エルガーの交響曲第1番は、ノリントンとシュトゥットガルト放送響(SWR)とのCDが出て以来、気品のあるいい曲だなと思っていたが、彼の来日公演で取り上げられるので少し予習でもしておこうとスコアを購入。噂に聞いていたとおり、なかなか手強そうだぞ。スコアが真っ黒というわけではないのだが、長いフレーズの中に突然細かい音符でややこしいパッセージが混じり込んでいたり、複数の声部で異なる動きをからませたり。冒頭の主題が後で再現されるときは、弦楽器は"Last desk only"なんていう凝った指示になっていたりもする。マーラーの同世代だから、まあこの程度は当然なんだろうか。

しかしノリントンとSWRはこの曲を完全に手中に収め、素晴らしく豊かな音楽を聴かせてくれる。細かなパッセージがうまく生かされて、「詩的な」(by Norrington)情感の中に軽妙な味わいが、川面の木の葉のように浮かんでいたりするのだ。

マーラー体験でも感じたことだが、ビブラートなしというのは、この時代の曲でもこんなに効果があるんだなぁ。モダンオケでもここまでノンビブラートを徹底できるというのを目の当たりにすると、俄然、実践してみたいという気持ちになってくる。とはいうものの、よっぽど音程がきちんと揃わないと、やっぱり無理があるかな(つまり、多くの場合ビブラートは音程のごまかしでもある)。でも、いつかはこの曲に挑戦し、ノンビブラートでやってみたいもの。

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