久しぶりにヤマハに行ってみたら、ベーレンライターのベートーベンの残りが出ていたので、2,4,5,6,7番のスコアを購入してきた。楽譜を見ながら、ベーレンライター使用を打ち出しているジンマンなどのCDをもう一度聴いてみると、これらの演奏もやはり必ずしも楽譜には従っていないことがわかる。まあ「原典版」とはいえ、必ずしもその楽譜通りに演奏するのが最良というわけではないから、演奏家の自主性が重要ではある。あるいは独自の資料に基づく「発見」があるのかもしれないが。
今日確認してみたのは7番。例えばジンマンの演奏で話題になった、2楽章の最後の1stVnがアルコかピチカートかというところは、ベーレンライター版では従来とは違う解釈で、Eはピチカート、次のFisからがアルコということになっている。ジンマンは全てピチカートのまま、ガーディナー、ノリントンは従来の版のとおりEからアルコと、「原典版」どおりの演奏はとりあえず見あたらなかった。
ベーレンライターとは直接関係なさそうに見えるが、ガーディナーの演奏で、1楽章の序奏25小節目あたりからの1stVnの合いの手が、楽譜よりも1拍ずつはやく入っているのに気付いて驚いたり。
原典版の楽譜とは、様々な資料を批判して検討し、作曲家の意図をできるだけ忠実に示すべく編集されたものだ。しかし、複数の資料の矛盾が全てきれいに解決できるとは限らないし、細部の微妙な表現の違いが、作曲家の狙ったものか、単なる省略やミスなのかを校訂者が決めるのは限界がある。そういう部分は、校訂報告などの補助情報も検討しながら、指揮者や演奏者が自ら考えて、最適と思う表現を構築していくわけだ。だから、同じ「原典版」を使っても、演奏者の個性や解釈によって違いが出てくるのは当然。少し聴き比べてみただけでも、この当たり前のことがよくわかった