10年ぶりぐらいでシューベルトの交響曲5番(D.485)に取り組む。前回は何となく弾いてしまったが、初期のものは邸宅の大広間で演奏されたという背景もあり、実はいろいろ注意しなければならない点が多い。たとえばアクセント。(旧全集では多くのアクセントがデクレシェンドになっているということはさておき、)ベーレンライター版の1~6番共通の編集注では、fz, fpや > について

Schubert used these marks to indicate which aspects of the melody, harmony or rhythm are to be emphasized: they clarify the structure of the musical fabric, though often they merely reflect the impetus of the composer.

とした上で、The accent mark (>), fz(sfz) and fp(sfp) are often used synonymously and interchangeably. と述べている。アクセントがどうなっているかを吟味するのは、音楽の構造を捉える上で重要だが、記号の違いはそれほど意味が無く、また場合によってはシューベルトがはずみで書いてしまったものもあるから、楽譜をよく読んで適切に解釈しろ、ということだ(“シューベルトのフォルツァート”なるものがあるんだそうだが、これのことか?)。

スタカートの弾き方も考えどころ。ノリントンのCDの解説で、クライヴ・ブラウンは、特に弦楽器の書法について次のように書いている。

...his distinction between staccato dots and strokes (the latter to indicate where he requires a sharper, lightly accented staccato) is clearly to be seen in the autograph, though in printed scores the staccatos have been marked with dots throughout.

ブラウンが最後に述べているとおり、旧全集(この時期ベーレンライター版は未出版で、printed scoresとは旧全集版のこと)では点と楔が区別されておらず、そもそもスタカートの付く音が違うから、そこを整理しなければトンチンカンなことになるのだけれど。

今回配られた譜面はブライトコプフの旧全集版だが、指揮者はベーレンライターの新全集も踏まえてやるつもりらしく、かなり混乱する。上記のような表情記号はもちろんのこと、音そのものが違うところも数カ所あるので、アンサンブルのためにはきちんとした事前のすりあわせが不可欠なのだ。にもかかわらず、この確認がないまま進んで次回以降に後回しとは、何というか――。

ノリントンが言っていたように、フレーズを表現するには、伴奏型であっても楽譜に書かれていない強弱などのニュアンスも必要だ。そこで、2楽章で八分音符が続くような音型はどう弾くのか質問したところ、「どう弾くかって…? そう聞かれても答えようがないな。旋律に合わせてとしか言いようがない」という答え。sigh...

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