FMで昨年のラトル+VPOの日本公演(2001-10-20)を再放送していた。これまでの放送をことごとく聴き逃していて、これも偶然新聞で見つけたという具合にどうも縁のない(実演も聴いていない)演奏会なのだが、各地であれだけ話題だったので、さぞかし素晴らしいだろうと期待してベートーベンの第2交響曲に耳を澄ました。しかし…これは? 弦楽器の重い音ばかりが聞こえて、管楽器はお義理のような合いの手ばかり。一部風変わりな解釈もあったものの、HIPの成果を生かしたといううたい文句からはほど遠い凡庸な音楽だ。きっと、放送だからこうなので、生で聴いたら違っていた、のか?

ここでいかにノリントンとSWRシュトゥットガルトの演奏がよかったかを強調しても今更なのでやめておくが、テレビでのSWRの放送と今回のVPOのFMと比べても、多くの人が「ピリオド楽器の試みをとりいれた演奏」として同列に論じているのが信じがたいほどの落差があった。ついでに、ホグウッドとAAMのベートーベン交響曲全集を買ってきたところだったので聴いてみたら、古い録音(2番は1984-08)なのでやや素朴なところがあるものの、よほどこちらの方がシャープだ。

ふと思い立って探してみたら、手元に以前ラトルとバーミンガム市響がザルツブルクで演奏したエロイカ(1998-08-16)の録音があったので、改めて聴いてみる。最初のうちは?という感じだったものの、これは推進力のあるいい演奏だ。しかし、HIPの特徴としてよく挙げられるフレーズを短く切ってさまざまな表情を駆使するというのとは逆に、流れを重視し、大きくまとめている。見通しのいいベートーベンというか、つぼも心得ていて丁寧に作り込まれ、安心して楽器の掛け合いや響きを楽しむことができるのだが、わくわくするような瞬間は最後まで出てこなかったことも確か。まあしかし、古い演奏を持ち出してあれこれ言っても、ラトルも変化しているだろうし、今日のところはここまで。

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