映画を語るLinked Data
映画について語る
- 映画自身について語る
- 作品紹介:恩地日出夫監督『伊豆の踊子』(1967)は…
- 出演者:『伊豆の踊子』の“薫”を演じた歴代女優は…
- 映画音楽:1967年『伊豆の踊子』の音楽は武満徹が…
- 別の文脈で映画に言及する
- 原作小説:川端康成の『伊豆の踊子』は1933年以来6つの映画化があり…
- 演奏会プログラム:武満徹の『2つのシネ・パストラル』第2曲〈薫〉は、『伊豆の踊子』の音楽を編曲し…
- 地域の情報:長野県上田市別所温泉で『恋の花咲く 伊豆の踊子』の撮影が行なわれ…
語ることのグラフ表現
- 語る対象とその関係を表現する
- 語る対象=ノード(円);対象の関係=アーク(矢印)
- グラフはつながる
- 同じラベル(名前)のノードをまとめてつなぐことができる
例1. 映画自身の情報のグラフ
- 映画を主語にして語る
- アークの出発点となっているノードを主語と呼ぶ
- 到達点を目的語、アークを述語とも呼ぶ
- ここで長方形は主語とならない(値としてのみ働く)ノードを表す
- 円形のノードは、別のグラフの主語となることもできる
- アークの出発点となっているノードを主語と呼ぶ
例2. 歴代主演女優のグラフ
- 複数の映画をつないで語る
- それぞれの映画は、原作を介してはじめてつながりができる
例3. 演奏会プログラムのグラフ
- 演奏曲目の対象作品として映画に言及する
- 演奏会情報という異なる領域のグラフが映画情報グラフとつながる
- 「恩地日出夫監督作品の映画音楽の演奏会」といったグラフ探索も可能
例4. 映画のロケ地のグラフ
- 場所の文脈で撮影された映画に言及する
- 信州上田なんでも体験団-映画ロケ地編-の情報から
- 同じ別所温泉で撮影された溝口健二『愛怨峡』(1937)と繋がったりする
- 地域情報(ロケ地)グラフと映画情報グラフの組合せによる新しい関係の発見
対象を識別する
- 異なるレベルの実体を明確に識別する
- グラフをつなぐためには対象が同一であることを明確に識別する必要がある
- 例えば「恩地監督の」「1967年の」「内藤洋子の」がそれぞれ同じ『伊豆の踊子』を指すとき
- 識別のための名前=識別子(Identifier)をそれぞれの実体に与える
- 識別子によって、アプリケーションが誤解なく同じものをつなぐ
- 人間は文脈で違いを判断できるが、コンピュータがグラフを扱う場合は、曖昧さのない識別が不可欠
- グラフをつなぐためには対象が同一であることを明確に識別する必要がある
- ウェブでの識別子はURI
- ウェブという広大な世界で、集中管理することなく、対象を識別する
- ある文脈においては明確な名前も、範囲が広がると同名の対象を区別できないことがある
- 広大な範囲で名前の唯一性を集中管理することは困難
- グラフに用いる名前(ラベル)をURIにする
踊り子67
では東海道線特急の「踊り子67号」かも知れず、十分に明確ではない- 例えば、
http://example.org/movie/踊り子67
- URIさえ分かっていれば、事前打ち合わせなしでもグラフがつながる
- ウェブという広大な世界で、集中管理することなく、対象を識別する
大まかな話、細かな話
- 同じ名前(ラベル)だけれども…
- 『恋の花咲く 伊豆の踊子』の作品、フィルム、Youtube動画…
- 近代フィルムセンターの検索結果にある4件の『恋の花咲く 伊豆の踊子』
- 上映用ポジの形状/フィート長違い:35mm/8352.01、35mm/8354、16mm/3331.13、 16mm/986.37
- 大まかな話も細かな話もそれぞれきちんと記述(識別)し、互いにつながるようにしたい
- 細かな話が必要なとき
- 国別のメタデータ記述、資料検索、長期保存などには、「作品」より細かな粒度が必要
- 映画の実体モデル:作品(オリジナル)→異種(言語、編集違い)→形態別(メディア違い)→個別アイテム (標準モデルで概ね採用)
- 権利関係は「異種」、所蔵映画フィルム検索システムは「形態別」など
- 大きなくくりの話をしたいとき
名場面を語る
- 作品全体ではなく、その中の場面を語る
- 『伊豆の踊子』の「別れの場面」で…
- 薫は櫛を渡しただろうか。原作では…、川頭義郎の映画では…
- 「さようならを言おうとした」のは誰か。映画ではどう扱われているか
- 原作の第七章、岩波文庫版のp.101
- 川頭義郎監督『伊豆の踊子』(1960)の最後の10分
- Youtubeにアップされている動画の1:19:03
- 『伊豆の踊子』の「別れの場面」で…
- どうやって名付ける(識別する)か
- 主要シーンをピックアップして番号やラベル(識別子)を付与する?
- 誰がそのラベルを決めて識別子を付与する?
- シーンが始まる(&終わる)タイミングは人によって考えが異なる → どのようにそのシーンを定義するか
- 異なる映画を束ねて「別れの場面」を指すことは可能?
- 原作の「別れの場面」と関連付ければ、“歴代主演女優”と同様に間接的に同じ場面をつなぐことはできる
- 主要シーンをピックアップして番号やラベル(識別子)を付与する?
名前を拡張する
- フラグメント識別子
- URIはフラグメント識別子で本体URIのリソースに対するサブリソースを識別できる
- シーンにラベルがあれば、
http://example.org/movie/踊り子60#別れの場面
- 時間と空間
- 例えばメディア・フラグメントは
t={秒数}
という形で動画の時間位置を指定 https://youtu.be/ycmGLVhSVTw
#t=4743
#川頭義郎監督『伊豆の踊子』の「別れの場面」 https://youtu.be/yd36RJ0nzdM#t=4948
#『恋の花咲く 伊豆の踊子』の「別れの場面」- 空間範囲
xywh={座標}
を加えれば「別れの場面で薫が手にした櫛」を示すことも可能 - ただし上の例では特定の映画/版の特定形態での時間/空間しか識別できない
- 粒度も必要以上に細かい(1秒違っても別のシーン)
- Web Annotation語彙のセレクタを用いて作品の部分に対する注釈を記述する方法もある
- 例えばメディア・フラグメントは
共通の名前を
- 恩地日出夫監督『伊豆の踊子』のURI
付与主体 URI 種別 Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/伊豆の踊子_(1967年の映画) 作品情報 DBpedia http://ja.dbpedia.org/resource/伊豆の踊子_(1967年の映画) 作品 Wikidata http://www.wikidata.org/entity/Q17193088 作品 NFC data_id=76276 フィルム 日本映画DB http://www.jmdb.ne.jp/1967/cq000560.htm 作品情報 KINENOTE http://www.kinenote.com/main/public/cinema/detail.aspx?cinema_id=22119 作品情報 allcinema http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=141983 作品情報 IMDb http://www.imdb.com/title/tt0312824/ 作品情報
- 共通URIへの期待
- 同じ作品を語るために皆が同じ名前(URI)を使いたい
- 人によってWikipediaを使ったりWikidataを使ったりしているとグラフがつながらない
- 誰もが理解しやすいURIで幅広い対象を網羅して欲しい
- Wikipedia/DBpediaは分かりやすく普及もしているが、映画を網羅はしていない
- URIは安定的、恒久的であって欲しい
- せっかくURIを使って識別したのにURIが消えたり無効になったりしては意味がない
- 同じ作品を語るために皆が同じ名前(URI)を使いたい
映画語りがリンクする
- 識別子のハブ
- 対象を同じURIで識別すれば、さまざまなグラフ=ウェブ上の情報がつながる
- 映画だけでなく、たとえば文学作品の『伊豆の踊子』のURIが共有されれば、領域を超えてグラフがつながる
- Wikipedia/DBpediaは幅広いURIを提供できるが、あらゆる分野の細部は網羅できない → 分野ごとの共有識別子ハブが仲介することでつながりが
- 識別子からリンクへ
http
で始まるURI(URL)は、識別だけでなくリンクの機能も持つ- 文書のハイパーリンクと同じように、アプリケーションがグラフを取得して辿っていける
- リンクするデータ(Linked Data)
- 概念を説明したスライドのいくつかも参照
参照先
- 参照したリソース
- 信州上田なんでも体験団-映画ロケ地編-
<http://ja.linkdata.org/work/rdf1s2569i/ueda_filmloc.html> - Media Fragments URI 1.0 (basic), 2012-09-25, W3C Recommendation
<https://www.w3.org/TR/media-frags/> - 「別れの場面で薫が手にした櫛」を示す
<http://www.kanzaki.com/works/2016/pub/image-annotator?u=/works/2017/pub/0127-odoriko-annot.json> - Web Annotation Vocabulary 2.1.7 FragmentSelector, 2016-11-22, W3C Candidate Recommendation
<https://www.w3.org/TR/annotation-vocab/#fragmentselector> - Linked Data - Design Issues, by Tim Berners-Lee, 2006-07-27
<http://www.w3.org/DesignIssues/LinkedData.html>
- 信州上田なんでも体験団-映画ロケ地編-