニコラ・チステルニーノ、フリオ・エストラーダ、ダニエル・テルッジ、カーティス・ローズ、ブリジット・ロビンドーアあたり80~90年代とは思えぬ古くさい前衛のつくり。Mode Records
MOD-CD-98
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ステファン・ヴェングウォフスキ:
1から7へ
(ソン・イェヨン+マルシン・ディラ)
Sopとギターなのだけれど通常の楽器音ではなく擦ったり(はじいたり?)した音を電子処理したノイズ的な環境音に声も単純な発声をがんがんにエフェクトかけて重ねる。単なるアンビエントすれすれ、というより残念ながらそれ以上とは言い難くこのレーベルにしてはちょっと残念。Kairos
0015065KAI
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カレル・フイヴェールツ:
ピアノ四重奏曲
(ミヒールス+ブルネール+ディッケル+ラポレフ)
密やかに始まるがすぐに荒唐無稽な音が飛び交いテープで何やら語りが被さる。最初と最後に2テイクが収録されているが同じ荒唐無稽でも随分異なる音で、調べてみるとバージョン1と2がある模様。「ハリー、ハリー、レネのために」はFl+BCl+Pfで戯画的なヘンテコ音の連続。「ピアノための小品」はPf+電子楽器で。Pf独奏曲は不協和音が独特のリズムで飛び跳ねる「リタニー1」、単純音が徐々に複雑化する「一歩ずつ」、ふざけた舞曲もどきの「アクエリアス:タンゴ」。かなり破壊的な前衛。Nettwerk
067003414456
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トマス・ライナ:
バイオリンとハープのための組曲
(エヴァ=クリスティーナ・シェーンヴァイス+キルステン・エッケ)
調性的な装いの少し憂いを帯びたバラード風だが音は次々あらぬ方向へずれて行きここまでおいでと呼んでいるかのよう。対話、子守唄、アリア、踊りの4曲。フシャル・ハヤムの「ノイケルンの妖精」は不規則な拍のHp上でややエキゾチックな音律でそぞろ歩き踊るVn。ロマン・ライテルバント「3つのヘブライのバラード」は普通に調性的。ラヴェル「ツィガーヌ」のVn+Hpはなかなか新鮮。それからジャン・ミシェル・ダマーズとピアソラのタンゴ。何を思ったかタイスの瞑想曲で締めくくっているのはスキップ。Genuin
GEN22763
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ドイナ・ロタル:
影第3番
(アナ・トパロヴィチ)
ハーモニクスからグリッサンドとトレモロを多用して胡弓のようにも響くVcに琵琶、三味線、Pf、打などを録音したテープを組み合わせる光と影の世界。サーリアホの「7羽の蝶々」も冷たいハーモニクスとスルポンが寂しげな蝶を描く。ヨハンナ・ドーデラーの「無伴奏チェロ曲」は調性的なフレーズがどんどんずれていく。アナ・トパロヴィチ「反映」はDのアルペジオから女声が重なっていく。ガブリエーレ・プロイの「ディアマント」はGesからGに向かうアルペジオ。これらをバッハの無伴奏組曲1番各曲で挟むというありがちな趣向だがそこはあらかじめスキップ。Hänssler Classic
HC21007
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サミュエル・アドラー:
弦楽四重奏曲第10番
(カサット弦楽四重奏団)
Vn1がゆったり歌い上げる導入からワイルドなトゥッティに進み冒頭を回想するごとく静謐な緩徐部を経て舞曲的終結部へ。「Vnソナタ」は拡張された調性で急緩急3楽章の第2番、緩急舞を織り交ぜた6つの部分からなる単一楽章の第3番、調性分散和音Pf上に十二音技法Vnなどいろいろ分裂していく3楽章の第4番。Pf独奏の「幻想曲」「記念論文集」「貴方の歌が我が心を広げ」はゆったりした旋律とトッカータぽい逃走、Vn独奏の「ミルトンの思い出に」しみじみした味わいに大きな跳躍が。Toccata Classics
TOCC0624
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マルティン・クリストフ・レーデル:
影の線
(ウルフ・シュナイダー+マルティン・レール+エッカルト・ハイリガーズ)
Vn+Vc+Pfの三重奏曲で細かく跳躍する動とゆっくりうねる線を修飾する静が入れ替わるが時どき安易なリズム動機も。2001年。「こっそりと」は女声独唱のみという9つの短い歌曲で2013年。「囚われの瞬間」は少し走っては振り返るという感じのPf“鏡幻想曲”。2014年。「夜の小品」は勿体つけた始まりが徐々に動き出すCl+Pfで2020年。1982年オケ曲「ブルックナー=エッセイ」と2020年オルガン曲「明暗」はちょっと虚仮威しの感じも。Genuin
GEN22760
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ジョージ・ウォーカー:
ピアノ・ソナタ第1~5番
(スティーヴン・ベック)
基本は無調なのに奇妙に調性的な変奏曲が中間楽章に置かれる第1番、短三度を核に不安定な音律が繰り広げられる第2番、スクリャービン風の迷路のような無調の第3番、構造的なのかと思えば跳躍が入り乱れ瞑想的にもなる第4番、わずか5分弱の1楽章のみで調性と無調が交錯するが何か清々しい感じがする第5番。Bridge Records
BCD9554
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ハリソン・バートウィッスル:
三重奏曲
(ナッシュ・アンサンブル)
Pf+Vn+Vcで、弦の長めの不協和音を源にぱっと広がって漂うような断片が姿を変えては現れ焦点を結ばない。「8弦のための二重奏曲」はVa+Vcのデュオが相手を探りながらスタートし対位法的に絡み合ったりじっくり不協和音を鳴らしたり。「パルス・サンプラー」は長短のモーフを組み合わせるObに打がオブリガードのように応える。「オーボエ四重奏曲」は別々に委嘱された4つの楽章で構成され他曲と似たぎこちないモザイクだったり切り詰められた音の密やかな囁きだったり。音構造はEとDが軸なのかな。
BIS-2561
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エルンスト・クシェネク:
フランツ・カフカの言葉に基づく6つのモテット
(ラーデマン+RIAS室内合唱団)
和声は現代合唱曲ではよく耳にする響きだがそのつながりが不条理を示すような予想外の飛躍で手強そうなア・カペラ。「5つの祈り」は単旋律のグレゴリオ聖歌に続きジョン・ダンの宗教詩で5つの濃厚な和声。「この世のはかなさ」はオピッツなどのテキストを用いたカンタータで途中からSop独唱+Pfが加わる。「3つの合唱曲」はゆっくり穏やかな和声で初期作品らしい。「ジェムズI世時代の2つの合唱曲」は短く洒落た2曲。さらにモンテヴェルディ「アリアンナの嘆き」のクシェネク編曲版。Harmonia Mundi
HMC902049DI
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クルターグ:
弦楽四重奏のための12のミクロルード
(カザルス四重奏団)
副題はミハーイ・アンドラーシュへのオマージュ。CからBまで半音ずつ高まる音で始まる12の断章で、全部で8分少し。Pfにも12 Microludesと題された練習曲風の曲があるが、SQはシンプルな音を多様な技法で奏するクルターグらしい味わい。リゲティのSQ第1番「夜の変容」は半音階的なもやもやとアグレッシブな民族的要素の急速部が交錯する中にほんわかしたワルツがあったりする。そして最初に置かれたバルトークの弦楽四重奏第4番はこれらの原点ということだろう。とてもいいね。Harmonia Mundi
HMC902062DI
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ティエリー・ペク:
数え切れない鳥たち
(アレクサンドル・タロー+アンドレア・キン+パリ管)
4楽章のピアノ協奏曲で独奏も含め打的な要素が濃いが第3楽章は森の中という雰囲気もある。「記憶のむこう、変動成分」はPf独奏でメシアン風かと思えばバルトークのようにもなる7章。「鍵盤のための小さな本」はオルガン、スピネット、クラヴィコードを使い分け古風な枠組みを借りて自由に動き回る。「ラモーの後に、ひとつのサラバンド?」という幻想曲風Pf独奏の後にラモー自身の「新しいクラヴサン曲集組曲イ短調/長調」で締めくくる。Harmonia Mundi
HMC901974DI
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アーロン・エインボンド:
都市が抱える問題とは
(Yarn/Wire)
都市のノイズのような音に雑然と重ねられる打やリード楽器とそれを背景にして都市問題を時どきぼそぼそ語る。「ロンドンの情景」は更に電子音的なものが加わったり鳥がさえずったり。音のインスタレーションとでもいうのか。Multimodal
MM03
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ヴォルフラム・シュリーク:
バイオリン協奏曲
(イヴァナ・プリスタショーヴァ+PHACE+ヨゼフ・トラフトン)
19楽器の室内アンサンブルがくねくね挑発的に動くのを相手に独奏が跳躍大きく上下し雄弁に切り込む。忍び足の中間部も芝居がかって面白い。「ココイ」はOb+8楽器でけっこう綺羅びやかな響き。「バッターリア」はTrb+室内楽でSaxやCbの音も前面に出てくる。「ペリフェリーからの歌」はダニエラ・ダンツの詩をSopがFl+Cl+Vn+Vc+打とともに。これも軟体動物的というかグリッサンドを多用して揺らぐ。Kairos
9120010289132
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モートン・フェルドマン:
バニータ・マーカスのために
(アルフォンソ・ゴメス)
断続的に奏でられる静かな短音の流れに更にまばらな音がまぶされる73分のPf。「廃墟の静寂」は少し和声も用いられる。As-Fに始まる上下飛躍の2音が基本モチーフか。「三つ組の思い出」は左手の2音に右手が1音答えるからトライアディックなんだろうか。ゆっくり変化していく87分。Kairos
9120010289064
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ペーター・アプリンガー:
反自然
(エーリク・ドレッシャー)
Flの長短いろいろな発音を微分音も含めさまざまに(多重録音で?)重ねていく。鳥笛、グリッサンド・フルートなる楽器も。最初と最後は声。「何もない」は音孔を開閉する音だけのリズム遊び。「考察19」は単純な三音上昇を音程や発音など少しずつ変化させて繰り返し最後は階段を降りたような同音反復。「8つの素描」は電子音による反復パターンの戯れ。Kairos
9120010289040
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キャスリーン・ラム:
弦楽四重奏曲
(ジャック四重奏団)
単音がゆっくりと分かれて微分音的な不協和音になり時に協和音が響くがまた崩れ最後は空虚五度というロングトーンだけの47分。「螺旋分割」も基本的に同じだが、13部に分かれていて少しずつ崩れ方が変化する。らしい。この曲だけで100分近いので、演奏する方も大変。瞑想的ではある。Kairos
9120010282102
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レオ・ブローウェル:
水の神話
(コルダ・エ・ベントゥ)
フルートとギターのためのソナタで2009年の作品。特殊奏法は随所に組み込まれているが水の情景を描写するような軽やかな動きで聴きやすい。武満徹の「海へ」は1981年で武満らしい和声感のふわりとした3曲。ジャン・フランセのソナタは1984年、マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコのソナチネは1965年だが時代を間違えたかという調性曲。Stradivarius
STR37187
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オルガ・ノイヴィルト:
歌の残骸…無意味な詩
(アントワン・タメスティ+スザンナ・マルッキ+ウィーン放送響)
5楽章からなるVa協奏曲は過去のトラウマを詩で表現する可能性を研究したウルリヒ・ベーアの著作とナンセンス詩を意味する英語amphigoryを組合せたタイトル。硬質な混沌の中に微かなノスタルジーが漂う。「…ミラモンド・ムルティプロ…」はTp協奏曲で破壊的に始まるがとぼけた味わいやジャズの要素も。「旅/針のない時計」は複数の故郷を持つ分裂状態が根底にあるという管弦楽曲。Kairos
0015010KAI
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ピーテル・シュールマンス:
脱出速度
(クゴーニ・トリオ)
Vn+Vc+Saxという編成で模糊とした霞から始まり気怠い朝を経て元気にシンコペーションする昼間を経てまた静まって暮れていく。「複付点」はVn+Vcで捻れた空気の後やはりシンコペ。「降着ダンス」はPf+弦楽合奏でシンコペの合間に安易なサウンド。「サーヴッタマトン」はSax+弦楽合奏かな、ややメランコリックもしくはメロウ。リズムの複雑さvs直接的スタイルと親しみやすい語法という2つの極端な要素を結びつける博論の実践だそうだが、ややチープな感じ。Etcetera
KTC1714
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アレクセイ・シソーエフ:
メランコリア
(バキューム四重奏団)
軋み掠れて延々40分。ほとんどがハーモニクスやスルポンの長音で、時に少し激しく暴れるサルタンドで混入したりキリキリ捻れた鋸音が出現するが、事件は起こらない。FANCYMUSIC
190296376665
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ガブリエル・リゴー:
アヴァンチュール
(セバスティアン・ルモワンヌ+石橋真由子)
アポリネールの詩による4つのPf伴奏歌曲。「夏の夜明けの月」はジャコット、「冬の月」「マルティネット」「私たちと光を隔てるもの」はジャコット、「広い世界」はアラゴンの詩による。「残酷劇」はアルトーでこれのみ(ここでは)女声。「水と森林」もジャコットだが伴奏にFl、Cl、Ehrが加わる。ドビュッシーというかむしろプーランクか、フランス音楽の系統を強く感じさせるが、それぞれきめ細かくアップデートされている。のだろうと思う。Editions Hortus
HORTUS179
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ホープ・リー:
曖昧な距離の中で
(廻由美子)
荒涼とした冬景色というか、骨太の低音に支えられる冷たい感触の音。「ディンドル」は打楽器的なパルスが動き始め一転して水溜りみたいに滞る。「空想の庭V見るごとに新たな」はAccdも加わってさらにワイルドに。「聞け、歩む過去を聞け」は怪獣の唸りのようなテープを背景にPfが山あり谷あり。「不穏な音…回想への反省」は不安で重苦しい低音から安堵の高音に移行するがそこは結局波打つ攻防の場になりまた沈んでいく。Centrediscs
CMCCD27219
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ルチアーノ・ベリオ:
セクエンツァ II
(アントワーヌ・ブシャール)
ハープを奏で、叩き、かき回していろいろな可能性を引き出す。「セクエンツァ III」は男声での演奏。「室内音楽」はジョイスのテキストを女声が歌いHpなどの室内楽が伴奏。シルヴァーノ・ブソッティの「きたない裸」はBClの独奏と珍しい。「2つの舞曲」はCl+Hpで平凡に始まりながら崩れていく。「マルシュ」はHp独奏。ブルーノ・マデルナの「ディアローディア」はここでは2本Clで高音域中心に絡み合う。Editions Hortus
HORTUS176
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武満徹:
森のなかで
(エヴァ・ヤブウチンスカ)
森をそぞろ歩きすると木漏れ日の中でいろんなものに出会いますよという感じのふんわりした3曲。1995年。「エキノクス」はさらに当て所もなく。1993年。ジョーン・タワーの「時計」は淡々と時を刻んでいた時計たちが集まって踊りだす。ブレット・ディーンの「ゴヤによる3つのカプリチョス」は繊細な短い3曲。ルイ・アンドリーセンの「トリプルム」は少しお茶目。セバスティアン・カリアーの「言明/反映」は内向的な第2曲を動きのある2曲が挟む。マーク・サターホワイトの「ビクトル・ハラの手」はダイナミック。Soundset Recordings
194491227197
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ペーター・ヤコバー:
奸計
(アンサンブル・ノイラウム)
闇から染み出すノイズのような。トーマス・アマンの「部品」は金属的な断片が。エリザベト・ハルニックの「接ぎ木II」はツィターだろうか。ジャン=バティスト・マルシャンの「そして、彼らは家を予感させる」は間欠的に繰り出される繊細な特殊音。ハンネス・ケルシュバウマーの「非難」は弦のポルタメントやスルポンにAccdか。ロレンツォ・トロイアーニの「美術史研究 I、II」は機械仕掛けのような。マティアス・クラーネビッターの「幽霊箱音楽」は朗読付き。ラインホルト・シンヴァルトの「変位量V」は弦&リードの厚い不協和音。ブルーノ・シュトローブルの「来る」は軋みと混沌。曲が多すぎるのでメモの継ぎ接ぎのみ。Austrian Gramophone
AG0014
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ベイジル・アタナシアディス:
目も今や暮れぬ
(東海林史絵+ショーノリティーズ)
芭蕉の“鷹の目も”の句によるゆったりした歌を琴+笙+Vnが良くも悪くもシンプルに響きを活かしながら彩る。「5つの作品」は貞室と芭蕉の句がふわふわ揺らぎプリペアド・ピアノの単純なパターンが付かず離れずで。「夢の書II」はAFl+SQでこれまたシンプルな和風の部品を重ねていく癒やし系。「サークルズ」は電子音+Pf、「蝶の夢II」はローズ・ピアノで単純部品を展開するがこれらはさすがに安直すぎる感じがする。Metier
MSV28596
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ピーター・ヴァン・ザント・レーン:
経度の問題
(アトランタ・チェンバー・プレイヤーズ)
ピアノ四重奏曲で軽やかに飛び跳ねるアルペジオ的な音がPizzだったりハーモニクスだったり。海上時計を作ったジョン・ハリソンの苦心をということだそうだ。「室内交響曲」は音楽的主題を運動や機械的動作に置き換えたという、舞台音楽っぽくもある4楽章。/ピング/はCl+Sax+Trb+Pf+打に少し電子音を加えて忙しく動き回る。/チャター/はFg+Cb+PfにMIDIコントローラを加えアクロバティックでお茶目な音楽。それぞれ表層を疾走する感じ。
INNOVA017
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バルトーク:
コントラスツ
(ミシェル・ルティエク+ジェラール・プーレ+ノエル・リー)
Cl+Vn+Pfの三重奏曲で、とぼけた味わいから夜の音楽っぽく最後はスコルダトゥーラVnの奇怪な音律を用いた舞曲。初めて聴いたかと思ったら7年前にもメモしていた。「44の二重奏曲」は2本Vnで、単純ながら不思議な外れ音が時どき織り込まれそしてだんだん変わった音律が主になっていく。Arion Music
3325480483271
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エルヴィン・シュルホフ:
ピアノ・ソナタ第3番
(モニカ・グートマン)
第1主題はゆらぎつつもロマン派風ながら第2主題はやや分裂気味、第2/4楽章は幻想的な中に細かな動き、第3楽章は無窮動風、終楽章は最初の主題が回帰する。1927年の何だか微妙な音楽。「皮肉」は諧謔的な味付けの4手6曲。「10のピアノ小品」はシェーンベルク風、「ピアノのための音楽」は調性はないものの柔らかい響きの4楽章、「11のインベンション」はラヴェルに捧げられているそうだがむしろドビュッシーぽい気もする。いろんな要素が混在する転換期の音楽という感じか。Wergo
WER7385-2
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マンフレート・トロヤーン:
弦楽四重奏曲第2番
(ミンゲット四重奏団+ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー+トルステン・ヨハンス)
MS独唱とClを加えた変則的なSQで、冷たく静謐な響きがベースながら随所に鋭く厳しい音が散りばめられる、いやむしろアグレッシブな造形の合間に弱音があるというべきか、起伏が大きい。ゲオルク・トラークルの詩が歌われるのは第2、4、5楽章で、Clの出番も同じ。ブックレットにもあるように歌の部分はマーラーあるいは初期シェーンベルクをも思わせ、かなり響きが異なる。Wergo
WER7383-2
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アストル・ピアソラ:
ブエノスアイレスのマリア
(ビクトル・ビジェーナ+ミスター・マクフォールズ・チェンバー+バレンティナ・マルティネス+ニコラス・マルロイほか)
ギターとバンドネオンで始まりタンゴの味わい満載。元はピアソラ五重奏団にFl、Va、Vc、打、第2ギターを加えているが、マクフォールズCのために編曲して演奏しているという。いずれにしてもコンパクトな編成。歌手2人の他にナレーターが9人もいる。Delphian
196006342609
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ダン・トゥルーマン:
歌い難い歌
(ジャック四重奏団+ソー・パーカッション)
人畜無害なハ長調和音と見せかけてポルタメントと微分音ピアノを絡ませて音を融かし、エスノポップな打も加わって混沌となる「考える歌」。へんてこな音律の「シスターの歌」、ハーモニクスの透明な「召喚する歌」、トリルのような短二度往復にリズムが寄り添う「捕らえる音」、ふたたび静かなハ長調和音が滲み口笛が聞こえる「悲しい歌」の5曲から成る。New Amsterdam
NWAM129
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ラミンタ・シェルクシュニューテ:
夏至の歌
(ミルガ・グラジニーテ=ティーラ+クレメラータ・バルティカ)
Vnが空を舞うような高音からゆっくり降りてきて地上で弦楽合奏群と戯れまた上昇したりふっと消えたり。「深き淵より」も弦楽合奏で、不安を孕んだ速く細かい動きが静まりまた動き厚い和声の波になって消えていく。「日没と夜明けの歌」はタゴールのテキストをSATB独唱+合唱+オケが奏でる。昼―夕べ、夜の後にイントロ楽章、そして朝になるという4楽章。前半はどちらかというと瞑想的、後半楽章は色彩的だが煩くはない。DG
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アルトゥール・ルリエ:
室内協奏曲
(ギドン・クレーメル+ブレーメン・ドイツ・カンマーフィル)
Vn独奏のみの序奏から合奏Vnとの対話となり徐々に弦楽器全体が加わって音域が広がっていく。新古典主義的に調性周りやジャズを取り入れたりで聞きやすく楽しい。「小室内音楽」はずっと弦楽合奏とVn独奏の対話でストラヴィンスキーの《ミューズ》的な新古典主義曲。「リトル・ギディング」はT.S.エリオットの「四つの四重奏」の4番目の詩で、管打も加わりTen独唱が灰色にくすんだ世界歌う。DG
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クリスティアン・オッフェンバウアー:
2つのフランクフルト・プレリュード
(アルトゥーロ・タマヨ+フランクフルト放送響)
5群のオーケストラ・グループのためのという第1番はわずか30小節で、続くNo.2が50分ほど。こちらは84楽器で、第1番の展開を逆方向にたどるのだというが、よく分からず。煩いところはほとんどなく、細かく指定された特殊奏法の音が緻密に組み立てられていく。
NEOS11905
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