待望のベートーベン交響曲全集のうち、5番+6番および7番+8番、それにシューベルトの「グレート」がようやく日本でも発売された。5番と7番はSounds SupremeのCD-Rで先に聴いていたので、初めてなのは6番と8番ということになる(グレートは、おそらく2001年にNHK-FMで放送されたものと同じ演奏)。特に「田園」は最近弾いたばかりなのでいっそう興味深い。
感想はと言えば、当然ながらやはりすごく面白くて楽しい。ビブラートなしの透き通った音、快適なテンポなどはいつもの通り。それに加えて、「田園」は嵐あたりでVnがしっかりポルタメントを使ったり、8番では2楽章のホルンがビブラートをかけてみたりと、単なる「歴史的考証」の厳密さだけではなく、多分当時の演奏でもニヤリとしながら聴かれたのではないかという、いろんな仕掛けが試されているんだな。
もちろん、楽譜の読み方も徹底している。たとえば「田園」2楽章の91小節目(F
)からオーボエが奏でる八分音符の単純な連続に楔のスタカートが付けられているのに目を付けて、これをちょっと強調し、クレシェンド、デクレシェンドで表情を付けてみる。すると、このほとんど目立たない音型が、突然、森の中でさえずる鳥の鳴き声になって聞こえてくるのだ。CDを聴いていて「えー? こんなの楽譜にあるのか?」と思って確かめる箇所がたくさん。それらがみな、素敵な演奏効果を上げているのだから、嬉しくなってくる。
シューベルトは、FMで放送された時にエアチェックして、宝物のようにして何度と無く繰り返して聴いた演奏だ。あの来日公演を思い出させる快演で、言うまでもなく素晴らしい。2楽章のティンパニの切れ味、3楽章のトリオの叙情とリズムの妙、4楽章の迫り来る勢いと、どれをとっても最高のグレートだ。ただ、演奏会での都合なのか、4楽章提示部の繰り返しが省略されているのは残念。
しかし、これらのCDは、hänsslerのオンラインショップでは2月頃から(グレートに至っては昨年から)発売となっていたのに、なぜか日本ではずっと入手できなかった。通販をやっているレコード店にドイツからの輸入を頼んでいたのだが、結局日本の代理店経由でも同じ事だったみたいだ。まあそれはともかく、あと1カ月足らずでベートーベン交響曲全集が完結するかと思うと、わくわくするぞ。