こんどのカペレ演奏会は、ゲルハルト・ボッセの指揮による第九。初練習では冒頭に「ベートーベンを18世紀の音楽としてやりたい」と宣言されて、音を音符一杯均質に弾くのではなく頭を重視するとか、弓の運び方など、とても細かい指導があった。18世紀的とか古典の音づくりという抽象的な話は何度も聞かされてきたが、こうして具体的な奏法を示されたうえで曲を組み立てていくのははじめて。こうするとどんな響きや音楽を目指すべきなのかが分かるので、よく考えながら音を出すことができる。メンバーがきちんとこの指導を理解して演奏すれば、面白いものができそうだ(理解すれば、だが)。
今回はベーレンライター版を使うが、「音楽現代」2002年8月号のインタビューによれば、ボッセ氏は「マルケヴィッチ版」を基本に考えているのだそうだ。練習の中でも、1楽章のG
辺りからの楔形スタカートの解釈について、マルケヴィッチと議論した時にはこういう意見だった、ということを紹介しながら説明していた。
第九は放っておくと情熱的、ロマンティックな演奏をしがち。ボッセ氏は、勝手にクレッシェンドしてしまう旋律をぐっと抑え、気品ある音づくりを求める。どんな第九が出来上がるか。